表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/77

42話〜本当に何でも屋なのね〜

 昨日は立て続けに変なことが起きたけれど、今日は何事もなく午前の授業が終わった。

 本当に、昨日のは何だったのかしら?


「クロエ~。早く次の授業行こ~」

「ええ、エリカさん。今、行きますわ」


 私は、この授業で使った詠唱魔法学の教科書をボイドの中にしまって、先に行っていたエリカさんの横に並ぶ。すると、エリカさんがニカッと笑みを向けてきた。


「またカステル先生に褒められてたね?クロエ。引き寄せ(アトラクト)の魔法も完璧だったじゃん」

「いえ、完璧ではありませんわ」


 寧ろ、欠陥だらけだ。物を引き寄せることまでは出来たけれど、それを手前で留めることが出来なかった。猛スピードで飛んで来るマグカップに、危うく医務室送りにされるところだった。

 それを止めてくれたのは、やっぱりブーちゃんだった。彼がボイドからこっそり手を出して、カップをキャッチしてくれた。それをみんなは、私が止めたと勘違いしている。重いマグカップを凄い速さで引き付けて、ピタッと止めたと絶賛されてしまったのだ。


「凄いよね~クロエ。私なんて、紙屑1つ引き付けるだけで精いっぱいだったのに」

「…引き寄せを成功させただけで十分ですわ。他の人は、殆ど失敗していましたもの」


 半分の生徒は、まともに浮かせることも出来なかったし、もう半分の人達も手元まで引き寄せることが出来なかった。ちゃんと手の中にまで引き寄せられたのは、エリカさんただ1人だけだった。

 …私を含めてね。


「私も、ブーちゃんに助けて貰ったから成功したように見えていますけど、実際は失敗を超えた大失敗だったのですから」

「そうなの?でも、ブーちゃんだってクロエの魔術だし、そもそも重いカップを引き寄せるまではクロエの魔法なんでしょ?なら、十分に凄いことだよ」


 そうなのかしら?

 私は戸惑う。

 確かに、カップを引き寄せたのは私のアトラクト。全体で見てしまうと失敗でも、部分的に見たら成功を収めていたのかもしれない。そこを伸ばせば、私ももう少しマシな魔法使いになれるのかしら?


「それよりさ。早く教室行かないと」


 ああ、そうだった。薬草学の移動教室に急がないと、遅れてしまうわ。

 私達は足早に廊下を進む。他の生徒達も、各々が選んだ選択授業へと歩みを進めている。

 あの教室は…美術学かしら?Aクラスの生徒でいっぱいね。


「ねぇ。クロエはもう、選択授業の枠は全部埋まったの?」

「ええ。一通りは」


 1日に4つ。週に20コマの授業が行われる中、1年生は3コマが選択授業の枠となっている。

 私は薬草学と帝王学、それと、まだ開かれていないけれどダンスの授業を選びたいと思っている。来月まで選択の猶予はあるけれど、早く選んだ方がスタートしやすい。


「そっかぁ。あたしはまだ1つしか決まってないんだ。他のも、クロエと同じのにしようかな?」

「…貴女が退屈でなければ、それでもいいですけど」


 ダンスはまだしも、帝王学は必要ないと思うわ。貴族になって領地経営したいなら別だけど。

 

「あっ、ハロードだ。やっほー!」

「やあ、エリカさん。それに、バーガンディ様」


 楽しくおしゃべりしていたら、薬草学の移動教室に着いていた。ハロード様が隣の席を指し示し、「少々、ご相談したいことがあります」と神妙な表情をされていた。

 …なにかしら?また、私が何かやらかしていますの?


「実は、ご依頼いただいていた銅貨の鑑定が、進捗がかなり滞っておりまして」


 …どうやら、私が原因じゃないらしい。

 ハロード様曰く、鑑定用の材料が足りなくて、銅貨の詳しい鑑定が出来ないらしい。その材料を今、冒険者ギルドに発注しているものの、なかなかクエストを受ける人がいないのだとか。


「大口を叩いたと言うのに、このような失態となってしまい申し訳ありません、バーガンディ様」

「いえ。それは構いませんけど…鑑定士さんは大丈夫なんですの?」


 鑑定用の道具が手に入らないのでは、商売が出来ないだろう。

 そう思って聞いたら、案の定、ハロード様のお知り合いは困っているそうだ。


「色々とツテを当たっているとは聞いているのですが、何処も品薄らしくて」


 お知り合いの店だけでなく、このラッセルの街全体で品薄らしい。

 ハロード商会経由で、他の都市から品物を取り寄せているらしいのだが、それでも納品までひと月かかるのだとか。


「ですので、申し訳ないですが…」

「分かりましたわ。私が、何とかしてみましょう」


 私が胸に手を当てて宣言すると、ハロード様がポカンと口を開ける。

 なんですの?庶民が困っているのなら、一肌脱ぐのが貴族の役割でしてよ?そう、お父様から習いましたもの。


「先ずは、その依頼がどうなっているかを確認する必要がありますわね」


 

 という事で、私は放課後のサモン部を休み、冒険者ギルドへ行くために街へと繰り出していた。同行者はエリカさんとケント君、それにハロード様だ。

 エリカさん達は楽しそうにスキップ混じりで付いて来るけど、ハロード様は暗い顔で責任を感じていそうだった。侯爵令嬢の手を煩わせてしまうなんてと、小さくぼやいているのが聞こえてしまったし。


「わぁ…これがラッセルの冒険者ギルドなんだねぇ…。セントファーのとは比べ物にならないくらい立派だよ」


 ギルドに入ると真っ先に、エリカさんが天井を見上げて声を漏らす。

 セントファーとは、エリカさん達の村から一番近い街だそうで、そこのギルドよりもここは数倍大きくて立派らしい。

 街の規模によって、各ギルドの建物もかなり違うみたい。ラッセルは王都の次に大きく、商業都市リーチモンドや鉱山都市ディボンと肩を並べる程の大都市だ。その分、ギルドも大きいらしい。


「こっちだね!」


 それでも、ギルドのシステム自体は一緒みたいで、エリカさんはすぐにギルドの中を掌握して、クエストが張り出されているボードの前に私達を誘導してくれた。

 冒険者登録はしたけれど、こうしてギルドを使うのは初めてだったから、とても助かるわ。


「ここで好きなクエストを見つけて、受付に持ってくか番号を言えば良いんだよ。クロエも何か受けたの?」

「いいえ。私は一つも」


 冒険者達が見上げている風景は目にしたが、その人達が初日に絡んできたので、ここに近付き難くなっていた。また何か言われたらと思ってしまい、受付以外は素通りとなっていた。

 でも、こうしてよく見ると、ここには人々の要望が沢山寄せられていた。

 〈バロファン草を30本納品〉や〈破裂鉱石を5kg採取〉などの採取依頼や、〈農場近くで見つけたゴブリンの巣の駆除〉や〈レッドボアの狩猟。1体以上〉などの討伐依頼がある。中には〈うちの裏路地の排水溝掃除〉や〈倉庫の整理手伝い〉なんて言う、政府や業者に任せるべき案件なんかも混じっていた。


「本当に何でも屋なのね、冒険者って」

「まぁ、手に職付けられなかった奴らの受け皿だからな、ここは」


 私の呟きに、後ろから声が返ってきた。

 振り返ると、そこには以前、私を助けてくれた青年が立っていた。


「よぉ、嬢ちゃん。今日は何の用だ?まさか、クエストを受けに来たのか?」

「いえ、発注した依頼がなかなか受注されないようでしたので、こうして見に来たのですわ」


 私は、みんなを隠す様に青年の前へ出て、クエストボードを手で指した。

 青年は「なるほどな」と呟いてから、ボードに近付いて下辺の方を指さした。


「塩漬けクエなら、大体ここら辺に貼られている。何の依頼だ?もしくは、誰の依頼だ?探してやるよ」

「鑑定士レイフさんからの依頼です」


 ハロード様が言うと、青年は「レイフ、レイフ…」とクエストボードに顔を近づける。そして、直ぐに声を上げた。


「あった。あ〜…こいつは暫く掛かるクエストだな」

「難しいの?」


 エリカさんが進み出て聞くと、青年は首を振る。


「いいや。寧ろ簡単な部類だ。この依頼対処のグランビートルってのもEランクの魔物だし、場所もプリムローズだから馬車で半日もかからねぇ。だが報酬が少な過ぎる」

「少ない!?そんな馬鹿な。ちゃんと適正価格の筈だ」


 ハロード様が(いきどお)ると、青年はもう一度ボードを指さす。そこを見ると、同じようにグランビートルを求めるクエストが大量にあった。


「最近、この手の依頼が増えてるんだよ。お陰で、従来よりも報酬が跳ね上がっている。ほら、こいつなんて報酬が大銀貨だ」

「そんな…市場価格の3倍?それでも受注者が居ないなんて…」

「居ねぇ訳じゃねぇんだけどな…」


 青年が困った顔で頬を掻く。

 どういうこと?


「こんな高額の報酬だ。最初はみんな、目の色変えて飛びついたさ。だが、いざプリムローズへ行ってみても、グランビートルが全く見つからないんだ」

「見つからない?どういう事だ?」


 ケント君が食ってかかるも、青年は「そりゃ、俺らが知りたいよ」と肩を竦める。


「兎に角、プリムローズで見つからないとなると、もっと北の方に行く必要がある。そうなりゃ移動費も高くつくから、高額報酬も旨みが薄くなって、みんな手が出なくなってるってことだ。どうせ来月には輸入品が入ってくるから、値崩れするのは目に見えてる。依頼以上にビートルの酸が採れても、二束三文で旅費の足しにもなりゃしねぇ」


 なるほど。だから誰も、鑑定士さんの依頼を受けてくれないのね。


「そう言うことだったのか…」


 青年の話を聞いて、ハロード様はガッカリされている。そんな彼を見て、私も心がザワつく。

 う〜ん。何とかならないのかしら?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マグカップ如きでは鉄壁のガードを抜く事は出来なかったかw前話で女子学生(マクシーネ嬢)相手に実力行使 (腹パン)で警告したのは、仲間守護者?としての怒りゲージを刺激された兆候と思ったけど、落ち着いたか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ