表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブタ令嬢の試練~召喚魔術を失敗しただけなのに、私の学園生活が無茶苦茶ですわぁ!~  作者: イノセス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/77

11話〜見せてあげるね!〜

 「はぁ…」

 

 何度目になるか分からないため息を吐きながら、私はエニクス寮の階段を下りて朝食会場へと向かう。

 こんなに憂鬱なのは、今日からまた授業が始まるからだけじゃない。

 勿論、みんなと顔を合わせて、またブタ令嬢って冷やかされるのはとっても嫌。出来れば、誰も居ない教室で授業を受けたいくらいだ。

 でも、それと同じくらい嫌なのは、今日の放課後にペナルティを受けなければならい事だ。


 昨日。私はトレジャーハントをしに、ハイドの森へ赴いた。本当は1日だけの日帰りで考えていたけど、馬車の問題で泊まりになってしまった。

 それを、寮長であるバルツァー先生は許さなかった。申請もせずに無断外泊をしてしまったから、今日の放課後に何らかのペナルティを与えるって、寮に帰って来たその場で言い渡されてしまったのだ。


「ペナルティって何かしら?まさか、鞭打ちとかじゃないわよね?」


 そんな、平民や奴隷に対してやるようなことを、侯爵家令嬢の私にするとは思えない。だけど、庭の草むしりとかはやらされるかもしれない。もっと悪いと、トイレ掃除とか言い付けられるかも。

 そんなの、絶対に嫌。そんなのだったら、ハイドの森で1週間過ごした方がマシよ。


 マシというか、あのキャンプはとても楽しかった。

 夜の空気は清々しかったし、夜空は何処までも透き通っていて、開放的な気持ちにさせてくれた。なんだか、私そのものが大地と一体になった気がして、今まで悩んでいたことが少しだけ薄れた気がしたんだ。

 

「ねぇ、あれ見て」

「ああ、例のあの人ね」

「「クスクス」」


 食堂に入った途端、部屋の中央辺りに座っていた人達がこちらを見て、コソコソと嘲笑してくる。

 それを見ると、折角清々しかった気持ちが萎れていく。

 ああ、早く週末になって、また森のキャンプをしたいと強く願う。

 …はっ!


「違う、違う」


 キャンプをする為に、あの森へ行っている訳じゃないのよ。私は、お金を得るために行っているんだから、そこを間違えちゃだめよ。

 危うく趣旨を取り違えそうになり、私は自分に言い聞かせながら食堂の端っこの方へと移動して、周囲に誰もいないテーブルに着く。そうすると直ぐに、食堂の端で待機していたボーイが近づいて来た。


「おはようございます、バーガンディお嬢様。朝食はどうなさいますか?」

「少しで良いわ。卵とミルクを使ったものを頂けるかしら?それと紅茶も」

「かしこまりました」


 ボーイは一礼して下がり、それから間もなく料理を持ってきた。

 とても美味しいのだけれども、何だか味気ない。周囲からの視線が気になるし、空気が重い気がする。

 ブーちゃんが焼いてくれたお肉の方が、何倍も美味しかった気がするわ。

 …ちょっと、量は多かったけれども。


「あっ!クロエだ!」


 私がポーチドエッグとマフィンを口に運んでいると、この場に相応しくない大声が響いた。次いで、私の方に人影が迫って来る。


「クロエはここの寮に居たんだね。私は一番北にあるムーンガルド寮なんだよぉ」

「貴女、どうしてここに…?」


 腑抜けた笑みを浮かべながら話しかけてきたのは、Cクラスで一番に話しかけてきて、そしていきなり呼び捨てにしてきたエリカさんだった。


「えっとね。この寮のご飯がどんなのか、食べに来たんだ。知ってる?寮によってご飯の種類も量も全然違うんだよ?」


 そりゃそうでしょうよ!

 私は叫びたい衝動に駆られたけど、グッと堪える。


 ロゼリア学園には、4つの寮が存在する。

 王族や公爵など、上流階級の方々が住まうヴルムント寮。

 私のような、中流階級の生徒が住むエニクス寮。

 男爵など、下流階級の生徒が住むネメアス寮。

 そして、彼女のような平民が身を寄せる、ムーンガルド寮の4つだ。

 これらの寮の間に垣根はなく、門限が許す範囲であれば、ロゼリアの生徒は行き来することが許されていた。

 …勿論。それは表向きの話である。


「いいこと?普通、自分に割り当てられていない寮に行くことはとても失礼に当たるのよ。もしもその寮に入りたいのなら、その寮の生徒に招かれる必要があるの。特に、上位の寮に行くなら猶更ね。貴女、誰かに招かれてここにいる訳ではありませんよね?」

「うん。誰にも招かれてない。でも、昨日ネメアス寮の朝食を食べに行ったけど、誰にも怒られなかったよ?」


 それは、ネメアスとムーンガルドの寮生は数が多いからバレなかっただけだと思う。でも、他のところはそうはいかない。現に、今食堂にいる殆どの生徒がこちらを見ていた。


「まさか貴女、ヴルムントに行ったりしていないわよね?」

「まだだよ。でも、明日行くつも…」

「やめなさい!」


 ニコニコと爆弾発言を落とすエリカさんに、私はピシャリと言い放つ。

 言い放って、周りの目が更に集まってしまったのを感じたので、とりあえず彼女の手を取って食堂を出た。

 全く。平民の貴女があの寮に入り込もうものなら、大変な騒ぎになってしまうわ。きっとこの3年間、皆様から睨まれながらの学園生活を送ることになる。

 いいえ。学園生活だけでなく、その後の人生も睨まれるかも。そうなったら、もうお終いよ。

 

 エリカさんを寮の外まで連れ出した私は、改めて彼女に振り返る。

 驚いたことに、彼女の後ろにはいつの間にか、あの日の少年も付いて来ていた。

 確か…ケントとかって名前だったかしら?


「いいこと?貴女達。平穏な学園生活を送りたいのなら、しっかりと貴族のマナーを学びなさい。前にも言ったけど、この学園が(うた)う平等と言うのは、何でもかんでもみんな一緒という意味じゃないの。王族や高位貴族の皆様には礼を尽くさないといけないし、あの方々の領域に土足で踏み込むなんてもっての外なのよ」

「土足?王子様もあたし達も、みんなも同じ靴履いてると思うけどなぁ」


 エリカさんは不思議そうに片足を上げながら、首を傾げる。

 それに、私は大きくため息を吐いて見せる。


「はぁ〜…。そういう所が不味いって言ってるのよ。そもそも、貴女のそのみすぼらしい格好はなんなの?靴も制服もボロボロだし、もう何年も使い古した古着みたいになっているじゃない。一体どうやったら、数日で新品だった制服をそんな風に出来るの?」


 彼女の靴や制服を見てみると、所々に穴が開いてしまっている。袖口は糸がほつれてしまっているし、何個かボタンが外れそうになっている。

 喧嘩でもしたのかと目を細めると、エリカさんは変わらずに屈託ない笑みを浮かべる。


「これはねぇ〜。シロちゃんと遊んでいたから、こうなったんだよ」

「シロ、ちゃん?」

「そっ。あたしのパートナー。見せてあげるね!」

「あっ、ちょっ」


 私が止める前に、エリカさんの額に白い刻印が浮かび上がり、眩い光を放った。そして、その光の中から1匹のウサギが現れた。

 額に細長い角を生やした、ホーンラピッドだ。


「紹介するね!この子が私のパートナー、シロちゃんだよ!ほらシロちゃん。挨拶を…」

【ジィイイイ!】


 エリカさんが愛おしそうにウサギを抱き抱えると、ウサギは凄い唸り声を上げて暴れ始めた。

 そして、声だけでは抜け出せないと悟ったウサギは、なんと、服の上から主の腕に噛み付いた。


「いっったぁあ!」


 盛大に悲鳴を上げて、ウサギを離してしまうエリカさん。解放されたウサギは、空中で1回転、2回転を見せて、私の前に降り立つ。そして、こちらを見上げる。

 真っ赤な瞳が更に赤くなり、体勢がかなり前かがみになった。

 あっ、この体勢…森でみた奴。


【ジィィイ!】


 ウサギが飛び上がり、私の方へと向かってくる。その長く鋭利な角を、こちらに向けて。

 大変!

 刺さちゃう!

 死んじゃう!

 ブーちゃん!


【ブゥ】


 低く轟くそんな声が聞こえて、いつの間にか目を瞑っていた私は恐る恐る目を開ける。

 そこには、ブーちゃんの大きな背中があった。

 彼の右手には、角を掴まれて暴れるウサギの姿が。


【ジィイイイイ!!】

【ブゥゥ…】


 鳴き叫ぶウサギに、ブーちゃんは顔を近づけて低く唸る。すると、ウサギは【ジィ…】と小さく鳴いて、ピタッと動きを止めた。

 あっ、いや、僅かに震えてた。

 怖かったのかな?


「おっ、オーク!?」


 今まで黙っていたケントくんが驚き声を上げて、エリカさんの前に躍り出た。彼女を背中で隠しながら、片手にナイフを構える。


「早くそのオークを消してくれ!クロエ・バーガンディ。こいつが俺達を襲ってくるようなら、問答無用で刺しちまうからな!」

「待って!何を言っているのよ!?」


 ブーちゃんはただ、私を助けてくれただけじゃない。それなのに、なんでこの男はこんなに怯えているの?

 ああ、分かった。オークに何か、トラウマを持っているのね?大丈夫よ。だってこの子は私のファミリアなんだから。ファミリアは、主の言うことをちゃんと聞くのよ?


「ブーちゃん。もう大丈夫よ。その子も下ろしてあげて」

【ブフー】


 ブーちゃんはすぐに、ウサギを地面に置く。

 途端に、どこかへ逃げようとするウサギだったが、エリカさんが魔力供給を止めたのか、跡形もなく消えてしまった。

 それを見送ると、ブーちゃんは私に向き直って、深々と頭を下げてきた。

 何か、謝っている風だけど…なんでだろう?


「大丈夫よ、ブーちゃん。私は怪我をしていないし、とっても助かったわ。ありがとうね」

【ブフ】


 ブーちゃんが短く返事をしたので、私はもう一度「ありがとう」と労ってから、彼の召喚を解除した。

 その時、


「何なんだよ、お前」


 硬い声が聞こえ、私は顔を上げる。

 そこには、ナイフを構えたまま、固まって動けないケント少年がいた。


「お前は一体、何者なんだ…」

イノセスメモ:

寮…ロゼリア学園には4つの寮があり、身分によって割り振られている。

ヴルムント…学園の東に位置する寮。入寮人数が一番少ないのに関わらず、一番費用が掛かっている。寮の紋章は星龍。

エニクス…学園の南側に位置する寮。教室棟からも正門からも近く、便利な立地。寮の紋章は火の鳥。

ネメアス…学園の西側に位置する寮。部活棟から1番近く、寮生も一番多い。寮の紋章は白い獅子。

ムーンガルド…学園の北に位置する寮。立地も悪く、一番古い寮。寮の紋章は大蛇。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
キヒヒ、驚いてますねぇ、転生者(仮)…原作ではどうだったかは分かりませんが、この世界でのファミリアは、従順なるオークですからねぇ…前回の感想返しでの上司様の発言、そこから推測するに…クロエさんには、あ…
グランド王国は王権強いのね。侯爵は公爵含む王族関係お飾りになった後の雄、室町幕府で例えれば足利家に 対する山名・細川、それらの没落後は三好・織田的な印象だけど、これが中流扱いなら公爵以上人数も多そう …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ