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穢れ神と鬼  作者: 山神賢太郎
7月22日
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7月22日 仙石家と鬼一家の懇談会

 俺は、ある人物に呼ばれていた。

 その人は、仙石楓せんごくかえで。仙石家次期当主となる人物だ。



 どうやら、仙石家と鬼一家の懇談会とお盆に向けての会議があるそうだ。

 仙石家というとジジイの話でも出ていたあの仙石だ。

 仙石家は結構な金持ちだし政界にも進出している。



 俺はあまり乗り気じゃなかったが一応こちらも鬼一家の次期当主となっているのだからジジイや親父の顔を立てるためにも行くわけにはいかない。


 一応アキラやテトも誘ったのだが、アキラは乗り気じゃなくテトも他の神様の場所に行くのは嫌らしく二人で街の呪いを祓いに行くらしい。


 そこで、今日は一人で仙石家へと向かうことになった。



 

 長い懇談会とお盆の行事を決める会議が終わるまでものすごく暇だった。


 次期当主だからといって俺が口を挟めるような内容でもなく、たまに俺に話を振ってきたがその場の雰囲気に合わせて話をしておいた。



 こういう懇談会の場は大人がわいわいやって楽しむだけのものなのだ。だから、俺のような子供には全く楽しくない。



 どちらかというと大人が俺に絡んで来るからうざいのだ。

 やはり、面白くない。



 俺は席をたち仙石家の庭にある家の前のベンチに座りながら持ってきたジュースを飲んでいた。

 池で泳ぐ錦鯉に餌を与えながら暇をつぶすことにした。

 そうしていると、楓さんが俺の横に座ってきた。


「どうしたんですか」

「私も君と同じだよ。ああいう場が嫌で逃げてきたんだ」

「そうですか」


 俺はこの人が苦手だ。何を考えているのかわからないし、全てを見透かされそうで怖い。


「それに、同世代なのは君くらいなのだから、話し相手になってくれないか」

「いいですよ」


 ニッコリと俺に微笑んだ。それを見てなぜか急に怖くなった。


「君と私は同じだ」

「何がですか? 」


「運命や家に縛られている。私は勝手に次期当主にされているし、君もそうだろ」


「まあ、そうですね」

「それに、私たちは先祖の呪いとでも言うのかな、生まれながらにして災いが降りかかる運命だ」


「運命……。そうですね。宿命だとか運命だとか言われながら育てられてきましたね」


「私は二年前にその運命というのがきたんだよ」


「えっ? 」


 二年前……俺と同じ年の時だ。


「私も断片的にしか覚えていないし、夢だったのかもしれないんだが、何度も何度も死んだ気がするんだ。そして、何度も生き返った。自分が死に続けるのは恐怖そのものだったよ」



「どういうこですか」

「まあ、妄想話として聞いておいてくれないか」

「わかりました」



「私は小さい頃この胸のあたりに五つのホクロがあったのんだ。でも二年前の今頃突然消えたんだよ。それも一つずつね」


 五つのホクロ。一つずつ消える。なぜか、俺の運命と合わさる部分があった。


「一つのホクロが消えるまでに何度も死んだ。それも生き返ると時間が戻っているんだ。でも死んだことは分かってもどうやって死んだのかがわからないんだ。ただ、死んだという事実だけが記憶に残っていて、時間が経つたびにだんだんとその記憶が曖昧になってくる。まるで、記憶が上書きされるみたいにね」


 楓さんは悲しい表情をしていた。その日のことを思い出しているかのような感じだ。


「でも私がどうこうしたということじゃないんだよ。ただいつの間にかホクロが消えていくんだ。そして、最後のホクロが消えて私は生き続けて今に至るわけだよ」


「それで終わりなんですか。本当になにもせずに」


「そういえば不可解なことに私のホクロが無くなった次の日は決まって殺人事件のニュースが流れていたんだ。それに最後のホクロが無くなった次の日に同級生が自殺していた」


 なぜか、俺のなかでその同級生が知っている人物として再生されていた。


「その人の名前はなんですか」

「確か、吉良アキラさんだったような」


 俺の予想が的中していた。アキラが俺の家に来た理由がはっきりしてきた。

 アキラは仙石楓の運命に巻き込まれた人物だ。



 そして、次は俺の運命。五つのホクロというのは穢れ神の呪いなのだろうか。

 あの、亀の穢れも呪われた子を差し出せ、仙石の子と言っていた。仙石家と鬼一家、そして、アキラ。


 俺たちは、家と血筋に巻き込まれている。ということはアキラの血に俺たちと関連している家の血が流れているのかもしれない。


 運命というのはきっかけがあるはずだ。


「どうしたの、義貫君なにか知っているの? 」

「いや何でもないです。ただ、俺にもそんな運命がいつか来るのかなと思いまして」


 俺は嘘を吐いた。もうすでに俺の運命は始まっている。ただ、この人がまた運命に巻き込まれては可哀想だと思った。


 だから、なにも知らず俺の運命を終わらすのが一番いいと思ったのだ。


「さて、戻りますか。そろそろ、酒もなくなってきた頃でしょう」

「ええ、そうね」


 俺は手に残っていたコイの餌を池に投げると手を払ってジジイ達の元へと帰った。

 懇談会が終わるまで運命について考えていた。

 俺は、生きてこの運命を終えることができるのだろうか。



 そして、アキラにこのことを話すべきなのだろうか。アキラから話を聞くべきなのだろうか。なぜあいつはこのことについて何も言わなかったのだろうか。

 それとも、死んだことで忘れているのか。



 考えたところで答えはわからない。

 わかっていることは俺は前を向いて進まなければならないということだけだ。





 そして、懇談会の終わり俺は一通り挨拶を澄ますと仙石家から吉崎の家に帰ることにした。

 もう日は暮れていた。


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