ヤンデレ魔王様に軟禁されてます。
はじめまして、私の名前は七瀬葉月。目が覚めたら魔王様のベッドの上に落ちていました。そして部屋に閉じ込められました。
いや、なんでだよ。まぁ理由はわかっているけども。
本人曰く「見た目が好みどストライクだった」だそうです。
あ、意訳ですよ?実際はもっと堅苦しい感じで長ったらしく訳を話されました。でも要約するとこうだったから仕方ないですね。ちなみに部屋を出さない理由は私を他の奴の目にさらさせたくないからだそうです。その発言をしていた魔王様の目は暗く濁ってました。当時は正直怖かったです。今は慣れましたが。
え?魔王様のところに来てからどれくらいだったかって?どれくらいでしょうねぇ。ぶっちゃけ今が昼か夜かもわかりません。窓も時計もないし、魔王様に聞いても教えてくれませんし。
ああ、魔王様といえば小説でよくあるイケメンでした。銀髪ロングで赤眼の彫りの深いイケメン。人外レベルのイケメン。実際人外なのだから当然なんですけど。
その魔王様は現在私がベッドで本を読んでいるのをチラチラと見つつ、自分の仕事をこなしています。もともと執務室があったらしいのですが、私から離れるのが嫌らしく部屋に机を持ち込んで仕事をするようになりました。こっちをチラチラ見つつも的確に仕事を終わらせている魔王様マジハイスペック。実際歴代魔王の中で一番優秀らしいです。たまーに掃除の為に入ってくるメイドさんから聞きました。
そろそろ敬語やめていいかな。なんか面倒になってきた。え?崩れてた?気にするな。ちなみにそのメイドさん、魔王様の乳母らしい。どう見ても同い年です本当にありがとうございます。実は500を余裕で超えてるとか知りたくなかった。魔王様は200歳らしい。それでも若造なんだそう。充分長生きしてますがな。
何の話をしていたのか忘れたけど、魔王様は私を部屋から出しはしないけどそれ以外なら比較的自由にさせてくれる。それに優しい。あれが食べたいこれが欲しいって言ったら遅くても3日以内にそれをくれるし、ホームシックにかかった時は何も言わずに、ヤンデレモードにもならずに抱きしめて慰めてくれた。お風呂とトイレも部屋に付いてるし、暇つぶしとしてゲームとか本とかやり放題読み放題。なかなかにいい待遇だと思う。本人はもっと甘えて欲しいみたいだけど。
おっと、魔王様の仕事が終わったようである。私がうつ伏せになりながら本を読んでいるベッドに腰掛けて静かに髪をすきはじめた。魔王様が石鹸を拘りに拘り抜いた私の髪はさらっさらである。猫っ毛なためふわふわしてるが一切絡まない。なにこれすごい。ここに来る前は髪が絡まるなんて当然のことだったのに。そうして私の髪に触れている魔王様はそのまま私に声をかけた。
「ハヅキ」
「んー?」
「お前は私が怖くないのか」
「なんで?」
「部屋の外には出さないし、私から離れることも良しとしないからな。普通の感性ならば息苦しいのではないか?」
「あー」
魔王様、自分のやっていることが一般的よりおかしい自覚はあったらしい。まじかよ。気にしてないと思ってたよ。
「ねぇ魔王様」
「なんだ」
「逆に聞くけどさー、私がこの部屋から出たいって言ったらどうするの」
「私の腕と視界から出ないのならば考えよう」
うん、それ部屋出る意味無いよね。ていうか流石にきついわ。
「まおーさま、まおーさま」
「なんだ」
「愛が重いです」
「これでも軽いだろう」
「まじで」
「風呂に食事に排泄物の管理まで自分でやりたいという部下がいてな、趣味嗜好はそれぞれだから否定はしなかったが流石に引いた」
「それは重い」
つかキモイ。それやられたら私は逃げる。どんな手を使っても逃げる。あと魔王様に引かれるとかその性癖大丈夫?てか魔王様よりやばい性癖持ちがいるとか思ってなかったわ。つか魔族ってなんなの。なんで尽くす系のヤンデレが多いの。
「番は大切にするものだろう?」
「なぜ疑問に思っていることに気づいた」
「ハヅキはわかりやすい」
私がわかりやすいんじゃなくて魔王様が鋭いのでは。
「で、ハヅキ。まだ質問の答えをもらっていないのだが?」
「え、何の質問されたっけ」
「この部屋から出されないで息苦しくないか」
「いや別に?」
本を開いたまま魔王様の方を見ると、魔王様が目を見開いていた。めちゃくちゃ驚いておりますがな。
「いや、だってさ。毎日三食おやつ付きで、暇を潰せるものは大量で、トイレとお風呂もこの部屋にあるし」
「・・・・・」
「それにまお・・・・・ヴォルフも、いる、し」
なんか顔熱い。てか魔王様動こう。目を見開いたままこっち見ないで。瞬き一つしてないから怖い。
たっぷり二分ほどたった頃、やっと魔王様は再起動した。そこまで驚いたか。
「・・・・・そうか」
一言そう言うと私の横に体を横たわらせた。
「ねぇ魔王様ー」
「なんだ。今日は質問が多いな」
「嫌?」
「否。お前に興味を持たれるのは心地いい」
「そっか。ねぇ魔王様。今私が読んでる本って原因不明で魔王の所にトリップした女の子が魔王にヤンデレされて部屋に軟禁されるんだけど、それを女の子が嫌がって部屋から逃げ出すの。それを魔王に見つかって怒った魔王に鎖でつながれて、さらに子供ができるまで犯されて、精神がぶっ壊れて『今この現状が幸せ』って思うヤンデレメリーバッドエンドなんだけどさ」
「ああ」
「魔王様、私が魔王様に許可取らずにへやから出てたら同じようにしてた?」
「・・・・・さて、な」
そう返事をした魔王様は、濁った目で私を見ながら笑っていた。
最後の会話をさせたかっただけの話。名前を出した意味はあったのだろうか・・・・・。
楽しんでもらえたのなら嬉しいです。
以下設定
七瀬葉月
よくある天涯孤独の身の高校生。監禁は嫌だけど軟禁ならまぁ・・・・・って受け入れた猛者。引き込もれる環境があるなら戸惑いなく引き込もるため現在の生活は問題ない。本人は知らないけど実は魔王の妃として魔界で有名。それを知ることは多分生涯ない。最近のマイブームは魔王とゲームの協力プレイをやること。
ヴォルフ
魔王。部屋に落ちてきた葉月に一目惚れ。そのまま部屋に軟禁。そして速攻で妃にした。魔族の雄が自分の番を隠すのはよくあること。でも普通は部屋から出すくらいなら許すけどヴォルフは許さない。イケメンなためモテていたし、よく女遊びしてたけど葉月に会ってから葉月一筋。最近のマイブームは葉月の観察。出来れば写真を撮りたい。
ちなみに最後の質問は答えを誤魔化したけど実際にそんなことになったら同じ事を容赦なくやるつもり。