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天下闘牌録センチョウ

161 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 機関室】



 (;’A`)「……揺れが激しくなってきたな」



(・∀・;)「きっと嵐の中に入ったんだ」



(ФωФ;)「大丈夫ですかね、この船。転覆したりなんてホントにしませんよね?」



(゜、゜*)「どうかしらね」



(^ω^ )「海に絶対はないからな、転覆する時は転覆するもんだ」



(;ФωФ)「ええ!?でも船長さんは大丈夫って」



(^ω^ )「ああ、そうだ。船長はそう言って、任せろと胸を叩いたんだ。だから俺達は信じるだけよ」



(;ФωФ)「……?」



(^ω^ )「海の上じゃあな、船員(クルー)船長(キャプテン)を疑っちゃならねぇし、船長は船員を裏切っちゃなんねぇんだ。それが掟だ」



(^ω^ )「掟を破れば俺たちゃ一瞬で海の藻屑。そういうもんなのさ」



 戦士の言葉の直後、船が再び大きく傾き、積み荷の山が音を立てて崩れた。



(;・∀・)「そ、それって迷信とかしきたりって言うんじゃないの?」



 (’A`;)「どうせなら神様に祈ったほうが」



(^ω^ )「……雲の陰に隠れてちゃ神様も見つけられねぇよ」





162 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 操舵室】



从;゜Д从「だぁぁぁッ!舵が重めぇぇ!!」



从;゜Д从「あと少し、あと少しで島なんだ!荒波でなんも見えねぇけどよ!」



 吹き荒れる風と叩きつけるような雨、狂う波の中、海賊船ジョリー号は、右も左も上も下も混沌とした大海原をただ独り、船長の経験と勘、そして度胸のみを頼りに走っていた。



 船体は打ち付ける波と雨に軋み、マストが悲鳴を上げている。



从;゜Д从「もってくれよジョリー!お前が諦めたら、アタシら全員魚の餌だ!」





163 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336





 船長の叫びは果たして届いたのか。音も風も海も全ての波はかき乱れ、黒く、大きなうねりと化している。それでも彼女達は再び明るい空の下へ還ろうと、流れに逆らい続けた……





164 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【名もなき裾礁(きょしょう) 浜辺】



从∀゜*从「……」



(゜、゜*)「お疲れ、船長さん」



从;゜∀从「お?あぁ……嬢ちゃんか」



(゜、゜*)「食事の用意できたわよ。みんなして生還祝いだって騒いじゃって」



从;゜∀从「わかった、すぐ行くよ」



(゜、゜*)「こんなところで何してたの?」



从∀゜*从「なに、星を見てただけだ。嵐の後は、よく光るからな」



(゜、゜*)「たしかに、すごい綺麗よね。"満天"って、ホントはこういう事を言うのよね」



从*゜∀从「珍しいな、見たことないのか?」



(゜、゜*)「人間が満ち満ちると、街は明るくなるけど空は暗くなるのよ。故郷の星は萎んじゃったわ」



从*゜∀从「あははっ、そりゃ死んだ奴らも報われねぇな」



(゜、゜*)「どういうこと?」



从∀゜*从「人は死ぬと星になるっていうだろ?だからアタシら海賊は、たまにこうして星空に祈るんだ。拝む墓もねぇしな」



从∀゜*从「ちなみに旦那は、あの南の空の一番光ってる奴だ」



(゜、゜*)「そうなんだ。それってどう決まるの?」



从*゜∀从「アタシが決めた。デカい方がいいだろ?」



(゜、゜;)「何万人もが同じ星になってそうね」



从*゜∀从「ちなみに名前は"ロジャー星"だ」



(゜、゜;)「何万通りも名前がありそうね」



从∀゜*从「ただの言い伝えだしな。でも、まるきりデタラメでもなかった」



(゜、゜*)「?」



从*゜∀从「嵐を抜けた時、空が急に一斉に明るくなってな。なんだなんだと思って甲板に出たんだよ。そしたら、あの南の星が一層輝いててさ……」



从∀゜*从「その時、ふと思ったんだよ。もしかしたら旦那が、嵐の中でアタシの船を導いていてくれてたんじゃないかって」



(゜、゜*)「……」



(゜ヮ゜*)「……きっとそうね」



从∀゜*从「……あっ!そうか、そうだ……っ!」



(゜、゜;)「えっ?なに?」



从*゜∀从「旦那がアタシを見てくれてるってことはさ!今、麻雀を打てば絶対に勝ちに導いてくれんじゃねぇか?」



(゜、゜;)「なに言ってんの?」



从*゜∀从「こうしちゃいられねぇ!さっさと飯食って麻雀だぁッ!」



(゜、゜;)「……」



(゜、゜*)「……涙ひっこんじゃった」





165 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 南一局 親:船長】



从*゜∀从「さぁさ!嵐のせいで中断になってたが南一局から再開だ!」



(^ω^ )「"嵐のお陰で"の間違いじゃねぇか?」



(・∀・ )「ドベだったんだし、最初からにした方がよくない?」



从*-∀从「チッチッ!あの嵐があってこそ、今のアタシにはツキが来てるのさ!その流れを断ち切っちまうのは勿体ないさね!」



(ФωФ;)「はぁ……」



(^ω^ )「俺はどうせトップのまま再開だからいいけどよ。残りの二人はどうだ?」



(ФωФ;)「僕も別に構いませんが……」



(・∀・ )「うん。船長が納得してるならいいかな」



(^ω^ )「よし、じゃあ決まりだな」



从*゜∀从「おっしゃあ!アタシを導いてくれよ!?"ロジャー星"!」



(^ω^;)「"ロジャー星"?」



(゜、゜*)「船長が命名した南の星よ」



(^ω^;)「オリジナル星!?」



 (’A`;)「かなりレベルの高い願掛けだな……」





165 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 南一局四本場 親:船長】



从*゜∀从「ツモッ!海底摸月(ハイテイ)七対子(チートイ)ドラ2丁……いや、裏が乗った!8000は8400オール!」



(・∀・;)「うぉいマジでッ!?」



(ФωФ;)「まさか!?」



从*゜∀从(ふふ……やっぱりアタシの読みは間違っていなかった!)



从*゜∀从(流れは確実にアタシにある!)



(^ω^;)「地獄単騎待ちの牌を海底牌(ハイテイ)でアガってトップ浮上か……たしかに、星に導かれてるかもしれねぇな」



从*゜∀从「だろう?だが、まだアタシは勝ってる気にはなれないんだよ」



(^ω^;)「?」



从*゜∀从「それは戦士!アンタからロンアガって、完全勝利するまではね!」



(^ω^;)「……!」



(^ω^*)「いいじゃねぇか船長、久しぶりにヒリリと来たぜ!」



(^ω^*)「こいよ!俺を負かしてみろ!」



从*゜∀从「っしゃあ!」



(;ФωФ)「……あの、僕達は邪魔しない方がいいんでしょうか?」



(・∀・ )「ん?ああ、マジ全然俺たち関係ないからガンガンアガっていいよ。二人が勝手にやってるだけだし」





165 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 南四局 親:戦士】



从*゜∀从(結局……勝負は最後の局にもつれ込んだか。だが、それでもまだ流れはこっちにある!!)



从*゜∀从(何故なら今のアタシには理解(わか)る……理解(わか)るからだ!)



从*゜∀从(他家が何を捨てようとしているか……他家が何を待っているか)



从*゜∀从(次に何の牌が来るのか……そして、アタシがこの局で"何で"アガるのかッ!!)



从*゜∀从(手に取るように理解(わか)る!……いや、これは理解よりも遥か以前!"目で見ている"と言ったほうが近いだろう……!)



从*゜∀从(これが"流れ"か、これが"ツキ"か……これが"玄人(バイニン)"の見ている雀卓(セカイ)かッ!)



从;゜∀从(なんて広く……透き通った景色だ!今までのアタシは嵐の中で麻雀を打ってたのかい!?)



(^ω^ )(ようやっと、アンタも奈落の底から這い上がってきたようだな)



从*゜∀从(戦士!?)



(^ω^ )(嵐の前までのアンタの打牌は、正直目も当てられなかった。ありゃ勝ちに向かって牌を打つ雀士の戦い方じゃねぇ……負けぬように贄を捧げ、祈るだけの負け犬の逃避だ!!)



从*゜∀从(……ぐうの音もでないな)



(^ω^ )(アンタの心境にどんな変化があったかは知らねぇが、今はなんて心地いい打牌をしやがる。まるで誰かに手を引かれてるみてぇに素直。そして、その手を心から信頼している)



从*゜∀从(ふん。お見通しってワケか。だが、アタシが何を待っているかは分からねぇようだな?)



(^ω^;)(ああ。誰かがアンタを身を挺して庇っているみてぇだ。河の流れを見ても……二つに一つ、それ以上に絞り込めねぇ!)



从;-∀从(はは、そこまで分かりゃ十分じゃねぇか……)



从*゜∀从(ここが正念場だな……)



(^ω^ )(そうだな。こりゃあ完全に運否天賦だ)



从*゜∀从ゴゴゴゴゴ……(^ω^ )





(゜、゜;)「ねぇ、さっきから二人とも黙って止まってるんだけど。アレなんなの?」



 (’A` )「ん?心の声で会話してんだよ」



(゜、゜;)「心の声で会話してるの!?」



(゜、゜;)「……」



(゜、゜*)「あ、魔法ね?」



 (’A` )「いや、"玄人(バイニン)"なら誰でもできるぞ」



 (’A` )(……こうやってな)



(゜、゜;)「え、なに?どこから声出して……え?怖ッ!」





166 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 南四局 親:戦士】



(^ω^;)「……」



(−ω−;)「……」



(゜ω゜ )「……!」



(^ω^ )「!」 タンッ



从*゜∀从「……」



从*‐∀从「……ふぅ」



从*゜∀从「……」



从*゜∀从「ロン──



     ──32000」





167 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/04/13(日) 18:00:00.00 ID:1399336



【海賊船ジョリー号 航海12日目】



 (’A` )「……んで船長のバカヅキはその後も続いてよ。結局、あの後徹夜で打ってたんだが……」



 (’A` )「明け方頃から船長の流れがパタっと止まっちまってよ……」



从*゜┏从 ちぃぃーーーーんッッッ!



 (’A` )「あのとおり、振り出しの素寒貧に戻っちまった」



(゜、゜*)「バッカじゃないの?」




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