表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/77

64話〜なんで、こんなものが?〜

【死ぬがいい。異端の使徒よ】


 突然物騒な事を言って、天使モドキが襲いかかってきた。

 かなり素早くて、気付いた時にはすぐ目の前まで迫っていた。


【ブッハー!】


 でも、攻撃される前にブーちゃんが動いていた。少女のお腹を思いっきり殴りつけて、向こうの本棚へと殴り飛ばしてしまった。

 少女はそのまま本棚に激突し、ズルズルと地面に座り込む。

 あれは痛そうだと私が思っていると、彼女の顔がスっとこちらを向く。口から緑色の液体を零しながら、複眼で私達を睨み上げてくる。


【ぐっ…この力は何だ?たかがオークに何故、俺様が押し負ける?貴様、オークに見えてオークではナイな?貴様は何者だ?】

【ブフーフフ】

【またそれか。まぁ、いい。尚も勇者を(かた)るのであれば、それ相応の罰を受けてもらうぞ!】


 少女が立ち上がると、その体に亀裂が入る。そして少女の体が卵の殻の様にボロボロと崩れていき、その中から毛むくじゃらの体が出てきた。

 その背には半透明の(はね)が生え出てきて、目にも止まらない速さで羽ばたき始めた。

 ブーン…。


【儂の姿を拝めたのだ。恐れ(おのの)き、ひれ伏すが良い。そして死ね。死して我に食い尽くされろ】


 一回り大きいキラービーになった天使モドキが、空中を縦横無尽に飛び回る。

 そうやって撹乱して、襲ってこうよとしているのね?させないわ!


「ブーちゃん!これを!」


 私はプロテクションの魔法盾と、アクアベールの水鎧を一緒に投げる。

 ブーちゃんはそれを受け取ると、バックラーを両拳に付けて、それでアクアベールを殴りつけた。

 

 すると、水の鎧は弾けて空中に飛び散り、飛び回っていたキラービーにまとわり付く。

 すると、キラービーの動きが不安定になり、そのまま地面に激突した。


【いてて…やってくれたな、ニンゲン。私の綺麗な翅が台無しだ】


 キラービーが6本の足で立ち上がり、半透明だった翅を重そうに動かす。その羽は、アクアベールがベットリくっ付いていた。

 キラービーは翅をバタつかせながら、足を擦り合わせる。


【眷属達よ。僕の翅が乾くまで、コイツらの相手をしてやれ】


 擦り合わせていたキラービーの足からモヤが発生して、それが一体の巨大な昆虫を作り出す。

 それは…。


【キィー!】


 大きなカマキリだった。

 両腕に付いた鋭利な刃をこちらに向け、こちらを威嚇する。ふっくらとしたお腹が更に膨らんだように見えたが、すぐにそれは翅を広げたのだと分かった。

 その翅を高速で羽ばたかせ、巨大カマキリがこちらへと一直線で向かってきた。


【キィイ!!】

【ブッハハー!】


 でも、一直線で来てしまったから、待ち構えていたブーちゃんに思いっきり殴られた。


【キィ…】


 小さな顔を殴られたカマキリは、首をポロリと落として動きを止め…。

 止めたかと思ったカマキリの腕が、勢いよく振り下ろされた。


「危ない!」


 私は咄嗟に、用意していた予備の盾を投げる。すると運良くカマキリの鎌に当たって、軌道をズラす事に成功した。

 良かったわ。たまたま当たって。


【小癪なニンゲンが。行くのだ、私の眷属共。行って、奴らに思い知らせろ】


 キラービーは次々と眷属を生み出す。

 カマキリ、蝶、カブトムシ、蜂、バッタ…。

 どれもこれも巨大な昆虫型魔物ばかりで、私達に敵意剥き出しで襲い掛かって来る。


【ブッハー!】


 でもその度に、ブーちゃんがワンパンチで粉砕する。

 バラバラになった昆虫の体は、白いモヤになって空気に溶けてしまった。


【ぐっくっく。良いぞ。良くやったぞ】


 眷属を沢山やられたのに、キラービーは嬉しそうに笑い声を上げた。その翅はまだヨレヨレのままだったけど、ブーンと羽ばたいて巨体を持ち上げた。

 もう回復しちゃったんだ。


【もうお前を、普通のブタとは思わない。儂の眷属共に、(なぶ)り殺され食い尽くされろ】


 キラービーが再び眷属を召喚する。

 それは、大きなハエだった。キラービーと同じ羽音を響かせて、ランダム軌道でこちらに迫ってくる。

 あれ?もしかして、天使モドキってキラービーじゃなくて巨大なハエだったの?


【ブハハハハー!】


 無数のハエが飛び込んでくる中、ブーちゃんは拳を目にも止まらない速さで繰り出して、全てのハエを落としていく。

 でも、数が多い。それに、


【ブッハー!】

【おっと、残念】


 ハエに紛れて突撃してきた天使モドキを殴りつけようとしても、奴は拳が当たる直前にモヤになってしまい、ダメージを与えられなかった。

 上空で再び実体化して、こちらを煽ってくる天使モドキ。


【ブッハー!】

【おっと、危ない】

【ブッハハー!】

【どれ程の力があろうと、当たらなければどうということはないな】


 ブーちゃんが幾ら殴っても、天使モドキは捕まらない。大量のハエがブーちゃんの体に体当たりをしてきて、こちらばかりがやられる一方だ。


【ブフー…ブフー…】


 ブーちゃんも息が上がり始めている。何とかしないと。

 私は周囲を見渡す。すると、床に何かが散らばっているのを発見した。

 取り上げて見ると、それは魔石だった。それも、加工済みの魔石。


「なんで、こんなものが?」


〈◆〉


【かっはっは!どうした?ブタの勇者。随分と息が上がっているなぁ。俺様はまだまだ余裕だぞ】

【ならば、一掃してやる。ショットガン・ブラスト!】


 私が少し煽ると、ブタは拳に魔力を溜めて、それを一気に放出してきた。

 マジックミサイルの応用技か?確かに大したものだ。オークのファミリアが魔法を操るなど聞いたことがない。今の一撃で、私の眷属も半分殺られてしまった。

 だが、


【それがどうした?儂の眷属はまだまだいるぞ!】


 私は内蔵された魔石から魔力を引き出し、再び眷属を作り出す。それを、ブタへと向けて勢いよく射出する。

 ブタは必死になって拳を振るい、眷属共を次々と消していくが、それは無意味。ただの自殺行為。お前が足掻けば足掻くだけ、自分達の首を絞めるだけだ。

 ふむ。分かっていないようだな。では、それを教えてやるか。


【良いのか?ブタの勇者。お前の主は、随分と辛そうだが?】

【ぐっ】


 ブタが拳を止める。自分が魔力を使い過ぎていると、漸く分かったみたいだ。

 だが、分かったところでどうしようもない。人間は魔力が乏しく、ファミリアを維持する為には膨大な魔力を使う。

 こんな化け物みたいなブタを維持する為には、相応の魔力が必要だろう。ここまで粘っただけ十分に凄まじい魔力量だ。

 それだけ、私の目的にも合致する。

 是が非でも、この人間を我らの実験に引き摺り込んでやる。


 私が内心で舌舐りをしていると、ブタが怪しい行動を起こす。暗闇魔法に手を突っ込んで、何かを取り出す仕草をする。

 そうはさせるか。


【眷属よ!】

【ちっ!】


 眷属を突撃させて、ブタが取り出した物を奪う。それは、透明な瓶に入った青い薬。

 魔力回復薬か。


【オーク風情が、小賢しい真似を】

【それはこっちのセリフだぜ!マグナム!】


 突然、強力な魔力が私を襲う。

 私は咄嗟に逃げるも、右翅がその1発に吹き飛んでしまい、墜落しかけた。

 でも、墜落する前に翅を再生させて、何とか回避する。


【ふぅ。危ない事をするなぁ。この瓶も落とすところだったぞ?そうなったらどうする気だ?】

【貴様に使われるくらいなら、破壊した方がマシだ】


 ははっ!私が使える訳ないだろう。

 ブタの妄言に、私は安心する。こいつはまだ気付いていないと確信して。


 そう思っていると、声が聞こえた。


「チェーン・バインド!」

 

 その声の直後、私の首に半透明の鎖が巻きついた。

 これは、拘束魔法!


【この、ニンゲン風情が】

「私も居るの、忘れないで!」


 小癪にも、人間が出しゃばってきた。

 それに、ブタが笑い声を上げながら飛び上がった。


【ブハハッ!ナイスだ、マスター!】


 ブタがこちらに飛び込みながら、両の拳を振り上げる。そのまま、私を叩き潰した。


【ス(トン)ピングゥウ!!】

【ぐっ】


 ブタの巨体を活かした技に、しかし、私は全くダメージを負わない。私の本体は全くの無傷だから、そのまま魔力の霧となって上空へと逃げる。

 

 折角頑張って拘束魔法も出したのに、残念だったな、人間。

 私はそう思い、人間の方を見る。

 でも人間は、全く悔しそうな顔をしていなかった。こちらを真っ直ぐに見て、両手を突き出していた。

 呪文を、詠唱し終えていた。


「アクアベール!」


 その呪文が完成すると、私の周囲に水の膜が張った。私とブタを包み込むように、薄く広い水のベール。

 くっ、こいつ。まさか私の正体に気付いて。


「ブーちゃん!」


 怒りで人間を睨みつけていると、その人間はブタに小さな盾を投げ渡した。

 先程から私を殴りつけている、なんの変哲もない守りの魔法。

 そんなので、何をする気だ?


【ブハハハッ!そう言う事か!】


 ブタは楽しそうに笑うと、その盾を構える。途端に、その盾に真っ赤な炎が纏わり付いた。

 こ、これは、まさか!?


【ファイアボールの魔法!?何故、プロテクションにそんな物が…!】

【いいや、違う。こいつはファイアボールの”魔術”だ。俺のマスターが、盾の魔法に魔術式を書き込んでくれたんだよ。魔法を飛ばすのが苦手なマスターだがな、こうやって定着させるのは得意みてぇだ。そして】


 ブタがノシノシとこちらへ歩いて来る。その両手にメラメラと燃える炎を携えて。


【この拳が、貴様を焼き焦がす!】


 ヤバい!これはヤバい!

 私は必死に飛び回り、水のベールを突き破る。ベールはとても薄かったので、いとも簡単に突破する事が出来た。

 でも、突破した途端、私の全身が水分を吸ってヨレてしまい、上手く飛ぶ事が出来なくなった。

 地面に墜落した私に、ブタが迫る。


【観念しろ、ハエの王】

【まっ、待て。儂の話を聞け。お前に、偉大なるお方のお力を授けてや…】

【セールスは、お断りだぁ!】


 問答無用で、ブタの拳が腹に突き刺さった。その途端、私の体は燃え上がる。轟々と燃え上がり、私の体から力が消えていく。

 あの方に施して頂いた大切な術式が、灰になっていく。あの方が大切にされていた知識も、崇高な理念も。そして、私の体も…。

 ああ、ああ…そんな…。


 【もう、し訳、ござい、ま、せん…】


 魔王様…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヒヒヒヒヒ、黒戸氏が健在でなにより。名言はされていませんでしたからねぇ、改めて推しがいると分かったのは僥倖…それにしても魔石、ですか…これまた興味深い…蝿の王とやらは、魔石を使って眷属を産み出していた…
ブーちゃんつよーい! とうとう発言や魔法から中身が引き継がれてることがほぼほぼはっきりしてさらなるコンビネーション技にわくわくが止まらないですね…… 魔王!? 魔王ナンデ!? 学園ラブコメ属性はどこ…
苦節?65話、遂にブー殿の発言解禁!相方さんが「面白い」クロエ嬢へ「面白い」現地産オークをマッチング した可能性も微レ存と見ていたので、オス主人公の正体?も確定しましたね。ブハハ語も味がありますがw …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ