情報屋が暗躍するようです
629 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
さてさて、見事にロナルド皇帝即位作戦の第一段階をクリアした勇者達。しかし、その成功の裏には、勇者以外の努力が隠されていた……
これは勇者達が西ゼリヤ国王との謁見を終えた直後の話である。
630 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
【西ゼリヤ王国 アロスティ城】
(;`・ω・)「ミラノフ様、今、なんと?」
(・ハ・王)「帝都に行って情報操作をしてくるのだ。我とロナルド殿下の計画が、皇帝陛下や教会の高弟様の耳に入らぬようにな」
(;`ーωー)「っふぅ~~無茶を仰りますな。いまの帝都で怪しい行動をすれば、すぐに官憲に捕まってしまいますし……」
(;`・ω・)「宮殿で魔法など使った途端に投獄です。個人で情報操作など不可能!」
(・ハ・王)「問題ない。"合法的に"宮殿に入れるように、こちらで便宜は図る」
(`・ω・)「なにか策があるのですか?」
(・ハ・王)「マルク帝国皇帝を守る近衛騎士団は、九つの支隊で構成されていることは知っているかの?」
(`・ω・)「ええ、もちろん」
(・ハ・王)「実は、そのうち七番隊の隊長は伝統的に我が西ゼリヤ王国の超名門・コカラコ家が務めているのだ」
(;`・ω・)「そうなのですか?ですがなぜ、自領の家臣ではない者を近衛騎士団などに?」
(ーハー王)「はるか昔、西ゼリヤ王国が皇帝家に忠誠を誓った時の盟約だと言うが詳しいことは分からぬ。もはや形骸化していると言っていい伝統だ」
(・ハ・王)「しかし、それが役に立つ時が来た!」
(・ハ・王)「なんと丁度、都合の良いことに今ここに里帰り中のエルサイズ・コカラコ隊長がいる!」
[━L━´]「一昨日、甥が生まれました」
(・ハ・王)「彼は、今日このあと帝都に帰還する予定なのだが……」
(;`・ω・)「あの。嫌な予感がするので、私も帰っていいですか?」
(・ハ・王)「……」
(ーハー王)「……情報屋よ、お主とも長い付き合いだな」
(ーハー王)「最初に出会った時、朕は騎士団長。そしてお主は一介の盗賊だった。しかし壮絶な戦いを経て、このように重要な仕事を任せる間柄となった」
(・ハ・王)「これはそう、つまり朕と貴様の絆」
(;`・ω・)「貴方にボコボコにされて、減刑と引き換えに働いてただけです」
(・ハ・王)「……」
(・ハ・王)「貴様は今日から近衛騎士団七番隊隊長だッッ!」
(;`・ω・)「ぜってぇ無理だって!」
こうして情報屋は、近衛騎士団七番隊隊長に成り代わって帝都の宮殿内の情報操作を行うという、大任を務めることになった。
631 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
その数日後……
【帝都ドナド 王宮】
( ━十━)「7番隊隊長、作業報告を!」
[━ω━´]「はっ!宮殿の便所は今日もピカピカです!」
( ━十━)「うむ、ご苦労!明日も頼むぞ!」
[━ω━´]「……」
[━ω━´;](7番隊、便所掃除係だったぁぁぁ!!)
[━ω━´;](西ゼリヤ王国の超名門、代々皇帝家の便所掃除させられてんだけど!?)
[━ω━´;](いや、皇帝が座る便器を掃除するのって、逆に名誉なのか!?分からん、貴族の価値観が!)
[━ω━´;](つーかなんで近衛兵が便所掃除やってんだよ!掃除夫くらい雇えよ!)
( ━十━)「……ん?どうした七番隊隊長。もう下がっていいぞ?」
[━ω━´;]「あっハイ。失礼しまーす」
(とりあえず中身が別人だとは気づかれてないようだな)[;`━ω━]
( ━十━)「……ちょっと待て!」
ビクッ「はい!なんでしょう!」[━ω━´;]
( ━十━)「足の裏にトイレットペーパーが付いてるぞ!便所だけでなく、身だしなみも綺麗にするように!」
[━ω━´;]「はっハイ!!」
[━ω━´;]
[━ω━´](あれ?便所掃除係で、どうやって情報操作するんだ?)
632 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
まさかの便所掃除係に任命され、目的の情報操作など不可能かと思われた情報屋。しかし、彼は諦めることはなかった!というか西ゼリヤ国王からの勅命だから諦められない!
[━ω━´](いや、これホントに情報屋の仕事かな?)
と常々思いつつ彼は便器を磨き続けた!その傍らで宮殿内の人間関係、皇帝へ情報が届くまでのルートを完全に把握。周りの人物達とも、パーフェクトコミュニケーションにより厚い信頼を得た。そして遂に、情報操作を行う完璧なタイミングを掴んだ!
633 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
【帝都ドナド 王宮の便所】
( ━十━)「ふぃ~トイレトイレ……」
[━ω━´]「あ、騎士団長。お疲れ様です」
(;━十━)「おっと、コカラコ君。すまない、掃除中だったか」
[━ω━´]「いえいえ。使って構わないですよ。団長特権ってヤツです」
(*━十━)「そうか?すまんな、じゃあお言葉に甘えて個室を使わせてもらうよ。いやぁ、最近のコカラコ君は頼りになるなぁ」
[━ω━´]「恐縮っス!」
[━ω━´](……宮殿外部からの情報は、全て近衛騎士団長を通して皇帝に伝えられる。即ち情報操作を行うには、この団長に取り入ることが必須!)
[━ω━´](そして彼は極度にお腹が弱く、皇帝への謁見前には必ずウンコする習慣がある!)
[━ω━´](ここ……ッ!ここが最高のタイミング……ッ!密室……人気なし……情報を操作するに、うってつけ……ッ!)
[━ω━´]「今から陛下に謁見ですか?」
(;━十━)「あぁ、そうだよ。最近陛下っていつも気が立ってて、会うの嫌なんだよなぁ」
[━ω━´]「そうなんですか?魔王との戦争も終わって結構経ちますし、もうそんなピリピリする必要もないと思いますけど」
(;━十━)「お前なぁ、忘れたのか?勇者がいるだろ」
[━ω━´]「ああ。でも、勇者なんて所詮4人ぽっちでしょう。もう放っておいていいんじゃないですか」
(;━十━)「いいや!俺も最初はそう思っていたが、違った!アイツらは今や帝国最大の脅威だ!」
[━ω━´;]「えっ?それはどういう……」
(;━十━)「アイツらは、西ゼリヤ国王やラクシズ市長らと結託して、実は生きていたロナルド殿下を新たな皇帝として擁立。そして陛下に廃位を迫るつもりだと、間者から報告が入った!さらにハッシュ王国も不審な動きを見せている!」
(;━十━)「そして今日、勇者はフィオレ王国に向かった!彼奴ら、フィオレ国王までも味方に引き入れるつもりだ!もしそれらが成立したら……陛下は窮地に立たされてしまう!」
(;━十━)「なんとか勇者達に先手を打たねばならん!腹の中のモノを出し切ったら、すぐに報告せねば!」
[━ω━´;]「そ、そんな……ま、まさか……!」
[━ω━´;]「……」
[━ω━´]「"知ってしまったんですね"?」
(;━十━)「え?」
話を聞いた情報屋は、速やかに用便中の団長の個室に入室。外からでも開けられるように改造しておいたのだ。
用便中という完全に無防備な状態で、男が個室に入ってくるという最低な事態。それだけでも裁判沙汰だが、脳の処理が追いつかずに便を垂れ流していた団長にさらなる追い打ちがかかる!
[━ω━´]「情報操作パンチッッッ!」
(;━十━)「ガパァッ!?」
渾身のフックが騎士団長のこめかみに炸裂ッ!強力な打撃によって、彼の脳は公園にある土台がバネになっている馬の如く激しくシェイク!たちまち脳震盪を引き起こし、失神K.O.!
634 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/10(日)18:00:00.00 ID:1399336
【帝都ドナド 王宮の便所】
(;━十━)「……ん?あれ、ここは?」
[━ω━´;]「団長、大丈夫ですか!?」
(;━十━)「え、ちょっとコカラコ君!どうしたんだ急に個室に入ってきて!?」
[━ω━´;]「い、いやいや!団長がいきなり『うひぃぃぃん』って喘いで失神したんじゃないですか!」
(;━十━)「俺『うひぃぃぃん』って喘いで失神したの!?」
[━ω━´;]「たぶん、でっかいウンコが一気に出た快感が原因です!」
(;━十━)「俺そこまで開発した覚えねぇよ!」
[━ω━´;]「というか大丈夫ですか!?このあと陛下に謁見するんですよね!?」
(;━十━)「……あっ!どうしよう、何を話すか忘れちまった!」
(;━十━)「なんだろう……すごく大事な……これを伝えなかったら、取り返しのつかない事態になる……そんな情報だった気がする」
[━ω━´]「あ、それなら覚えてますよ。さっき私と話してましたから」
[━ω━´]「『陛下が昨日借りたビデオ、最新作で1泊2日だから今日中に返しに行かないと延滞金発生しちゃう』が報告内容です」
(;━十━)「別に十分取り返しがつく……ッ!!」
(;━十━)「ま、まぁでもコカラコ君が言うなら、そうなんだろう!」
( ━十━)「ありがとう!それじゃ、早速陛下に報告してくる!」
[━ω━´]「頑張ってください!」
玉座の間へと向かう騎士団長の後ろ姿を眺めながら、情報屋は拳を振り上げた。
[━ω━´]「……」
[━ω━´]「……これが」
[━ω━´]「これが俺の、情報操作だァァァッ!」




