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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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71話~おいおい、勘弁してくれよ~

 召喚魔術のテストで、先生は更に難易度の高いテストを受けないかと誘ってきた。

 なんでも、次の時間に行われる上級生のテストらしい。その分テストの点数は加点してくれると言うことだったので、私は受ける事にした。

 

 すると、先生はボイドから奇妙な器具を大量に取り出し、杖を一振してそれらを並べ始めた。

 ポールやら平均台やらの器具が、広かった広場に次々と設置されていく。


「先生。これは?」

「ああ。こいつはファミリア競技の1つ、サモン・アジリティだ」


 サモン・アジリティ。多種多彩な障害物や課題が用意されたフィールドを、召喚者とファミリアが力を合わせてクリアしていく競技である。課題に挑むのは基本的にファミリアであり、術者は指示を出したりファミリアが競技に集中できるようにサポートするのがメインとなる。その為、この競技中の術者は導く者(ハンドラー)と呼ばれるらしい。


「ハンドラーは、障害物や己のファミリアに対しての物理的、魔法的な直接干渉は禁止とされている。だが、光や音で誘導したり、ファミリアがあまりに掛けなはれた行為をした場合は拘束魔法などで軌道修正を図ることも許されている。って、口で言っても分からんだろう。今から私が手本を見せてやる」


 そう言うと、先生はガルムちゃんを再召喚する。そして、障害物に向って一緒に走り出した。


「行け!ガルム!」

【ガゥ!】

「上がれ!駆け抜けろ!」

【ワウッ!】

「止まれ!こちらから進め!」

【ウゥッ!】


 ガルムちゃんは先生の指示に従って、次々と障害物を乗り越えていく。ポールがいっぱい立っている合間を潜り抜け、橋の上を軽やかに駆け抜けて、高い柵を見事に飛び越えた。

 そして、走り終えたガルムちゃんは息を切らしながら先生の横に戻り、そんな彼の頭を先生は撫でながら私の方を見る。


「こんな感じだ。本来なら、ギャンブラーやスヌーカーなどの各競技によって点数や動き方が異なっていたり、ファミリアの種族によって様々な妨害魔法を掛けるものなんだが、今回それらは無しだ。オーソドックスなコースを、取り合えず1周できれば評価対象とする」

「センセー!ポールや柵に付いている色は何ですかぁー?」


 私と一緒に見ていたエリカさんが質問すると、先生は「あぁ~、まぁ、一応説明しとくかぁ」と頭を掻く。

 

「こいつは通過した位置で得点が決まる。白は1点、黄色は2点、赤は3点とな。本来はこいつの点数も加味して優劣をつけるのだが…まぁ、最初はあまり気にするな。自由にやってみてくれ」


 と言う事で、私とブーちゃんはスタート地点に並ぶ。一応、ブーちゃんにコースの説明をしたけれど、一緒に見ていたから必要は無かったかもしれない。


「「「クロエさま~!がんばれ~!」」」


 柵の向こうではCクラスのみんなが手を振っている。自分達の試験が終わっても、私を応援するために殆どの人が残ってくれていた。

 次の魔法学の準備をしたいだろうに、優しい人達だ。


「そろそろ始めるぞ、バーガンディ嬢。準備は良いか?」

【ブフ】

「準備OKです!」

「よぅし。AGスタートだ!」


 先生の掛け声と共に、ブーちゃんが走り出す。それだけで、観客席からは拍手が沸いた。


「わぁ!ちゃんと走り出しましたわ!」

 「流石は、ブーちゃんさんですわ!」

「クロエ様が何かしたようには見えなかったけど…一体どうやったんだろう?」


 どうもこうも、ブーちゃんはお利口さんですから、指示なんか必要ないのよ。

 私も先生に習って、競技場の中央でブーちゃんを見守る。けど、私が特に指示を出すまでもなくブーちゃんは次々と障害物をクリアしていく。

 ポールをリズムよく潜り抜け、橋の上を飛び越えて、高い柵も飛び越える。

 それを見て、観客席からは感嘆の声が漏れる。


「知らなかったわ。オークがあんな俊敏に動くなんて…」

「ジャンプ力も異常ですわ。まるでケンタウロスみたいな脚力をされていますわよ」

「そもそも、首輪もなしでこれ程の精密な動きをさせられるなんて…」


 私達からしたら当たり前のことをしているだけと思っていたのに、クラスメイト達は過剰なほど驚いていた。

 そうか。みんなは私達の週末を知らないし、サモン部での活動も殆ど見たことないんだ。召喚魔術の授業ではみんなに合わせてばかりだったから、本当のブーちゃんをみんなは知らなかったのね。

 

「「「わぁああ!」」」


 私が周囲に気を取られている間にも、ブーちゃんがゴールした。 

 クラスメイト達から雨あられと降り注ぐ拍手を浴びながら、彼が私の方へと戻って来る。


「お疲れ様!ブーちゃん」

【ブ…ブフゥ】


 遠慮気味に頷くブーちゃん。

 それを見て、駆け寄って来た先生が首を傾げる。


「なんだ?元気が無いな。足でも捻ったか?」 

「いえ。きっと、ガルムちゃんに負けたことを気にしているんだと思います」


 ガルムちゃんの方をチラチラ見ているもの。ブーちゃんが思っていることが何となく分かるわ。

 競技中、ブーちゃんはかなりのスピードで障害物をクリアしていた。でも、ガルムちゃんの方が少しだけ速かったように思う。特にポール潜りなんて、ガルムちゃんは地面を滑るように移動していたし。

 種族が違うんだから、そこはどうしようもないと私は思うけれど、ブーちゃんはとても真面目な性格。負けたことを悔いている様だった。

 それを先生に伝えると、彼は「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げた。


「ガルムに負けたから悔いているだと?おいおい、勘弁してくれよ。ガルムは軍用ファミリアだぞ?こいつが何年、王国軍で訓練していたと思っている」


 ええっ!?そうなの?先生って、元軍人さんだったの?

 衝撃の事実に驚いていると、先生は競技場を振り返り、その一角を指さした。


「それにな。俺達が勝ったとも言えねぇんだわ。さっき言ったように、器具にはそれぞれ点数が付いている。俺のガルムは幾つか白線…つまり最低点数の1点を踏んじまったし、3点を貰える赤線を踏めたのも数える程だ。だがお前のオークは、殆ど赤線ばかりを超えてきやがった。これが点数勝負のギャンブラーだったら、完全に俺達の負けだよ」

「「「おぉおお…!」」」


 私だけじゃなく、観客席も驚きに包まれる。


「マジか。また先生を超えちまったのか、クロエ先生は」

「この前、オーガを倒したって噂を聞いたけど、本当かもしれないな」

「流石はクロエ先生のファミリアだな。力だけじゃなくて、スピードもあるなんて」

「あと、頭も良いわ。じゃないとアジリティはクリアできないもの」

「クロエ様と同じだな」


 ああ、またみんなが私を持ち上げ始めているわ。

 私がアタフタしていると、先生が静かに話しかけてきた。


「どうだろうか、バーガンディ嬢。このアジリティの大会に出てみないか?サモンファイトと違い、あまり荒々しい印象が付くこともないぞ?」

「ええっ?でも、それって競技選手になるってことですよね?将来を考えると…」

「なに、安心していい。いい成績を収めれば、近衛騎士団入りも夢ではないからな」


 先生はそう言って、またニヤリと笑った。

 それだけ胸を張られると言う事は、先生もその口で軍人になりましたの?でも、私は兵士になるつもりもございませんのよ!

 


 「皆さん!こちらですよ!」


 召喚魔術のテストが終わり、私達は魔法学の実技試験を受けるために競技場へと足を運んでいた。野外フィールドのすぐ隣が競技場なので、移動に時間はかからなかったけど…私のテストのせいで、結構時間が押してしまっているみたいだ。カステル先生が「急いで」と言うように、手招きをしている。その隣には、腕組みをするバルツァー先生の姿もあった。

 なんで、魔法学のテストにコロッセオ部のバルツァー先生が居るんだろう?何か、嫌な予感がする。

 そう思った私の勘は正しかった。

 先生がテスト内容を発表する。


「皆さんにはこれから、私達が作り上げるゴーレムと戦ってもらいます」

「えっ」「ふぁっ!?」「うっしゃ」「やったね」


 一喜一憂する生徒達。私は勿論、冷や汗だ。ハンナさんも同じように顔を青くする。喜んでいるのは、エリカさんと男子達か。

 それを抑えようと、先生は声を大きくして説明を続ける。


「ゴーレムと言っても、魔物のゴーレムではありません!魔導ゴーレムです!ゆっくりと動かしますので、皆さんはゴーレムを止める為に魔法を行使してください。偶に攻撃するように仕向けますが、それも魔法で防いで下さい!」

「センセー!」

「はい、エリカさん」

「ファミリアは使っても良いの?」

「結構です。ですが、仮令(たとえ)ファミリアでゴーレムを破壊したとしても、魔法を行使していなければ評価はしません」


 テスト前に先生が言っていた通りね。これなら安心だわ。

 私が安堵していると、バルツァー先生が1歩前に出て腕組をする。


「とは言え、我々も手を抜くつもりはない。諸君らの攻撃では傷一つ付かないゴーレムを作るので、存分に攻撃してくるがいい」


 自信満々な先生に、女子生徒達は尻込みして、男子達はやる気になっている。

 でも、


「生まれ()でなさい!肥沃な大地の守護者よ!クリエイト・ゴーレム!」

「さぁ!己が役目を果たす為、今こそ立ち上がるのだ!ウェイクアップ・ゴーレム!」


 カステル先生が大量の土塊を作り出し、それをバルツァー先生が組み上げていき、見上げる程の巨大なゴーレムへと作り上げた。

 それを見て、飛び跳ねていた男子達も静かになる。


「さぁ!誰からでも構わんぞ。我こそはと思う者から挑んでこい!」


 巨大な土塊のゴーレムを前にして、クラスメイトは一様に、青い顔になっていた。

イノセスメモ:

アジリティ(犬)…犬の障害物競走の事で、人間がハンドラーとなって導き、クリアタイムと得点で競う。配置される障害物の種類や評価の方法でスヌーカーやギャンブラーなど呼び方が変わる…らしい。

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― 新着の感想 ―
荒事が苦手だったり、彼我の力量差があまりに大きく瞬く間に勝負が決まってしまう事に不満を抱く観客も 居そうな戦闘系の競技に比べて、参加者全員が何かしらの見せ場を得られる、観戦側も楽しい種目ですね^^ …
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