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穢れ神と鬼  作者: 山神賢太郎
7月30日
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7月30日 鬼と家探し

 榊さんは、手元から刀が消えたことに驚きつつも、俺の攻撃範囲から抜け出した。

 さて、ここからが問題だ。榊さんは無事助かったのだが、俺はそれにより人質を失ってしまった。


 このなにもない状態で、どうやってあの婆さんと交渉するというのか。考えたところで、カードの無い俺には、何もできない。


 さらに、さっきまでの優位に立っていた状況とは打って変わり、人質がいないことで俺は無防備になってしまった。ということは、あの女集に攻撃されるということだ。


「お前たち、あの鬼を捕まえな」


 婆さんの命令に従い、一斉に薙刀を持った女集が俺を追いかけてきた。

 わっほーい。逃走だ、逃走だーい。


 俺は、一目散に榊さんが言っていた、木に登り塀の上に立った。別にここから逃げる気なんてないさ。ただ、塀の上に登っただけさ。


 よし、ジャパニーズニンジャばりに、塀の上を颯爽と走ってみせるぜ。なんてことを思ってみたが、塀瓦の上は立つことでやっとなんだが、これは思ってたよりもアンバランスなんだが。忍者はどうやってこんな上を走っていたんだ。

 そんなことを考えながら、バランスを整えながら逃走する。


 しかし、俺はただ逃げているわけではない。なぜなら、俺の知っているヒーロー達は勝つために逃げるからだ。勝利するための計算をしながら逃げる。これこそが俺のヒーローだ。


 そして、俺は逃げながらでも、ここにいるはずの封印された犬神を探しているんだ。さらに、俺には他の奴らにはない能力がある。そうそれは、式神だ。


 さっき、少ないながらも吸収した瘴気、こいつを使いサーチ能力の高い式神を召喚するのさ。


 俺は、ポケットに忍ばせていた式札を取り出し、瘴気を注ぐ。そして、子鬼のような姿をした一体の式神を召喚した。

 


「さて、お前の出番だよ子鬼ちゃん。俺に、犬神ちゃんの場所を教えてちょうだいな」


 こんな状況じゃあ、俺は意識を式神に集中することができないよな。だからこそ、こいつを自動操縦する式神にしておいたのさ。


 この式神が進む最終地点に俺の望む、犬神がいるのさ。

 しかし、式神は微動だにしない。


「おい、なぜ動かない」

「ご主人の言う、犬神は人が使役するタイプの犬神か? それとも、神使タイプの犬神か?」


 突然、式神が喋ったのには少し驚いたが、この前も喋ってたし、と納得し、式神の質問に答えることにする。


「そりゃ、神使タイプだ」

「そうですか。じゃあ見当たりませんな」

「はっ? どういうことだよ」


 式神の発言に驚き、俺は塀の上で立ち止まってしまった。


「どうもこうも、私の能力では発見することができないということです。考えられる要因としては、この敷地内にはいないということ。もしくは、別の空間に存在するということだと思います」


 式神のその発言に一つだけ思い当たる節があった。それは、亀や蛇のいた空間だ。あの空間は結界で守られている。そのため、このサーチ能力でも見ることができないということだろう。

 それならば、俺が次にすること、それは、その空間の入口である、鳥居を探すことだ。


「わかった。じゃあ、次は鳥居を探してくれ」

「それは、無理です。私の能力は瘴気や気の類を検知することです。無機物は無理です」


 つまり、サーチで探すことは不可能ということだ。じゃあ、もう自分の足で探すしかないじゃないか。

 俺は、式神をただの式札に戻し。ポケットにしまった。



「義貫、もうあの女たちが追いかけてきているぞ。急げ」



 塀の下を走っていたアキラの助言通り、後ろを振り返るとあの薙刀女集が俺を追いかけて、すぐ近くまでやってきているのがわかった。


 この問題山積みの中でどうやって、鳥居を探すというのか。鳥居を探すということ下に降りなければならない。それも、追っ手から逃げながら。もう考えている暇もない。決断をすぐにしなければ。


 俺は、意を決して塀の上から降りた。足に自信がある方ではないが、やるしかない。逃げながら、鳥居を探す。それしか方法はない。追っ手との距離は、10メートル程だ。クラウチングの姿勢から勢いよくダッシュする。



 どれくらい走っただろうか。何度も迫り来る、追っ手を回避しながら俺は鳥居を探したが、全く見当たらない。外は全部探しきってしまった。つまり、家の中っていうことか。

 

 家の中というのは、難易度高いぜ。そりゃあ、普通の家だったらまだしも、この家何平米あるんだよ。それに、家の中に入るってことは、捕まるリスクも高いということだ。流石にこの俺が天才だとしても、中々難しい。


 ということはだ。やたらめったら、探すのは得策じゃない。犬神がいる場所を確実に目指して進まなければ。

 追っ手を巻きながらも、頭をフル回転させて考える。頭と体がストライキを起こしそうなほど肺からの酸素の供給が不足しかけた時、一つの案を思いついた。


 あのババアの発言だ。あの発言が重要。あのババアは今の榊家は犬神が目を覚ましているから強いと言っていた。つまり、それほど犬神が榊家に与える力の影響力は大きということだ。


 じゃあ、尚更大事にしなければいけないよな。その場所に護衛を置くぐらいしないと危ないよな。それも、こんな鬼が血眼になって探しているんだから、護衛の数も多いだろう。もしくは、あのババアが先にその場所に行っている可能性だってあるはずだ。


 俺は先ほどの式神を召喚し、今度は自分の目で確認するために式神に意識を集中させる。

 すると、護衛の数が多い場所を発見した。さらに、あのババアと榊さんまでいた。完全にこの場所が、犬神がいる場所で間違いがない。


 そして、ここからは追っ手を巻くだとか、見つからないように遠回りして行くだとか、そんな甘いことはしない。堂々とまっすぐ突っ切る。そこに、壁があろうが破壊してでも進む。これこそが、漢らしい戦略だ。というのは冗談で普通に家に入って、その場所へ行くんですけどね。


 近くの窓から家の中へ侵入した俺は、急いでその場所を目指した。不思議なことにそこまで行くのに追っ手に出会うことはなかった。罠じゃないかという不安が頭をよぎった。


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