勇者達は猩々寺を訪れるそうです
582 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/25(金)18:00:00.00 ID:1399336
ラクシズ市長との交渉の翌日……
【ラクシズ タービンタワー正面】
(;ФДФ)「うわぁ、すっげぇ。こんなでっかいタワーが建てられるんだ……」
( ーωー)「話には聞いていたが、これほどとは。どんな技術だ?」
(*ФAФ)「高いわねぇー!」
ミ;゜ω゜)「まるで昔話の天の柱だァ」
(ーωー )「勇者さん、本当に僕達だけラクシズ観光しちゃってていいんですか?」
( ・∀・)「ええ。これから交渉する相手は獣人なんですけど、ラクシズから少し離れた場所にいるらしいんです。そちらには護衛としてブルボンゴ君を付けますので、ゆっくりしていて下さい」
(;・∀・)「こちらは万が一ではありますが、戦闘が起きる可能性があるので」
(ーωー;)「戦闘!?そんな危険な相手なんですか!?」
(;・∀・)「ああ、いや危険というか……」
ミ● ● 彡「ふん」
(;・∀・)「ちょっと尋常じゃなく仲の悪い人達がいるだけですよ」
勇者達は行商人達と別れ、獣人達の橋渡し役であるキツネ神主の下へと訪ねる為に、一時ラクシズを離れた。しかし、向かったのはリナイ神社ではなかった。
583 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/25(金)18:00:00.00 ID:1399336
【西ゼリヤ王国 東部丘陵の雑木林】
( ^ω^)「しっかし、なんだって婆さんは神社に居なかったんだろうな」
(゜、゜*)「コボルトの話を聞いてなかったの?魔王に従ってた人狼連中を匿って身を隠してるって言ってたじゃない」
そもそも勇者達は西ゼリヤ国王の謁見を果たした後に、いちどキツネ神主の神社を訪れていた。しかしそこに彼女はおらず、探し回ってみたものの近隣の住民も最近見ていないという。
そこで勇者達は視点を変え、パラッハ草原のコボルト集落を訪ねたところ、コボルトの長老曰く……
ミ ФハФ彡『狐ババならオオカミらと一緒に"猩々寺"に身を隠すと言っておったぞ』
(゜、゜*)「……という訳で、私達はその"猩々寺"に向かってるのよ」
( ^ω^)「あーそういやそうだった気がする」
(゜∀゜ )「隠神ジジイ。ところで"猩々寺"ってのは、どういう神殿だ?獣人達の信仰に関係あるのか?」
ミ● ● 彡「さぁな。我らにもかつて賢人とも称された獣人・猩々族が建てた社だとしか伝わっていない」
(゜∀゜ )「猩々族?聞いたことないな」
ミ ● ●彡「そうか?貴様ら人間が数百年前に絶滅に追い込んだと聞いたがな」
(゜∀゜;)「っ!」
ミ● ● 彡「まぁ我も幼い頃に、これから向かう"猩々寺"に隠遁していた老猩の話を聞いただけだ。真偽は分からんがな」
(゜∀゜;)「その猩々とは話せるか?」
ミ ● ●彡「ククク情が湧いたか?だが彼は既に死んでいるし、猩々の歴史も貴様の先祖が全て闇に葬った」
ミ ● ●彡「"存在しない者"とは対話できんな」
(ー∀ー;)「そうか……そうか」
(’A`;)「……もしかして、獣人って俺達が知らないだけで元は結構色んな種族がいたのか?」
ミ ● ●彡「もちろん。有名どころだと、人鬼族に人猪族、人矮族、人馬族、人鳥族も、人の手によって歴史から姿を消した」
(’A`;)「有名どころの魔物が全然いないと思ったら絶滅してたのかよ……」
(゜、゜*)「どうして人間は絶滅させるまでしたのよ?」
ミ● ● 彡「歴史から消えた獣人族の多くは人間とは桁違いに強かった。それが理由だろうな」
(^ω^ )「強いのに絶滅させられたっておかしくね?」
ミ● ● 彡「強いからこそだ。強いからこそ人間に危険視され、徹底的に弱みをつかれ、生存競争に敗けたのだ」
ミ● ● 彡「かつて人の親は、枕元で人鬼族の恐ろしさを伝える童話を子供に言って聞かせてたものだが、もはや童話の名前すら人は忘れた……」
ミ ● ●彡「こうした先人の努力で、人間は安心して眠りにつけるようになったという訳だな?」
(゜∀゜;)「嫌味な言い方しやがる」
ミ ● ●彡「ククク、されても仕方ないのが貴様らの業よ」
ミ● ● 彡「……さて。そんな昔話をしていたら、そろそろ着いたようだな」
そう言って隠神が立ち止まったのは、雑木林の中の開けた広場……なのだが、そこには寺院どころか、おおよそ建造物と呼べるような代物は一切なかった。ただ、木々が風に揺すられて葉の掠れる音が、のどかな光と一緒に頭上から漏れてくるだけである。
(・∀・ )「寺もなにもありませんけど」
ミ● ● 彡「女狐の"縁切り"の力だ。並の人間では、ここには何もないように見えるだろうな。だが……どうだ魔法使い?」
(’A`;)「いや、俺も何もないように見えるけど。でも、なんか景色が歪んでる?感じだな。魔力の流れもおかしい」
ミ● ● 彡「"縁切り"を繋がりを断つ秘術。今回は大雑把に地縁を断って、"猩々寺"を外界から切り離したというトコロか。しかしだ……」
ミ● ● 彡「"夜になれば同じ月"『縁繕い』」
隠神が法印を結ぶと、広場の奥には、それはさも最初からそこにいたかの如く当然な様子で、お堂がでんと構えているのが見えた。
(・∀・;)「うわっいきなり現れた!?」
ミ● ● 彡「最初からあった。ただ貴様の目が見ようとしなかっただけ。それが"縁切り"だ」
そして……
从#・⊿・从「なんの用じゃ、狸爺」
境内の真ん中では、キツネ神主が腕を組んで仁王立っていた。
ミ● ● 彡「我は特に用事はない。用があるのは勇者共だ」
从*・⊿・从「勇者?……おおっ勇者達か、元気だったか!?」
从*・⊿・从「あまりにもお前らの気が掴めんかったから、魔王を倒して用済みだからという理不尽な理由で処刑されてしもうたと思っとったぞ!」
(^ω^ )「見てた?」
(・∀・ )「ほぼ正解だよチクショウ」
从*ー⊿ー从「ということはアレじゃな。自分たちを処刑しようとした皇帝をギャフンと言わせようと何かしら企んでおって、ワシに協力せいと……」
从*・⊿・从「そういうことじゃな!」
(’A` )「これだけ状況理解力が高いと、ツッコミよりも話が早くて助かるという感謝が勝るな」
从*ー⊿ー从「ふむ。であれば、そこから逆算すると……修道女の姿が見えんということも踏まえて……」
从*・⊿・从「ずばり、アガメマスの女神復活の人柱になってしもうた修道女を救う為でもあるな!?」
(’A`;)「なんでそこまで分かるんだよ!?」
(゜、゜*)「ツッコミの逆転勝利ね」
ミ ● ●彡「帰っていいか?」




