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ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


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14話〜さて、どうだねバーガンディじょ…〜

「また私が見に来る。それまでは掃除に専念しなさい。途中で投げ出したりしたら、更に厳しい罰を与えるからな?しっかりとやるように」


 一方的にそう言って、バルツァー先生は足早に出ていってしまった。

 取り残された私は、もう一度よく部屋の中を見回した。

 最初は薄暗くてよく分からなかったが、この部屋は随分と広い。私の部屋よりは一回り小さく、Cクラスの教室より2回り小さいくらいかしら?

 床には厚めの(ほこり)が積もっているし、器具も泥だらけで放置されている物ばかり。甲冑だけはピカピカなのは、先生が綺麗に磨いているから?


 兎に角、こんな広くて汚い部屋を私1人で掃除なんて、とても終わる気がしない。

 明日?明後日?

 ううん。下手したら、週末までかかるかも。そうしたら、週末のキャン…トレジャーハントが出来ないわ。

 どうしよう…。


 私は悩む。

 その時、右手が熱く感じた。

 見てみると、ほのかに刻印が濃くなっている気がして、小さく脈動している様にも思えた。

 ええっと…出せって言っているのかな?


「ブーちゃん召喚!」

【ブッフー】


 声高らかに召喚すると、ブーちゃんは両腕に力こぶを作った状態で現れた。

 ええっと…やってやります、みたいなジェスチャーかしら?


「一緒に掃除してくれるの?」

【ブッハハー】


 ブーちゃんはやる気だ。

 早速、乱雑に置かれていた器具を抱えて、部屋の端や棚の中に戻し始めた。

 かなり重そうな物もあるのに、ヒョイヒョイって軽々しく持ち上げている。

 ハイドの森でも思ったけど、ブーちゃんは力持ちだ。体が大きいからって事もあるだろうけど、兵士の訓練が好きなことも大きいと思う。昨晩、部屋で召喚した時も、私が寝るまでずっと訓練しっぱなしだったし。


「じゃあブーちゃんは、散らばった物の整理をお願いね。私は、床に積もった埃を片付けるわ」

【ブゥウ~!】


 ブーちゃんが慌てるように大きく首を横に振って、胸の前でバッテンを作った。

 えっ?どうして?整理するのが嫌だってこと?

 彼が何を言いたいのか分からなくて、固まる私。そこに、ブーちゃんが何かを渡してきた。

 これは…布切れ?これで拭き掃除をしろってこと?

 目を点にしていると、ブーちゃんはその布を口の周り着けて、頭の後ろで縛った。


【ブホホ】


 誇らしそうにしているけれど、なんだ儀式で使うベールみたい。

 お掃除をお祭りみたいに考えているのかな?ブーちゃんは。


「こんな感じで良いの?」

【ブー…ブゥゥ】


 着けてみたけど、ブーちゃんは不満みたい。私の後ろに回り込んで、つけ直してくれた。

 それは有り難いんだけど、ブーちゃん。これ、なんだか息苦しいわ。お掃除がし辛くなってる。


「着けなきゃダメ?」

【ブッブー】


 大きく頷くブーちゃん。

 彼がこれだけ言うのだから、よっぽど大事な事なんだと思う。それなら…我慢しよう。


「さぁ、改めて始めるわよ!」

【ブッハー!】


 私達は手分けして、お掃除を行う。

 でも、なかなか上手くいかない。

 ブーちゃんはテキパキと片付けている横で、私は埃に遊ばれている。箒で掃くと、埃があっちこっちに舞い上がってしまうのだ。


「ああ、なんでそっちに行くの?ちゃんと集まりなさい!」

【ブホ?】


 ついイライラして声を上げてしまい、ブーちゃんを驚かせてしまった。

 ごめんなさい。貴方はそっちに集中していて。


【ブフッ。ブーブー】


 ブーちゃんは仕切りに、私の左手を指さす。その手に着けている、水の指輪を。


「水?水を出すの?」

【ブホー。ブホー】


 手を広げてジェスチャーするブーちゃん。

 ええっと…雨かな?雨みたいに水を降らせるってことかな?

 そう言えば、家のメイド達が庭掃除をする時、水を撒いて砂埃が舞わない様にしていた気がする。それを言っているのね?

 試しにやってみると、あれだけ好き勝手暴れていた埃が、大人しく箒に捕まってくれる様になった。

 わぁ、凄い。こんな簡単にキレイになるなんて。


「やったわ、ブーちゃん。ありがとう」

【ブフフフ】


 ブーちゃんが拍手してくれる。

 流石はブーちゃんね。こんな知恵も持っているなんて。

 よし。このまま一気にやっちゃうわよ!



 それからは順調だった。

 ブーちゃんは器具の片付けを早々に終えて、床や壁の拭き掃除までしてくれた。

 私の床掃除も、簡単に終わった。埃が目に入ってシバシバしたけれど、口に入らないから呼吸が楽だった気がする。家に帰ったら、メイドたちにも教えてあげよう。


 最初はとても終わらないと思っていた部屋の片付けも、これで殆ど終了だ。

 後は、この汚れた器具を拭いて綺麗にするだけ。

 早速取り掛かろうと桶の水を水魔法で満たしていると、急にブーちゃんが慌てだした。


【ブッブー!ブフー!】


 私の右手、黒い刻印を指さして、次いで自分自身を指さすブーちゃん。


「ええっと…召喚を解除しろって…ことかしら?」

【ブッフー】


 正解らしい。

 訳が分からないままに、私はブーちゃんを戻す。するとすぐに、部屋の扉が開いた。


「さて、どうだねバーガンディじょ…」


 バルツァー先生が口だけ笑みを浮かべて入って来たけれど、一歩踏み出した途端に、そのポーズのまま固まって動かなくなってしまった。

 えっ?なに?どうしたんです?先生。私、何か間違った事をしていましたか?もしかして、水魔法を使っちゃダメだったです?家でもたまに、新人メイドが水拭きをして怒られていたし…。

 急に不安が押し寄せてきて、もう一度部屋を振り返る私。

 その頃になって漸く、先生が再起動する。


「こっ、これはどういう事だ?どうしてこんなにも綺麗になっている?普通にやったら3日はかかる量だったのに、たった数時間でほとんど終わっているじゃないか…」


 再起動はしたものの、驚きで口を開けたままの先生。呪いの仮面みたいにちょっとホラーチックな顔で、私を見下ろしてきた。


「何をしたんだ?バーガンディ嬢。君のようなか弱い者が、あの重い訓練器具を動かせるとは思えない。何かの魔法を使ったのか?」

「えっと、バルツァー先生。魔法は使いましたが、基礎的な水魔法だけです。重いのは全部、私のファミリアが運んでくれたんです」

「なに?ファミリア?」


 先生は眉を大きく上げて、更に怖い表情になる。その顔でチラリと私の刻印に目を落とすと、「ふっ」と笑った。そして、小さな声でブツブツと呟く。


「有り得ん。召喚したての1年生が、そんな器用に従魔を使いこなすなどと…。そうか、知られたくない家の秘術か何かか…。それなら仕方あるまい」


 えっと、何か勘違いされているみたいなんですけど、大丈夫かな?

 心配して先生を見上げていると、彼女の怖い表情は漸く元に戻り、私の肩に手を置いた。


「良くやったぞ、バーガンディ嬢。これで今回のペナルティはお終いだ。次からは、門限を守るようにするんだぞ」

「はい。申し訳ございませんでした」


 私は小さく頭を下げる。

 貴女が時間に厳しい事も、そして、懐中時計が5分早い事も、しっかり頭に入れておきますからね。


「ところで、物は相談なのだが?」

「えっ?」


 なに?なんか、嫌な予感がするんだけど…?

 私は半歩下がって、先生を見上げる。


「なん、でしょう?」

「うむ。君達1年生は、そろそろ部活動に入る権利を与えられる筈だ。平日の放課後、各部活では生徒達が切磋琢磨している。私も、戦闘系の部活顧問を幾つか掛け持ちしているのだが…君もそこに入らないか?」


 うえっ!?


「戦闘系の部活…ですか?」

「そうだ。主に剣と魔法で戦うコロッセオ部や、召喚獣と共に戦うバディーファイト部。召喚獣だけで戦うサモンファイトも人気だ。もしも魔法だけで戦いたいなら、スザンナ先生が顧問の呪文部を紹介してやろう」

「あの、先生…私は女なんですけど…」


 先生は鼻息荒く説明してくれているけど…全部、バチバチに戦い合う男性のクラブですよね?なんで、喧嘩とは無縁の私なんかに…。

 そう思って聞いてみると、先生は私の肩に手を置いた。


「女でも構わんよ、バーガンディ嬢。寧ろ、サモン部などは女子生徒の方が強かったりするぞ?まぁ、女子部員は少ないのだがな」


 その情報を頂いても、全く心が踊らない。

 そんな所に入ってしまえば、格闘家や兵士になるか、その人達のお嫁さんになるくらいしか道は無くなる。剣を振り回す女なんてと、社交界の笑いものになる道しか想像出来ない。


「私は…」


 断ろうとすると、肩に置かれた手に力が籠る。 


「君の魔法は実戦向けだと、私は思っている。これだけ重い器具を移動できるのなら、それ相応の破壊力があるだろうとな。君はきっと、素晴らしい選手になるだろう」

「とんでもない。結構ですわ」

「そうか?ではマネージャーはどうだ?きっと楽しいぞ?」

「結構ですわ!」


 私はつい、先生の手を払い除けてしまった。その勢いのまま、彼女の横を逃げるように走り抜ける。


「気が変わったら、何時でも私の元に来なさい!バーガンディ嬢」


 後ろで、バルツァー先生の熱っぽい声が背中を押した。

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― 新着の感想 ―
呼んで呼んでコール → やって来るなり勤労奉仕… バルツァー先生が目撃してたら宇宙猫になってそうw 送還後のブー殿は眷属待機空間とかでクロエ嬢を見守ってるのか、魂魄状態から召喚魔力で実体化とかなのか …
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