§02.Discovery
今回はもともとのストーリー設定に合わせて原子力発電をモチーフにした題材で書きました。今、日本で大きな問題になっている原発のその後を勝手ながら想像し、こうあっては欲しくないという事を伝える為に想いを乗せました。国の不安定な対策が今後どうなるかは誰にも予測できませんし、否定的な予測もしたくありません。それでも逸早く復興が進めば幸いであると思います。人の力は強いんです。何日、何週間、何カ月、何年掛けてでもいい、地道な努力がやがて元の生活に戻れるようになる事を願って被災地からこの小説を書きました。
小説の内容上進展はありませんがぐだぐだな駄文には変わりありません。もっと文章力をつけたいと思います。
排気ガスの充満する街…
その中心部に止まる軽車両が一台。車内で深刻な話し合いをしているのは先刻、指令を受けて赴いた二人。
「前回来た時より酷いな…」
車内の装置に表示される数値を見ながら呟くトウヤにそれを覗き込んでいたケンスケも言葉を発する。
「確かに、軽く10倍はいってるだろうよ」
その装置は空気中に霧散している放射能の量を示していた。
「これじゃあ、棄てられた町の二の舞だ」
苦い顔でそう言えばケンスケも溜め息交じりにぽつりと零す。
「あぁ、非道いもんだ。“上”も何もしようとしないんだからな、あんなもん作って頂点にでも立ちたかったのかねぇ」
窓の向こうにうっすらと見える、今は起動していない廃棄された原発の残骸。その昔国によって作られたそれは、大規模な事故を相次いで起こし甚大な被害を及ぼした。イグホーストの西に位置するデセルトタウンでもここより以前に同じ事故があった為に今は無駄な建造物として野放しにされている。
「それでもデセルトタウンの汚染は綺麗に無くなったんだろう?自然の力で」
「何年もかかったけどな」
「人の力は強いんだ、ここもいつか綺麗になるさ」
努めてプラスの方へ考えるトウヤにケンスケも笑みが出る。
「トウヤは前向きだな。だからお前モテるんだよ」
「なんだよ、そんな事関係ないだろ。それとも、羨ましいのか?」
「別にィ」
にやけながら視線をそらす男にトウヤはパンチを一発お見舞いした。
その時。
《ピピピピピピピピ…》
目の前の機械からけたたましくブザー音が鳴り一気に緊迫した空気に変わる。
「見つかったか…」
僅かに強張った面持ちで機械と外の景色を交互に見やる。
「ケンスケ、機関銃の用意をしてくれ」
「わかった」
そして甲高い笛の音と共に銃撃音が響いてきた。
「左後方より敵影確認。本拠地の確定に向かう」
無線に伝えれば、返ってきた言葉は了解の二文字。あまりにも事務的すぎるこの仕事に正直嫌気が差す。
「おわっ、車に銃弾が届く距離まで来たぞ」
ケンスケの声に我に返ると、トウヤはアクセルを踏み込んだ。
「向かって来たって事はその反対側に“元”が居る訳だな」
不敵に笑えばハンドルを目一杯に切り車体の向きを反転させる。
「行くのか?」
「念の為に。確認ってやつ?」
ケンスケの問いかけに曖昧な疑問符を返す。
「まったく、トウヤは…」
「何だよ」
何でもないと言おうとしたケンスケの言葉を爆撃音が遮る。
「いよいよ激しくなってきたな。外の確認頼んだぞ」
「へーい」
車は銃弾が飛び交う中心目掛けて前進していった。銃を持ち威嚇攻撃をする者は皆一様に赤い頭巾を深く被り、口元まですっぽりと覆われている。下は白装束に身を包みそれが余計に存在感を見せている。車はこの攻撃の嵐の中を突き進む。飛んでくる弾を寸での所で勢いよくハンドルを回し、車体の側面を掠る程度でかわしていく。目立った外傷は見受けられず、損傷も少ない為彼の運転技能の高さを物語る。
「さっすが、特殊運転免許と操縦技術検定1級持ってるだけあるな」
ケンスケが感嘆の声を発すればトウヤも自慢げに笑みを浮かべる。
「まぁね。それよりも……何か見えるか?」
ミラーを確認しながら尋ねる彼にケンスケは徐に答えた。
「うーん、何かと言われれば…何かは見える。入り口みたいな感じかなぁ」
“入り口”というワードに反応したトウヤがケンスケの視線の先にあるものを見た。そこには“上”と似た様な作りのゲートがあった。通り過ぎるその一瞬のうちにトウヤは決定的な物を見た。ゲートの先に見える細い帯状の様なあちらこちらに張り巡らされたそれは上にあるターミナルロードとまるでそっくりだった。
「…地下にも“世界”がある…か…」
そっと呟いた声は隣に居るケンスケに届いた。
「世界?ここの住民か?」
「さぁな。でも武装隊を編成する必要があるな。地下に何があるのか確かめた上で人数を増やして別の入り口を探す」
そう答えたトウヤはしっかりとその先の計画を頭の中で組み立てていた。これから大きな仕事が入る事は目に見えていた。
「お宝発見ならぬ、情報発見ってか。ボーナス入るといいな」
ケンスケの嬉しそうな声にトウヤは苦笑した。
「ボーナスなんて一握り程度だろ」
そのまま車は銃撃を避けながらイグホーストを後にした。
一方、地下…最深部では聖NOVA'Sと大きく表示されたネオンの文字が怪しく光る。その塔の内部で、
「国総の連中がここのゲートを嗅ぎ付けたかと思われます。如何致しますか?」
例の赤い頭巾を深く被った一人が教壇の上にいる男に状況を伝える。
「中央ゲートを閉鎖しろ。あいつらが“アレ”の存在に気付く前に追い払え」
低くくぐもった声で指示を出すその人に下に居た男は一礼する。
「了解しました。カルゴット様」
カルゴットと呼ばれた男はにやりと口角を怪しげに釣り上げた。
免許も検定も考えて作りました。実際には存在しませんのでご了承ください。カルゴットも勝手に作りました。いずれそのネーミングの意図を話の中でお伝えします。ラテン語と英語を組み合わせた物ですので、ピンときたら嬉しいです。
来週はバイトとテストがかなり多く入っているので更新はできないかと思われます。そもそも、こんなよくわからない小説を読んで下さる方が居るのかどうか知りませんが…
アクセス数に少数ながらも数値変動があるという事はいらっしゃるのでしょう。そう思います。そう思いたいです。自分の中でこのお話は前回作った小説よりも長編にしようと考慮中ですので、御理解頂けたら幸いです。
それでは長文失礼しました。