井戸のなかのカエル
ほんの少し、拙作のカエルの王国を彷彿としてしまいます
むかしむかしのお話です。
カエルのトロンボは、ふかい井戸のなかに住んでいました。
井戸はけっこう大きくて、ときどき虫がひらひら落ちてくるので、食べものにはあまり困りません。
でも、ひとりでくらすにはぎりぎりの毎日。
ときどきほかのカエルが落ちてくると、トロンボは大きな口をあけて、みんな食べてしまいました。
そんなトロンボは、いつも井戸の底から空を見上げていました。
すると、ときどき空にキラキラ光るものが見えるのです。
「なんだろう? あれはなんだろう?」
トロンボはふしぎに思って、井戸の壁をのぼろうとしました。
けれども壁にはぬるぬるしたコケがいっぱい。
どんなにがんばってものぼりきることはできません。
でもトロンボはあきらめません。
のぼる、のぼる、のぼる……
でも、つるり! ボッチャ~~ン!
もう一度、のぼる、のぼる、のぼる……
でも、やっぱりツルリ! ボッチャ~~ン!
トロンボはくやしくて、涙をいっぱい流しました。
「涙で井戸がいっぱいになれば、外に出られるかもしれない」
そう思って泣きましたが、水はふえることはありません。
あきらめたトロンボ、それからまた空を見上げてました。
ある日、井戸の上からふしぎなものが落ちてきました。
それは風船でした。
ふわり、ふわりと落ちてくる風船。
トロンボはつかまえようとしましたが、風でふわりと逃げてしまいます。
けれども何度も何度もがんばって、とうとう風船をつかまえました。
「ふわふわで、ぽむぽむで、ぱんぱん……なんだこれは?」
ふしぎに思って強くつかんだとき、トロンボの爪があたってしまいました。
パァ~~ン!
風船はわれて、しぼんだ皮だけが残りました。
それを見たトロンボは、しょんぼりしょぼしょぼになってしまいました。
その夜、外からカエルたちの鳴き声が聞こえてきました。
「げろげろげろ、げろげろげろ」
トロンボも負けじと鳴きました。
井戸の中で声がひびいて、とても大きな音になりました。
そのときトロンボは、鳴くためにふくらんだ大きなお腹を見ました。
「これって風船みたいだ!」
トロンボは思いつきました。
「もっともっと空気を入れたら、風船みたいに飛べるかもしれない!」
ぐいぐいぐいぐい空気を飲み込みます。
どんどんお腹がふくらんで、体が軽くなっていきます。
ふわり、ふわり……
ついにトロンボは井戸の外に出ることができました。
広い広い外の世界。
甘くてすがすがしい空気。
「井戸の外ってすばらしい!」
トロンボはそう思いました。
けれども、空のキラキラはもっともっと高いところにありました。
「負けないぞ!」
トロンボはさらに空気をためこみ、どんどん高く飛んでいきました。
でも、どんなことにも終わりがあるのです。
たくさん空気を入れたお腹はもうこれ以上ふくらまず……
パチン!
トロンボは風船のようにはじけてしまいました。
けれどもその瞬間、トロンボの目の前できらりと星が光りました。
「そうか、星ってだれかがはじけて光っているんだ……」
トロンボはお星様になったのでした。
何だかちょっとトロンボが可哀相
星になれて幸せなのかなあ?




