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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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76話~魔物=素材=お金~

「ようこそいらっしゃいました、クロエ・バーガンディ様。ラッセル領の領主をしている、アルバート・ラッセルです。ボーウェンギルド長も、久しぶりだな」


 担当官に連れて来られた豪華な部屋で、短い黒髪の男性が私達を出迎えた。

 私だけじゃなくて、ちゃんとボーウェンさんにも挨拶するところから、比較的マトモな人であると思う。

 少なくとも、担当官さん並にヤバい人で無いのは確かだ。


 その担当官さんは、私達を部屋へ通すと同時に姿が見えなくなった。

 とても早い逃げ足。きっと、私達が領主様に告げ口すると思ったのね。


 ボーウェンさんが1歩前に出て、領主様と握手を交わす。


「お久しぶりです、ラッセル伯爵。今日は色々と、ご報告したい事がございます」

「まぁ、先ずは掛けてくれ。友よ」


 2人は随分と親しそうだ。領主様に背中を押されて、ボーウェンさんはソファーに腰掛ける。私も、その隣に座らせてもらう。

 領主様が私達の前に座って、小さく頭を傾ける。


「先ずは謝罪させて欲しい。うちの職員が失礼をしたね」

「伯爵。こう言ってはなんですが、職員の質が落ちましたな。何か原因でも?」

「これと言って思いつくものは何もない。だが、何もない事こそが人を堕落させているのかもしれん。日々同じような仕事に、同じような顔ぶれ。必然的に職員の意識も落ちてくる。ただでさえ、親のコネで働いているケースも増えてきている。決められた道を歩む者はどうも、虚栄心が強い傾向にある」


 ええっと、つまり…仕事にやりがいを感じていないから、あの担当官みたいな人が増えているって事?見栄を張りたいだけじゃなくて、欲も突っ張っていたように見えたけど?

 私はさっきの担当官に怒りを覚えていた。でもそれは、私だけじゃなかったみたい。ボーウェンさんが厳しい顔を領主様に向ける。


「幾ら二世の貴族だからとはいえ、あれでは市政が回らぬのでは?」

「君の言う通りだ、ボーウェン。あの者は、遠くの出張所へ派遣することとしよう」


 事実上の左遷ね。その方が、この街の為だわ。

 内心で喜んでいると、領主様が私に微笑みかけてくる。


「しかし、今回はバーガンディ様に助けられました。あのような者達は、目上の者に対してだけ殊勝な態度を見せてきます。その為、なかなか本性を見ることが出来ないのです」

「伯爵は忙しいご身分ですからな。官庁の中まで目が通らぬのは仕方ない事でしょう」

「それはそうだが…またバーガンディ様に来ていただきたいくらいですよ」


 2人の大人が私の方を見ている。

 なに?またあんな大立ち回りをしてくれって言っているの?勘弁してよ…。

 私が弱っていると、目の前にボイドが開いて羊皮紙が広げられる。そこには〈抜き打ち検査 変装〉と書かれていた。

 ええっと…そう言う事ね?


「でしたら、領主様が信頼する方に変装してもらって、抜き打ちでチェックしたらいかがです?今回私がしたみたいに、冒険者の恰好なんかをしたら効果的だと思いますわ」

「ふむ。なるほど。定期的な抜き打ち検査ですか。確かにそれなら、炙り出しもでき職員達に危機感も生まれるかもしれん…名案ですな、バーガンディ様」


 なんか、褒められちゃったわ。

 私は恥ずかしくなって、「それより」と話を進める。


「今日は領主様にお願いがあって、お目通りをさせて頂きました。ボアの襲撃で被害が出たホルホーン村に、こちらを寄付したく思います」

「ほぉ…これはまた…」


 寄付金を机の上に広げると、領主様は目を開いて驚きを零す。

 私はちょっと不安になり、すこし早口になりながら弁明した。


「これは私個人の資産です。この件に関しては、バーガンディ家は一切関わっていません。ですので…その…政治的な意味はございませんわ」

「心得ております、バーガンディ様。貴女様の清きお心に、感銘を受けていたのでございます」


 領主様は金貨を手に持ち、その重みを確かめるように手を振るった。


「大変助かります、バーガンディ様。かの村は相当な被害を出したと報告を受けておりましたので、何かしらの援助をせねばと頭を悩ませていたところでございます。何かしらの運営費用を削らねばと考えておりましたが…これだけの寄付金があれば、十分に冬を乗り越えられるでしょう」

「それを聞いて安心しましたわ。あっ、寄付の出所は、ご内密に願います」

「承知致しました」


 領主様は金貨を丁寧に包んで、懐に仕舞い込む。

 それを見た後、ボーウェンさんが重い息を吐く。


「伯爵、この騒動はホルホーン村に限ったことではありません。ラッセルの街周辺で魔物の活動が活発になっているのです。北国の魔物であるコリが観測されたり、巨大ボアが出現したのもその一端。早急に、警備体制の強化をお願いしたい」

「それは衛兵部隊長達からも報告が上がっている。だが、これ以上領兵を動かすことは出来ない。街の警備もあるからな。今の兵士で巡回をするしかないのだ」

「でしたら、他領からの援軍を要請しては如何ですか?もしくは王国軍を」

「国軍は手続きが厄介で、直ぐには動かせん。理由も、魔物討伐というだけではごく少数しか派遣されんだろう。同じく、近隣諸領も難しい。ラッセルと同じで、魔物の活性化が各地で起きているみたいだからな」


 領主様が顔を伏せると、ボーウェンさんも難しい顔で考え込む。


「妙ですな。局所的ではなく、広範囲で魔物が活性化しているとは。まるで、魔王が現れた時に似ております」


 えっ?魔王?

 私は驚いて、ボーウェンさんの顔を見上げる。彼の目はとても鋭くて、それを受けた領主様も重々しく頷いた。


「それと関係があるかは分からんが、各地で魔王の遺物が見つかっていると聞く。殆どは効力を失った欠陥品と聞くが、中にはまだ力を残した遺物もあるやもしれん。それが、今回の騒動を引き起こしているとも考えられる」

「可能性はありますな。ラッセルの街中でも1つ、強力な異物が見つかったと聞きますので」


 ええっ!そうなの?

 私は驚いて、2人の顔を交互に見比べてしまった。

 魔王とか、魔王の遺物とか、なんだか凄く怖い言葉が飛び交っている。私にはどうすることも出来ないことだって分かっているけど、それでドン・ボアみたいな魔物が現れているなら、何とかしたいって思ってしまう。


「あの、領主様」

「うん?なんでしょうか?バーガンディ様」

「近隣の領がダメなら、遠方から援軍を要請するのはダメなのでしょうか?」

「遠方ですか…確かにそこまで目を向ければ、余力のある地域も見えて来ましょう。ですが、遠くから呼び寄せればそれだけ費用が嵩みます。冬の備えで財政も圧迫されている現状、それだけの出費を賄うことはかなり苦しいのが実情です」


 そっか。そこでお金の問題になるのね。案外、あの担当官の言ってたことも当たっていたってことかぁ。

 私は残念に思って、視線を落とす。すると、そこにブーちゃんの手がボイドから突き出していた。

 その指が指し示す先は…机の上に置かれたままの金貨。

 

 う~ん…確かにいっぱい稼げたけど、軍隊を呼び寄せるには全然足りないわ。軍隊って、兵士以外にもいっぱい付き人が必要なものなの。食料を運ぶ人とか、馬を世話する人とか、剣を整える鍛冶師とかも必要。そういう人達の旅費だけでも、いっぱいお金が掛かるってお父様が嘆いていたわ。


【ブフ】


 ブーちゃんの手がボイドに引っ込んだ。と、思ったら、また直ぐに出て来て、羊皮紙をピラピラさせる。

 ええっと…なになに?〈魔物=素材=お金←報酬にする〉


「ええっと…領主様。援軍の費用なんですけど、討伐した魔物の素材をそのまま渡すと言うのはどうでしょう?」

「魔物の素材を…ですか?」

「かっか!それは面白い!」


 領主様は首を傾げたけど、ボーウェンさんが笑い声を上げた。


「名案ですぞ、伯爵。討伐した魔物の素材をその場で買い取り、それを報酬として支払うとするのです。普段は多くの関税がかかりますが、それを免除すれば」

「ふむ…だがそれでは、多くの魔物を狩らねば足が出てしま…いや、旅費だけはこちらで受け持つとしたら良いのか。それであれば、遠方の援軍でも何とか呼べる…」

「それを冒険者にも適用してくださるのなら、地方に居る高ランク冒険者も呼び寄せることが出来るやもしれませんぞ?討伐数に応じて報酬を払うとすれば、猶更。宜しければ、私が各ギルドに通達を出しましょう」

「おぉ!そうしてくれると助かるぞ、ボーウェン。援軍を頼むよりも、費用を大きく抑えることが出来る。抑えた分を補助金に回したら、より高ランク冒険者を呼び寄せやすくなるのではないか?」

「名案ですな、伯爵」

「はっはっは!何を言っている。この案を出したのはバーガンディ様ではないか」


 熱く語っていた男達の視線が、私の方に向く。

 ええっと…なんでしょう?


「素晴らしいご助言をありがとうございます、クロエ様。これで大きな悩みの種が一つ、解消されそうです」

「旅費を運営費から出すとは言え、その金は領内に落ちる。領内の経済も活性化する素晴らしい名案であったな、クロア」

「おぉ!そうか。そこまでお考えでのご提案だったとは…。流石は、バーガンディ家のご令嬢ですな、クロエ様」


 ええっ!?ちょっと待って!


「私じゃありませんわ!全部、私のファミリアが考えたことですの!」

「はっはっは!これはなんと、ユーモアのセンスもあるのですな、クロエ様は」

「かっか!愉快、痛快。奇怪なことよ」

【ブフフフ】


 ちょっと!なんでブーちゃんまで笑っているのよ!もうっ!

 人の気も知らないで笑う男3人に、私はやるせない気持ちになるのだった。

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グランド王国の識字率はわかりませんが、ロゼリアで軽んじられている平民学生ですら知力・経済力で上澄み 層である事を思えば、コネによる家同士の貸し借りと最低限文書の読み書きが可能な程度の実務能力を有する …
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