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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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75話~申し遅れました。私は…~

何時もご愛読いただき、誠にありがとうございます。

え~…予約投稿をミスりまして、18時きっかりに投稿できませんでした。

18分間お待ちいただいた方、申し訳ございません。


「20時に設定していたな」


何故でしょうね?

 ホルホーン村へ寄付をしたいと冒険者ギルドで相談したら、何故かギルド長と一緒に領主のところへ向かう事となってしまった。

 長い脚で闊歩するボーウェンさんに、私は必死で付いて行きながら彼を見上げる。


「あの、ボーウェンさんさん。寄付するだけなら、私一人でも大丈夫ですわよ?態々ギルド長に引率してもらうのも気が引けて…」


 ギルドの長ともなれば、色々とお忙しいだろう。実際、ギルド長室にお邪魔した時も、ボーウェンさんは書類のタワーに押しつぶされそうになっていた。

 そう思って聞いたのだが、彼は私を見降ろして小さく首を振った。


「なに、儂も領主様に用事があったので、ついでに同行しているまでよ」


 あっ、なんだ。私の為だけじゃなかったのね。


「最近は忙しくて、定期報告も忘れていた。丁度良い機会だからな。領主様には色々と、我々の想いを聞いてもらわねばなるまい」


 なんか、村に寄付するよりも重い話をしそうね。

 巻き込まれて大変なことにならないようにしようと、私は気持ちを固める。

 


 私達は貴族街に入り、学園通りを抜けて、街の中心部に構えられている行政区の中へと入っていく。貴族街とは異なり、ここら辺は守りが堅い建物が増えてくる。その中でも特に立派な建物が、この街のお役人達が詰めている領主館であった。

 その入り口で、ボーウェンさんは衛兵達に入場の許可を申請する。

 すると、直ぐに通された。

 ギルド長が定期報告をすると言うのは、本当だったみたい。


「担当官のバーナードだ。今日はどのような用件だ?」


 そうして通されたのは、領主館の端っこにある小さな部屋。そこには簡単な作りの机と椅子。そして、その椅子に悲鳴を上げさせているのは、机に肘をついて面倒くさそうにこちらを見上げる太った男性。

 そんな男性の横柄な態度に、ボーウェンさんは何も言わずに話し始める。


「私は冒険者ギルド長のボーウェンです。こちらは、会員のクロア。今日はギルドの定期報告と、幾つか具申を申し立てに参りました」

「ほぉ、どんな?」

「内容が込み入っていますので、直接ご領主様のお耳に入れた方が良いかと存じます」

「市井のクレームは私が担当となっている。お忙しい領主様に、冒険者風情の話を聞いている暇はない」


 冒険者に対して、随分なことを言う担当官。私達だけを立たせているのも、もしかしたらワザとなのかもしれない。自分は偉いのだと言うのを、主張したいみたいに。

 そんな担当官の態度に、ボーウェンさんは特に反論しない。しないけど、ちらっと覗いた彼の瞳は、赤く怪し気に輝いていた。

 …なんだか、ハイドの森で会った冒険者のヘルさんを思い出しちゃうわ。


「では、お話させて頂きます。ラッセル周辺の魔物の動向について、最近は随分と活発になってきております。狂暴な個体が村のすぐ近くに出現したり、遥か北の魔物が出没する案件が増えております」

「それがどうした?」


 取り付く島もない担当官に、流石のボーウェンさんも一瞬言葉を失う。でも、諦めずに食らいつく。


「魔物の脅威が増していると申し上げている。衛兵を増やし、領内の警備体制を強化する必要があるとは思いませんかな?」

「既にしている。冒険者風情が、いちいち行政にまで口出しをするな」

「その施策を以てしても、魔物の脅威は一向に収まる気配を見せず、冒険者の手も回らぬからこうして具申しておるのです。領兵で事足らずと言うのであれば、他領から、もしくは王国軍に助成を乞うべきでは…」

「えぇい!黙れ!」


 担当官が拳を机に叩き付ける。その様子は、なんだか駄々をこねる子供のように私には見えた。


「好き勝手なことを言いやがって。他領?王国軍?そんな金のかかること、出来る訳がないだろ!ラッセルの街を運営するのに、どれだけの金が必要だと思ってる?木っ端な町や村に回す余裕など、何処にも無いのだ!」

「その町や村の者達による労働が、街の運営資金を賄っているのだと…」

「黙れと言っている!」


 ボーウェンさんの言葉を遮って、担当官は完全に聞く耳を殴り捨てた。

 以前までの私なら、こういう男性の大声に委縮してしまったと思う。でも今は、目の前の人が可哀そうな人間だと思う気持ちの方が強かった。

 なんでだろう?


「こういう時の為に、お前ら冒険者ギルドに補助金を出してやっているんだ。魔物が増えているなら、お前らが努力して狩り尽くせば収まる話。お前らも小銭を稼げて嬉しかろう?それくらいの働きを見せて初めて、街に住まわせてやっている我々への恩返しになるとは思わないのか?」


 あれ?もしかしてこの人って、相当役職の高い職員さんなのかしら?じゃないと、こんな高慢な発言をしないと思うし。

 私は担当官の制服に、何か特別な勲章か家紋が付いてないかと探し始める。

 そうしていると、ボーウェンさんの手が私を示した。


「承知しました。では、次の案件に移ります。先日、ホルホーンの村に大量のボアが出現し、村の畑を食い荒らしました。それで…」

「だから、そう言うのはお前らの仕事だろうが!冒険者で手が足りないなら、ギルド長のお前が直接出向いて解決すりゃいいだろ!」

「それには及ばず、優秀な冒険者の手で依頼は完遂しております」


 担当官の暴言を、ボーウェンさんはするりと躱す。


「しかし、村は大きな被害を被り、それを見た冒険者が、是非とも村に寄付をしたいと立ち上がったのです」

「ほぉ、ほぉ」


 顔を真っ赤にしていた担当官が、急に笑みを浮かべた。そして、こちらに嫌らしい目を向けてくる。


「なかなか殊勝な心掛けではないか。最初からそういう態度で来ていれば、私もここまで怒らずに済んだのだ。して、幾ら持ってきたんだ?うん?あっ、いや、幾らでも構わん。そうして少しでも私を…じゃなかった…街の為を思う心が大事なのだ。その心を、担当官であるこの私がしっかりと預かってやろう。さぁ、ほら、遠慮なく出してみなさい」


 担当官は手をクイクイッと動かして、早く寄越せと催促する。その態度は、全く信用できるものでは無い。絶対に、着服とかするタイプの人間だ。

 パーティーでお会いする人の中にも、こういうタイプの人が居るから何となく分かる。

そう思ったら、寄付金を入れていたカバンの取っ手を、強く握ってしまった。

 それを、担当官は見逃さない。


「おぉ、そのカバンにあるのか。おい、小娘。早くこっちに寄越せ」


 担当官の脂ぎった手がこちらを向いたので、自然と一歩後退してしまった。

 それを見て、担当官の顔が再び赤くなる。


「おい!なんで逃げようとしてる!俺は男爵様だぞ?薄汚い小娘が、お貴族に逆らえばどうなるか、この場で教えてやろうか!」


 そう言って、私の方に右手を突き出してくる担当官。

 それに、私も手を突き出す。素早くプロテクションの魔法を唱えて、大きなタワーシールドを空中に構えた。

 その盾を見て、担当官が顔色を変える。


「なっ…なんで冒険者風情が、魔法を使える?まさかお前、魔法学校の生徒か?」

「ええ、そうですわ」


 私が大きく頷くと、担当官は顔を歪ませる。脅しで突き出していた手を引っ込めて、代わりに睨みつけてくる。


「どこの生徒かは知らんが…俺の指示に従わないのなら、学校に言って退学にしてやるぞ?それでも良いのか?うん?」

「あら、そんな権限が貴方にございますの?たかが男爵風情の貴方に」


 今までの横柄な態度に、私はちょっとイラついていた。だから少し強めに返してしまった。

 すると、担当官の目が細くなる。私の内面を見透かそうとするように、私を見詰めてくる。


「誰なんだ?君は」

「申し遅れました。私は…」


 私は被っていたボロのローブをボイドに仕舞い、カーテシーを行いながら朗らかに微笑みかける。


「バーガンディ家当主、ジョルジュ・バーガンディが娘、クロエ・バーガンディでございます。以後お見知りおきを」

「ばっ!バーガン…侯爵…様」


 担当官が固まった。目を大きく見開いて、鯉の様に口をパクパクと動かしている。

 かと思ったら、急に立ち上がって、ヘコヘコと変なお辞儀をしながら私の方へと歩いて来た。


「これは、これは。まさか侯爵令嬢様とはつゆ知らず…私としたことが、とんだ粗相をお見せしてしまい…」


 必死になって頭を下げる担当官は、手の皮が剝けてしまうのでは?と心配になるほど両手を擦り、気持ち悪い笑みをこちらに向けて来た。


「いやはや。お人が悪いですぞ、バーガンディ様。このようなお戯れをなさるなど、私のような小心者では心臓が飛び出してしまいますよ。へっへっへ…。本当に、今日は偶々、偶々仕事に忙殺されていたところでございまして、それで少々荒い口調になってしまっただけなのでございます。ええ、ええ。普段の私と言いましたら、それはもう領主様からもお褒め頂くほどに優秀で勤勉な勤務…」

「その領主様にお会いしたかったのですが、今はお忙しいのでしたわね?」


 私が問いかけると、担当官はサンダーレイの魔法でも浴びたようにビクンッ!と体を跳ね上げて、「とんでもございません!」と言って小部屋のドアを開けに走った。


「どうぞこちらに、バーガンディ様。領主様のお部屋まで、私めがご案内させて頂きます!」


 直立不動で招く担当官に従って、私達は小部屋を出る。

 その時、ボーウェンさんがこっそりと私に耳打ちした。


「済まんな、クロエ嬢」

「えっ?」


 なんのこと?

 聞き返そうとボーウェンさんを見上げたけれど、既に彼はスタスタと歩く担当官の背中に追従していた。

 私も慌てて、2人の後ろに付いて行くのだった。

「謀りよったな、ボーウェン」


やはり、そう言う事でしたか。

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― 新着の感想 ―
とんでもないド悪人!…というよりは、クロエ嬢自身が侯爵家をやや安めに見ている感じもあるし、平民への 窓口になるような下っ端?城詰め役人は、下への当たりが強いなんちゃって貴族になりがちなのだろうか… 下…
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