表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/77

35話~行け!俺のガーゴイル!~

 チュンチュン。チュンチュン。

 鳥の声が聞こえて、私は目を覚ます。目の前にはいつもの天蓋は見当たらなくて、ただ古びた木の天井が続いているばかりだった。

 あっ、そうか。私、ムーンガルド寮に引っ越したんだったわ。

 

 起き上がると、風が頬を撫でた。その風が流れてきた方を見ると、壁に隙間が開いているのが見える。そして、その穴から外の音が聞こえていた。

 古い建物だとは思っていたけれど、まさか壁に穴まで開いているなんて…。


「カーテンを取り付ける前に、何か埋める物を買ってこないといけないわね…」

【ブフ】


 他にも色々と買い足さないといけない物がありそうで、ちょっと物入りになるかも。家に追加のお小遣いをねだる訳にはいかないから、週末のトレジャーハントで稼ぐしかないわね。


「でも、大丈夫」


 闇魔法を使えるようになったから、以前よりもっと多くの物を持ち運べる。持って行ける装備が増えるだけじゃなくて、向こうで取れたお宝や素材も全部持って帰れるわ。

 そうなると、問題は卸先だけど…お宝はハロード様にお願いするとして、魔物の素材は冒険者ギルドに卸すのが一番よね?下手に高く売ろうとしたら、何だか足が付きそうで怖いもの。


 ぐぅ~。

 朝から色々と考えていたら、お腹が鳴ってしまった。


「ブーちゃん?今のは聞かなかったことにしてちょうだい」

【ブフーフ?】


 ブーちゃんは「なんのこと?」みたいに言いながら、腕をボイドから突き出して、部屋のドアを指さす。

 うん。そうね。早く朝食会場に行きましょう。


 私は食堂へと降りた。

 でもそこは、朝食会場とは思えない空間となっていた。


「おい!押すな!俺が先に並んでたんだぞ!」

「バカ野郎!何処に目を付けてやがる!俺の右足がお前の前に入っていたのが見えなかったのか?!」


「ちょっと、それは盛りすぎよ!後の人の事も考えてよ!」

「いいじゃない!早起きしない人が悪いんだから」


「そいつは俺の肉だ!」

「もう唾を付けた俺のもんだよ!」

「この野郎!」


 朝食会場はもはや、戦場と化していた。

 怒号とパンチと皿が飛び交い、偶に男子生徒も宙を舞う。誰もが手に持つ皿を満たす為に、我先にと大テーブルへ突撃を試みる。人々が群がり前が見えない中、ちょっとの隙間から腕を伸ばして、机の上に残されたパンと肉を引っ掴む。

 これは…。


「酷いわね。収穫祭というより、喧嘩祭や石投げ祭に近いわ」

「今日は特にね~。チーズと肉の塊が出るから…」


 いつの間にか、ヨレヨレ姿のエリカさんが横に立っていた。彼女の後ろには、顎を赤くしたケント君が皿を2枚持っている。その皿には、僅かばかりの肉片と白パンが乗っていた。

 

「あなた達…あの中に入ったの?」

「そだよ~。じゃないと朝ごはん食べられないからね~」

「エリカがもう少し早く起きてくれたら良かったんだけどな」


 ええ、そうね。私もこの戦場を知っていたら、朝日が出る前に来ていたわ。

 どうしよう?私もあの中に突っ込むの?でも、服もヘアも崩れちゃうわ。

 

【ブフーフ】


 どうするべきかと悩んでいると、ブーちゃんの手がボイドから伸びてきた。彼のその手にはお皿が乗っていて、その上にはお肉やチーズや野菜などがふんだんに盛り付けられていた。


「まぁ!ブーちゃん。取ってくれたの?」

【ブフフ】


 流石はブーちゃん。闇魔法を駆使したら、分厚い人垣もなんのそのね。


「えぇっ!?クロエ、そのお皿どうしたの?」


 眠そうだったエリカさんの目が見開かれる。

 私が「ブーちゃんのお陰よ」と言うと、「私もシロちゃんで…」と、治癒の光りを人垣に向けていた。

 貴女のその力は、そっちじゃなくてケント君に向けるべきだと思うわ。

 賑やかな朝食会場を背に、私達は手早く朝食を済ませた。


 

「バルツァー先生!」

「ああ、バーガンディ君」


 放課後。サモン部へと向かっている時、コロッセオ部の前でバルツァー先生の姿を見かけた私は、つい走り出してしまった。そして、先生にお礼を言って頭を下げる。

 先生が迅速に対応してくれたお陰で、こうして無事に寮の移動が出来たのだから。


「なに。礼を言われる様な事はしていないよ。私はただ、スザンナの奴に君のことを伝えただけだ。それよりも、本当に寮を移って良かったのか?ムーンガルドは、その…エニクスとはかなり違うだろう?」

「ええ。大丈夫です。この子のお陰で、何とかなっていますから」


 私は刻印を見せて、小さく微笑む。

 本当に、ブーちゃんのお陰で助かっているわ。朝食の時も、料理を取ってきてくれただけじゃなくて、食べている最中に飛んできたフォークやコップ、男子生徒を跳ね返してくれた。エリカさん達と分けあって食べたから、彼女達もブーちゃんに感謝していた。

 きっと、ブーちゃんはそれも見越していたんだと思う。私が食べるにしては、あまりに山盛りにし過ぎていたから。


「ふむ。そうか。やはり君は優秀な生徒だな。ではまたエニクスに戻りたくなったら、いつでも私かスザンナに言うんだぞ?」

「あの、先生。私が優秀なのではなくて…」


 言い終わる前に、先生は行ってしまった。

 ああ、もうっ。なんでみんな聞いてくれないの?

 

 釈然としない気持ちを抱えたまま、私はサモン部へと向かう。

 授業を終えてすぐに来たからか、まだ来ている部員は少ない。

 私はすぐにブーちゃんを召喚して、フィールドの整備を始める。

 あっ、ブーちゃんは首に鎖を巻いてね?そのままだと、野生のオークと間違われちゃうから。


「おーい。バーガンディさーん」

「今日は来てくれたんだね?」

「無理しないでねー!疲れたら、俺が風魔法使ってあげるから!」


 ブーちゃんと一緒に準備を進めていると、通りかかる先輩達から声を掛けられる。

 女性部員が数名しかいないから、みんな異性に対して過剰に優しい。

 嬉しくない訳じゃないけれど、ちょっと怖いわ。だって、先輩達のファミリアはどの子も強そうなんだもの。鋭い爪や牙、角を持つ魔獣や幻獣。そして魔力が有り余っている上位精霊達…。

 私達は大人しく、整地に勤しみましょう。


「行け!俺のガーゴイル!」

「相手してやれ!サハギン!」


 暫くすると、フィールドの中央ではサモンファイトが始まっていた。先輩達が互いのファミリアを戦わせて、本格的な模擬試合を繰り広げている。


【ゴー!】

【ギャギョ!】


 先輩達の声に背中を押されて、ファミリア達もやる気だ。目の前の相手を敵と認識し、鋭い爪や手に持つ鋭利な槍で攻撃し合っている。

 

「そこだ、ガーちゃん。引っ掻け!相手が空振りした時を…違う違う!槍を攻撃するんじゃない!腹だ、空いている脇腹を狙うんだ!」

「サハギン!そんな大振りをするな!間合いを取って、有利な距離で槍を突き出し続けて…ああ!なんで自分から近付くんだよ!?離れろ!」


 先輩達も必死だ。何とか自分達の思い描く戦い方をファミリアにやらせようと、声を枯らして指示を飛ばす。

 でも、ファミリア達は聞いていない。もう目の前の相手に夢中になってしまって、召喚者の言葉を無視していた。

 あっ、先輩達が鞭を取り出して、地面を叩き始めたわ。


「回り込むんだ、ガーゴイル!相手の背中側から攻撃しろ!」

「構えろ、サハギン!迎撃するんだ!」


 ビシバシ地面を叩きながら命令すると、漸くファミリア達も先輩達の言うことを聞きだす。

 でも、さっきよりも勢いがない気がする。命令も忠実に実行出来ているとは言えなくて、ガーゴイルはゆっくりとサハギンの周囲を歩き回り、サハギンは槍を構えてガーゴイルに向き合うだけ。そして、また2匹は正面からの取っ組み合いを始めた。


「ああ、違うってガーちゃん!」

「サハギン。もういい。一旦戻れ!」


 随分と苦戦しているけれど、先輩達でもファミリアを扱いきれないの?やっぱりブーちゃんが特別なのかしら?

 いいえ。もしかしたら、強力なファミリアはそれだけ扱いが難しいのかも。精霊系はご機嫌取りが大変だって聞いたけど、それは精霊が強力な魔力を持っている事も原因みたいだし。

 目の前の2匹が強力かって言われたら…ちょっと疑問に思っちゃうけれど。


 そうして先輩達のサモンファイトを見ていたら、向こうの方で威勢のいい声が響く。


「っしゃあ!トドメだ、ガルー!」

【ガルルァ!】


 見ると、赤髪の少年が勇ましく拳を振り上げて、彼の目の前に立つ屈強なウルフに指示を送っていた。

 あれはウルフ…のように見えるけど、二本足で立っているから違うわね。ええっと、狼人間の…ワーウルフだったかしら?

 ワーウルフは少年に言われるままに、対戦者のファミリアに食らいつき、そして消し去ってしまった。


「良くやった!ガルー。7連勝だぜ!」

【アオォオン!】


 少年のガッツポーズに合わせる様に、ワーウルフが高々と遠吠えをする。その姿は、息の合った相棒のように見える。

 少なくとも、私の目の前で呆然としている2人の先輩達に比べて、ファミリアとの絆があるように思えた。

 そんな彼の名前は…。


「なんだよ、あいつ。見ない顔だな。1年か?」

「お前知らないのか?あれが、王国近衛騎士団団長ゲオルグ・モントゴメリー様のご子息、レックス・モントゴメリー様じゃないか」


 そう、彼こそがレックス様。ケント君が気を付けろと言っていた人物だった。

早速、危険人物との接触でしょうか?

何が危険なのか、全く分かっていませんが…。


イノセスメモ:

・ワーウルフ…人狼。ライカンスロープとも言う。

・ガーゴイル…石で出来た悪魔。西洋建築の雨樋になっている。

・サハギン…半魚人。銛やトライデントなどを使う、獰猛な種族。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勝ち過ぎると上級生も含めて?食べ物の恨みを買うが、遠慮すると菜食主義へ墜ちる負けられない男の戦場w そこに現れる怪盗オーク「ヤツはトンでもないものを盗んでいきましたモグモグ」先生的には悪用の範疇?w …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ