7月23日 恋文? と地図と猫
今日は奴からメールが届いた。
俺の最近のメールの履歴は中村、中村、中村、中村……。
あれ、これはまさかヤバイのでは、変人中村となんか距離が縮まっている感じなんですが。
俺がいま攻略しているのは中村なのか。中村END。嫌な響きだ自分で考えて自分で悶絶している。
……。
さて、精神的なダメージが回復したので、メールを読むことしよう。
メールには報酬である行方不明者一覧の名簿が添付してあった。名簿には十人弱の名前と最後にいた場所が書かれていた。
この名簿は役に立つのかよくわからないな。最後に行方不明者がいた場所が全員別々だしな。
しかし、俺はこれに頼るしかないしな。さてどうしたものか。この場所を全部回るのも大変だし、人手が足りない。うーんこれは猫の手でも借りたいな。
猫、ねこ、ネコ。
そっと、俺は自分のベッドで漫画を読んでいる一人の少女を見た。
イターーーーーー。
今の俺には猫神のテトちゃんがいるじゃないか。猫を使役できる猫神様に頼めば、この場所を俺が行かなくても大丈夫だぞ。楽だぞ。
さて早速頼むとするかな。うっしっし。
アメリカの某アニメに登場する犬の笑い声を心の中でし終わると、テトにお願いすることにした。
「テトお願いがあるんだが、ここに書かれている場所に猫を向かわせてくれないか」
テトにケータイに表示された名簿を見せた。
「別に構わないが」
「サンキュー。それで、この場所の付近で穢れや瘴気なんかがあったら俺に報告してくれないか」
「いいじゃろ。なんかお主も大変そうじゃな」
テトはすぐに猫を向かわせてくれた。その光景は凄まじかった。
まず、テトが猫を呼び寄せた。すると、すごい数の猫が俺の家の前に集まったのだ。
そして、テトは猫になにかテレパシー的なもので命令した。命令を受けた猫たちはすぐにどこかへ向かって行った。
さて、あとはテトからの報告を待つだけだし、それまで二度寝しようっと。
「いや、お前もなにかしろよ」
アキラの鋭いツッコミが俺の体に響いた。
「だって目的地が見えないとやる気って起きないじゃん。それなら、寝てた方がいいじゃん。っていう話じゃん」
「なんだそのチャラ男みたいな話し方は」
「てへ☆ 」
「ムカつくな。そうだな、目的地が見えなくてもやれることはあるだろ。あの本に書かれていたとおり次の穢れ神が蛇だとしたら、その対処法だとか準備とかをすればいいだろ」
「まあそうだな」
ということで蛇の穢れ神と戦うためのシミュレーションをしてみよう。そのためにするのは寝ることだ。
よし、寝る。
「結局やっていることは二度寝じゃないか。義貫の馬鹿野郎」
俺は、アキラから罵られながらベッドで二度寝をした。
そして、俺が起きたのは太陽が西に傾き始めた頃だった。
起きてみるとアキラとテトの姿はなかった。きっと、二人で例の呪いでも探しに行っているのだろう。
完全に一人となった俺は、することもなく、初めてだらだらとした一日を過ごすことができそうだと思っていた。
しかし、こうも連日、濃い一日を過ごしているとなにかをしていないと落ち着かなくなってしまっていた。慣れというのは怖いものだ。
じゃあ、ゲームでもするかなと思ってみたものの物の10分で飽きてしまった。そこで、俺は気がついてしまったのだ。俺がこうも落ち着かない理由に。その理由は、どうやらあの2人がいないからだという一番嫌な考えに至った。
いや、そんなことはないだろう。まさか、そんな俺はいつも一人で行動していたではないか。そんなありえない。
その考えを忘れるために漫画を読んでみる。
しかし、ページをめくる手が重い。いつもなら、面白いと感じるのに二人のことを考えてしまうのだ。
これは、もしかして恋か?
なんて、冗談も考えながら気を紛らわしていたが、結局のところ俺はただ二人がいなくて寂しいだけなのだ。
でも、このまま二人の元に行ってしまっては格好が悪い。なにかないだろうか。
なんとなくケータイを開き行方不明者一覧の名簿を見ていた。
最初に来た時はそこまで深く見なかったがなにか共通点はないだろうか。
人物の共通点を考えようにも全く見たこともない名前ばかりだしな、やはり場所しかないか。
行方不明者が最後に確認された場所を地図にピンを刺していくことにした。所謂、クライムマッピングというやつだ。
行方不明者の人数は十五名。十五名分のピンを地図に刺したが、てんでばらばらだ。この町のいたるところに点はある。
それもそうだろう、この場所は行方不明者が最後に確認された場所であって、行方不明になった場所ではないのだから。
うーん、なにかないか?
まあたぶんではあるが、こういうものはノイズのようなものが混じっているからわかりづらいのだが、 どれがノイズかなんて現状じゃわからないしな。
……。
なにも思いつかないまま時間だけが過ぎた。時計の秒針の音だけが聞こえる。
ふと、机に置いていたじじいから受け取った本が目に入った。
そこでやっと気づいた。俺が本質を理解していなかったのだ。
ピンがバラバラなのは当たり前だ。そりゃそうだろ。だって、このピンの場所は5体の穢れ神が関係しているのだ。だから、一体ずつの穢れ神に対して、ピンをおいていかなければならない。
俺は四体の穢れ神の場所を知らないが唯一している穢れ神がいる。あの角山公園にいた亀の穢れ神だ。
地図上にさっきとは違う色のピンを刺した。
これでさっきまでのピン達が持つ意味がやっと理解できた。角山公園に刺したピンの周り半径3キロの中にに4つのピンが刺されていた。つまり、この四人は亀の穢れ神に関連する行方不明者だということだ。
それならば、他の行方不明者は他の四体の穢れ神と関連していることがわかる。
この行方不明者のピンで一番重要なのは外側のピンだ。外側のピンの意味は穢れ神のいる場所に近くとも遠いとも言えない場所だ。それは、穢れ神を中心として描く円の中に含まれているということだ。
なら作業は簡単だ。この外側のピンから近いピンへ直線を書く。それも2本から3本書く。外側のピンから左右のピンと街の中心側にあるピンへ向かって直線を書く。さらに、直線が引かれたピンとピンを直線で繋ぐ。そうすると、三角形か四角形が出てくる。
この三角形または四角形は穢れ神を中心とする円の中に入るものと勝手に確定しておく。そして、少なくてもこの多角形の二点に外接する円をいくつか描けば、穢れ神がいる場所がある程度特定できるはずだ。
と思っていたのとは裏腹に結果は最悪なものだった。主要な場所が四つ以上出てきたのだ。やはりノイズが混じっているからだろう。
しかし、この場所のどれかの近くには必ず穢れ神はいるはずだと思うことにした。それに、これは無駄なんかじゃないのだ。なぜなら、テトからの情報が入れば、場所の特定も可能になるのだから。
テトとアキラが帰ってきたのは夕方五時頃だった。
俺は、すぐさまテトから穢れ神についての情報を聞きくことにした。
「テト、なにかわかったか」
「それが穢れの臭いがこの街のいたる所にあり過ぎて穢れ神の場所を見つけることできなかったのじゃ」
「いたる所? じゃあ、こいつをその場所をこの地図に刺してくれ」
俺は、テトにピンを渡して地図を見せた。テトは俺が見せた地図にぐちゃぐちゃに円が書かれていて最初驚いていたが、了承してピンを刺してくれた。
穢れの臭いがする場所はかなりあったようで30ほどのあった。
しかし、この情報は俺にとって有用な情報だ。なぜなら、テトの情報は穢れの臭いがする場所。つまり、行方不明者の最後に確認された場所よりも信憑性が高いのだ。
テトが刺したピンと行方不明者が最後に確認された場所のピンを照らし合わせることでより正確に穢れ神の場所がわかるはずだ。
そして、綺麗に円ができた場所が一つ出てきた。その円の中心には田首城 の跡地がある。つまり、この周辺に穢れ神はいる可能性がある。
さて、明日はここへ足を運ぶことにしよう。