勇者達は女神と戦うようです その②
609 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/02(土)18:00:00.00 ID:1399336
【フィオレ王国 領主館 応接室】
( ΘωΘ)「女神ビームッ!」
(・∀・;)「わっ!」
( ΘωΘ)「女神チョップッ!」
(・∀・;)「せいっ!」
( ΘωΘ)「女神アックスボンバーッ!」
(・∀・;)「なんのっ!」
三位一体の女神の猛攻を、道化師はアクロバティックに紙一重で避け続ける。彼は額の汗を拭うと、声を荒らげた。
(・∀・;)「クソっ攻撃が激しすぎる!みんな大丈夫か!?」
(・ω・`)「うん。大丈夫だよ」
(’A` )「お前しか狙われてねぇからな」
(・∀・;)「なんでだよッ!!」
( ΘωΘ)「ふふっ気づいたのです。分身体それぞれ戦うよりも、3柱合わせてひとりを狙い続けるほうが効率が良いと」
女神は道化師を見据えて微笑んだ。
道化師は戦士のような筋肉の鎧も、魔法使いのような防護魔法も持ち合わせていない。故にひたすら回避技術の向上に力をいれていたのだが、いくら良い技術を持っていても体力には限界がある。
( ΘωΘ)「そろそろアナタも体力が切れてきたんじゃないですか?」
(・∀・;)「ひ、卑怯だ!」
( ΘωΘ)「そちらも私に対して多勢に無勢で攻撃しているでしょう」
女神の言う通り、そうこうしている間にも、道化師以外は彼女に攻撃を仕掛け続けていた。しかし、いくら斬っても、裂いても、突いても、渾身の力で叩いても、女神は歯牙にもかけず、攻撃されたそばから傷を再生していく。
ミ ● ●彡「そうだ道化師!貴様が的になってるおかげで、我らが攻撃に転じられる!」
(・ω・`)「できるだけ長く回避し続けてくれ!」
(・∀・#)「ちくしょう!貧乏くじかよ!」
(・∀・;)「……ん、ちょっと待って!」
すると、道化師があることに気がついた。
(・∀・;)「コイツら、3人しかいない!ひとり消えてるぞ!?」
(゜∀゜ )「!」
(゜∀゜ )「狙いは、フィオレ候かッ!」
( ΘωΘ)「ふふっ……いまになって気が付きましたか。しかし、もう遅いですよ。私は既に彼の場所を捉えています」
( ゜∀゜)「ちィッ!」
分身した女神のうちの一柱が、外へ逃げた国王達を追っている。それを知った武王は女神に背を向けると、窓ガラスを割って躊躇なく屋外へ飛び出した。なお、ここは5階である。
ミ ● ●彡「武王!なにをするつもりだ!」
(゜∀゜ )「俺は戦士に加勢する!」
(;・∀・)「あ、ちょっと!俺も行きたい!」
( ΘωΘ)「女神スキアリ!」
(・∀・;)「うわっとォッ!」
(・∀・;)「ちくしょう!これじゃホントにただのピエロじゃないか!」
しかし道化師のアクロバティックはまだまだ終わりそうにはない。
(゜∀゜;)「すまん、そっちは頼んだぜ!」
道化師の怒号を背に、武王は領主館の庭園へと駆け出した。
610 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/02(土)18:00:00.00 ID:1399336
【倉庫】
(^ω^;)「なぁおっさん。倉庫に隠れてるより逃げたほうがいいんじゃねぇか?」
(;^⊿^)「いえ、街に出れば被害が広がってしまいます。セバスチャンに騎士団の出動要請をするように言ったので、救助が来るまでここで待機しておきましょう」
(^ω^;)「そっか。まぁ、安心してくれ。俺とそこのロボットが守るからよ」
[天㊤皿㊤]「ゴーレムです」
[天㊤皿㊤]「そしてその前に天使です」
道化師達が懸命に戦っているその頃、戦士は国王の指示で、領主館の離れにある穀物倉庫に身を潜めていた。非戦闘員である国王親子と行商人一家は倉庫の奥へ、そして戦士と水の大天使は扉の側で構えていた。
すると、ひとまず身の危険が過ぎ去ったことで疑問が込み上げてきたのか、受付嬢がフィオレ国王にまくし立てた。
ξ;゜⊿゜)ξ「お父様、これは、いったい何が起きてるんですの?いきなり現れたあの人は誰?」
(;^⊿^)「……女神様だ」
ξ;゜⊿゜)ξ「はぁ!?女神様!?なんで女神様が私達を攻撃してくるんですの!?」
(;^⊿^)「これが私の恐れていた"ご加護"だ」
(;^⊿^)「マルク帝国に楯突く者、反逆する者、不利益を及ぼす者。そのような人間を裁き、世界から抹消する……」
(;^⊿^)「それによって世界の平和を保つのが、女神様の"ご加護"だ」
ξ#゜⊿゜)ξ「なによ、その帝国にだけ都合のいい加護は!」
ξ#゜⊿゜)ξ「神の加護は全人類に等しく注がれるべきですわ!そうでしょう、天使様!?」
[㊤皿㊤天]「たしかにそう書かれている預言書もありますが、聖アガメマス教会の解釈は少し異なりますね」
[㊤皿㊤天]「『マルク皇帝の治世こそ民にとって最高の平和であって、それが守られることこそ、民が享受する神の加護』というのが教会の公式見解ですね」
ξ#゜⊿゜)ξ「なんですの、その解釈!聞いたことねぇですわ!」
(;^⊿^)「いや……もしかして、お前……神学の授業サボってたのか?」
ξ;゜⊿゜)ξ「そ、そんなコトありませんわ!」
(*ФAФ)「……なんか小難しい話をしとるなぁ、ご貴族様は」
(^ω^ )「ああ、なに言ってるかさっぱりだ」
(*ФAФ)「それより戦士さん。あの襲ってきた子なんだけど、アタシどっかで見た覚えがあるような」
(;^ω^)「え?」
その時だ。大きな音と一緒に壁をぶち抜いて女神が倉庫へ入ってきたのは。
( ΘωΘ)「隠れても無駄ですよ。全てお見通しで……」
しかしその口上を言い切るのを待たず、戦士は女神に飛びかかる。
(^ω^#)「テメェッ!このやろ!」
思い切り振りかぶった拳に、戦士は全力を込める……が、しかしすんでのところで、手が止まってしまう。どうしても彼は、目の前の彼女を殴ることはできないようだ。
(^ω^;)「……!」
( ΘωΘ)「遅い」
それがなにを意味するのか、女神にはどうでもよいことだった。彼女は戦士の胸にカウンターで打撃を食らわせると、壁にヒビが入るほど強く叩きつける。
(゜ω゜;)「がっ!!」
( ΘωΘ)「……次は、アナタ達です」
全身打撲と内臓破裂の痛みで出来た血反吐の池。放っておいてもやがて死ぬだろう。そう判断した女神は標的を国王と行商人に変えた。
[㊤皿㊤;]「め、女神様……お止め下さい、この方達は善良な無辜の民です!」
すると今度は水の大天使が彼女の前に立ちはだかった。しかし……
( ΘωΘ)「黙りなさい、水の大天使」
女神の部下に過ぎない大天使が、女神に勝てる道理はない。女神が大天使に手をかざして祝詞を呟くと、速やかに水の大天使は機能を止め、地面に崩れ落ちた。
[●皿●;]「ア……」
ξ;゜⊿゜)ξ「ひぃ!な、わ、私達がなにをしたというのです!」
( ΘωΘ)「平和を乱すのはもちろん重い罪ですが……その思想に触れる者も同罪です」
( ΘωΘ)「さぁ、勇者に導かれし罪人達よ。アナタ達もまた裁きを受けなさい」
女神が残る国王たちに手をかざしすと、その手に絶命の光が溢れてゆく。もはや、彼らを守る者はいない。彼女がその光を放てば、ここにいる全員の命は一瞬の内に消えてしまうだろう。
(ФAФ;)「や、やっぱり!」
( ΘωΘ)「?」
だが、その絶望を、行商人の素っ頓狂な声が終わらせた。彼女は無謀にも──いや、そもそも目の前の光に"人を絶命に至らしめる"力があるとは思っていなかっただけでしかないが──女神の前に立つと、彼女の顔を指差して、言った。
(ФAФ;)「アンタ、ミーちゃんかい!?」
( ΘωΘ)「?!」
(;=ω=)「えっ?でもミーは……」
その言葉に、彼女の家族は目を見合わせる。ありえない、といった感じだ。無理もない、"ミー"という少女は十年も前に戦争で死んでしまったのだ。
そのはずなのだ。
(ФДФ;)「いや、でもどことなく面影があるような」
(ーωー;)「たしかに、口元のあたりが似てる気が」
(ФAФ*)「ミーよ!絶対ミーよ!」
確信したようにその名を連呼する行商人に女神は顔をしかめた。
( ΘωΘ)「神に名前はありません。神は支配できませんので」
( ΘωΘ)「神に家族はありません。神は支配できませんので」
(ФAФ*)「えぇウソ、人違い?」
( ΘωΘ)「神です」
(ФAФ*)「いや、でも……ちょっともう少し近くで顔を見せて頂戴?」
(^ω^;)「おばちゃん……ダメ……そいつは……」
しかし、息も絶え絶えの戦士の忠告は彼女の耳に入らない。行商人は女神の顔をよく見ようと詰め寄った。いつしか女神の手に集まっていた光は霧散しており、彼女は慌てふためいた。
(;ΘωΘ)「や、やめなさい!近づいてはなりまん!」
(;ΘωΘ)「私は神!私は神!決してミーではありません!」
(;ΘωΘ)「私に名前などありません!」
(;ΘωΘ)「私に家族などありません!」
(;ΘωΘ)「私に……!」
611 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/02(土)18:00:00.00 ID:1399336
(;ФωФ)「僕に、もう家族はいない!」
612 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/08/02(土)18:00:00.00 ID:1399336
瞬間、女神の体躯がビクンと震えた。全身の筋肉が収縮を繰り返し、マリオネットのように不自然に身体をよじらせる。
(ФAФ;)「なに?どうしたの!どこか悪いの?」
行商人の声は届いていなかった。女神の手に再び光が──今度は急速に──集まってゆく。
( ω )「裁きを!」
(ФAФ*)「えっ」
女神は目の前の女性に光の束を放つ。いや、今の女神に彼女の姿は見えていない。なんの躊躇も、逡巡も、意思もない。平和を乱す者には死を。ただ、その純粋無垢な法に則った攻撃だ。
だが、女神の放った光線は彼女に当たることはなかった。行商人が攻撃を弾いたわけでも、防いだわけでも、まして避けた訳でもなかった。
(゜∀゜#)「ぐっ……!」
ギリギリ間一髪で追いついた武王が行商人の身を突き飛ばして、光線の身代わりとなったのだ。腹を灼かれる痛みに武王は鬼の形相で歯を食いしばる。
(゜ ゜#)「ぐぅぅぅぅッッッ!」
(ФAФ;)「あ、アンタァァ!!」




