あーかい部! 44話 猫カフェと先輩
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなく、とある猫カフェにて。
「「「行くぞ!」」」
「行くぞ
猫カフェの受付前に、サングラスをかけた不審な女性4人組が並び立ち、
「ええ……っ!?」
出迎えてくれた制服のお姉さんはサングラスの4人衆に驚いて尻もちをついてしまった。
「すまない!?大丈夫か……?」
「は、はい……。」
ひいろが差し伸べた手につかまり、制服のお姉さんが立ち上がり、
「あの、ありがとうございます……///」
「いや、こちらこそすまなかった。」
ひいろがサングラスを外し折りたたんで、頭を下げて謝罪すると、
「あああ、赤井さん!?///」
「え?……キミは、この前保健室に来た……!?」
「……はい///この前はありがとうございました。」
「あ、もしかしてこの前ひいろちゃんが手当てしてあげ
「「はいはいあっち行ってましょうねぇ……!!」」
受付のお姉さんは、知り合いでした。
「「お先に入ってまぁぁあすっ!!」」
「え、ちょっと……!?」
ふれあいルームに突撃したあさぎ、きはだ、白ちゃんに代わって、
今回は、そんな運命の再会を果たした2人のお話です。
「あの……!?」
「ったく、なんなんだよ……。」
「……どうしよう、一万円も貰っちゃった。」
「退店するときに精算を頼めるか?」
「……はい。」
「ありがとう……すまないな。」
「あ、あの……///」
「なんだ?」
お姉さん、改め先輩が何か言いたそうに熱のこもった視線をこちらに向けていることに気づいたひいろは、
「そうか、ここは猫カフェだったな。お店の説明を頼めるか?……こういうところは経験がなくてな。」
「はい……。」
ひいろは先輩からコースやおやつ、猫とのスキンシップについてひと通り説明を受けた。
先輩のテンションがほんの少し低い気がしたのは……まあ気のせいだろう。
「……説明は以上です。」
「ありがとう、それじゃあみんなと合流してくるよ。」
ひいろが外していたサングラスを再びかけると、先輩に呼び止められた。
「あ、あの!」
「なんだ?」
「みなさん、何故サングラスを……?」
「ああ……どうもワタシの目は動物や子どもを怖がらせてしまうようでな。猫を怖がらせないように着けている。」
「あの3人もですか……?」
ひいろは先に入った3人も何故かサングラスをかけていたことを思い出した。
「フフ、そんなんじゃあないよ。人相が悪いのはワタシだけだ。」
「私は、カッコいいと思いますけど……///」
「ありがとう。……リップサービスでも嬉しいよ。」
「ちが
「まあ3人は、ワタシが変な目で見られないようにサングラスで合わせて来たってところだろう。なんだかんだ、いい奴らだからな……♪」
『なんでよぉ〜!?』
お店の奥から白ちゃんの悲壮な声が聞こえてきた。
「白ちゃん嫌われてるな……。」
「『白ちゃん』?」
「あだ名だよ。」
「あだ名……仲、良いんですね。」
先輩がちょっぴり不機嫌な声になったかと思うと、
タタタッ……
「なんだ?」
「え?なんでここに……、」
お店の奥から猫達が、何かから逃げているかのように入り口へと走ってくるのが見えた。
「なんでっ!?ここを通したら外に……!」
先輩が狼狽していると、ひいろはかけていたサングラスを外してまっすぐ猫たちを睨んだ。
「……!」
「…………え?」
猫たちは1匹残らずお店の奥へと一目散にUターンしていった。
「ほんとだったんだ……。」
「はぁ。嫌われた……。」
狙い通りとはいえ、1匹残らず逃げられたことにひいろはガックリきていた。
「すみません、助かりました。」
「それは良かった…………はぁ。これはもう、今日はダメだろうな……。」
「猫は記憶力が高いですから、サングラスで目を隠しても今日は逃げられちゃいますね……。ごめんなさい。」
「いや、いいんだ……。ここにいても迷惑だろうし、ワタシは先に外で待たせてもら
「め、迷惑じゃありません……っ!」
「え?」
「あ、いや……///さっき猫を中に戻してくれましたし。」
「……ワタシの連れが発端だ。」
「でも、せっかく来てくれたのに
「ならワタシを奥に招き入れるのか?」
「うっ……、」
「こんど猫たちがここまで逃げてきたら止める人がいないぞ?」
「それは……、
「気持ちだけ、ありがたく受け取るよ。」
ひいろが出入り口のドアに手をかけると、自分の手よりほんの少し小さい手が重ねられた。
「それじゃあ赤井さんが報われません……!」
「……。」
ひいろはもう片方の手を重ねられた小さい手に更に重ねた。
「元気なキミが見られただけで充分だ♪入場料は4人分取っておいてくれ。」
「……!?//////」
先輩の顔が紅くなったがすぐに覚悟を決めたような凛々しいものへと変わった。
「わかりました……!」
「な、なにを?」
「入場料を取ってしまった以上、お客様を満足させずに返すわけにはいきません……!」
「どうしてキミはそこまで……、
「私だって、『キャットハウス鶸田』の1人娘……このまま返したら店の名前に傷がつきます……!」
「…………わかった。ワタシの負けだ。ここに残るよ。」
「……!」
「…………で、キミは
「……みどり。鶸田みどりです。」
「そうか。教えてくれてありがとう、鶸田先輩。」
「……///」
「ワタシは『赤井ひいろ』だ。……って、もう『赤井さん』って読んでくれてたな。……で、鶸田先輩はどうワタシを満足させてくれるんだ?」
「……あ。」
「……。もしかして、考えていなかったのか……?」
「//////」
「ああ、すまない!?決して意地悪しようとしたわけではなくて、純粋にどうすればよいものかと思って
「と、とりあえず立ち話もなんですし、こちらへ!」
ひいろは鶸田先輩に手を引かれ、3人が進んだ店の奥ではなく、受付カウンターの中へと入って行った。
「と、とりあえず座ってください!」
「あ、ああ……。」
ひいろはされるがままに椅子に座らされ、鶸田先輩は机を挟んで対面。取り調べのような様相となった。
「…………赤井さんは、猫に会いに来たんですよね。」
「猫カフェ、だからな。それももう叶わなくなってしまったが……。」
「…………。」
「?」
「…………///」
「え?」
「…………、わかりました///」
「あの?」
鶸田先輩は立ち上がり、顔を真っ赤にして、何か覚悟でも決めたかのような力強い眼差しでひいろを見下ろした。
「ちょっと待っててください……!///」
「あ、ああ……。」
鶸田先輩は更に奥へ姿を消し、すぐに戻ってきた。
「お、おま……、お待たせしました///」
……のはいいのだが、
「え"……!?」
戻ってきた鶸田先輩の頭には、
「ね、猫……ミミ……!?」
黒い猫ミミが装着されていた。
「//////……さ、さあ……///なな、なん……にゃりと……//////お申しつけ……を……//////」
恥ずかしすぎてか、猫を意識してかなんて最早わからない程、鶸田先輩のお顔は大火災だった。
「いやいやいやいやいやいやいやいや!?///」
当然、ひいろはこれを固辞。
「な、なんでですか!?」
鶸田先輩は慌ててひいろの隣に座ってきた。
「ちょとっ!?///」
いつもは余裕増し増しで低めだったひいろの声が、極度の動揺で上ずった。
「他のスタッフが赤井さんを満足させられない以上、私が赤井さんを満足させてあげるしかないんです……!私に至らないところがあるなら直し……にゃおしますから……!?」
鶸田先輩が身を乗り出してきたのに驚いてひいろは椅子から崩れ落ちた。
「あ……!?」
勢い余った鶸田先輩もそのままひいろの上に倒れ込んだ。
「すすす、すみませ!?」
猫ミミをつけ、自分の上に跨り涙ぐむ鶸田先輩を見てひいろは、
「……、」
鶸田先輩の猫ミミを外した。
「あ……そんな……、」
「義務感でいやいや接客されて満足なんてできるか。」
「……すみません。」
「とりあえず、どいてくれ。」
「…………はい。」
倒れた椅子を直し、鶸田先輩がひいろの対面に座り直そうとしたのをひいろが呼び止めた。
「こっちに座らないのか?」
「……いいんですか?」
「嫌なら構わないが。」
「嫌じゃないです!」
鶸田先輩は再びひいろの隣に座った。
「……さて。」
「う……、」
「色々言いたいことはあるが……、
ひいろはポケットからハンカチを取り出すと、鶸田先輩に手渡した。
「まずはその涙を拭え。」
「あ……はい。」
「せっかくの美人が台無しだ。」
「は…………はあああ!!??//////」
「フフ♪鶸田先輩は表情が豊かなんだな。」
「そ、そんな……私は美人じゃないし、そこまで表情豊かでも……///」
「サングラスで目を隠さなくたって、猫たちに逃げられないだろう?」
「それは……、そうですけど///」
「だろう?動物は正直だからな。」
『ひいろー?』
店の奥からあさぎに呼ばれる声がした。
「おっと、呼ばれてしまったな。」
ひいろはサングラスをかけようとしたが、可動部が壊れたので鶸田先輩に気づかれないよう、さりげなく再びポケットにしまった。
「……すまない。ワタシは行けないと伝えてくれないか?」
「え?どうして
「ワタシはもう鶸田先輩のいろんな顔が見られて充分満足したからな♪ここで待ってるよ。」
「……はい。」
鶸田先輩は店の奥へと消えていったと思ったら、すぐにサングラスの3人組と列をなして戻ってきた。
「みんなもう戻ってきたのか……!?」
「ひいろちゃんがいないと意味ないでしょ?」
「……と、出禁ちゃんが申しております。」
「は?出禁……?」
「にはなってないけどね……一応。これ以上長居するとお店に迷惑かかりそうで。」
「まさか着ぐるみ着てもダメだなんて……。」
「まさかさっき猫が大挙してきたのは……、」
「そっちにも逃げてたんだぁ。」
「あれみなさんの仕業だったんですね……。」
「鶸田先輩すまない。お釣りは迷惑料として取っておいてくれ……。」
「おいわたし達の金だぞ?」
「あんな大金受け取れませんよ!?」
「いいんだよ。10000円以上のサービスしてもらったし。」
「へぇ〜?ひいろ何してもらったの?」
「それを聞きたいなら、この後昼ごはん行くぞ。……お金はそこで払うから。」
「そうね、あんまり長居しても迷惑だろうし……行きましょうか。……はぁ。」
サングラスの3人はコワモテ1名をお昼に連行し、10000円以上のサービスについて夕方までひいろを問いただしたそうな……。
あーかい部!(4)
ひいろ:投稿完了だ
白ちゃん:今日は散々だったわね
きはだ:にゃんこのセリフだ
ひいろ:入り口まで猫が大挙してきたぞ
きはだ:前方の白ちゃん、後方のひいろちゃん……
ひいろ:人をなんだと思っている
白ちゃん:まったくよ
白ちゃん:あれ、反応が
ひいろ:2人とも読んでるのか
あさぎ:さて……と、きはだ?
きはだ:ラジャー!
白ちゃん:この流れは
ひいろ:おいまてやめろ何する気だ
白ちゃん:また編集中で閲覧できなくなってるわね
ひいろ:ふざけるな今回はみんながいないときのこと書いたんだぞ修正なんて認められるか!
あさぎ:確かに私もきはだも、ひいろが書いた出来事の真偽を知らないけど
きはだ:いるんだなぁ、知っている人間が他に
ひいろ:は?他……だと
白ちゃん:今こうしてトークしてるってことは、きはだちゃんは編集してないの?
きはだ:編集中にはしてるけどね
ひいろ:どういうことだ
きはだ:お、編集完了だって
きはだ:反映っ!
あさぎ:添削は任せて
きはだ:やーっておしまい!
あさぎ:差し替え完了!
きはだ:よくやったあさぎちゃん!
ひいろ:こいつ思いっきり『差し替え』って言いやがった!?
白ちゃん:とりあえず見てくるわね
ひいろ:ま、待て……なんで猫ミミのことを知っているんだ!?
きはだ:だってつけた本人だもん
白ちゃん:ということは……
あさぎ:鶸田先輩、なかなかの文才だね
ひいろ:なんだと
白ちゃん:これは捏造って言えなくなっちゃったわね
きはだ:あーかい部は事実を記録する活動だからね
あさぎ:池図女学院はこの活動を応援しています
きはだ:やーい天然たらしぃ
あさぎ:すけこましー
ひいろ:言いがかりだ!消せっ!
あさぎ:鶸田先輩がせっかく書いてくれたのに?
ひいろ:くっ、でも猫ミミは鶸田先輩の名誉に関わるだろう!?
ひいろ:白ちゃんだって、顧問として個人の名誉を毀損する内容は看過できないだろう!?
白ちゃん:本人が了承してるなら良いんじゃない?
ひいろ:そんな……
白ちゃん:っていうかきはだちゃん、鶸田さん?の連絡先知ってるのね
きはだ:忘れものを撮りに行ったときに聞いたのさ
きはだ:こらからも愉しませてもらうよぉ……ひいろちゃん?
ひいろ:こいつ……!