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穢れ神と鬼  作者: 山神賢太郎
8月1日
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8月1日 四ツ辻と鬼

 という訳で。まあ、何が『という訳で』なのかわからないけれども。俺は、中村から届いたメールと添付されていた画像のコピーを頼りに、俺はその場所を一人で目指していた。

 なんで、一人でその場所を目指していたのかというと、そりゃ中村がその場所にいけないからだけれどな。

 まあ、こういうことは現在、家に帰っているオーガバスターズに任せればいいのだ。

 しかし、あいつらは基本的に、妖怪が相手だからな。俺の経験的にこれは、不思議な現象という感じがするのだ。

 つまり、妖怪じゃない。

 化け物じゃない。

 現象だ。

 不思議な現象。怪異ってやつか。それとも超常現象。または、超自然的。

 まあ、姿形が無い物っていう感じがする。いわゆる、物質の幽霊というか、場所の幽霊というか。

 うーん。説明が難しいが、まあ幽霊が見えるやつからしても、その姿が曖昧というか、視認できたとしても認識出来るかどうかが危うい。そういう物の感じがする。

 例えるなら、あの穢れ神のいた鳥居の中の場所。それが一番しっくりくるかな。そういう、実際にはないのに、実在する場所。

 そういう物だということを、俺は、あの画像から感じた。きっと、中村も俺と同じ感じだったのだろう。

 だから、はっきりと説明はできなかったが、気になったのだろう。

 さて、そんな考察をしていると、あの画像の場所にたどり着いた。

 画像と同じ電柱もあるし、ここがその場所だってことは、誰の目でも確かだろう。しかし、違うところといえば、そのメールの内容にあった八咫烏がいないということかな。

 まあ、それにしてもだ。ここに中村が来れなかった理由がはっきりとわかるよ。周りを見渡すでもなく、そこに立つだけでわかる。

 なんせ、異常な程の瘴気の量だ。

 水溜りでもなく、谷でもなく、墓地でもなく、廃墟でもない。

 なんとも平凡な四ツ辻。そんな、平凡な場所に異常な量の瘴気。

 異常事態である。これほどまでの、異常を異常事態だと言わないわけにはいけない。

 しかし、なぜ突然こんな町中で(まあ、田舎だから、周りに家はないのだけれども)、これほどの量の瘴気が発生しているのか。それが俺にはわからない。本当にわからない。

 なぜなら、ここは蛇の穢れ神と会うために通った場所だ。そのときは、こんなことには成っていなかったはず。

 だからこそ、突然なのだ。

 そして、もう一つ異常なこと、当たり前でないことがある。

 それは、これほどの瘴気が発生しているのにも拘わらず、一体も穢れがいないのだ。

 こんな、瘴気という名のエサがあるというのに、なぜそれを糧とする幽霊や妖怪がいないのだろうか。それが、もう一つの異常であり、疑問だ。

 いや、そう言うことであれば、俺がいると言うことで正しいと言えるのだろう。瘴気をエサにする妖しの代表『鬼』がいるのだから。

 とりあえずだ。それならばだ。

 これだけのエサがあるんだったら、食してみても構わないかな。

 しかし、それで問題が、あのメールの主を助けることが、できるとは思わないんだけどな。

 さあ、どうするかな。今日はワトソンズがいないから、一人で解決しなければいけないんだがな。

 まあ、あの二人がいたとしても結局は、俺がどうにかしなければいけないし、あいつらが役に立つとは思わないし。

 それに元々俺は探偵よりも、シティハンターや007に憧れるがな。

「あっ」

 俺はそもそも俺の方がワトソンであるということを思い出した。

 そうだ。そうだ。

 俺は、中村という探偵のただの助手なのだ。その探偵に助力を求めるという意味も込めて、一度、現状報告しておくべきだろう。

―――Trrr

「中村。今、現場に着いた」

『そうか。やはり、親友はすごいな。僕ができないことを平然とやってのけるなんて』

「うるせい。まあ、俺はどちらかというと悪役向きかもしれないが、そんな言い方をするんじゃあない」

『まあまあ。そんな怒らないでくれ。それで、君の言っていたように幽霊という者がいたいのかい?』

「いや、幽霊はいなかった。けれど、この場所が異常な場所だということはわかった」

『それは、あれかい。廃墟だとか、断崖絶壁だとか、四ツ辻だとかかい?』

「どうして、わかった四ツ辻だと」

『地図を見たら四ツ辻だからだよ。それで、どう異常なんだい?』

 ちょっとイラつく。なんで今冗談を言ったんだ、こいつは。帰ったら殴ろう。

「ああ、異常というのは、ここがよくない物で溢れているということだ」

『なるほど。少し漠然とし過ぎてわからないけれども。ということは、八咫烏も依頼者もいなかった、ということだね』

「それで、合っている。とにかく今から、ここら辺をうろついて『何か』ないか探してみようと思うがそれでいいか。それとも、一旦そちらに戻ったほうがいいか」

『うーん。……。今が、四時だから、その依頼主がメールに書いていた様に五時を待つというのが僕としては一番だな。だから、君の言うように辺りを散策しながら、五時を待ってもらえるかい』

「わかった。じゃあ」

 中村との電話を終え、メールを再確認する。

 確かに、五時頃と書かれている。

 なるほどな。やはり中村に報告しておいて良かった。とりあえず、中村が言ったようにするか。

 俺は辺りを散策しながら五時まで待つことにした。

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