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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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6話〜なに?牛?なんなの?〜

 ガサガサ、バキッ!

 薄暗く寂しいハイドの森の中で、オークの草木を踏み付ける足音だけが、ただ虚しく響く。

 森に入って暫く経ったけど、オークの歩みはとても遅い。体中に贅肉が付き過ぎて、まともに歩くことも出来ないみたいだ。

 でも、そうやって何度も地面を踏み付けるから、後ろを着いていく私は歩きやすい。それに、目的は勇者の剣を探す事だから、歩みが遅い方が都合が良かった。

 

 私は時々、魔道ランプで周囲を照らし、宝物はないかと地面を睨みつけていた。でも、剣どころか光を返す物すら見かけない。


「本当に、こんな所にあるのかしら?」


 段々と、胸の内に不安が募っていく。

 図書館で見つけたあの書物はかなり古い物で、信用性があるのかも怪しいレベル。

 本を見つけた時は、「これしかない!」って妙な自信に満ち満ちていたけど、もっとちゃんと調べておけば良かったって、今になって後悔が膨らんできた。

 

 でも、もうこんな森の中まで入っちゃったんだし、後戻りするのも勿体ないとも思う。

 そう言えば、入る前は真っ暗だった森の中も、こうして入ってしまってからはそれ程暗く感じない。壁のように生えていた(やぶ)も薄くなっている気がするし…。


「何でだろう?入口の方が暗かった気がするわ」

【ブフ】


 私の疑問に、オークが振り返った。その太い指で、自分の紫色の瞳を指している。

 

「え?なに?えっと……目が慣れたってこと?」


 確かに、暫く暗い所にいると、ちょっとだけ周りの輪郭が分かる時がある。

 

【ブフーフ】


 私が納得していると、次にオークは上を指さした。見上げると、鬱蒼と茂った木々の間から太陽の光が見えた。

 …えっと…どういうこと?


「太陽の明かりがあるから、見える…って事なの?」


 当たり前のことじゃない?って私が首を捻ると、オークは【ブゥ~…】と考えるような素振りをしてから、小さく頷いた。そして、また森の中を歩き出した。

 

 えっ?なに?もしかして、説明するのを諦めたの?面倒だと思って、適当に頷いたんじゃないでしょうね?

 私は目を細め、前を行くオークをつぶさに見る。オークは時々指を咥えて、その指を頭上に(かざ)していた。

 

 …何をしているんだろう?もしかして、お腹でも減ってるの?そう言えば、時々木の実なんかも拾っているのを見かけた。

 頭の良い子なのかと思ったけど、やっぱりオークなのかも。まだ良く分からないわ。

 襲われないようにしなきゃって、私は鞭を握る手に力を入れる。

 

 すると突然、オークが立ち止まった。

 襲われる!と思って後ろに飛び退いたけど、オークはこっちを見ようともしない。(しき)りに、周囲の空気を嗅ぎまわっている。

 なに?食べ物の匂いでも嗅ぎつけたの?本当に食いしん坊なのね、オークって。

 私は呆れて、小さくため息を吐く。

 その時、音がした。


 ガサッ。

 草木を踏む音。


 私達じゃない。私達は、1歩も動いていないから。

 じゃあ、何処から?


 ガサガサガサッ!


 私が耳を済ませていると、音が更に増えて、しかも大きくなった。

 次いで、何か変な臭いがする。牛舎の中の様な、畑に牛糞を撒いた時の様な、そんな臭い。

 

「なに?牛?なんなの?」

【ブフ】


 オークが森の中を指さす。見てみると…何かが動いた気がした。

 あっ、ほらそこ。何かが木の裏に隠れた。あれは…。


【ギヒヒヒ…】

【ゲギャギャ…】


 ごっ!


「ゴブリンよっ!」

【ゲギャッ!】

【ギギッ!】


 私が叫ぶと、ゴブリン達はそれに反応して、木々の間から飛び出してきた。

 ギラつく黄色い目を鋭くさせて、逃がしてなるものかと一直線でこちらに向かってくる。

 

 数は2…4…6?後ろからどんどん来ている。先頭のゴブリンが木漏れ日の中を潜り抜け、その醜い容姿を一瞬だけ見せる。

 子供のような背丈に、浮浪者のような形相。薄緑色の肌には幾つもイボが出来ていて、動物の毛皮を腰に巻き付けている。

 そして、手には太めの枝が握られており、そこには黒ずんだ何かがこびり付いていた。

 

「いっ、いやぁあっ!」


 気持ち悪くて、臭くて、怖くて、私の足は勝手に動き出す。迫り来る恐怖から逃れようと、後退りをした。

 でも、出来なかった。

 オークが、私を止めた。


「離して!」

【ブゥウ】


 なっ、なんでこの子。私を止めるの?私のファミリアでしょ?このままじゃ2人とも、ゴブリンに食べられちゃ…。


【ギャギャァー!】


 そんな事をしている間に、ゴブリンが目の前まで迫り、そして飛びかかってきた。

 

 もうダメ!

 私は目を瞑り、その場に倒れてしまった。

 

 …でも、衝撃が来ない。血の着いた枝で殴られると思ったけど、痛くも痒くもない。

 どうなってるの?

 私は恐る恐る目を開けて、顔を上げた。

 すると、


【グゥ…ググッ…グゥッ!】


 そこには、顔を鷲掴みにされたゴブリンの姿があった。そいつの顔を掴んでいるのは、オークの大きな手のひら。

 幹の様に太いオークの腕に、力が入る。バキッ!と、恐ろしい音が鳴り響き、そして、水桶をひっくり返した様な音と共に、ゴブリンの顔が潰れた。

 ビシャビシャと落ちるのは、ゴブリンの血。でもそれも、すぐに消えていく。亡骸になったゴブリンの体も消えていき、残ったのはゴブリンの体の一部と、薄い灰色の魔石だけだった。


【ギギャァー!】

【ゲギャァー!】


 仲間の死を見て怒ったのか、残りのゴブリン達が雄叫びを上げて突っ込んでくる。

 それに、オークが動く。私の前に立ちはだかり、飛び込んでくるゴブリンに拳を振るう。

 殴りつけ、投げ飛ばして、後ろから来るゴブリンとぶつけたり、岩や木に当てて絶命させていく。

 そして、あれだけ居たゴブリン達を、瞬く間に倒してしまった。


 …えっ?うそ。倒しちゃったの?あの数のゴブリンを、こんな簡単に?

 私は驚きすぎて、尻餅を着いた状態でオークを見上げる。

 

 確かに、ゴブリンって魔物の中でもかなり弱いとは言われている。非力だから、訓練を受けていない領民でも倒せるって。

 でもそれは、はぐれゴブリンだったらってだけ。今みたいに集団になったら、とっても厄介とも聞いていた。拾い物の剣を持っている個体も居るから、そういう奴は衛兵でも危ないって、お兄様が言っていた。

 そんな集団に、あっさり勝っちゃうなんて…。


「君って…もしかして、とっても強いの?」

【ブフ?】

 

 私は立ち上がり、オークに問いかける。でも、彼は首を傾げるだけだった。

 うーん。こうして見ると、あんまりそうは思えない。ただ暴れたら勝っちゃっただけなのかな?オークって力はあるみたいだから、元々ゴブリンくらいなら勝てるものなのかも。

 もしくは、これがファミリアの力…だったりして。


「あっ、そうだ。魔石を集めなきゃ」


 随分と薄い色だから、価値は低いと思う。でも、折角ドロップしたんだし、集めておいて損はない…はず。

 私はオークの前に散らばった戦利品を拾おうと、彼の横を通り過ぎる。でもそこで、また彼の手が私を止めた。


「もうっ!だからなんで…」

【アギャギャ!ギャーダ!】


 私が不満をぶつけるよりも先に、(しわが)れたゴブリンの声が背後から聞こえた。

 次いで、明るい光が森の中からこちらへと、物凄い速さで迫って来た。

 これってまさか、ファイアーボール!?

 大変!

 

 逃げなきゃって、私でもすぐに分かった。

 でも、体が動かない。突然突き付きけらた恐怖で、完全に体が硬直してしまって、1歩もその場から動けなかった。

 迫り来る火炎の凶弾。熱すら感じる距離まで近付いた時、目の前が真っ暗になった。


【ブッハハァ!!】


 それは、オークの背中。

 私の前に飛び出したオークは、なんと、ファイアーボールを素手で殴りつけたのだった。

 弱い魔物なら一瞬で黒焦げにしてしまうファイアーボールは、オークに殴られただけで消し飛んでしまった。


【ギギ!?ギャヒャヒャ!ギャーダ!】


 毛皮を頭まで被ったゴブリンが、再びおかしな呪文を唱えると、さっきよりちょっと大きいファイアーボールが飛んできた。

 でも、それも、振り抜いたオークのワンパンチで消し飛んでしまった。

 残ったのは、木にもたれかかって息を切らせているゴブリンだけ。その毛皮は、他の奴らよりも上等そうに見えるから、アイツがゴブリン軍団のリーダーみたい。

 襲撃してきたゴブリン達とは反対側にいるから、他のゴブリンを囮にしたのかも。

 なんというか、卑怯な奴ね。サロメみたいだわ。


【ブッハー!】

【ギャッ】


 そんな卑怯な奴は、オークの一撃でお終いだった。殴り飛ばされて、空中で力尽きて消えてしまった。

 残されたのは、ゴブリンリーダーが着ていた毛皮のローブと、ちょっとだけ濃い赤色の魔石。

 それを見て、私は飛び出す。


「わぁ~凄い…。見て!これなら、少しは良い値段が付くと思うわ!どう?」

【ブフ】


 私は嬉しくなって、拾った魔石をオークに見せつけていた。

 すると、オークも嬉しそうに頷いて、その魔石を手に取った。

 その時になって、漸く気付いた。オークの手の甲が、酷い火傷になっている事を。


「ちょっ!貴方!これどうしたのよ!」

【ブフォ?ブーブブ】


 オークは、なんでもないよと言いたげに、両手を振る。

 そんな筈ないじゃない。大変な怪我しているんだから。ファイアーボールを手で殴っちゃったんだもん、絶対痛いに決まってる。

 

 どうしよう。ファミリアの怪我を治すには、それなりの魔力を込めれば良いって習ったけれど、この怪我ではかなりの量になると思う。

 私の魔力はたかが知れてるから、これを治そうとしたら、魔力枯渇で気絶してしまうかも。

 もしそうなったら、この森に1人で寝転ぶ事になる。

 そんなことしたら…一瞬で魔物達の餌になっちゃうわ!


「…仕方、ないよね」


 私は、オークの手から魔石を取り上げる。

 そして、彼に向けてもう一度魔石を差し出す。


「これを、使ってちょうだい」

イノセスメモ:

・ファミリアは怪我をしても魔力で回復…魔力を渡さなかったら回復しない?

・ファミリアの魔力回復は魔石でも可能…方法は?

・風上…風の吹いて来る方向。風下の方向に自分の匂いが流れるので、視界が悪いところでは特に注意。

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― 新着の感想 ―
著者の方も英雄伝の1コマを書いたつもりが、トレハン令嬢に埋蔵剣伝説扱いされるとはビックリやろねw サロメ嬢のような護身用指輪や自前の自衛のアテも無く「ひとり探検隊」に行っちゃったのか… 頑張って成…
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