表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/21

第十八話:知の高速道路(ハイウェイ) ~無償高等教育と江戸の人的資本~

 

「……以蔵さん、斬る必要はありません。宗兵衛さんの教え、**『紛争解決ディスピュート・リゾリューション』**の基本は、相手を物理的に排除することではなく、相手の『不利益ロス』を証明することにありますから」

  龍馬が不敵に笑い、懐から一枚の書状を取り出した。それは、筆頭株主である小栗上野介が、極秘裏に署名していた「学術特区指定書」であった。

 3. 契約コンプライアンスの盾

  門前で狼狽うろたえる役人たちの前に、宗兵衛が脂汗を流しながら、だが一歩も引かずに進み出た。その手には、震えながらも固く握られた算盤がある。

 「お役人様、落ち着いてください。このアカデミーは、幕府の資産価値を高めるための**『R&D(研究開発部門)』です。ここで育った人材が、将来の幕府の徴税システムを効率化し、黒船との貿易黒字を支える。彼らを排除することは、幕府自らの財産を『損切り』**するに等しい行為ですよ」

  宗兵衛の震える声には、数字に裏打ちされた圧倒的な説得力があった。

「無知な民は統治しやすいかもしれませんが、無知な国は滅びます。……私は、この国を『潰さない』ために、知能という名の**『強固なインフラ』**を敷いているのです!」

  役人たちは、宗兵衛の背後に立つ小栗の権威と、龍馬・以蔵の圧倒的な「抑止力」に圧され、捨て台詞を残して撤退していった。

 4. 以蔵の「学習結果」

  騒動が収まった後、以蔵は静かに刀を収め、宗兵衛にボソリと呟いた。

「……旦那。さっきの動き……無駄がなかった。……これが、**『こうりつか(効率化)』か」

 以蔵は、宗兵衛から教わった人体解剖図を思い浮かべながら、斬らずに制圧する「最短動線」の正解を、その脳内で『アップデート』**していた。

 5. 結末:江戸の「知」が加速する

  その夜。学舎の屋上から江戸の街を見下ろす宗兵衛の横顔は、もはや一商人のものではなかった。

 「坂本さん。これで情報の速度は、馬や船を越えました。文字を読み、数字を解する数千人の脳が、一つの**『分散型ネットワーク』**として機能し始めた。……もう、誰にもこの流れは止められません」

 「……宗兵衛。おまんは本当に、恐ろしい男ぜよ。……だが、その算盤が弾き出す未来、わしも一緒に**『こみっと』**させてほしいがじゃ!」

  龍馬の豪快な笑い声が響く中、宗兵衛は満足げに算盤を置いた。

 江戸のOS、その最深部である「国民の脳」の書き換えは成功した。しかし、あまりに急速な「知の民主化」は、既存の「リーガル」との致命的なミスマッチを引き起こそうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ