表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/79

19話〜振り落とされますわよ!〜

 ハンナさんのファミリアであるドンちゃんことカリュドーンは、牛よりも遥かに大きな巨大イノシシである。その性格は見た目通りで、召喚した瞬間から怒りをまき散らし、目に付くもの全てをなぎ倒さないと気が済まない。

 まさに猛獣。ハンナさんが召喚を躊躇するのも仕方がない。

 そこで、召喚魔術が得意と言われている私が手伝う事となった。

 

 得意じゃないわ。

 全然、得意じゃないわよ!

 エリカさんがそう言うから、みんなが盛大に勘違いをしているだけなのよ!

 

 そう叫びたかった。でも、出来ない。今更そんなことしても無駄。だってもう、私の隣には準備万端なハンナさんの姿があるから。


「クロエ様と一緒なら、私、出来る気がします!」


 キラキラした目を向けてくるハンナさん。

 健気で可愛い。


「クロエ〜!こっちは任せて〜!」


 キラキラした目で、こっちに手を振るエリカさん。

 可愛くない。

 貴女、面白がっていますよね?


 私とハンナさんは、競技場の真ん中で構えている。ここで、ドンちゃんを迎え撃つつもりだ。

 エリカさん達は壁際まで下がっている。彼女達は囮役だ。ドンちゃんが召喚されたら、大声や音を出して注意を逸らせる。その間に、ハンナさんが作った鎖をドンちゃんの首に掛けるのだ。

 そうすると、逆にエリカさん達が危険となるが、そこも対策済み。上級生達が彼女達の前に立ち、防御魔法を展開する事になっている。

 それに加えて、


「俺達も声出すぜ!」

「手伝わせてください!」


 Cクラスの人達も協力してくれるみたいだった。前回の授業で、私への印象も随分と変わったみたい。

 噂に流されて態度をコロコロ変えるのはどうかと思うけど、それはCクラスの人達に限ったことじゃない。ヒソヒソ噂話をやめてくれただけで、随分と助かる。それが、お手伝いまでしてくれるなんて…。

 

「こちらの準備は整った。あとは、君のタイミングで召喚しなさい、ウォロップ君」


私の横に控えるアクロイド先生が、ショートソードを構える。

 

「ひゃ、ひゃい」


 噛みながらも、ハンナさんは両手を前に突き出した。

 そして、問題児を召喚する。


「しょ、召喚!ドンちゃん!」

【…フゥ、フゥ、フゥ…】


 あら?今日は随分と大人しいのね。前回は召喚された初っ端から、盛大に鼻を鳴らしていたのに。

 よく見たら、右頬に青あざが出来ているわ。あれは、ブーちゃんに殴られた痕。


「こりゃ、十分に魔力を送ってやらなかったなぁ?」


 先生が頬を吊り上げる。

 先生曰く、ファミリアは魔力を注げば回復するし、たとえ死んだとしても、魔力次第で復活させることも出来る。逆に言えば、魔力を注がなければ何時までも怪我は治らないのだとか。


「ご、ごめんなさい。私、うっかり召喚しちゃった時を考えたら、回復させて元気にさせちゃうのが怖くて…」


 それは…確かに、前回の様子を見ていると気持ちは分かるわ。ブーちゃんに殴られた今の方が、扱い易そうだもの。

 そう思ったのは、先生も同じみたいだった。

 

「ああ、分かった。今は良いから、ほれ、早く拘束魔法を打て。(やっこ)さん、こっちを敵と認識したぞ」


 先生の言う通りだ。ドンちゃんの目が、血走り始めた。

 来るわ。


 【フゴォオオ!!】


 空に向けて(いなな)き、前足で地面を掻き上げる。もう走り出すぞというタイミングで、エリカさん達が声を上げる。


「こっちだよ!ドンちゃん!」

「丸焼きにしちゃうよ!」

「マヌケー!豚っぱなー!ブター!」


 クラスメイト達が一斉に声を上げたので、ドンちゃんの視線がハンナさんから一瞬逸れる。

 今だ。


「ハンナさん!」

「はい!チェーンバインド!」


 太めの鎖が飛び出し、一直線にドンちゃんの元へ。

 これなら、幾ら巨大イノシシでも千切れないでしょう。

 そう思ったけど、ドンちゃんは急に私の方を向いて、牙で鎖を弾いてしまった。

 なんてこと!


【フゴォオオ!!】


 攻撃を受けたと思ったのか、ドンちゃんが標的をこちらに戻して突進して来た。


「貫け!ファイアランス!」


 先生の中級魔法が鼻に当たり、大きく減速するドンちゃん。

 だけど、止まらない。頭を苛立たしげに振って、再びこちらを見た。

 来る。

 だったら、


「チェーンバインド!」


 ハンナさんが詠唱している横で、私も魔法を発動させる。鎖をワザと顔に当てて、少しでも時間を稼ぐんだ。

 そう思ってたんだけど、


【ブフー】

「ブーちゃん?!」


 ブーちゃんの鳴き声が聞こえ、黒い穴がドンちゃんの頭上に現れる。そこからブーちゃんのたくましい腕が出てきて、弾かれた私の鎖をしっかりと掴むと、すぐさまドンちゃんの首に巻き付けた。


【フゴォォオ!!】


 またブーちゃんのお陰で、鎖を首に巻き付ける事に成功した。それにより、明らかにドンちゃんの動きが鈍った。

 でも、止まらない。ゆっくりと、こちらに歩いてくる巨大イノシシ。

 えっと…どうしたら良いんだろう?先生にお願いして、弱らせてもらう?でも、それじゃあ、ハンナさんをご主人様って認識させられないわ。


【ブフー】


 またブーちゃんの声。今度は、私達のすぐ近くに穴が出来た。そこから腕が生えてきて、私とハンナさんを抱きかかえてしまう。そのまま、ドンちゃんの背中まで運ばれていく。

 背中に、ライドオン。

 私達、暴れイノシシに乗っちゃったわ!


【フゴォオオオ!】


 凄い不服そうな声で鳴きながら、ドンちゃんがぐるぐると回り出した。何とか背中の異物を取り除こうと、鼻を上に向ける。

 これは、しっかりと手網を…じゃなかった。鎖を持たないと。


「ハンナさん!私の背中にしがみついて!振り落とされますわよ!」


 これは馬と一緒だ。実家の牧場で、お父様に習った乗馬を思い出すのよ。

 私は鎖をグッと力いっぱいに持つ。でも、イノシシは馬程賢くなくて、その程度の力では止まってくれない。体が巨大だから、余計に力が必要なんだ。


【ブフ】


 再びブーちゃんの声。気付くと、私の手の前にブーちゃんの手が添えてあった。そのまま、私と一緒に鎖を引くブーちゃん。


【フグゥウウ…】


 ブーちゃんの怪力で引っ張られたことで、首を絞められてドンちゃんが唸り声を上げる。そして、とうとうドンちゃんの動きが止まった。もう、振り落とそうとしない。試しに私だけの力で鎖を引っ張ると、大人しく私の思う方へと歩き出した。

 調伏、成功だ!


「「「わぁああ!」」」

「やった!クロエ!」


 クラスメイト達が喜ぶ。エリカさん達だけじゃなくて、Cクラスみんなの視線がこちらに向いていた。

 

「凄いですわ、クロエ様。ドンちゃんが、ワンちゃんみたいに…」

「貴女もやるのよ?」


 私は半強制的に、ハンナさんに鎖を握らせる。

 最初はぎこちない手綱捌きだったけど、私が後ろに座り直して体に教えこんだら、徐々に1人でも出来る様になっていった。

 よしよし。これで、ハンナさんがご主人様って分からせる事が出来たわね。


 私達が乗馬ならぬ乗イノシシをしていると、クラスメイト達が集まってくる。


「すげぇ!」

「こんな巨大ファミリアを乗りこなすなんて…」

「流石はクロエ様。バーガンディ家のご令嬢ですわ!」


 あら?貴女、バーガンディ家が乗馬を得意としていることをご存知なの?それとも、卒業生であるお兄様達の事を言っているのかしら?


「クロエさん!私にも、ファミリアのレクチャーをして頂けませんか?」

「俺にもお願いします!バーガンディ様!」

「私にもお願い致します!クロエ様!」


 ええっ!?ちょっと待って。なんで、他の人達も便乗してきてるの?

 多くのクラスメイト達から切望されて、私はイノシシの上で困惑する。

 先生も困惑気味な表情で、口だけ笑みを浮かべる。


「勘弁して欲しいですねぇ、バーガンディ嬢。貴女が今やっているそれ、ファミリアへの騎乗は、3ヶ月も先のカリキュラムだったんですがねぇ。私より先に手本を示されてしまっては、私の立場がありませんよ」


 ええっ!?そうなの?

 私は驚き、足元でエリカさんが跳ねる。


「凄いよクロエ!先生を越えちゃうなんてさ。本当に私達の先生だね!」

「本当ね。クロエ先生よ」

「クロエ先生!今度は僕にも騎乗の仕方を教えて頂きたい!僕のモーちゃん、草しか食わないんだ!」

「私のピーちゃんはすぐ逃げちゃうの。どうにかして頂けませんか?クロエ先生」


 ちょっと!みんなが先生呼びになっているじゃない。

 どうするのよ、これ!

 私は、大イノシシの上で頭を抱えた。



 それからと言う物。


「あっ、クロエさんおはよう」

「ごきげんよう、クロエ様」

「クロエ先生!今日もよろしくお願いします!」


 私は四六時中、クラスメイトに話しかけられるようになってしまった。

 朝に教室へ入った直後から、授業の合間も、昼休みの間も、放課後にも。

 そして、ただ挨拶されるだけではなく、色々とファミリアの相談事まで受けるようになってしまった。


「私のプニちゃんがいたずらばかりするんです。ブラッシングしてあげようと思ったら、教科書をカジカジして…」

「俺のボナコンは糞をまき散らすんです。幻獣ってトイレが必要ないって聞いてたのに、何でですかね?」

「僕のイピリアがまた、居なくなったんですぅ~!」


 ちょっと待ってよ、みんな!


「私は飼育委員でも、獣医でもないわよぉ!」


 これ以上、私を持ち上げないで下さいまし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
駿馬とかでも充分目立ちそうな所、ダンプカーみたいな大猪を乗りこなすロデオの名手?となればクラスでの 掴みはバッチリ、サモンファイトの人気ありそうなお国柄で、人当たりも改善して来れば人気者にもなるわね …
ブーちゃんの外付けエンジンがクロエ嬢を先生に押し上げてる……しかしこれでも認識されないブーちゃんアシスト、一体なぜなんでしょう……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ