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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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66話〜冒険者のクロアですわ〜

 ノシノシノシと、定期的に揺れるブーちゃんの肩の上で、私は教科書を開いて勉強をしている。

 今は土曜日の朝。

 冒険者ギルドで沢山の依頼をお姉さんから押しつけられた(受注した)私は、その依頼をこなすべく隣村に出かけていた。


 本当なら、今日もサモン部でマネージャー業務をするという選択肢もあった。大会が近い先輩達が自主練をしているから、その手伝いをしたいとも思っていた。

 でも、今は緊急事態だ。図書館の賠償金を稼ぐ為に、私は冒険者の道を選んだのだ。

 …賠償金が幾らなのか。そもそも請求されるのか全く分からないけど、あれだけ大事になっていたのだから、用意しておくに越したことは無い。昨日、図書館の近くを通ったら、沢山の大人が忙しなく出入りしていたもの。

 確かに床を焦がしてしまったけど…そんな大事になるなんて思わなかったわ。


【ブフーフ】


 昨日の光景に打ち震えていると、ブーちゃんが一声鳴いて前を指さす。

 そこには大きな丸太を組んだ外壁がズラリと並んでいて、その扉の前で座り込む2人の兵士が見えた。

 一瞬、死んでいるのかと思ったけど、近付くにつれて彼らの盛大なイビキが聞こえてきた。

 …門番だと思うけど、こんな堂々と寝ているなんて。きっと、平和な村なのね。


「ブーちゃん」

【ブフ】


 私が一声掛けると、ブーちゃんは私を肩から降ろして、大きなローブを頭から被る。そして再び私を乗せて、門に近付いた。

 目覚めてすぐ目の前にオークが居たら、驚いちゃうものね。サボっている人達に気を使うのはちょっとどうかと思うけど、無駄な戦闘を避ける為と思う様にしよう。


「ごきげんよう!」

「ふぁっ!?」


 私が大きめの声で挨拶をすると、門番達は飛び起きた。随分と顔色が悪いし、頬も痩せこけている。

 平和な村なのかと思ったけど、ちょっと違うみたい。彼らも疲れていたから寝てしまったんだわ。


「起こしてしまってごめんなさい。ラッセルの冒険者ギルドから依頼で来ました、冒険者のクロアですわ」


 私は敢えて、偽名を名乗る。

 偽名と言うか、冒険者登録し直した冒険者名だ。プリムローズでの一件で、私の名前が広く知られる恐れが出てきてしまった。これ以上広まったら、何時か学園にも、そして家にもバレそうだと言うことで、偽名を名乗る事にしたのだった。

 偽名は実名に近い方が良いとブーちゃんからアドバイスを貰ったので、クロアと名乗る事にした。


「こちらが依頼書と冒険者カードですわ」

「おっ、おう…ええっと…ああ、村長から出してる依頼だな」


 ブーちゃんから受け取った依頼書を見て、門番は表情を緩める。でも、私のカードをひっくり返してまた短い悲鳴を上げた。


「はぁっ!?Eランクじゃねぇか、お前」

「村長の依頼って事は、あれだろ?畑さ荒らしちょるレッドボアさ討伐する為に来てくれてるんだろ?」

「レッドボアはDランクだぞ?そっちのデカイ兄ちゃんが高ランカーなのか?」


 門番がブーちゃんに手を差し出す。それに、私は首を振る。


「この子は私のファミリアよ。私は魔術師なの」

「ファミリア?一体、何のファミリアなんだ?」

「オークよ」


 私が言うと、2人は顔を見合わせる。そして、吹き出した。


「オーク?オークって言ったかい?嬢ちゃん」

「うっそでぇ。こんな、人間みたいなオークが居るわけねぇべさ」


 お腹を抱えて笑う2人。それに、私は右手の刻印を見せつけて、ブーちゃんはローブを取り払う。

 すると、2人は固まった。


「ほ、本当にオークだべ」

「かなり痩せとるけど、鼻はオークの豚鼻だ」

「んだけども、随分と大人しいオークだなぁ。首輪付けとらんのに、真っ直ぐさ立っとるで」

「中に誰か入っとるんじゃないやろか?」


 ブーちゃんの様子に、困惑気味な門番の2人。そこに、ブーちゃんが手を差し出す。彼らに渡したままの依頼書とカードを返せと催促をしていた。

 その動作で、2人は余計にオークなのかと顔を見合わせていた。


「さて。では通して頂けるかしら?」


 ブーちゃんからカードを受け取った私は、まだ固まっている2人を見下ろす。

 2人は慌てて門の端っこに飛び退いて、私達を通す。


「ま、魔術師様!村長の家は中央広場の目の前だからな!」

「いちべぇでっけぇ煙突さ付いとる家だべよ!」

「レッドボアを頼んだぞ!魔術師様!」


 魔術師様って…やっぱり大都市から離れると魔法が使える人間が貴重になるみたい。

 平民で魔力を持っている人は少ないから、それも仕方ない事だと思うけど。


「ママぁ!見て、大っきい!」

「こらアン!近付かないの!」


 村の大通りを進んでいると、村の住人達が目を丸くしてこちらを見詰めてくる。

 ブーちゃんはまたローブを羽織っているけど、巨大な人型生物の肩に少女が乗っていれば、嫌でも目立つのだろう。

 でも、誰も近付いて来ようとはしない。遠目にジッと、こちらを見ているだけだ。その目の殆どは恐怖の色が浮かんでおり、私達を歓迎しているのは小さな子供くらいだった。


 他領の村って排他的なのね。バーガンディ領の村だったら、村民総出で出迎えてくれるのに。

 …それも、私が領主の娘だからかも知れないけど。


 そんな村人達とは真逆に、村長さんは暖かく出迎えてくれた。


「このホルホーンの村長をしとるベンです。良くぞ来てくれました」

「クロアと申します。こちらは、私のファミリアでブーちゃんですわ」

【ブフー】


 私はブーちゃんから降りて、軽く挨拶をする。ブーちゃんもローブを取って腰を折ると、初老の村長さんは背筋をビシッと正した。

 なんですの?


「も、もしや、貴女様はラッセルの学生様ではございませんか?」

「…何故、そう思いますの?」

「いえ、何故って…ラッセルからいらしていて、魔術師で、その洗練されたお言葉使いに立ち居振る舞いと来たら、名門のお貴族様なのかと」


 ああ、そんな所でバレてしまうんですの?

 染み付いた癖はどうしようもなく、私は「想像にお任せしますわ」と言葉を濁し、依頼内容の擦り合わせを行う。


「ええ、はい。大方はクロア様の仰る通りです。最初は村の外の畑が荒らされて、撃退しようとした衛兵の1人が死亡し、3人が大怪我を負いました」

「……最初は?」

「はい。依頼を出した時よりも今は深刻で、先週はとうとう外壁が破壊されてしまい、村の中の畑もやられました。追いかけられた村民も出始めており、今では子供を外で遊ばせる事も出来ない状態です」


 そうか。私が受けた依頼は塩漬け依頼。長い間放置されてしまったから、その間に状況が深刻化してしまったんだ。

 私が現状を噛み締めていると、村長さんが両手を合わせて祈ってくる。


「どうか、この村をお救い下さい。クロア様」

「勿論ですわ!」

【ブッハハー!】


 私達が胸を叩くと、村長さんは眩しそうに目を細めた。



「あれがレッドボアだべ」


 門番に連れられてやって来たのは、村の集落から少し離れた小さな畑。まだ村の中だと言うのに、そこには2頭のイノシシが我が物顔で地面を掘り返していた。

 ハンナさんのドンちゃん程では無いが、獣のイノシシよりも明らかに大きく、そして褐色色の体毛が艶めかしく太陽を反射していた。

 随分と良い物を食べているみたい。昼間から食べているんですものね、そりゃ丸々と太りますわ。


「では、行ってきますわ」

「だ、大丈夫だべか?でっけぇのが2頭も居るぞ?1頭くらいなら、俺らが引き付けるべ?」


 門番が震えながら言うと、彼の後ろで槍を持っていた青年達の顔が強ばる。

 彼らはこの村の青年隊だ。本来は畑仕事をしている時期なのだが、人員不足と畑がレッドボアに占領されているから自警団に組み込まれているらしい。

 つまりは戦闘の素人集団だ。

 …私も含めて。

 でも、

 

【ブハハハ】

「大丈夫ですわ」


 ブーちゃんが豪快に笑っているから、私は安心して宣言する。彼のこの反応は「楽勝だ」と言いたい時のものだから。

 とは言え、私も油断しない。ブーちゃんにバックラーを渡し、私も拘束魔法とファイアボールを待機させて、イザと言う時に備える。

 私の準備が整ったのを見てから、ブーちゃんは無法者達に突撃した。


【ブフー!】


 ドドドドド!と、重たい音を響かせながら、ブーちゃんは猛スピードで駆ける。

 それに、レッドボアも気付く。土だらけの鼻をブーちゃんに向けて、目を血走らせて迎え撃った。

 オークとボアが接触した。

 途端、


【ブギィッ!】


 短い悲鳴を上げて、ボアが空高く舞った。圧倒的な重量と力を持つブーちゃんに、全く歯が立たなかったみたいだ。

 レッドボアはそのまま地面に激突し、素材と魔石をぶちまけて消えてしまった。


【ブギィイイ!】


 もう1頭が怒り声を上げて、ブーちゃんに向けて突っ込む。

 それに、ブーちゃんは立ち止まって盾を構える。ボアが迫ってくる中、狙いを付けて、そして、

 衝突する寸前に、思い切り殴りつけた。

 ブーちゃんの拳を額で受けたボアは、後ろに転がってひっくり返った状態で止まる。四肢がピクピクして、顔が半分潰れていたけど、すぐに素材を残して消えてしまった。


【ブッハー!】


 ブーちゃんのガッツポーズ。

 本当に楽勝だったわね。


「凄いわ!ブーちゃん!」


 私は拍手で彼を出迎えようとする。でも、それは出来なかった。

 私の拍手は、後ろの歓声にかき消された。


「「「うぉおおお!!」」」

「「すげぇええ!」」「一撃だぁ!」


 門番と青年隊が、槍を掲げて小躍りしていた。


「魔術師様、すげぇ!」

「オークって、こんなに強かったのか!」

「これならやれる!出来る!」

「村を取り返せるぞ!」

「「「うぉおおお!やってやるぞ!」」」


 さっきまで青い顔だった彼らは、急に強気になっていた。

 それは、まぁ、喜ばしいんだけど…あんまり大声を上げないで下さらない?村の住人達が、こっちを(いぶか)しげに見ていますわよ?

お金稼ぎって、塩漬け案件の消化だったんですね。


「Dランクとは言え、多数の群れを討伐するとなると、Cランク以上の実力が必要だ」


塩漬けにされるレベルです物ね。

順当にクリア出来れば良いのですが…。

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― 新着の感想 ―
浪人の傘張り内職的なドサ回り副業令嬢を見て村長さんが「あっ…(察し)」する程、バイト貴族居なそうだし 世を忍ぶ仮の名義を新設した事で、令嬢としての外聞を気にせずモリモリ働いて…本当に大丈夫?w 武力…
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