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修道女は決意するようです

327 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 早朝】



从∀ー*从「ふぅー、やっぱタバコにゃ朝の潮風の塩味が合うなぁ……」



从∀゜*从「この一服があればこそ目が覚めるってもんよ」



(^ω^ )「あっ船長。おはようス」



从*゜∀从「おう。相変わらず早起きだな戦士ぃ」



(^ω^ )「掃除があったんで」



从*゜∀从「ん、ありがとよ。でも今回の航海じゃ、お前らは客みたいなモンだ。わざわざ早起きして掃除なんてする必要ねぇぞ?」



(^ω^ )「いやぁ、体を動かしてないと落ち着かないタチで」



从*゜∀从「そうか……」



从*゜∀从「吸う?」



(^ω^ )「禁煙中なんで」



从*゜∀从「ん……まぁ勇者として体を大事にしないといけない立場だから、その方が正しいか」



从*゜∀从「しかしお前らも大変だよな。なんでも、元は違う世界の人間なんだって?」



(^ω^ )「誰から聞いたんスか?」



从*゜∀从「あの仲介人の兄ちゃんだよ」



(^ω^ )「アイツか」



从*゜∀从「それを聞いた時、アタシャ思わず尊敬しちまったよ、お前らのこと」



(^ω^ )「尊敬?」



从*゜∀从「だって、この世界とか帝国とは何にも関係ないのに、アタシらを助けようとしてくれてんだろ?」



(^ω^ )「んー……いやぁ、俺はそんな大層なコトは考えてないけど」



从*゜∀从「じゃあ、お前は何が理由で勇者を続けてんだ?」



(^ω^;)「勇者は辞められるモンじゃねぇだろ」



从*゜∀从「そうなのか?じゃあよ、一度は"メンドクセェ"とか"もう辞めたい"って思ったことは?」



(^ω^ )「ないな」



从*ー∀从「かぁー、さすが勇者様に選ばれる人間の精神は高潔だねぇ」



(^ω^;)「そんなんじゃねぇって、俺はただ……」



从*゜∀从「ただ?」



(^ω^ )「ただ……」





328 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 お昼】



( ^ω^)「……というわけで」



( ^ω^)「教えてくれ」



(・∀・ )「なにが?」



( ^ω^)「なにがどうなっているのかを」



( ^ω^)「俺達はなぜ勇者なのか。これから何をするのか」



( ^ω^)「魔王とは何なのか、魔王と女神?の関係とか」



( ^ω^)「なんかお前らだけ分かってる感を醸し出してた宗教の話とか」



( ^ω^)「宇宙の真理とか」



(・∀・ )「最後のは誰も知らねぇよ」



( ^ω^)「逆に聞くけど、お前らはちゃんと把握してんの?」



 (’A` )「宇宙の真理?」



( ^ω^)「それ以外に決まってんだろ」



 (’A` )「進行中のプロジェクトの全容を把握してるヤツなんて居ねぇだろ?」



 (’A` )「つまりそういうことだよ」



( ・∀・)「ちゃんとした企業には居るらしいよ」



 (’A` )「都市伝説だろ」



(;ФωФ)「あ、あの……実は僕も、この航海で色々とあって頭がこんがらがっちゃって……」



(;ФωФ)「いちど、現状を整理しませんか?」



(゜、゜*)「いいわね。西ゼリヤ王国に着くまで時間もあるし……」





329 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号】



(◎、◎*)「それでは授業を始めましょうか」スチャリ



 ( ’A`)「授業?」



( ・∀・)「なぜにメガネ?」



( ^ω^)「美人教師だ」



(◎、◎*)「教育実習はこのスタイルだったのよ」



( ФωФ)「よろしくお願いします!」



(◎、◎*)「講義のテーマは『勇者と魔王について』」



( ・∀・)「教養科目のレポートみてぇな題名」



(◎、◎*)「概論なんてこんなもんよ」



(◎、◎*)「えー、まずは私達の勇者という立場からね」



 盗賊が黒板に図を書いてゆく。



挿絵(By みてみん)



(◎、◎*)「まずはこの図を見てちょうだい」



( ・∀・)「アホみてぇな図だな」



(◎、◎*)「私達勇者は、女神の業務委託を受けた四大天使によって、この世界に召喚されたわ」



 ( ’A`)「俺達は二重請負だったのか」



(◎、◎*)「召喚された理由は単純。戦いに敗北した女神の代わりに魔王を倒すためよ」



( ^ω^)「つまり仇討ちだな。うん、ここまでは分かるぞ」



( ФωФ)「僕もです!」



(◎、◎*)「よろしい。これが全部の基本だから忘れちゃダメよ」



( ^ω^)「うっす!」



(◎、◎*)「それで、ここに国家勢力を加えると……こんな感じ」



挿絵(By みてみん)



(◎、◎*)「聖アガメマス教会はマルク帝国皇帝の弟がトップだから、マルク帝国と同一と思って構わないわね」



(◎、◎*)「そして私達がずっと魔界と呼んでいるのは、実はアガメマス帝国という名前の帝国だった。ということはつまり、魔王はアガメマス帝国の皇帝ということになるわね」



(◎、◎*)「この図から分かることは?……はい、修道女さん!」



( ФωФ)「えぇっと……」



(;ФωФ)「なんか、魔王と女神様の戦いというより、マルク帝国とアガメマス帝国の戦争?みたいな感じになりますね」



(◎、◎*)「その通り。私もそれを意識したわ」



(◎、◎*)「女神だの勇者だの魔王だのと、ファンタジーな用語で修飾しているけど、とどのつまりこれは巨大帝国同士の戦争なのよ」



( ・∀・)「どっちもかなり強大な国らしいから、世界の命運を握る戦いっていうのは、あながち間違いじゃないけどね」



(´・ω・)「つまり君達勇者は、言い換えれば敵国の皇帝を暗殺する刺客というワケだね」



( ・∀・)「たしかに勇気が要る役割ではあるけれども」



 (’A` )「どうだ戦士、ついてこれてるか?」



( ^ω^)「うん……だけど……」



 (’A` )「だけど?」



( ^ω^)「あの頃に広く感じた遊園地に、大人になってから再訪した時の寂しさを感じる」



 (’A` )「あぁ……ファンタジーが現実に落とし込まれた時って物寂しいよな」





330 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



(;ФωФ)「僕は、その……魔王も同じアガメマス教徒という所が、まだ理解しきれていないのですが……説明してもらってもいいですか?」



(◎、◎*)「いいけど、教義とかは知らないし教会の教えとは食い違うかもしれないけど、大丈夫?」



(;ーωФ)「うぅ……はい」



(;ーωФ)「第三者目線の、客観的な説明を……お願いします」



(◎、◎*)「分かったわ」



挿絵(By みてみん)



(◎、◎*)「まず女神周りの情報をまとめると、女神は二人いるわ」



(◎、◎*)「ここでは女神(真)と女神(形代)に分けるわ」



(;^ω^)「そうなの!?」



(;ФωФ)「はい……水の天使様が仰ってましたが、それも衝撃でした。そんなことは全く、祭司様から教えてもらったことはありませんでしたので」



( ・∀・)「たぶんだけど、聖アガメマス教会はその女神を同一視してるというか、わざわざ分けて考えてないんじゃないかな」



(;ФωФ)「そうなんですかね?」



(◎、◎*)「"女神(真)"は神としてのワンオペ業務に疲れて休みをとった」



(◎、◎*)「その時に、業務委託先として作られたのが"女神(形代)"ね」



 (;’A`)「大意は間違ってないかもだけど業務っていうのやめない?」



(◎、◎*)「そして、"女神(形代)"は補佐役として四大天使を生み出したワケだけど……」



(◎、◎;)「ここちょっと分からないのが、水の天使の存在なのよね」



( ^ω^)「ほわい?」



( ・∀・)「水の天使が自分の中に"女神(真)"が眠ってる的なことを言ってたんだ」



( ・∀・)「でも、その話が正しいなら、水の天使は"女神(真)"が休業する前から存在したことになるだろ?」



 ( ’A`)「じゃあ"女神(真)"が生み出したんじゃねぇのか?そこら辺は聞いてないのか?」



(ノ∀`;)「すみません……その話を聞こうと思った矢先に魔王の侵攻が再開した話を聞かされて……」



(◎、◎*)「まぁ現状その辺りの関係は不明だけど、概ねこの関係図で間違いないと思うわ」



 ( ’A`)「ケットまで書く必要あった?」



(◎、◎*)「結局なかったけど、まぁいいでしょ」



(◎、◎*)「修道女さん、ここまでは分かった?」



(;ФωФ)「はい、これは分かります」



(◎、◎*)「うんうん。それじゃ私が聞きかじった範囲で聖アガメマス教会と魔王をこの図に表すと……」



挿絵(By みてみん)



(◎、◎*)「こんな感じかしらね」



(;ФωФ)「……なるほど、魔王は昔の女神様だけを、僕達は今の形代の女神様も含めて信仰していると」



( ^ω^)「なんでぇ、魔王ってのは古臭い老害ってワケか」



 ( ’A`)「でもお前、ボーカル以外のメンバーが全員入れ替わったバンドのことどう思う?」



( ^ω^)「跡形もなくバンド名変えて欲しいわ」



 ( ’A`)「魔王がお前だ」



( ^ω^)「俺は魔王だったのか……」



(;ФωФ)「しかし、この図の通りであれば魔王と教会で意見が対立するのも、さもありなんだと思いますね」



 ( ’A`)「ケットはその位置でいいの?」



(◎、◎*)「まぁいいでしょ」





331 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



(◎、◎*)「戦士、ここまでの説明は理解できた」



( ^ω^)「まぁ……なんとなく?」



( ^ω^)「でさ、結局のところ魔王って何がしたいの?」



( ^ω^)「マルク帝国に侵攻してさ、"女神(形代)"を倒してまで、自分の信仰を押し付けたいの?」



( ^ω^)「"しんこう"だけに」



( ・∀・)「うるせぇ」



(◎、◎*)「可能性はゼロではないと思うわ。私は王様になったことがないから、ホントのところは分からないけど……」



(◎、◎*)「もし全ての人々が自分と同じ考えを持っている国があったら、その国を治めるのは簡単でしょ?」



( ・∀・)「多様性ゼロ。管理する側にとっては理想の国だね」



( ^ω^)「そうなんだ」



 ( ’A`)「究極言うと世界中の人間が日本語を使ってたら、コミュニケーションが滅茶苦茶スムーズだろ?」



 ( ’A`)「駅の案内板に英語とか中国語を載っける必要ないし、通訳もいらないし、英語の授業もなし、海外旅行に言っても言葉が通じるんだ」



(*^ω^)「おぉ……そりゃあいいな。言葉が分かんなくて馬鹿にされなくて済むし」



 (’A` )「だろ?代わりに日本以外の文化は絶滅するけどな」



(◎、◎*)「魔王が目指してるのは、きっとそれに近い世界なんでしょうよ」



(◎、◎*)「その世界が正しいかどうかは……私には判断できないわね」



(;ФωФ)「僕は間違ってると思います!」



(◎、◎*)「うん。その修道女ちゃんの判断は否定しないわ」



(◎、◎*)「でも、その"間違ってる"という判断の材料が一体何なのかは分かってる?」



(;ФωФ)「判断の材料……?」



(◎、◎*)「なぜ、修道女ちゃんは魔王を"間違ってる"と思ったのか……それを自分の言葉で表せるようになった方がいいわ」



(;ФωФ)「なんで……?それは、祭司様が。いえ、教会の"預言書"が魔王は悪であると」



(◎、◎*)「"預言書"が正しいと思うのは何故?」



(;ФωФ)「何故……?だって、それは祭司様が言ってたからで、あれ?」



 (’A`;)「またループに陥ってるぞ」





332 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/05/24(土)18:00:00.00 ID:1399336



(゜、゜*)「修道女ちゃん。この際だから答えを教えてあげるわ」



(;ФωФ)「え??」



(゜、゜*)「授業は終わり、ここからは勇者としての助言よ。よく聞いて?」



(゜、゜*)「魔王が"間違って"いて、預言書が"正しい"。それを決めているのは……ただの"感情"よ」



(゜、゜*)「つまり修道女ちゃんは魔王が大嫌いだってこと」



(;ФωФ)「……」



(;ФωФ)「……それは、たしかに。そのとおりです、けど」



(;ФωФ)「でも、いいんですか?感情で物事を判断するなんて」



(゜、゜*)「いいのよ。感情に左右されない人間なんていないわ。理性だけで生きてるなんてのは驕りよ」



(゜、゜*)「そして、それは魔王も修道女ちゃんも同じ」



( ФωФ)「……」



(゜、゜*)「魔王も修道女ちゃんも同じで、今の世界の"何か"が"間違ってる"と思っているから、それを変えようとしているのよ」



(゜、゜*)「それはもしかしたら、客観的に見れば正しいことなのかもしれない。マルク帝国がなにかとんでもないことを企んでいて、魔王がそれを正そうとしている。そんな可能性だってゼロではないわ」



(;ФωФ)「そんな、だとしたら……僕は、僕はどうしたらいいんでしょうか?」



(゜、゜*)「それはね」



( ^ω^)「単純だ。自分が正しいと感じた方に進めばいい」



(ФωФ;)「戦士さん……」



( ^ω^)「何が正しいか間違ってるかなんてな、所詮はその場にいなかった奴らが、後からゴチャゴチャ抜かしてるだけなんだよ」



( ^ω^)「だから修道女が魔王を嫌いってんならよ、魔王に顔面パンチ食らわすのがお前にとって大正解。そうじゃねぇか?」



(ФωФ;)「そ、そうですかね?」



( ・∀・)「そうそう。戦士の言う通り、好きにやった方がいい。理性なんて感情の正当化機能だよ」



(ФωФ;)「道化師さん……」



 ( ’A`)「俺は『復讐は何も生まない』とかほざく奴が嫌いだから、まぁ。気が晴れるまでやったらいいと思う」



(ФωФ )「!……魔法使いさん」



(゜、゜*)「ふふっ……分かった?私達はみんな別に正義の味方じゃないわ」



(゜、゜*)「でも修道女ちゃんが進む道には、ついて行ってあげる。その為にいるんだから」



( ФωФ)「盗賊さん……!」



(*ФωФ)「皆さん、ありがとうございます!色んな知識ばかり入ってきて、迷い悩んでいましたが、もう迷いは晴れました!」



(*ФωФ)「魔王はぶっ殺します!」



(*ФωФ)「他ならぬ、僕のために!」





(;´・ω・)「結局、そうなるのか」



 ( ’A`)「異世界から来た余所者が進退を決めるよりよっぽどいいだろ?」



(´・ω・)「……そりゃそうだけど、彼女はまだ子供じゃないか」



( ・∀・)「まぁ、魔王を実際に殺すのは俺達だし。責任も俺達が取るよ」



( ^ω^)「その為に居るようなモンだからな」



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