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勇者達は白夜の歴史を知るようです その③

620 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/06(水)18:00:00.00 ID:1399336



【フィオレ王国 領主館 会議室】



(ーωー )「あの日、昼から村の教会の普請があるということで、僕は家で仕事道具の手入れをしていました」



 行商人はぽつりぽつりと話し始めた。



(ーωー )「そろそろ出支度をしようかという頃、教会の金が3つ鳴りました。村の近くで魔獣が出た時に緊急避難を呼びかける知らせです」



(ーωー;)「慌てました。その日は朝から3人の子供達が森へ遊びに行っていたので……仕事道具を放り投げて、僕はすぐに子供達を探しに向かうと妻に告げました」



(ーωー )「しかし玄関のドアを開けると、そこには息を切らした息子が立っていました。森で転んだのか、体中に擦り傷ができていました」



(ーωー )「なにがあったのか聞くと、森で鎧を着た男に追いかけられたというのです」



 ( ’A`)「物騒な不審者だな」



( ゜∀゜)「征伐軍は村を囲うように、周辺の森にも騎士隊を展開していた。恐らくその中のひとりに見つかったんだろうな」



(ーωー )「ええ。僕もそれが帝国の騎士だということは、すぐに理解できました」



(ーωー;)「なぜなら息子の肩の向こうを見やると、息子を追いかけていた騎士が、こちらへと迫ってきていたからです」



(ーωー;)「僕は息子を抱えて、妻と一緒に、一目散に村の教会へと走りました」



ミ ● ●彡「残りの子供は?」



(ーωー )「……まずは目の前の、息子と妻の安全を確保するのが先決だと判断しました。教会に二人を預けた後は僕ひとりで森へ向かう、そうするつもりだった」



(;ーωー)「ホントに本当だよ?」



 行商人が心配そうな目で娘を見ると、彼女は優しく微笑み返した。



(=ω=*)「べつに見捨てられたなんて思ってないよ。私だって皆死んじゃったって思ってたし」



( ゜∀゜)「無理もない。村はぜんぶ燃やし尽くされたからな、教会も含めて」



( ゜∀゜)「……逆に聞きたいんだが、教会へ向かったと言ったが、そこからどうやって村の外に逃げ出せたんだ?」



( ゜∀゜)「村は完全に包囲されていたんだぞ?」



(ーωー )「単純な話です。教会には隠し通路があったんですよ。山の神様を祀るための地下礼拝堂に続いているものが」



(;゜∀゜)「隠し通路……そんなものまで作ってたのか、筋金入りだな」



( ・∀・)「カタコンベってやつかな」



(ーωー )「まぁ僕らふつうの村人が、そこでお祈りすることはありませんでしたけどね」



(;゜∀゜)「え?」



(;=ω=)「私もいま知ったよ」



(ーωー )「あそこは(もっぱ)ら、先鋭的な若者……過激派の集会場みたいなものでしたから」



ξ;゜⊿゜)ξ「過激派?」



( ^⊿^)「やはり、あの話は本当だったのですね」



(ーωー )「ええ、申し訳ありませんが」



(゜∀゜;)「噂?噂ってなんだ、フィオレ候?」



( ^⊿^)「……行商人さん」



(ーωー )「はい」



(ーωー )「村の教会の過激派は、帝国に対する蜂起を計画していたんです」



(;゜∀゜)「ッ!!」



(;=ω=)「そうなの、お父さん!?」



(ーωー )「ああ。子供だったから知らなかったと思うけどね」



(ーωー )「元々、ドナドの聖アガメマス教会総本山から、"山の精霊に敬意を払うような行為"は慎むように言われ続けてきたんだ、僕達の村は」



(ーωー )「でも、そんな簡単に信仰は止められないだろう?ずっと昔から続く伝統だし、もう生活の一部になってる」



(ーωー )「だから信仰を守る為に、村は毎年、ドナド総本山へ多くの寄進をしてきたんだ。イテーツクから採れる材木や鉱石に麦、葡萄酒」



(ーωー )「ただ、そんな帝国への貢物を嫌う人達も多かった。どれだけ働いても、半分くらいドナド総本山に取られてしまうからね……特に働き盛りの若者の反発は大きくて、彼らは地下礼拝堂に集まって、どんどん帝国に対する反逆的な思想を強めていった」



(ーωー )「……そして遂に村は、寄進を停止した」



(ーωー )「そうなるとドナド総本山の反応は早かった。北麓(ほくろく)派は途端に異端扱い。その結果が"白夜"だ」



(;゜∀゜)「……」



(;^⊿^)「ロナルド様は知らなかったのですか?」



(;゜∀゜)「異端信仰の村だとは聞いていたが、蜂起の件はな……」



(;ー∀ー)「俺の側には常に兄貴方の参謀がついていた。不要な情報だと判断されたか」



( ゜∀゜)「それより行商人さん、そんな過激派の集会場を知ってたってことは、アナタも?」



(ーωー )「違いますよ。僕は大工でしたから、教会の構造に詳しかっただけです」



(ーωー )「隠し通路を整備したのも僕ですしね」



(゜、゜*)「じゃあ、ずっとその地下礼拝堂に隠れてたの?」



( ーωー)「地下礼拝堂は、イテーツク山脈の古い坑道に繋がっているんです。坑道の地図なんて持っていませんでしたけど、そんなこと言ってる場合じゃありませんでしたからね……数日彷徨って、なんとか外に出られました」



(ーωー )「暗闇を抜け坑道から出たときに僕達が山の上から見たのは、焼き尽くされて真っ黒になった故郷でした。呆然としました。昨日までそこにあったはずの民家も教会も、道路も、ぜんぶ黒一色なのです。空には太陽が輝いているのに!」



(ーωー )「ただ……僕らにとっては故郷を失ったことよりも、もはや二人の娘達の命が絶望的だという現実を叩きつけられたことの方が辛かった。息子の泣き声で我に返ると、横では妻が膝から崩れ落ちて、うなだれていました」



 行商人の手は、自分の膝を爪が食い込むほど強く握っていた。



(ーωー )「だけど僕は家族の手を取って、すぐに歩き出しました。いつまでも、そこに居たら、いつまた帝国の軍隊が来るか分からない。だから東へ、帝国の手の届かない魔界へ行くことに決めたのです」



(ーωー )「……これが、僕が体験した"白夜"です。すぐに逃げ出したので、あの真っ黒になった村で、聖伐軍が攻めた時に、どんな光景が広がっていたのかは分かりません」



( ゜∀゜)「俺が言えたことではないが……分からなくてよかった」



( ゜∀゜)「なぁ、アナタ達以外に地下礼拝堂から逃げられた人はいるのか?」



(ーωー;)「それは、分かりません……僕が教会に着いた時には、教会には誰もいませんでしたから。逃亡中はずっと家族3人でした」



(;ー∀゜)「そうか、残念だ」



(;ーωー)「それより、お姉ちゃんは、あの中をどうやって逃げ出せたんだ?」



(=ω=*)「私?私はね、森でかくれんぼしてる時に変な騎士に見つかって、追いかけられて……それでお兄ちゃんとはぐれちゃったんだよ」



( ^ω^)「物騒な不審者再び」



(=ω=*)「それで私は、お兄ちゃんより先に、まずは鬼のミーを助けに行こうと思ったんだけど」



(=ω=*)「変な騎士がまた出てきたんだよ!しかも今度は3人も!」



(´・ω・)「まぁ森にも軍隊が展開してたなら、何人もいるよね」



(=ω=*)「うわぁ!命が危ない、死ぬ!そう思ったその時!」





621 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/06(水)18:00:00.00 ID:1399336



【森】



[━+━;]「ぎゃっ!」

[━I━;]「ぐわっ!」

[━×━;]「あだばっ!」



川* ー )「ふん、同盟(・・)先の視察に来てみれば。聖伐軍の雑兵が私に楯突くなど千年早いわ」



川* ー )「もう心配は要らんぞ。敵は全て殺したからな」



(=ω=;)「あ……あ……」



川* ー )「しかし、貴様も哀れだな。その歳で天涯孤独か」



川* ー )「……」



川*゜ー゜)「いや。まだ幼いが、磨けば相当な上物になるな」



(=ω=*)「なに言ってんの?」





622 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/06(水)18:00:00.00 ID:1399336



(=ω=*)「で、ブルシット様に拾われたんだよ」



( ・∀・)「アイツ昔からキモかったんだな」



( ^ω^)「結局、不審者に捕まってんな」




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