四勇者が転職するようです その②
【登場人物紹介】
( ^ω^)【勇者→戦士】:大雑把でガタイの大きな男。装備はプレートアーマーに大剣を購入。カニ漁で鍛えているので、重い鎧も難なく装備できた。早くモンスターと戦ってみたいと意気揚々。
( ’A`)【勇者→魔法使い】:小柄で痩身な男。装備はフード付きローブに魔導書(入門者向け)をチョイス。魔導書を買ってすぐに勉強を始めている。早く自分オリジナルの魔法を開発したいと、エンジニア心が弾んでいる。
(゜、゜*)【勇者→盗賊】:スタイルの良い元女スパイ。元々着ていたスパイスーツは目立つので、上からマントを羽織ることにした。銃火器は弾切れの心配があるため、当面のメイン武器として毒ナイフを購入。いまだ異世界や魔法の概念をよく分かっていない。魔王はさっさと暗殺すればいいのにと思っている。
( :∀☆)【勇者→道化師】:イケメンハイスペ元営業。元々着ていた背広をクリーニングし、顔を白粉で塗ったことで、和製ジョーカーの完成に至る。さっさとメイクを落としたいと思っている。
( ФωФ)【修道女】:勇者を導く僕っ娘。装備は修道服と銀のメイス。勇者達のサポート役として回復魔法を一通り習得している。ただし蘇生はできないらしい。早く魔王をぶっ殺したいと思っている。
11 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/02/28(金) 18:00:00.00 ID:1399336
【地方都市ロトス─街はずれ】
──転職を果たし、装備を整えた勇者達は、腹ごなしも終えて準備万端、次の街へ向かうことにしたのであった!
( ФωФ)「さてみなさん、ここから本格的に旅のスタートですよ!」
( ^ω^)「おう!それで、どこに向かうんだ?」
( ’A`)「いきなり魔王の居所ってコトはないだろ?」
( ФωФ)「まずは、この街の南にある"ノイヨマ森"を抜け、王都・アロスティを目指します!」
( ’A`)「森か……つーことは、炎系の魔法を優先的に覚えたほうがいいかな」
( ФωФ)「そうですね!森には魔獣だけでなく魔蟲も多いですから」
ロトスから出発する勇者達の後ろに、ひとつの影が近づいた。
J('ー`;)レ「……あ!いたいた、さっきのお客様!」
(ФωФ )「おや、あれは」
( :∀☆)「おやっどうなさいましたか、ビマイナ婦人」
その影は、勇者達の適職を診た人気占い師のビマイナ・トリクールであった。
J('ー`;)レ「!フフ……あぁ、いや。アナタに用があって」
( :∀☆)「それは、どのような?」
J('ー` )レ「実は占い水晶の調子が悪くて……もしかしたらアナタの占い結果が変わるかもしれないのよ」
(*:∀☆)「え!ウソ、それは本当ですか!?」
J('ー` )レ「私の不手際だから、できればもう一度占いたいのだけれど……お時間、よろしいかしら?」
(*:∀☆)「はい!そりゃもう全然っ!というか作ります、今から、時間!」
(:∀☆*)「いいよな!?」
(;^ω^)「あ、あぁ」
( ФωФ)「そうですね。不向きな職業では練度も上げにくいでしょう」
J('ー` )レ「間違った占い結果を出したなんて恥ずかしいし、変な噂が立つのもアレだから、できればアナタ一人で来て頂きたいわ」
Φ(:∀☆ )「分かりました!んじゃ早速……」
(:∀☆ )「あ、そうだ。修道女ちゃん、これさっきの買い物のレシート、渡しとくね」
( ФωФ)「あ、え?はい」
「それじゃ、また後でー」(:∀☆ )
( ФωФ)「……?別に今じゃなくてもいいのに」
( ’A`)「あーあ、なんだ。転職したその日に転職かよ。日本だったら人事部がキレるぞ」
( ^ω^)「まぁ、あんまり好みじゃないみたいだったし。いいんじゃない?」
(゜、゜*)「……ねぇ、修道女さん。そのレシート、なんて書いてある?」
( ФωФ)「え?あ、手書きで」
( ФωФ)「ん?なんて書いてあるんですかコレ?」
(゜、゜*)「日本語。私達の世界の言葉よ」
『ビマイナ にせもの こっそりついてきて』
12 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/02/28(金) 18:00:00.00 ID:1399336
【地方都市ロトス─転職の館・ビマイナ】
J( 'ー`)レ「いやぁ、すみませんねぇ……私もトシで注意力が」
(:∀☆ )「ははは、まだまだお若いですよ」
J( 'ー`)レ「あらやだ、お上手。おほほほ」
J( 'ー`)レ(……キシシ、バカめ。このババアがニセモノとは知らずに)
J( 'ー`)レ(いや、違うな。"俺"の変化の術が完璧ゆえ気づかないのだッ!)
J( 'ー`)レ(魔王四天王ガッデム様いちの子分!アヤカシ狸様のな!)
──説明しよう!魔物・アヤカシ狸は、変化の術で万物に化けることができる!だが、その変化には使い手の主観が大きく影響するぞ!
J( 'ー`)レ「それじゃ、占うわね。目を閉じて?」
(:∀☆ )「はい!お願いします!」
J( 'ー`)レ(この男、バカみたいな顔で、本当のバカだなキシシ……いや、だめだ、こらえろ。ここでバレたら、せっかくの計画が水の泡だ)
J( 'ー`)レ(俺は腕力だけならオオカミ男よりも弱い。だから勇者4人を相手にはできない……だから、こうやって一人ずつおびき寄せ、確実に殺してやるのだ!)
J( 'ー`)レ(完璧な計画じゃないかッ!!)
(÷∀☆ )「……」
(÷∀☆ )「ビマイナ婦人。そう言えば、変えたんですね。"一人称"」
その言葉と同時に、二人の周囲が白い煙で覆われるッ!!
J(;'ー`)レ「!!?」
スクロール、それは魔法の力を閉じ込めた巻物である!一度使うと魔力を失う消耗品であるが、詠唱も使用者の魔力も要らずに、強力な魔法が使用できる便利魔道具なのだ!!
今回、(:∀☆)が使ったスクロールが秘めた魔法は『煙幕』!生木を燃やした時の数十倍の濃度の煙が視界を奪い、敵の行動を封じる強力な魔法!
J(;'ー`)レ「ゲホッ……ゲホッ!く、クソ!なぜ……なぜだ!」
ミ;●Д●彡「なぜ俺がニセモノだと分かったッ!!」
(÷∀☆ )「簡単だよ。魔法で変身してるかしらないけど、人間観察が全ッ然、足りないね!!」
(÷∀☆ )「言葉遣い、口紅の色、歩き方、仕事の価値観!そしてなにより!」
(÷∀☆ )「香水の種類!獣臭さを隠す為に強いの使ったな!」
ミ;●Д●彡「ッ!!」
(:∀☆ )「興味がないくせに人間に化けようとするから、こうなるんだ!」
ミ;-Д●彡「……クシシシシシ!ゲホッ!ま、俺の変化を見抜いたのは褒めてやろう!」
(:∀☆ )「なにがおかしい!?」
ミ -Д●彡「人間に興味がない!?ゲホゲホッ!当たり前じゃねぇか!」
ミ ●Д●彡「魔物より圧倒的に弱っちい人間なんか、無価値だからよォッ!」
ミ ●Д●彡「忍法・『風遁:カマイタチ』!!」
しかしアヤカシ狸は霞んだ目、濁った視界で魔法を発動。何も見えない状況での風属性魔法は、上策であると言える……風により周囲に溜まる煙を振り払い、そのまま敵に攻撃可能だからだッ!!
ミ ;Д●彡「風の乱流ども!勇者を切り刻んでやれ!ゲボェッ!」
ミ ;Д●彡「……ッ!!」
しかし、アヤカシ狸の作戦は失敗。なぜなら……
(’A` )「なるほど。これがバリアか。イメージのまんまだな」
密かに転職の館に忍び込み、機を伺っていた仲間の勇者が、ドーム状のバリアで魔法攻撃を防いだからだ!
(:∀☆ )「ナイスタイミング。というか、もう覚えたの?」
(’A` )「いや、昔からコピペは得意でね。魔導書に書かれてた呪文を、そのまま唱えたんだ。だから効力は低いらしい」
(’A` )「ま、コイツ相手はそれでも十分だろ」
ミ;●Д●彡「ぐ……仲間か!いつのまにバレたッ!?」
ミ;●Д●彡「クソ、なぜ煙幕が晴れねぇんだ!!?」
アヤカシ狸は焦った。魔法でいくら煙を吹き飛ばそうが、いっこうに視界が晴れないからだ。それもそのはず、(:∀☆)が使ったスクロールは一つではない。いくつもの煙幕スクロールを、時間差で発動していたのだ!
ミ;●Д●彡(残る勇者は2人……どこにいる?)
いつ、どこから反撃が来るか分からない恐怖と緊張。今のアヤカシ狸は、自分の唱えた風魔法がとっくに凪いでいるのにもかかわらず、再び唱える余裕すらもてなかった。
(^ω^#)「うおおおッ!必さぁつッ!」
アヤカシ狸の心拍速度が最高潮に達したその時ッ!緊張と静寂を切り裂く雄叫びが轟いたッ!!
(^ω^ )「"龍 滅 覇 皇 斬"ッ!!」
自分の頭上で、煙の中にキラリと光るものに気がついた彼は、とっさに防御姿勢をとる。それは(^ω^)の得物である大剣ッ!
ミ ●Д●彡「上だッ!」
たしかに大剣による斬撃攻撃は痛い、しかし魔獣の硬い皮膚にとって、その一撃は決して命を奪うものではない!むしろ、その刃をあえて肉で受け止めることで武器を止め、逆に敵の骨を断つというカウンター攻撃が、魔獣のトレンド戦法である!!
だがッ!
ミ ●Д●彡「……」
ミ ●Д●彡「……クソが」
頭上から勇者は現れず、大剣だけが降ってきたッ!
その代わり、全く防御していなかった脇腹に(^ω^)がナイフを突き立てていたッ!
ミ ●Д●彡「テメェ……ただの"刺突"じゃねぇか……ッ!」
(^ω^ )「大剣を振るう技術なんて持ってねぇからな」
勇者は大剣を力任せに放り投げ、それをブラフにアヤカシ狸の懐に飛び込んだのだ!
ミ;●Д●彡(指が、動かない!?……痺れ毒かッ)
ミ;●Д●彡「このクソ野郎、ガタイに似合わねぇ卑怯な戦法を取りやがってェ!」
(^ω^ )「賢いと言ってくれや」
(:∀☆ )「そうそう。これで形勢逆転、俺達の勝ちだ」
ミ;●Д●彡「ぐ、貴様ら!あの占いババアがどうなってもいいのか!?俺になにかあれば手下がアイツの命を奪うぞ!!」
アヤカシ狸、とっておきの脅迫……ッ!
彼が化けていた占い師ビマイナは、事前に店の倉庫で監禁済み……ッ!
しかし……ッ!
(゜、゜*)「あら、ビマイナさんならここにいるけど?」
J('ー` )し「フェフェフェ……この嬢ちゃん強いねぇ、上級職も近いよ」
残念ながら勇者の中には在籍……ッ!その道のエリート……女スパイッ!
ミ;●Д●彡「な!?手下はどうした!?」
(゜、゜*)「手下?あぁ、二、三発銃撃したら、さっさと逃げた狸達のこと?」
(゜、゜*)「人望ないのね、アナタ」
ミ;●Д●彡「!!」
ミ;●Д●彡「うぉぉぉぉぉッ!」
アヤカシ狸の叫びが店内に響く。勇者達の圧勝であるッ!
しかし勇者達には、まだやるべきことがあった……ッ!
(゜、゜*)「この男、毒が回って長くないわ。苦しんで死ぬ前に、アナタが止めを刺してあげなさい」
(;:∀☆)「え、僕が?」
(゜、゜*)「ええ。アナタの手柄だもの。それに……」
(゜、゜*)「命を奪うのにも、慣れないとね」
(;:∀☆)「!!」
それは、魔物の命に終止符をうつこと!これから魔王と戦う者として、それは避けられぬ行為なのだッ!
13 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/02/28(金) 18:00:00.00 ID:1399336
【商業都市イナキア─転職の館・ビマイナ】
(’A` )「俺が魔法の呪文、教えようか?」
( :∀☆)「……いや、大丈夫。攻撃用の巻物も、買ってあるから」
少しの間逡巡していた(:∀☆)、しかし己の使命を思い出し、彼は遂に覚悟を決めた!
気を失っているアヤカシ狸の上で巻物を開く。そして……
(:∀☆;)「……」
(:∀・;)(簡単な呪文を一言、唱えるだけだ。それだけでコイツは死ぬ)
(:∀・;)(いや、違う。勝手に死ぬわけじゃない。)
そして……。
(;∀・;)(俺が命を奪うんだ)
( ^ω^)「汗やばいぞ、変わるか?」
(;∀・;)「あ……」
(つ∀・;)「いや大丈夫。ありがとう」
(・∀・;)「魔法だから……手に感触が残らないのが、せめてもの救いだ。俺だけにとっての……」
(ー∀ー;) すぅ~~~
(ー∀ー;)「雷魔法!!」
詠唱と共に小さく火花が散った。
それでお終いだった。
14 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/02/28(金) 18:00:00.00 ID:1399336
【地方都市ロトス─街はずれ】
( ФωФ)「いやぁ、道化勇者様!流石のご活躍でしたね!」
(・∀・ )「はは、まぁね。前職は色んな人と折衝する仕事だったから、人の顔色とか挙動とか……細かい部分が気になっちゃうんだ。僕の悪いクセ」
( ^ω^)「なんだっけ前職。警視庁特命係?」
(’A` )「ま、なにはともあれ、つつがなく万事解決だ。よかったよかった」
( ФωФ)「はい!しかし魔王からの刺客は、これからも襲い来るでしょう……今日はたまたま集まっていたから良かったものの、時には別行動を取っている時に襲われることもあります!」
( ФωФ)「なので、これから王都・アロスティに着くまで、みなさんには修行として魔獣や魔蟲を討伐しながら旅をしてもらいます!」
(’A`;)「えぇ~~~?」(・∀・;)
(゜、゜*)「当たり前よ。敵を殺す時、いつまでも時間をたっぷり取るつもり?さっきみたいに」
(;・∀・)「うぅ……それもそうだけど」
(゜、゜*)「まぁ、慣れるのもどうかと思うけど、旅の目的が目的だからね。メンタルだけはやられないように」
(;・∀・)「うん、ありがとう」
(’A`;)「俺も慣れるのには時間がかかりそうだな」
(’A`;)「しかしだな……」
(*^ω^)「おし!俺もちゃんと大剣を振れるようにならなきゃなぁ!バンバン魔物をぶった切ってくぞぉ!」
(’A`;)「あのメンタルは逆に、どうなんだ?」
(゜、゜;)「戦士が天職なんでしょうね」
(・∀・;)「というか狂戦士では?」