勇者達は選ぶようです
590 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/28(月)18:00:00.00 ID:1399336
諜報員は勇者達に問いかけた。
(´・ω・)「さて、いま君達が企んでいることは止めて、僕と一緒に来てもらおう」
(゜、゜*)「断ると答えたら?」
(´・ω・)「無理矢理にでも言うことをきいてもらう」
(´・ω・)「……と言いたいところだけど、僕ひとりじゃ正攻法で君達に勝てないからね」
(^ω^#)「ったりめぇだ。逆に一発食らわしてやるよ」
(´・ω・)「うん。だからさ。ラクシズで観光している君達の仲間を、人質にさせてもらったよ」
(・∀・;)「なにっ!」
(’A` )「『火……」
隙を見て魔法を繰り出そうとする魔法使い。だが、諜報員は彼の杖を指さして忠告する。
(´・ω・)「止めたほうがいい。僕が雇った冒険者が既に彼らを捕らえているはず。仲間を酷い目に遭わせたくないだろう?」
(’A`;)「……ちっ」
魔法使いは杖を下ろした。
(^ω^#)「はん、あっちにはブルボンゴ君がいる!ブルボンゴ君は強えぞ、冒険者なんて返り討ちだ!」
(´・ω・)「ああ、あの留学生みたいな男?たしかに少しは腕に自身がありそうだった」
(´・ω・)「だから念の為にA級冒険者を4人雇ったよ。僕と同じ位の強さかな?」
(^ω^;)「ぐっ……!」
(^ω^;)「……あんまりピンと来ねぇ」
(;´・ω・)「……」
(゜∀゜ )「単騎でドラゴン討伐できるレベルの野郎だな。つーか、よくそんな奴ら4人も雇う金があるな、お前。何モンだ?」
(´・ω・)「日雇い労働者だよ。君のお兄さんお抱えのね」
(゜∀゜ )「なるほどな。今のうちに縁を切っといた方がいいぜ。俺みたいに」
(´・ω・)「よく分かってるでしょ?しがらみが多いんだよ、あそこ」
(ー∀ー )「……ご愁傷さまだな」
591 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/28(月)18:00:00.00 ID:1399336
(・ω・`)「あぁ、それと。そこで"かくれんぼ"してるタヌキ爺さん?」
諜報員は横目に木陰を見た。
(・ω・`)「『千変万化』だっけ?その魔法はもう解析されてる、無駄だよ。嘘じゃあない。僕とちゃんと目が合っているだろう?」
ミ ● ●彡「……帝国の魔導師め、随分と成果が早いじゃないか」
(・ω・`)「人間は強い者には敏感みたいでね、最高位の魔術師が何十人も研究所に缶詰になって、大急ぎで解析したらしいよ」
ミ ● ●彡「それはそれは獣人ごときの術に大層なことだな。それで、お前が何故それを使える?」
(・ω・`)「僕はいわゆる対抗魔法使いと呼ばれる類の人種でね。他人の魔法を打ち消したり、見破ったりするのが得意なんだ。それを見込まれてね、コネで教えてもらった訳さ」
姿を現した隠神はため息をつくと、地面にあぐらをかいた。
ミ ● ●彡「嫌らしい性格だな、人のことは言えんが」
(・∀・;)「……ね、ねぇ諜報員」
(´・ω・)「ん?」
(・∀・;)「とりあえずさ、ここは話し合おうよ」
(・∀・;)「俺達はどうしても修道女を助けなきゃいけないんだ」
(´・ω・)「……ああ、知ってるよ」
(´・ω・)「君達のコトは何ヶ月も観察して、よく分かってる」
(´・ω・)「結局のところ君達は、一般人だ。多少は力が強くても、その精神は一般人の範疇から逸脱してはいない」
(´・ω・)「誰にも死んで欲しくないし、誰かが犠牲になる選択を取れない」
(’A` )「誰だってそうだろ」
(´・ω・)「ああ。夢見がちな一般人なら、誰だってそうだ。悪いことじゃない」
(´・ω・)「だけど、それでは修道女を助けだすなんてできない。時には選択を強いられる事がある。命と命を天秤にかけた選択を」
(´・ω・)「勇者。君達に選ぶ勇気はあるかい?」
(´・ω・)「ここで仲間を殺して、修道女を助けるか」
(´・ω・)「誰も死なせず、全てを諦めるか」
592 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/28(月)18:00:00.00 ID:1399336
(^ω^;)「……」
(・∀・;)「……」
(’A`;)「……」
( ゜∀゜)「……」ミ● ● 彡
勇者達は押し黙り、武王と隠神は待った。彼ら全員が理解していた。この選択に答えを出せなければ、自分たちは、この先に進むことは出来ないと。
(゜、゜*)「待ちなさい、バーテンダーさん」
口を開いたのは盗賊だった。会話が始まってから、サプレッサー付きの照準は諜報員の額を狙ったままだ。
(´・ω・)「おお、やっぱり君か。君は元から一般人じゃないから、選べるのは君しかいないと思っていたよ」
(゜、゜*)「ああそう。そんなことより、選択肢が足りないんだけど」
(´・ω・)「は?」
(^ω^ )「おう、その通りだ。言ったれ姐さん!」
(’A` )「つーか、なんでお前の作った選択肢から選ばなきゃいけねぇんだ!」
(´・ω・)「選択ってそういうものだよ。気づかないだけで」
(・∀・ )「俺達の選択はずっと前から決まってるってコトだよ」
(゜、゜*)「そう、道化師の言う通り」
(゜、゜*)「『誰も死なせず、修道女ちゃんを助ける』」
(゜、゜*)「私達の答えは、後にも先にも、これ一択よ」
(´・ω・)「横暴だね。それじゃこっちが選択肢を提示した意味がない」
(゜、゜*)「天秤を壊す勇気と言ってほしいわね」
彼女は躊躇なくトリガーを引いた。
銃口が赤茶けて輝き瞬き、鉛が音を裂く。
距離は数メートル。並の人間であれば避けらない距離。
しかし諜報員にとって、こうなるコトは幾つかある想定のひとつ。予め備えておけば、ゼロ距離射撃のひとつやふたつ避けることは容易。
勇者4人全員は相手にできないが、一対一なら、玉砕覚悟で戦えば相手取れる。彼はステップを効かせて地面を蹴る。
狙いを盗賊に絞り、取り出したナイフで思い切り斬りつける。
(´・ω・)「……君はもっと賢いと思ったよ」
彼は最期に呟いた。
593 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/28(月)18:00:00.00 ID:1399336
カキン。
(;´・ω・)「……は?」
しかし彼のナイフは、生身を斬った時には到底聴けない金属音を返した。
(゜、゜*)「残念だけど。今の私達、すっごい硬いの」
(゜、゜*)「狸の爺さんの魔法でね」
(・ω・`;)「なに!?」
咄嗟に背後を向いた諜報員の目が捉えたのは、腹を抱えてケラケラと笑う狸親父だった。
ミ● ●*彡「くくく……奥の手はひとつだけだと思うたか?」
ミ● ●*彡「『金剛不壊』、身を守るにはもってこいの術よ。これも解析済みかな?」
(・ω・`;)「……くそっ」
(・ω・`;)「いいのか!?ラクシズにいる仲間がどうなっても!」
( ^ω^)「だからさっき言っただろ。ブルボンゴ君がいれば大丈夫なんだよ」
(・ω・`;)「理由になってない!」
( ^ω^)「信頼に理由はいらねぇだろ」
(・ω・`;)ギリッ
(゜、゜*)「バーテンダーさん、諦めるのはアナタみたいね」
諜報員の額に銃口を突きつけられる。万事休す、彼はまぶたを閉じた。
(ーωー`;)「……!」
空気が弾ける音が鼓膜を揺らした。
594 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/28(月)18:00:00.00 ID:1399336
(;´ーωー)「……」
(´ーωー)「……」
(´・ω・)「……なぜ殺さない?」
地面に空いた弾痕を確認すると、彼は盗賊を問いただした。
(゜、゜*)「言ったでしょ、誰も殺さないって」
(;´・ω・)「敵もそこに含めるつもりか?」
(゜、゜*)「ええ。修道女ちゃんが起きた時に、無駄に悲しませない為にね」
(;´・ω・)「キモ……」
(’A` )「もっというと修道女にとっちゃ、お前はまだ仲間だろうしな」
( ^ω^)「たしかに。一緒に麻雀卓囲んだしな」
(;・∀・)「仲間の条件軽すぎない?」
(;´・ω・)「……君達、まだ言うのかい?僕を仲間だって」
(゜、゜*)「ええ。だから今度はアナタが選びなさい。ここに留まるか」
(゜、゜*)「さっさとご主人様のところに帰るか」
(;´ーωー)「……はぁ、君達はホント、なに考えてるのか」
諜報員は観念したようにため息をつくと、両手を上げて、地べたに腰を下ろした。
(´・ω・)「裏切り者に何をお望みだい?」
(゜、゜*)「裏切り者?」
(゜、゜*)「誰が?」
(゜v゜*)「アナタは最初から仲間じゃない!」
(#´ーωー)「……」
(゜、゜*)「そうねぇ、望むものは沢山あるわ。皇帝や教会の内部情報に、軍の出方……あとは、そうね」
意趣返しで微笑む盗賊を見て、苦虫を噛み潰すような顔をする諜報員。そんな彼に彼女は続けた。
(゜、゜*)「また作ってちょうだい、美味しいミルクセーキ」




