表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/81

58話~他がどうかは知らねぇけどよ~

「ありがとうございました!クロエ様!」

「また助けて頂いちゃったわ!」

「ああ…素敵!凄く恰好良かったです!」


 ギーズル達を撃退して昼食会を再開しようと思ったら、興奮気味なハンナさん達に囲まれてしまった。

 熱烈にお礼を言われてしまったけど…殆どブーちゃんがやってくれた事なのよ?私は最前列で観戦しただけだし。


「いいえ。クロエ様も素敵でした」

「そうですよ。ブーちゃんさんにプロテクションの魔法を投げ渡す所なんて、感動で前が見えなくなりましたわ」

「ブーちゃんさんが危なくなった時、直ぐに指示を出している所もですわ。歴戦のサモンファイターみたいで、感動しました」


 あれは指示じゃなくて、ただ焦って声が漏れただけなんだけど…。

 なんと言えばいいのか迷っていると、みんなの視線が私からブーちゃんへと移る。


「ブーちゃんさんもありがとう!貴方って、賢いだけじゃなくてとても強いのね」

「オーガに勝っちゃうなんて信じられないよ。本当はオークナイト…いや、それでもオーガには勝てないか」

「とにかく凄かったわ!乱暴な魔獣をスマートに倒して、物語の英雄様みたいで格好良かったですわ!」


【ブフフ…】


「まぁ!ブーちゃんさんが照れてますわ」

「可愛いですわ。愛らしいですわ」

「強くてかわいいって最強かよ。なぁ、ちょっとその腕触ってもいいかい?」


 ビアンカさんが上目遣いでお願いすると、ブーちゃんは嬉しそうにポーズを決めて、彼女に腕を触らせてあげていた。


「うわぁ。凄くたくましいわ!」

「オークってもっと、ブヨブヨのイメージがありましたけど、そうではなかったのですね」


 ビアンカさんに続いて、コリンナさんもペタペタと触り、不思議そうにブーちゃんを見上げる。

 それに、ビアンカさんは首を傾げる。


「いや、普通はブヨブヨだよ。この子が特別なだけ。ですよね?クロエ様」

「ええっと、私も野生のオークは見た事ないのだけれど、ブーちゃんも最初は太っていたのよ?」


 でも、最近は随分と痩せてきている。三段腹だったお腹は段差が無くなってきたし、顎下にあったお肉もいつの間にか消えている。そして、その代わりに出てきたのが岩のような筋肉だった。

 今のブーちゃんはとても強そうだけど、前は前で可愛かったと思う。

 ブーちゃんが頑張ってダイエットした結果だから、残念には思わないけれどね。


「わぁ!すごーい!」

「高いですわ!」


 ちょっと考え事をしている間に、ハンナさん達はブーちゃんの肩に乗せて貰っていた。

 凄く楽しそう。

 私だって、まだ乗せてもらっていないのに。


【ブフォッ!?】


 つい睨んでしまったら、ブーちゃんが慌て始めた。

 …うん。後でたっぷり、乗せてもらうわよ?



 午後から再開した練習試合は、順調に進んでいった。相変わらずオルレアン部長とレックス様達は連勝を重ねているし、他の部員達は負け越している。

 驚いた事に、ギーズルも勝ち進んでいた。オーギュスト先輩のグリフォンには快勝し、部長のマレちゃんともいい勝負を見せていた。


 そして今は、レックス様のガルーちゃんと戦っていた。


「行けっ!ガルー!」

「自由にさせるな!ガオウ!」


 召喚者達から熱の入った指示が飛び、2匹のファミリアがぶつかり合う。

 それを見て、観客も他の選手も大きな声援を投げかける。

 まるで決勝戦でも見ている気分。そう思えてしまう程に、2人の試合は白熱していた。


「「わぁああ!」」

「「レックスさまー!」」

「良いぞ!アルバン。そいつを倒して全勝だ!」


 盛り上がり続ける会場。

 それとは反対に、私の心は戸惑いでいっぱいになっていた。


 あれ?なんでギーズルが強く見えるのかしら?ブーちゃんを相手にボコボコにされていたから、きっと口だけの男だと思ったのに、レックス様達に引けを取っていないなんて。

 もしかして、本当に強かったの?私達を襲った時は、本気じゃなかったってことかしら?いいえ、でも、ズルだなんだってあんなに必死だったし…。


「「「わぁあああ!」」」


 突然、大きな歓声が上がり、フィールドを見ると勝負が決まっていた。


「勝者!モントゴメリー!ロゼリア学園!」

「よっしゃあ!」

【ワウゥ!フゥ】


 レックス様が勝ったみたいだ。

 苦しい試合だったみたいで、レックス様は両手を掲げて勝利を喜び、ガルーちゃんは膝に手を着き肩で息をしていた。


「ああ、くそっ!」


 その向こう側で、ギーズルが悔しそうに地団駄を踏む。青い顔で、地面に膝を着くオーガを睨んでいた。

 そこに、笑顔のレックス様が手を差し伸べる。


「いい試合でしたね、先輩。またやりましょうや」

「ふんっ!今回はたまたま、俺の調子が悪かっただけだ!昼休みに変な奴から絡まれなかったら、この試合も勝てていたんだ」

「変な奴?」

「ああ、そうだよ。おかしな令嬢に突然、襲われて…」


 また言い訳を始めたギーズル。でも、観客席に私の姿を見つけた途端、口をギュッと噤んでそそくさとフィールドを去ってしまった。

 随分と私を怖がっているみたい。

 情けない男ね。女性を怖がるなんて。


「なんだ?」 


 突然対戦相手が逃げ帰ってしまったので、レックス様は不思議そうにこちらを向かれた。

 目が合ったので、取り敢えず私も拍手を送っておいた。



 それから程なくして、練習試合は幕を閉じた。

 ウィンスターとハロードの学生達は名残惜しそうに先輩達と別れの挨拶をして、学園から去っていく。

 約数名、逃げるように出ていったけど、あれはきっとギーズル達ね。二度と来ないで欲しいわ。


「いやぁ、盛大に負けたな」

「相変わらず、ウィンスターは強いな」

「来月の都大会も厳しそうだな。週末に練習しておこう」

「息抜きも大事だぜ!オーギュスト」


 先輩達も口々に今日の事を思い出しながら、自分達の寮へと戻っていく。明日は部活もお休みだから、浮き足立っている人もいた。

 そんな人達を見送って、私は会場の片付けを行う。

 マネージャーだからね。選手達が帰った後も仕事がある。逆に、選手達が頑張っている時は、1番良い席で観戦させてもらった。

 帰り際に先輩達が言われていた都大会でも、監督席で選手達を見守る事が出来るみたい。

 頑張らないと。


「さぁ、ブーちゃん。もうひと頑張りよ」

【ブッハハー!】


 ブーちゃんはゴロゴロを引っ張って、フィールドを爆走する。

 私は観客席のお掃除だ。みんな白熱し過ぎたのか、結構な数の落し物がある。ピアスだとか指輪だとかのアクセサリーや、財布なんかの小物が多い。中にはリュックをそのまま置き忘れている強者もいて、今頃焦っているんじゃないかって思う。

 後でバルツァー先生達に届けなくちゃ。


 そうして、落ちている貴重品をぽいぽいとボイドへ投げ込んでいると、誰かがこちらに近付いてくるのが見えた。


「おーい!バーガンディさん!」

「レックス…じゃなかった、モントゴメリー様」


 そこには、爽やかな笑みを携えたレックス様がいた。

 片手を上げていた彼は、その手を口元まで持ってきて、微笑みを苦笑いに変える。


「レックスで良いぞ、バーガンディさん。その代わり、俺もクロエさんって呼ばせてくれ」

「えっ、ええ。はい…」


 良いのかしら?そんな仲良しみたいな事をしたら、殿下の時みたいにならない?レックス様のファンクラブに、シバかれたりしないかしら?

 ファンクラブがあるかどうか、知らないんだけど。


「なぁ、クロエさん。大丈夫か?」

「えっ?大丈夫って…なんの事でしょう?」

「昼休みに、ウィンスターの奴らからちょっかい掛けられたんだろ?1年の女子達が噂していたぜ」


 ハンナさん達ね。あの後、彼らに対して随分と怒っていたから、きっとみんなに言いふらしているんだわ。

 でも仕方ないわ。先生達に言っても、軽い注意しかしてくれなかったんですもの。そうやって話を広めてくれた方が安全よ。ギーズル達がまた来た時に、みんなが事前に防衛出来るように。


「ご心配頂きありがとうございます、レックス様。でも、大丈夫ですわ。手を出そうとしてきましたけど、ブーちゃんがしっかりと跳ね除けてくれましたから」

「おう。その話も聞いているぜ」


 ええっ!そんな事まで言いふらしているの?あの子達。

 不味いわね。もしもブーちゃんがオーガを倒したなんて噂が広まったら、またみんなが勘違いしちゃうわ。


「レックス様。あの、どんな風に聞かれているか分からないのですが、噂はあくまで噂ですので、話半分で聞いていただけると助かりますわ」

「だが、あのオーガを倒したのは事実なんだろ?ギーズルの奴も、悔しそうにあんたを見ていたしよ」

「うっ」


 それはそうだ。確かに、あのオーガは白目を向いて伸びていた。

 私が言葉に詰まると、レックス様は少し視線を落として、私の瞳を真っ直ぐに見た。


「なぁ、クロエさん。あんた、選手にならねぇか?サモンファイトの選手によ」

「それは…遠慮しますわ」

「何故だ?あんたらは十分に強いぞ?」


 本当にそうだろうか?だって、ギーズル達は随分と油断していた。相手がオークだと思って高を括っていた節がある。

 正式な試合だったら、ああも簡単にいかなかっただろう。

 それに、


「レックス様。私は侯爵令嬢なのです。女性は女性らしく、歌とダンスと芸術に秀でていなくてはいけません。そうでなければ、皆さんから白い目で見られてしまいます。ましてや、荒事を好むようなことがあっては、じゃじゃ馬娘と後ろ指をさされて、誰からも相手されなくなってしまうでしょう」


 そうなってしまったら、本当に不味い。ただでさえブタ令嬢と揶揄されているのだから、相乗効果で大変な事になる。

 ブタ令嬢の名前は外すつもりはないからね。せめてお淑やかなブタ令嬢を演じなければ。


「そうか。女の世界も大変なんだな」


 私の力説に、レックス様は納得して下さった。ちょっと残念そうな背中を見せて、会場を去ろうとする。

 でも途中で足を止めて、少しだけこちらを振り返る。


「他がどうかは知らねぇけどよ、クロエさん。俺はあんたみたいに強い女、そこらの令嬢よりも魅力的に見えるぜ」


 そう言って、レックス様は足早に去っていく。

 それを見て、私は暫く呆然としていた。去り際に見せた彼の赤い顔が、頭の中で焼き付いてしまっていて。


「えっと…私は、どうしたら良いのかしら?ブーちゃん」


 私はパートナーに答えを求めたけれど、彼はただフィールドを爆走しているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もはや巨漢・筋肉質の人気地元力士のファンサービスという感じ。教室に戻ってもお願いされそうw オーギュスト氏のヒッポグリフ(飛行ユニット)を倒してガルーと接戦は、他校でなければ主要キャラ級かも? ウィ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ