§00.Prologue
CHAGE&ASKAのOn Your Markを見て作ってみようと思いました。映像だけのムービーでしたのでストーリー性は一応その映像に合わせるつもりですがそのほとんどがオリジナルです。それでも宜しければお読みください。
透き通るような碧い空に浮かぶ白い雲。吹き抜ける風は草や花や木々を優しく愛でる様に遥か彼方へとその調を送る。殺伐とした雑木林を抜けると眼前に広がる広大な草原と所々に朽ち掛けた有刺鉄線を支える木の杭が姿を見せる。その中心に聳え立つ赤茶けた“塔”は其処だけが別世界の様に映る。塔の周辺には一戸建ての家々が立ち並ぶ閑静な住宅街とは言い難い静かな町が存在する。人の姿は勿論、犬一匹見当たらない。小鳥の囀りさえも聴こえない“無”に近い町が。
人々はこの町を棄てられた町と呼ぶ。
その側を一台の車が走る。赤と黄色が交互に点滅する警告ランプを取り付けた警察車両。この国有数の国家警務総合管理組織(National Police Synthesis Organization)のパトロール車である。大きな車体は土埃を上げながら静かな町を走り抜ける。運転席に男が一人、助手席にこちらも男が座る。車内からは陽気な音楽が聴こえる。一人がリズムに乗りながら風船ガムを膨らましていると隣から声がかかる。
「おい、そろそろ運転替わらないか?彼是、10時間は運転しているぞ」
「10時間?もうそんなに経ったか。んじゃ交替だな、今ベルト外すからちょっと待ってろ」
よいしょ、と腰を浮かせベルトを外すと助手席から運転席へと移動してくる。それを見計らって運転席の男はハンドルを片手で器用に操作しながら助手席へと座る。そうして運転を替わった男は音楽をラジオに切り替える。
『・・・ぎのニュースです。聖NOVA'Sと名乗る組織から政府に脅迫状が送り付けられるという事件がありました。その内容もあまりに稚拙な為、政府は相手にする必要性はないとの見解です。今後このような声明文が来た際は国総に対応を任せる方針で・・・』
ラジオから流れる女性の声はあまりにも事務的で抑揚のないあっさりとしたものだった。運転をしていた男は膨らませていたガムを割るとそのニュースに反応を示した。
「聖NOVA'S?ずいぶんと幼稚なネーミングセンスだな」
「何?お前興味あるの?」
サイドミラーに映る運転席の男の顔はサングラスのせいか表情が読み取れない。ややあって返事が返って来る。
「いや、馬鹿馬鹿しいと思ってな」
はははと乾いた笑いを零す相方を助手席の男は呆れた表情で見ていた。
「お、やっとゲートが見えて来たぞ。トウヤ」
少し走った車は巨大な門の正面まで来ていた。トウヤと呼ばれた助手席の男は僅かに身を乗り出す。
「なんだ、案外近かったな。替わる必要なかったか?」
「そうだな。取り敢えず“上”行くか?」
「うーん、ケンスケに任せるよ」
そう言うとトウヤは腕を頭の後ろで組みながらもう一度座り直す。
「よっしゃ、ジジイに報告も兼ねて“上”に行きますか」
噛んでいたガムを窓からぷっと吐き出すとアクセルを踏み込んだ。
短かったですね。一応序章という事で、次回からはもう少しだけ長くなると思います。CHAGE&ASKAは私の好きな歌手グループの一つでもあります。ジェネレーションギャップがある年代ではと思う事もありますが、一応まだ未成年です。
それではOn Your Markをお読み頂き有り難うございました。次回辺りで登場人物の紹介をしたいと思います。