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勇者達は蒸気都市に来たようです その②

【登場人物紹介】


( ^ω^)【戦士(ウォリアー)】:レスラー体型の勇者。老後を考えたことがない。


 ( ’A`)【魔法使い(ウィザード)】:ヒョロガリ勇者。老後を考える暇がない。


(゜、゜*)【盗賊(シーフ)】:スタイルグンバツ勇者。老後を考えたくない。


( ・∀・)【道化師(クラウン)】:イケメンハイスペ勇者。老後を考えても仕方がない。


( ФωФ)【修道女】:勇者を導く僕っ娘。異世界には老後という概念がない。


( コ∀`)【コボルトA】:能天気なコボルト。コボルトは老いたら死ぬだけである。


(´∀と )【コボルトB】:楽観的なコボルト。老後どころか明後日のことも考えてない。



100 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/26(水) 18:00:00.00 ID:1399336



【蒸気都市ラクシズ ネジ工場】



(´∀と )「兄ちゃん達はこのネジ工場で働いてるルト」



( ^ω^)「へぇ~、異世界にもネジってあるんだ」



(・∀・ )「流石にそれは異世界を馬鹿にしすぎじゃ……」



(・∀・;)「あ~、いや。でも戦国時代にネジは無かったわけだし……」



( ・∀・)「どう思う?」



 ( ’A`)「知らん」



( コ∀`)「すみませーん!お兄ちゃーーん!!いるコボォーーッ!?」



(◎皿◎;)「なんだなんだ、うるさい声を出すんじゃねぇ!」



 コボルトが大声で叫ぶと、ゴーグル装備のスキンヘッド壮年男性が飛び出してきた。



( コ∀`)「……コボルトじゃないのが出てきたコボ。毛がないコボ」



(◎皿◎;)「いきなり失礼な犬っころだ。てめぇ、アイツらの家族か?」



(´∀と )「兄ちゃん達を知ってるルト?」



(◎皿◎ )「当たり前だ。俺があいつらの雇い主、ここの工場長だ」



(◎皿◎ )「で、なんの用事だ?」



( コ∀`)「兄ちゃん達を迎えに来たコボ!」



(◎皿◎;)「……はぁ?」



(;・∀・)「俺から説明しますよ……」



 道化師は工場長に経緯を話した。コボルトの故郷がタヌキに襲われたこと。死人は出なかったが、コボルトはこれからの集落を守るために出稼ぎに出ているコボルトを呼び戻そうとしていること。自分達は、コボルトの伝令役をこの工場まで護衛するように依頼された冒険者であること。



(◎皿◎ )「ほぉ~~西ゼリヤ王国でも魔王絡みの事件が起きるんだな。あそこはまだ平和だと思っていたが」



( ・∀・)「ラクシズは結構大変と聞いています」



(◎皿◎ )「んだ。"タービンタワー"の燃料が減っちまって、あっちこっちで工場が倒産したせいで治安が悪くなってなぁ」



( ^ω^)「親父さんの工場は、景気悪い感じしないけど」



(◎皿◎ )「へっへへ、まぁな。ネジが要らなくなるなんてこたぁ起きねぇからよ。それに今は戦時中、兵器にもネジは大量に使うしな」



 ( ’A`)「戦時特需か」



(◎皿◎ )「そんなところだ。だから今コボルト達が抜けるとなると、ちいと困るな……」



( コ∀`)「どうしてコボ?」



(◎皿◎ )「ざっくり言えば人手不足だ」



( ФωФ)「んと……街には失業者がいっぱいいますが、彼らを代わりに雇ってあげることはできないのですか?」



(◎皿◎ )「雇うだけならできるが……使えるかどうかが問題だわな。知識も技術もない奴を新たに雇わないといかんのだ。元々求人を予定してたんなら構わんが、今回は急過ぎる」



(◎皿◎ )「そうなると、新人に教える係を拵る必要があって、その係になった奴の分の仕事を、他の奴に割り振って、だがしかし納品日と生産量は決まっとって……」



 (;’A`)「うわぁぁぁぁぁっぁっっっぁぁ!!!!」



(^ω^;)「いかん!魔法使いのトラウマが爆発した!!」



 (;’A`)「止めろぉぉッ!!辞めないでくれぇぇ!!君以外に誰も知らない機能が沢山あるんだ!!せめて引き継ぎ資料を……作成する作業時間がない?うん、まぁ……それは……」



 (;’A`)「ああぁぁぁぁぁッ!!!!」



(・∀・ )「なにがどうしてここまでトラウマになるんだよ」



( ^ω^)「一番システムに詳しい派遣のおじさんが辞めたことがきっかけで、代わりに入った外国人プログラマー2人と半年間、言葉もほぼ伝わらない中、月残業200時間体制でプロジェクトリーダーを務めたんだって」



 ( ’A`)「ちなみに納期には間に合わなくて、ウンコみたいなシステムを納品して、無事ウンコが爆発炎上した」



(・∀・ )「クソみてぇなプロジェクトだな」



(◎皿◎;)「……冒険者なんぞ会社仕事とは無縁の自由人だと思っとったが、君等も苦労しとるんだな」



(;ФωФ)「冒険者になる前に色々あったと聞いています……」



(◎皿◎ )「まぁ、そういう反応ならこちらの事情も少しは分かるだろう。ひとりふたりならまだしも、コボルトが一斉に辞めるのは困る」



(´∀と )「う~ん……5人くらい、なんとかならないルト?」



( コ∀`)「まとまった防衛戦力が必要だコボ!」



(◎皿◎ )「無理だな」



 話が平行線を辿っていると、ひとつの影が彼らに近づいた。



(十AФ )「すまない、工場長。生産計画について相談が……」



 それは隻眼のコボルトだった。コボルトと言えど工場で働く職人、緑色の作業服とキャップに身を包んでいる。それでも、うなじの辺りから赤い(・・)体毛を確認できる。



( コ∀`)「あっ!」



(十AФ )「え……」



(十AФ;)「何故、お前らが……ここに?」



( コ∀`)「"赤毛"の兄ちゃん!」



(´∀と )「久しぶりルト!」



(;ФωФ)「あなたが、コボルト最強の戦士……?」



( ^ω^)「最強の戦士が作業服着てるの、なんか見たくないな」



( ・∀・)「平和の証拠だよ」





101 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/26(水) 18:00:00.00 ID:1399336



【蒸気都市ラクシズ ネジ工場】



(十AФ )「……なるほど。事情は把握した。まさか本当に故郷がそんな事態に陥っているとはな……」



(十AФ )「……ふむ」



( 十AФ)「工場長、私だけでも帰ることはできないか?」



( コ∀`)「"赤毛の戦士"なら百人力コボ!」



(◎皿◎;)「むしろ、俺ァお前に一番帰って欲しくないんだがな……」



(◎皿◎;)「工場で働いてるコボルトの統率を取ってるのは実質お前だし、部族間の諍いを仲裁できるのも、"赤毛の戦士"として顔が広いお前だけだ」



(;十AФ)「む……たしかに、皆を置いていくのは心配だ」



(;十AФ)「うーむ……」



(◎皿◎ )「冒険者さんよ。西ゼリヤの冒険者ギルドで、コイツらの故郷の面倒を見てやることはできんのかい?」



( ・∀・)「お金次第です」



( コ∀`)「ないコボ!」



( ・∀・)「だそうです」



(◎皿◎;)「……だろうなぁ」



( 十AФ)「そもそも私達は人間の庇護下に入りたくはない。できる限りの自助自立を望んでいる」



(◎皿◎;)「ん~~」



( ФωФ)「あの……さっきの失業者の話で気になったところがあるのですが」



( ФωФ)「技能のない人を雇わないといけないと仰っていましたが、他の工場で働いていた職人さんなら、それなりの技能は持ち合わせているのではないでしょうか?」



(◎皿◎;)「あぁ、それか。たしかに元職人なら即戦力だ。それなりの職人が来てくれるなら、コボルトを何人か帰郷させてもいい」



( ^ω^)「なんだ。簡単じゃん」



(◎皿◎;)「……いや、それが一番難しいんだ。なにせ失業中の職人なんて居ないんだからな」



(;ФωФ)「いない?どういうことです?」



(◎皿◎ )「工場を失った職人連中は、みーんな"ログマジア・ファミリー"に雇われちまったよ」



(;ФωФ)「ログマジア……ッ!」



 (;’A`)「なんで犯罪組織の名前が、そこで出てくるんだ!?」



(十AФ )「……"ログマジア・ファミリー"は"魔王四天王・ガッデム"との繋がりがある。奴らは職人を自らの軍門に取り込もうとしている」



(;・∀・)「"魔王四天王・ガッデム"……ッ!」



(;^ω^)「新出単語のオンパレードだぜ……ッ!」



(・∀・ )「既出だよ?」



(;^ω^)「覚えてねぇぜ……ッ!」



(;ФωФ)「なぜ職人を狙うんですか!?」



(十AФ )「職人達の多くは魔法に精通している。専門的だが高度な魔法を日常的に使っている彼らは、少し訓練すれば攻撃系の魔法をも容易く習得できるポテンシャルを秘めている」



(十AФ )「言い換えれば、簡単に"職人"から戦う魔法使い……"魔道士(ソーサラー)"へと転職できるのだ」



 ( ’A`)「なるほど。つまり職人は全員、その魔王四天王に兵隊としてヘッドハンティングされちまったって訳か」



(;ФωФ)「い……いや、ありえません!だって魔王ですよ!?なんで人間が魔王の下で働こうなんて……」



(◎皿◎ )「表面上は"ログマジア・ファミリー"が経営するダミー会社からの勧誘だ。裏に魔王がいるなんて気づかねぇ奴もいるだろ」



(◎皿◎ )「……それにな、嬢ちゃん。その服着てるってことは聖アガメマス教会だろ。敬虔な信者の嬢ちゃんにゃ、あんまり信じたくない話だろうがな。人間 対 魔王なんて図式じゃ、世の中は実のところ動いてねぇんだ」



(;ФωФ)「え?」



(◎皿◎ )「仕事を失って、今日の夜に飯にありつけるかも分からねぇ……そんな奴にとっちゃ、人間だろうが魔王だろうが関係ねぇ、自分の生活が第一なんだ」



(◎皿◎ )「仕事をくれて、飯も食わせてもらえる。ついでに寝床もつけてくれるんなら、誰にだってついていくさ」



( ^ω^)「そりゃそうだ」



(ФωФ;)「戦士さんまで!?」



(;ФωФ)「うぅ……そんな……まさか、女神様が負けた影響で、ここまで信仰が減っているとは……」



( ・∀・)(あんま勝ち負けは関係ないと思うけど黙っとこ)



 ( ’A`)「まぁでも、結局"ログマジア・ファミリー"を潰せば全部解決するんじゃねぇか?」



 ( ’A`)「騙されてダミー会社に入っちまった職人は助け出せる。その職人の中からネジ工場で働きたい人をスカウトすれば、コボルトも帰郷できる。それ以外の職人も、"タービンタワー"の燃料問題が解決すれば再就職できる」



( ФωФ)「たしかに!流石は魔法使いさんです!」



( ФωФ)「それでは、"ログマジア・ファミリー"をぶっ潰しましょう!女神様の信仰復活のために!!」



( ^ω^)「そんな目的だったっけ?」



( ・∀・)「修道女が元気ならそれでいいよ」



 ( ’A`)「ところで、赤毛さんはなんで魔王四天王云々を知ってんだ?」



(十AФ )「この前、四天王の部下を名乗る男に勧誘されてな」



(十AФ )「鬱陶しいからボコボコにしてやったら上下から漏らした」



(;・∀・)「四天王の部下を一人でボコボコに!?」



(´∀と )「流石、兄ちゃんルト!」



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