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君がいた

作者: るぅたん

ちょっと他のお話(ファンタジーでもないお話)を載せてみました。※長編としてファンタジーを載せてます。

ちなみに素人レベルなのでご容赦ください。





 指す時間は以前では夕暮れを示していたが、今では夜を示すようになっていた。

 季節風が頬を撫でる。思わず俺は身を縮め繋ぎあわせた手をギュッと握る。

 すると、彼女も示しあわせたように握り返してきた。どうやら彼女も肌寒さを感じていたようだ。

 今日も手を繋いで歩く。歩く道もいつもと同じオフィス街の味気無い道。いつもと少し違う点を挙げるとすれば日の傾きが早くなったお陰で景色が暗くなった程度だ。


「今日もその上司が私に文句つけてきたのよ。これぐらいでミスするな、とか言ってきたの。だいたいそこまでやれって指示してなかったくせにだよ。本当にムカつくよね」


 会話だっていつもと同じようにお互いのちょっとした話だ。

 そんないつもと変わらない帰り道。そんな中、やっぱり俺は笑みを浮かべる。


「ちょっとユウ君ちゃんと聞いてるの?」


 彼女は相槌を打たずに一人笑っていた俺にお怒りのようだ。ここは弁明しておこう。


「聞いてるよ。ただ綾香が可愛かったから見とれて笑っちゃってただけだよ」


 彼女は「あっそう」と一人呟いた。

 彼女は耳を真っ赤にしていたので、本当に興味なさそうに呟いたわけではなく照れ隠しで呟いたのだろう。


「本当に可愛いよな。俺は本当にそんな綾香が大好きだよ」


 赤くなった彼女が可愛すぎたので俺は抱き寄せて俺の気持ちを囁いた。

 囁きはフィルターをかけずに真っ直ぐに出てきた言葉だ。


「もう、人いるし恥ずかしいからやめてよ」


 赤らむ顔をよりいっそう赤くし、彼女はボソボソと呟く。彼女は「やめて」と言うが程なくして抵抗しないようになった。どうやら、甘えたい心が羞恥心に勝ったようだ。

 彼女は暖かく可愛かった。抱くと本当にそれがわかる。今、なんて「えへへ」と呟いているようだしすごく可愛すぎる。


「そういえば、明日から休みだよね。ユウ君は何か用事あるの?」

「……うーん、用事あるよ」


 彼女は驚きと寂しさを表情に出して「そうなんだ」と呟いた。呟いた声は本当に寂しそうだった。


「そうそう、ゴメンね。俺は用事あるんだ。綾香と一緒にいるって用事がね」


 彼女は一瞬固まった後に、溢れんばかりの笑みを浮かべた。さらに笑みを浮かべた後に、口を尖らせて「ユウ君のばーか」なんて言っている。

 そんな彼女が本当に俺は好きだった。だから、彼女を苛めるのはやめられない。そんな俺はドSだろうな、なんてことは考えず苛めるのを続けよう。


「ユウ君、そろそろ帰ろうよ」

「うん、そだね」


 抱き寄せた彼女のぬくもりを離したくはなかったが、こうしていては帰れない。なので、彼女の横に立ち再び手を繋げていつものように一緒に歩き始める。

 いつもから変わってしまうものがあったとしても、決して変えたくない――いや、変わらないこともある。そんなことを考え、今日も彼女の手を握る。





「ユウ君が一番好きだよ」


「俺も綾香が一番好きだよ」





 これから先、いつだって俺はそんな会話を望むだろう。

 なぜなら、俺は彼女をずっと愛しこの手を握っているのだから。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 一人で並木道を歩く。

 この並木道は昔から何一つ変わっていない。

 だけど、景色は変わってしまった。

 何が違うと問われれば具体的には言えないけれど、変わってしまったのは確かだ。




 何で?


 それは知ってるけど解らない。


 それは知ってるけど解りたくない。




 頭の中がグルグルと廻ってよく解らなくなる。吐き気すら覚える。

 あまりにもしんどいため、立ち往生する。


「植田さん?」


 名前を後ろから呼ばれたため、後ろに振り返る。


「あぁ、中島さん。おはようございます。お久しぶりです」


 振り返った先には、20代後半の女性が立っていた。

 彼女と似た感じで160㎝程度の細身だ。服装は彼女とは違い派手目な服装で赤のセーターに黒のパンツだ。


「お久しぶりです。というよりか植田さん、もう今の時間は『おはよう』じゃないですよ。大分、寝惚けてますね」


 中島さんの言葉を聞いて時計を見る。確かに正午をまわっている。

 家を出た時間は出勤中の会社員達が沢山いた時間だったはずだったのに。


「あぁ、確かに寝惚けているかもしれないです」


 悲痛な顔にならないように気をつけて苦笑混じりに返事をしておく。


「昔からそうでしたよね。確か昔は朝からずっと寝ぼけ眼のせいで上司に怒られたりしてましたよね」


 中島さんは軽快に笑った。

 軽快に笑ったのはいつだろう。もうずっと心から笑っていないように思える。

 やけに黙っている俺を見て中島さんが顔に疑問を浮かべていた。どうやら間があいてしまったようだ。


「ハハハ、恥ずかしながら朝は弱くて」


 俺は顔に笑顔を貼り付けて言った。

 うまく笑えたようで中島さんも笑ってくれた。

 俺は朝がとんでもなく弱かった。

 だからいつも彼女が早く起きてと叱りながら起こしてくれた。


「――うしたんですか?」


 考えに耽ってしまい、中島さんの声を聞き漏らす。


「すいません。今なんて言われました?」


 素直に謝って内容を確認する。


「まだ寝惚けてますね」


 中島さんは嘆息した。俺もそれに合わせて笑顔を貼り付けた。


「仕事はどうしたんですか? ってさっきは聞いたんですよ」


 今日は平日だから確かにそこは不信に思うだろう。

 中島さんは心配した様子でこちらを窺っている。


「今日はちょっと仕事に空きが出来たので休みなんです」


 誰かに聞かれたときにと予め用意してあった言葉を口にした。

 中島さんは俺の言ったことで少し驚いた顔をする。そして、素直な疑問を口にする。


「あの職場で暇が出来たりするんですか? とても私には考えられないのだけど」


 中島さんは同じ職場にいたこともあり、俺の言葉に反応する。


「たまたま他の部署で遅延が重なったから、内の部署に暇が出来て休みが取れたんです」


 また用意しておいた言葉を口にした。


「それなら、確かにあり得なくないですね。ちなみに私は主婦だからこうやっていても不思議じゃないですからね。そうそう、それから――」


 とりあえず中島さんは納得して自分のことを話し出した。

 俺はどうやら限界がきたようだ。右から左に聞き流されていく。

 俺はうわべだけで返事する。何とか会話は成り立っているようで中島さんは笑顔だ。


「――ゃぁ、帰りますね」


 一通り話して満足したようで中島さんは笑顔で手をふって帰っていった。

 俺も笑顔を貼り付けて手をふった。




 先ほどの会話は何だったんだろうか?

 何で笑顔を貼り付けて話していたのだろうか?

 何でここにいるんだろうか?

 解らない。

 解らない。

 解らない。




 しばらく、一人で茫然と佇んだ後に自宅へ帰ってきた。


「ただいま」


 一人の低い声がこだまする。返事はない。彼女の返事はない。

 玄関でまた佇んでしまう。どうしても頭がいっぱいになってしまって解らなくなる。いや、解りたくない。

 解りたくない現実から遠ざかろうとする。意識は遠ざかる。

 ――しばらくした後に意識は現実へと帰ってきた。知りたくもない現実に。

 玄関から動かないわけもいけないのでリビングまで移動する。

 リビングにつくとリビングに置いてあるソファーに腰かける。

 いつものようにコンポを点けた。

 いつものように横を見る。

 でも、そこにいつもは存在しなかった。解らなかった。解りたくもない。

 コンポからいつものロックの曲が耳に届く。でも、俺には届かない。

 一人音楽を聞く。

 音はいつもと変わらない。だけど、音は変わってしまった。

 何が違うと聞かれれば具体的には言えないけど変わってしまったのは確かだ。




 何で?


 それは知ってるけど解らない。


 それは知ってるけど解りたくない。




 幾重もの騒がしい音が鳴り響いた。その音を一つづつ止めるために身体を起こそうとするが起きれない。

 いつもなら彼女に怒られて起こされているところだ。

 騒がしい音で何とか意識を繋げながら必死に身体を起こす。何とか起こした身体を動かして音を止めていく。

 音を止めて静かになったところで部屋に朝日が差し込んできていることに気が付く。どうやら、また今日が来たようだ。

 そして、俺はまたノロノロと身体を動かして今日に身を投じていく。







 今日も世界は流転する。俺を残したままに。彼女を無くしたままに。











これを長編にするお話を考えてもいるんですが、ちょっとファンタジー系のお話を書き終わってから、書いてみようかなぁとも考えています。正直に言って恋愛話は好きなので色々と書きたいことはあるのですが、まず一つの作品をがんばって書いてみます。(知らんがなって感じですね

後、これの反響が良かったらちょっと別のお話も載せようかな?

と考えております。

(えッ? 反響がいいのとかあり得ない? とかは考えてついてますが、あまりたたかないで下さい)


以上、駄文でした。

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