女神は夢を見ているようです
595 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/29(火)18:00:00.00 ID:1399336
【西ゼリヤ王国 宿場町ゴタハ】
(・∀・ )「かくかくしかじか」
(;´・ω・)「実は皇帝の弟だった武王を、皇帝に据える!?」
(´・ω・)「……君達、そんな壮大な計画を立てていたのか?女の子ひとり助ける為だけに?」
(・∀・ )「この反応ももうテンプレだね」
(´ーωー)「てっきり僕は帝都に攻め込むつもりかと……」
(´・ω・)「ホントに誰も死なせないつもりなんだ」
(^ω^ )「嫌われたくないからな」
(´・ω・)「はぁ……じゃあコレは必要なかったみたいだね」
(゜、゜*)「なによそれ」
(´・ω・)「知り合いに人猫族の船長がいてね。彼への紹介状だ」
懐から便箋を取り出した諜報員は、それを魔法で燃やし尽くした。
(´・ω・)「君達をケット王国へ逃がすように依頼する為のね」
(’A`;)「俺達を逃がす?どういうことだ?」
(’A`;)「お前、俺達を殺すつもりだったんだろ?」
(´・ω・)「嫌だなぁ、殺すなんて一言も言ってないじゃないか」
(^ω^ )「ホントに?」
ミ● ● 彡「嘘ではないぞ。其奴からは殺気が全くしてなかったからな」
ミ● ● 彡「おおかた、貴様らの覚悟を見極めるとか、そんな酔狂なコトを考えていたのだろう」
(゜∀゜ )「ああ。最後の攻撃だって急所から大きく外れてたしな。わざとすぎるぞ」
(゜、゜*)「首って知ってる?人体の急所なんだけど」
(;´・ω・)「うわバレバレ、これじゃあ僕が道化みたいじゃないか」
(・∀・ )「ん?いま俺のことバカって言ったか?」
(´・ω・)「言ってねぇよバカ」
(´ーωー)「……まぁ、狸爺さんの言う通りだよ。僕は、君達が皇帝に逆襲するつもりだと思ってた。だからそれを諦めさせようとした、それだけだよ」
(´ーωー)「皇帝を殺すとなれば多くの犠牲や代償を払うことになる。その覚悟がないのなら諦めろとね」
(^ω^ )「じゃあ最初からそう言やいいじゃん」
(´・ω・)「君は言っても理解できないだろ?」
(^ω^ )「ん?いま俺のことバカって言ったか?」
(´・ω・)「よく理解できたね」
(’A` )「しかし全部ムダな心配だったってワケだな。別に戦争したり、皇帝を殺したりするつもりねぇし」
(´・ω・)「戦わない、ねぇ……」
(´・ω・)「でもさ、君達。ひとつ見落としてない?」
(・∀・ )「え、見落とし?なんだろ」
(^ω^ )「よく考えたら、いま俺達が敵に囲まれてる状況だってこと?」
(;’A`)「あっ!そう言えばそうだった!」
(’A`;)「表は聖伐軍でいっぱいだぞ?どうやってラクシズに向かうんだ?」
ミ ● ●彡「心配するな、既に『千変万化』を使っておる。騎士共に我らは見えん」
(’A`;)「使ってくれてんの?前はあんなに渋ってたのに」
ミ ● ●彡「もう看破されている術だ。使い所を渋っても仕方あるまい。まぁ、もはや帝都に潜入するには使えんがな」
(´・ω・)「爺さんの魔法を打ち消せるのは、この場じゃ僕だけだ。心配いらないよ」
(;´・ω・)「それより!見落としてるのはそんな些細なコトじゃない」
(´・ω・)「君達の前に立ちはだかるのは、皇帝マルク・高弟ドナドだけではないかもしれない、その可能性さ」
(゜∀゜ )「兄貴達だけじゃない?他に、俺達の敵になりそうな奴がいるか?」
(;・∀・)「皇帝側の将軍とか大魔導師とか、貴族?」
(゜∀゜ )「さっき諜報員の口から聞いただろ。やっぱり今の帝国には、そいつらを統率できる力は残ってない。俺達の後ろに西ゼリヤ王国やラクシズが付いているコトが分かれば、白旗をあげるさ」
(´・ω・)「いやいや、そんな木っ端役人は端から敵じゃない。もっと大きな存在だよ」
(^ω^ )「皇帝の宮殿が変形して巨大ロボになるとか」
( ’A`)「カッケェ……」
(;´・ω・)「大きいってそういう意味じゃねぇよ!」
(゜、゜*)「もったいぶらないで、さっさと教えなさいよ」
(;´ーωー)「……ハァ、ホントに気づいてなかったの?」
(´・ω・)「……修道女だよ。いや、今は"形代の女神"と言ったほうがいいかな?」
(゜、゜;)「ッ!!」(゜∀゜;)
(;・∀・)「!!」(’A`;)
(´・ω・)「なにせ魔王と戦えるほどの強さを持っているんだ。帝国が、それを戦力に数えない訳ないよね?」
(^ω^ )「……」
(^ω^ )「……ん?なんで修道女が俺達と戦うんだ?」
596 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/29(火)18:00:00.00 ID:1399336
【聖地 地下祭殿】
(.゜∀゜)「……どうやら、勇者は"君"を助けようとしているらしい」
秘密の祭殿へと向かう階段を、高弟ドナドが一段一段ゆっくりと下っていた。カツンカツンと靴の音だけが響きわたる暗闇の世界で、手元のランプだけが足元をぼんやりと照らす。
(.゜∀゜)「"君"も愚かしいと思うだろう?彼らは君の世界を、滅ぼそうとしているんだ」
独りごちる彼の足元から、唸りのような、いびきのような、息の漏れる音が返ってくる。
(.゜∀゜)「"君"は世界にとって、平和にとって、欠かせない存在だ。君を奪うなんてコトは許されない」
(.゜∀゜)「魔王が"君"の前任者を壊して、こちらがどれだけ苦労したか……」
すると、今度は小さな唸りが返ってくる
(.゜∀゜)「ああ、いや。"君"が気にすることはない。"君"は素晴らしい素体だったよ。これ以上はない程、清い魂だった」
階段が終わり、彼は足を止める。そこでは息遣いがよりはっきりと聞こえた。
(.゜∀゜)「だから私は、"君"を形代に選んだのだ」
彼はランプを顔の近くに持って来て、暗闇を照らした。すると目の前に大きな空間が広がった。これこそが地下祭殿。彼がここに来たのは、勇者が魔王に勝った、その日ぶりである。
彼の視線の向こう、祭殿の中央には一本の"鎹"が、なにかを挟み込むように打ち付けられていた。"鎹"に繋ぎ止められたそれは、呼吸する以外はなにもせず、ただ眠るように横になっている。
(.゜∀゜)「女神様、良い夢を見れているかい?」
寝息を立てる彼女に、彼は語りかけるように言った。
(.゜∀゜)「願いがあるんだ」
(.゜∀゜)「私達の、世界と平和の為に……」
(.゜∀゜)「勇者を殺せ」
(ΘωΘ )




