【~14話】どうにもならない雨予報 (微グロ・シリアス)
気付いたら俺は、無我夢中で森の中を走っていた。
なぜか、さっきまで何をしていたのかわからない。
ただただ、この先で俺が探している“何か”を見つけられる気がして…そのためだけに、だだひたすらに木々の合間を駆け抜ける。
足の感覚など、ないに等しい。
それほどに、俺の足には紅い傷がいくつも刻まれていた。
俺は、何のためにこんなにも急いでいるんだろうか。
この先に、何があるというのか。
そう、思った矢先。
目の前の光景が、一瞬で真っ赤に染まった。
何も前触れなどなく…ただ突然に、それは目の前に現れる。
「お前、は…」
振り返り口元を歪める男は、見覚えのない顔だった。
でも、なぜかとてもよく知っているような…不思議な男。
「来たか、同胞よ」
真っ赤な大地に、ぽつりとたった一人立つそいつと、足元に落ちている棒にも見える“なにか”。
よく目を凝らすと、それは…
「う、腕…?」
子供の、腕だった。
途端、俺の心がざわつく。
あれは…誰の、誰の腕だ?
なぜ…俺の前に、現れたんだ?
どうやっても落ち着かない、はっきりしない頭で必死に俺は考えを巡らせる。
どうして、わからないんだ。
どうして、俺はこんなところにいるんだ。
そう考えながら、改めて落ちている腕を見ると…近くに、布の切れ端があるのが目に入る。
「布…服?」
その発想に至った時、俺の曖昧な頭に…たった一つ、はっきりと浮かんで来たものがあった。
“千景”の、服ではないのか、と。
じゃあ、もしかして…あの、腕は…。
「その服、誰の…」
恐怖を隠せないほどに震える声が、俺の口から垂れる。
血に濡れた男は、歪んだ口元を更に歪めて、俺に告げた…ように見えたはず、なのに。
「----------」
…今、あいつは…何を言った?
なぜ、聞き取れない?
その時。
「…た…!」
なにか、男とは別の声が、頭に響く。
誰だ、誰なんだ。
「ほ…る!」
名前…?
誰の…俺の?
「蛍!」
「っわぁあああああ!?」
気付くと、俺は布団の中にいた。
「大丈夫か?うなされてたようだったけど…」
そう俺の顔色を伺うのは、千景。
「…夢、か…」
まだ汗が滴る頰を拭い、俺は安堵の息をつき、胸をなでおろす。
「なんだ? 蛍がうなされるなんて、どんな夢だったんだよ?」
クスクスと笑いながら夢の内容を訊いてくる千景に、夢の内容を話そうとして…口が止まる。
「…あれ? なんの夢だっけ…」
夢の内容が、どうしても思い出せなかった。
身体にはまだ恐怖が残っているというのに、肝心の内容が出てこない。
「忘れたのか? じゃあその程度の夢ってことだな」
からかうように笑う千景。
それを見て、俺も大した夢ではなかったような、そんな気がして来た。
「…だな、大したことないんだろ」
クスリと笑った俺は、布団から降りる。
「今日は早く来いってクソ教官が言ってたぞ」
「んじゃ、早く行かねーとだな」
俺は夢のことを忘れるように、千景といつものように他愛もない会話を交わす。
「お前と出会えて、よかった」
とても聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが、きっとそれもまだ寝ぼけていたせいだろう。
親作品の作者様にサブタイトルを考えてもらいました!\( 'ω')/
いつもありがとうございます!!!\\\\٩( 'ω' )و ////