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穢れ神と鬼  作者: 山神賢太郎
7月21日
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7月21日 鬼と牛の首

 俺はバスに乗り、牛の首谷橋というバス停で降りた。

 牛の首と言えば有名な怪談話があるが、それと関係あるのかは知らない。



 さて、なぜこんなところまで来たのかというと、それは昨日のことを話さなければならないだろう。



 昨日、喫茶店からの帰りしなに中村からのメールが届いた。それは、依頼のメール内容だった。その依頼の場所がこの近くなのだ。



 そして、これから俺は山を登らなければならない。それも、獣道を登るのだ。嫌だなぁと心底思っているよ。

 雰囲気のある道中はまるで、ホラーゲームに出てくるステージのようだった。



 主人公は大抵夜中にこういう場所に訪れるがなんで明るいうちに行かないのだろうか。もうなんていうか完全に出ますよって感じの場所に行くのに夜行ったら余計に怖いだろう。



 そんな馬鹿な主人公とは違い俺は朝早くに出たぜ、なんせバスの便が少ないからな。

 それに、そんな主人公たちにはいない心強い味方の神の使いアキラちゃんが同行してくれるんだぜ。幽霊なんてこいつに掛かれば刀ひと振りでイチコロだぜ。



 さて問題は依頼内容だ。

 メールに書かれていたことを要約すると、ある場所の呪いを解いてほしいということだ。



 漠然と呪いと言われても俺にはわからない。しかし、アキラなら何か知っているかもしれない。



 そして、その場所というのが厄介な話があるところなのだ。

 昭和後期に大量殺人事件が起こり、未だ犯人が誰なのか分かっていないのだ。



 その事件には生き残りの少女がいるのだが、その人はすでに亡くなっているらしい。

 真相がわからないままの大量殺人事件そんな場所に向かうのは、正直超嫌。



 それに、メール最後に「さっきはそこに何も無かったと言ったが実は俺はその場所に辿りつくことができなかったんだ。地図で調べれば確かにあるはずなのだが、俺にはそこへ行く道が見えなかった」っと書かれてあった。



 行く道が見えないとはどういうことなのだろうかと考えていると、その場所へと続く人の手で作られた道が見えた。

 その道の両側の木々には大量の御札が貼ってあった。


「なるほど、あの中村という男が行けない理由がわかった」


 アキラはうんうんと頷いている。


「理由ってなんだよ」

「あの男にはこの道を見ることができないんだよ」

「なんでだ? 」



「あの男にはあるまじないがしてあった。それは、穢れに気づかないまじないだ」

「穢れに気付かないまじない……」



「ああ、多分あのまじないは凄腕の呪術師にかけられたものだろう。よく見ていないとわからなかったが彼はかなり穢れに取り憑かれ易い体質だ。しかし、そのまじないのおかげで彼は穢れに気付かないし、穢れも彼に気付かない」



 それじゃあいつは幽霊のことを証明するなんて一生できないじゃないか。しかし、今はそれどころじゃない。



「じゃあこの道の奥には穢れが!? でも俺には何も見えないぞ」

「それは、この御札のおかげだろう。こいつのおかげで結界が張られている。それで穢れを見ることができないのだろう」



「結界がいるほどやばい穢れなのか。ということは……」

「穢れ神がいる可能性が高いな」



「もしかすると、意外にも俺が倒さなければならない奴に偶然にも会えるかも知れないな」

「さあ、どうだろう。穢れ神はどこにでもいるからな」



 少しの期待と恐怖を抱きながら俺はその道を進むことにした。

 御札の道に入る瞬間、空気が重くなった。やはり、この奥にはなにかがあると確信した。



 その道を抜けるのはそう長くはなく二、三分で開けた場所に出た。その場所にはでかい廃屋があった。

 まさに、ホラーゲームのメインステージと言った(おもむき)がある。こいつは怖いぜ。



 しかし、おかしなことにその周りには穢れの姿は無かった。まさか、見掛け倒しということはないよな。



 とりあえず、先に進むしか方法はないが歩き疲れたということもあり、その廃屋の庭にあった岩に腰を下ろし休むことにした。


「なんだ、もう疲れたのか? 」

「いやいやこっちは生身なんだぞ。幽霊と一緒にするなよ」


「幽霊じゃない神の使いだ」

「へいへい」



 さて、廃屋に入る前にもう一度おさらいをしておこう。昨晩ネットで手に入れた新聞の記事を読んでみる。これには、ここで起こった大量殺人事件が書いてある。



 ここは大西家という金持ちの家だ。どうやらその当時、大西家の家長が亡くなり跡取りを決めるために家族が集まっていた。



 そして、何が起こったのかわからないが十一人が死ぬ事件が起こった。この事件のたった一人の生存者である当時十五歳の少女が犯人だと思われていたが、その少女には絶対殺すことができない方法で十一人が殺されていたため、少女が犯人ではないということが証明されている。その少女は発見された時、


「誰かがやってくる。私は呪われています。次の犠牲者は誰? 私? 」


 ということを何度も繰り返していて、事件のことを聞くことができないほど精神が病んでいた。その後、少女は精神病院に入院することとなった。


 この事件ではさらに不可解なことが起こっている。

 この事件を担当していた警察全員が事故死しているのだ。



 そして、この事件は未だに解決することができていない。



 また、事件の生存者である少女もこの事件の数年後に死んでいて、この事件を知るものはいなくなった。そのため、この事件がなんだったのか永久に知ることができなくなってしまった。



 さて、この新聞記事を見た俺は非常に行きたくは無かったし、確実に何かがいることは間違いないと思った。



 しかし、やらないわけにもいけないというのがつらい。

 新聞記事をカバンにしまい、この廃屋へと入る決意を固めた。



 さあ、行くぞ。俺はやってやるんだ。そして、何事も無かったかの様に家に帰るんだ。

 玄関に足を進める。しかし、玄関の扉には意味深な御札と赤い文字で注意書きがしてあった。



『あなたは呪われます。それでもよろしいですか? それでもよろしければお入りください』


 

 どういうことだ。


「この家に何かが封印されているということだろう。それもこの御札はかなり強い結界だ」

「じゃあ入るのやめていい? 」



「まあ、入らない方がいいのはいいけど、もう受けてしまった依頼だろう。だったら入るしか他ないだろ。まあ、この私がいるのだから安心したまえ」

「アキラさん期待していますよ」


 いざ、参る。

 俺は勢いよく玄関の扉を開け、


「たのもー」


 っと大声で叫んでやった。

 家の中からしっとりとした冷たい風が吹き、俺の頬を少しだけ冷やした。

このあとに「牛の首谷怪奇事件」http://ncode.syosetu.com/n6152cg/を読むとより面白いと思います。

R15で残酷な描写があるので苦手な方は気をつけてください。


牛の首谷橋というバス停は実際に存在します。

本当にまわりに何もないところにぽつんとあるバス停なのでなんでこんなところにバス停があるのかわからないって感じの場所にあります。

本当になんであんなところにあるんだろう?

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