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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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28話〜良い子だ、マレ〜

 私はブーちゃんが強くなるサポートをする為、ファミリアを戦わせるサモン部に来ていた。どんな部活なのかを見学させてもらい、良ければ入部しようと思っていた。

 …勿論、選手としてじゃない。私の目的は、あくまでもブーちゃんのトレーニング場所を確保すること。この部のマネージャーとかになって、当初の目的だったダンス部には兼部で入ろうと思っている。

 思っていたんだけど…。


「うぉおおお!マネージャー希望だと!?バーガンディ侯爵令嬢様がウチのマネージャーになってくれるだとぉお!」

「やったぁ!可愛いマネージャーが、とうとうウチの部にも!」

「これでもう、コロッセオ部の奴らにデカい顔されなくて済ぜ!」


 ただ見学に来ただけなのに、何故かもうマネージャーになる事が決まったかのように喜び出す男子部員達。

 それほどマネージャーに飢えていたの?でも私、まだ入るとも決めてないし、ブーちゃんがトレーニング出来るかも分からないし…。

 私が困っていると、アクロイド先生がシッシと怖い先輩を追っ払ってくれる。


「邪魔だ、お前ら。バーガンディ嬢はまだ、入部すると決まった訳じゃねぇ」

「そうよ、あんたら。新入部員が怖がってるじゃない!」

「クロエさんが逃げちゃったら、あんたらのせいだからね?」


 先生に続いて、女子の先輩達も援護してくれている…と思ったけど。なんか、言い回しがちょっと変じゃありません?先輩。


「じゃあ、今日はこの部活の事、ウチが色々と教えてあげるよ」

「そうだな。バーガンディ嬢。このハワード先輩に色々と教えて貰え。私は、こいつらを扱くのに忙しいんでな」

「「「ええぇー!」」」


 悪態を付く男子先輩達を蹴散らして、アクロイド先生達はフィールドへと戻っていく。

 残った女子の先輩が、私に自己紹介してくれた。名前はカミラ・ハワードと言うらしい。きっと、男爵位のハワード家だと思う。


「ありがとうございます。ハワード先輩」


 家の格が私より下でも、学年が上の先輩を敬うのは常識だ。爵位があるのは、あくまでお父様達の話なのだから。


「カミラで良いよ。私も、クロエちゃんって呼ばせて貰うからさ」

「はいっ。カミラ先輩」


 いい先輩だ。人によっては、最初からマウントを取ろうとしてくる方や、敵意剥き出しで見てくる先輩も居るから。

 中等部の時も、時々変な先輩に絡まれた事がある。だから、カミラ先輩がそんな人じゃなくて助かった。

 …この部活の人がみんな、そうとは限らないけど。


「この部活は基本、ファミリアと共に行動するからさ。先ずはファミリアの状態を確認して、調子を上げていく事から始めるんだよ」


 先輩が指さす先では、部員のみんなが広場に散らばって、ファミリアの世話をしていた。

 魔獣系のファミリアを持つ人は、毛並みを整えたり爪や牙を磨いたりしている。分厚い肉を食べさせている人もいた。

 森ではブーちゃんもお肉を食べていたけれど、強くなる為には必要なのかしら?ファミリアは食事が必要ないって聞いていたから、普段はあげてなかったけれど。


 フィールドの端では、精霊系のファミリアを持つ人達が集まっている。精霊とお喋りや追いかけっこなどの遊びに興じている人が殆どだけど、魔獣系みたいにお世話はしないのかしら?


「カミラ先輩」

「うん?なに?」


 気になったので、質問してみた。すると、こんな答えが返ってきた。


「精霊系は基本、気分屋さんだからね。ああやってご機嫌を取る方が一番のお世話になるんだよ」

「そうなんですの?でしたら、普段から一緒に過ごした方が良いのではないでしょうか?」


 お喋りとかなら、寮の自室でも出来そうなのに。

 そう思ったら、先輩に笑われてしまった。


「それは厳しいね。繰り返すけど、精霊は気分屋なんだ。召喚した途端、その精霊の気分次第では魔法を使われる事もあるんだよ。ちょっと昔に、部屋で炎系の精霊を出したら、ベッドも翌日の課題も本人の髪も、みんな燃やされちゃった先輩が居たらしいよ」


 先輩はクスクス笑うけど、私は驚いてしまった。

 精霊って、そんなに気難しいんだ。サモンファイトの大会を観てる感じだと、綺麗で優雅なイメージしか無かった。

 だから、魔獣よりも扱い易いと思っていたんだけど…もしも上級精霊とか召喚していたら、かなり気を使って、精霊のご機嫌取りをする羽目になっていたのかも。

 本当に、召喚したのがブーちゃんで良かったわ。


「この後は訓練のスタートだね。最初はみんな、ファミリアとのお散歩から始めて、徐々に本格的な訓練に入るんだ」


 殆どの部員は、拘束魔法で魔法の鎖を作り出し、それでファミリアを繋いで移動させている。


「今日は人が少ないから、みんなフィールドの中で走れそうだね。部員が多いと、外を走る先輩も居るんだよ」

「これが全員ではございませんの?」

「うん。コロッセオ部とかと兼部している人も居るからね。そう言う人も合わせると、今の3倍は居るんじゃないかな?」


 そうなの?今だって20人くらい居るのに、それの3倍って…。


「でもさ。それだけいても、女子の部員は4人しかいないんだ。しかも、その内の2人はコロッセオ部がメインだから、こっちにはたまにしか顔出さないし」


 だから、態々食堂にまで来て勧誘を行ったり、見学しに来ただけでガッチリ包囲網を敷かれてしまったってことなのかも。

 彼女達の熱意は分かったけれど、先輩達の行動自体も、女子部員が増えない理由だと思うわ。


 鼻息を荒くする先輩に、私が哀れみを感じていると、馬の蹄の音が聞こえてきた。

 見ると、白馬がこちらへと駆けて来ていた。その上には、乗馬用のヘルメットを被った生徒が乗っている。

 馬は、私達のすぐ横で停止した。


【ブルル】

「どうどう。良い子だ、マレ」


 違った。白馬かと思ったその子の額には、捻れた長い角が生えていた。

 幻獣種のユニコーンだ。なんて美しい毛並みなのかしら。


「どうかな?ハワードさん。見学者さんは入ってくれそうかい?」


 そう言いながらユニコーンを降りる男子生徒も、美しい金髪の貴公子だった。

  

「バッチリですよ、オルレアン部長。必ず私が口説き落としてみせますので」

「ははっ。無理な勧誘はダメだよ」


 そう言って笑う姿も、キラキラして眩しい。

 オルレアン公爵のご令息だ。随分前に何かのパーティーでお見かけした事はあったけど、その時は挨拶も出来なかった。でもまさか、こんな所でお会い出来るなんて…。

 私がポケ〜っとしていると、オルレアン様の青い瞳がこちらを向いた。


「バーガンディさん。見たい事や聞きたい事があれば、遠慮なく我々に聞いて欲しい。とても良い部活だから、少しでもその魅力を伝えたいと、先輩達はみんな思っている筈だ」

「は、はい」


 オルレアン様は満足そうに微笑んで、颯爽と広場に戻ってしまった。

 カミラ先輩が、得意げに笑う。


「凄いでしょ?ウチの部長」

「えっ?」


 彼の容姿に見惚れていたことがバレたと思って、一瞬ドキリッとした。

 でも、


「ほら、部長が使ってるのは普通の手網だよ。拘束魔法を使わずに騎乗出来るのは、ウチの部では部長くらいなものなんだ」


 ああ、そういう事ね。


「凄いですわね」


 私は安心して、息を吐き出しながら答える。そして、周囲を見て確かにと思った。

 魔獣系のファミリアを使役する先輩達の多くは、拘束魔法を使用したまま訓練を行っている。特に、牙や爪が鋭い物はかなり太い鎖に繋がれていて、鞭で地面を叩いて調教している人もいた。

 なんだか、ファミリアがかわいそう…。

 

「あー…あれね。あそこら辺の人達は逆に、まだまだファミリアを扱い切れていないグループだよ」


 私の視線を追って、先輩がすかさず説明してくれる。

 扱いに慣れていないと、鞭を使うらしい。


「最初の内は、言葉より音とか衝撃で命令を伝えるしかないからね。でもその内ファミリアと心が通じて、行け!とか、待て!って短い命令であれば鞭を使わずに命令出来るようになる。部長達みたいに親密になれば、もっと色んな命令を言葉抜きに出来るようになったりもするよ。まぁ、部長の場合、供給する魔力量を制御したりもしているみたいだけど」

「魔力供給を、制御する?」

「うん。そうだよ」

 

 なんでも、ファミリアへ供給する魔力量を絞る事で、ファミリアを落ち着かせることが出来るらしい。その制御を上手に行う事で、拘束魔法を使わずにファミリアを操れるのだとか。


「でも、その調整はかなり難しいんだ。やり過ぎるとファミリアが弱っちゃうし、もっとやり過ぎると召喚魔術自体が維持できなくなっちゃう。相当技術力がないと出来ない技術だよ」


 でも、オルレアン部長はそれが出来るのか。

 私も出来るようになりたい。そうしたら、きっとブーちゃんの助けになるから。

 あの時、ヘルさんに勝負を挑まれた時、私がもっと魔力供給を多く出来ていたら、ブーちゃんに苦しい思いをさせないで済んだかもしれないのだから。


「あの、先輩」


 私は再び、気持ちを固める。


「私、この部活に入りたいです」

「ありがとう!じゃあ早速、これを書いて」


 先輩はすぐさま、用紙と羽ペンを取り出した。その用紙には〈入部届〉の文字が。

 …最初から、書かせるつもりだったのね。もう既に、入ると言った事を後悔し始めているわ。

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― 新着の感想 ―
サモン部を選択したのは、荒事には興味が無くブー殿の要望ゆえだろうけど、今後フィールドワークや冒険者 活動をせず、令嬢らしく慎ましやかに過ごすなら不要な鍛錬を手配するのは、魔法詠唱のように不得意分野を …
感想一覧
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