表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DEATHEARTH  作者: 奇逆 白刃
13/93

異界の輝、五つの石 2

ベッドの上で伸びをし、欠伸をする。何回目だ?…忘れた。

揚魅はEarthにスキーをしに行った。仕事は市長の都合で長期休暇。歌恋は留学中。今頼んでいる実物大のコンコルド模型が届くのは、二日後だ。…やることが無い。

もう一度伸びをすると、沙流は街に出た。

人通りが少ない。小さな子供、女達、痩せた者、太った者…いつもより目立つ。理由は直ぐに分かった。

―健全な身体つきの男がいない―

どこだ、どこに居るんだ?

取り敢えず、支庁に向かって走り出した時、背後から肩を掴まれた。手を振り払い、振り返ると、屈強な兵士が二人いた。右側の兵士が口を開く。

「我々と来い。市長の命令だ。服は着替えなくて良い。そのまま連れて行く」

何だよ、何の話だ?

訪ねようとした時、全てが分かった。

自分の体格…大柄で、太っても痩せても居ない。そうか、いなくなった男達は皆こいつらに…

しかし、分かった所でどうにもならない。沙流は兵士達に付いていった。

「なかなかの上玉だな、役に立ちそうだ」

市長が言った。此処はどこだろう。空を飛ぶ窓の無い戦車の中で、沙流は何をするかも分かっていなかった。

「市長…これから一体何をしに?」

市長が笑みを浮かべる。ぞっとする程恐ろしい笑いだ。

「悪魔狩りだ」

「悪魔狩り!?」

「そうだ。魔界に乗り込み、生け捕りにして、我が手下とする。いい案だろう」

そうか?そうなのか?どうしてもいい案だとは思えない。悪魔にだって人権はある筈だ…多分。

俯き、黙ってしまった沙流を見て、市長は不愉快そうに鼻を鳴らした。

「ふん、もう少し喜んでも良い筈だぞ。まあ良い、おまえは後で、悪魔の血をたっぷりと被る事になるだろうから、十分に注意しておけ」

えっ…し、市長…?

違う。いつも、Sunの人々に見せる温厚で柔和な表情と全然違う。残酷で冷血な表情。殺す事を生き甲斐とし、命の価値を考えもしない者の表情。

これが…素性か。

憎しみが湧く。仮面を被った市長に…そして、自分と來を引き離した悪魔に。

もう、信じられない。市長も…Sunも…自分の周りにある物全て…何もかも。

虚構に囲まれてしまった。

戦車がどこかに着地した。床のハッチが開く。

―今、信じられるのは自分のみ―

沙流は心を引き締め、階段に一歩踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ