道化師は新世界の秩序を考えるようです その①
【登場人物紹介】
( ^ω^)【戦士】:レスラー体型勇者。火の着いたタバコを口の中にいれる芸( タンギング)ができる。
( ’A`)【魔法使い】:ヒョロガリ勇者。ペン回しができる。
(゜、゜*)【盗賊】:スタイルグンバツ勇者。I字バランスができる。
( ・∀・)【道化師】:イケメンハイスペ勇者。尻で酒を飲める。
(゜∀゜ )【武王】:元・魔王四天王の武人。岩を叩き割れる。
(*ФAФ)【行商人】:行商のオバちゃん。バナナを叩き売れる。
( ーωー)【旦那】:行商人の旦那さん。太鼓を叩いて物を売る。
( ФДФ)【息子】:行商人の長男。はしごの上でアクロバットができる。
(゜ω゜彡【ブルボンゴ君】:南国チャリス島のドドゴンボンゴ族のウルバルスカ。笛の音でヘビを操れる。
570 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/22(火)18:00:00.00 ID:1399336
【エルフの都 エルゴ】
( ^ω^)「ということで、やってきましたエルフの都」
( ・∀・)「あっと言う間でしたね」
(゜、゜*)「道中、驚くほど何もなかったからね」
(’A` )「ただただ麻雀やってたな」
(゜∀゜;)「しっかしよぉ……」
[天㊤皿㊤]ーωー)*ФAФ)ФДФ)● ●彡゜ω゜彡
(;゜∀゜)「こんな大勢で押し寄せたら、長老の迷惑になっちまうな」
( ・∀・)「まぁ、そうだね。人数を絞って向かおうか。武王は必須として……」
( ^ω^)「というか道化師と武王くんだけでいいんじゃね?」
(・∀・;)「えっ!?」
(’A` )「まぁ俺達が居ても大した話はできねぇからな」
(・∀・;)「じゃあ皆はなにしてるのさ!」
(゜、゜*)「観光」
(・∀・;)「俺も観光したい!」
( ゜∀゜)「諦めろ、てめぇが蒔いた種だ。俺も一緒に拾ってやっからよ」
571 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/22(火)18:00:00.00 ID:1399336
【エルフの都 長老の官邸】
(-●ハ●)「おおっゴブリンから都を救ってくれた勇者殿ではないか。聞いたぞ、魔王を倒したそうではないか」
(-●ハ●)「して今日は何の用だ?」
(・∀・ )「実はかくかくしかじか……という訳でして」
(・∀・ )「マルク帝国の現状を変える為、どうか自分達に力を貸して頂けないでしょうか?」
(-●ハ●)「ふむ。マルク帝国の皇帝の座をそこの弟君とやらに」
(゜∀゜ )「……」
(・∀・ )「はい。もちろん、エルフ側にも利のある話です。彼が皇帝になった暁には、マルク帝国に結ばされた不平等な"契約"も破棄され、あなた達はこの原生林から解放されます」
从●A●-从「長老様!ここは勇者に力を貸すべきです!」
从●A●-从「帝国との"契約"の解消は、我々エルフにとっての長年の悲願!この機を逃してはなりません!」
爪-●Д●)「その通りです!それに、忠義を尽くした勇者を裏切るような皇帝など、ゆくゆくエルフにも牙を剥くでしょう!」
(-●ハ●)「……いまは答えを出すことはできん」
(・∀・ )「!」
爪;●Д●)「長老様、なぜです!?」
(・∀・ )「理由をお聞かせ頂いても?」
(-●ハ●)「そもそも、この話は西ゼリヤ国王に通しているのか?」
(・∀・;)「いえ……まだ、ですが」
(-●ハ●)「であれば、まずは首都のアロスティに向かい、ミラノフ王に協力を取り付けよ」
(-●ハ●)「その上でミラノフ王より、エルフ族の協力を"許可"してもらうのだな。我々エルフは、それに従い動こう」
从●A●;从「長老様!これから帝国を変えようというのに、そんな帝国の"契約"に従う必要は……」
(-●ハ●)「"ある"に決まっておる。お前達若者エルフはその意識が薄いが、エルフの住むウッソー原生林は西ゼリヤ王国の国土。であるからして、我々も当然、まだ西ゼリヤ王の臣民なのだぞ?」
(-●ハ●)「臣民は王に忠義を尽くさねばならん。王の意志を飛び越えるような真似は許されないのだ」
从●A●;从「その西ゼリヤ王国への服従こそ不平等な"契約"ではありませんか!我々エルフは今こそ、自らの国を持つべきだと……」
(#●ハ●)「馬鹿者!まだ分からぬか!」
从●A●;从「……!?」
(・∀・;)「……あっ」
(゜∀゜ )「大義名分を失う、か」
(-●ハ●)「……弟君は理解しておったか。その通りだ」
(-●ハ●)「そなたが玉座に着くその時まで、現在の"契約"は有効。なれば、それまで我々は契約を履行する義務がある」
(-●ハ●)「もし"契約"を破ればその時点で、我々エルフはもちろん弟君も、逆賊の汚名を被ることになる。そうなれば帝位請求の大義名分は失われるだろう」
(-●ハ●)「表立って悪徳を働いている訳でもない現マルク皇帝に代わって弟君が帝位に立つには、清廉潔白な聖人君子であると主張しつつ現皇帝の埃を叩くしかない」
(-●ハ●)「然らば我々は、そして勇者殿も、弟君が帝位が承認されるその時までは表面上でもマルク帝国の法に従わねばならん」
(・∀・;)「そうですね。たしかに自分達は現在かなりグレーな位置に居ます。だからこそ、忠実に帝国の法に則って、その中で皇帝と戦わないといけないのか……」
(-●ハ●)「うむ。しかし弟君も運がいいのう。過去の記録が消されている故に、魔王軍に属していたという汚名すら闇に葬られているとは」
(゜∀゜ )「別に汚名とは思っちゃいねぇけどな」
(・∀・ )「長老様、ご助言ありがとうございます。すぐにアロスティに向かい、西ゼリヤ国王に協力を……」
(-●ハ●)「うむ。ただし勇者殿。ミラノフ王に謁見する前には入念に準備しておくとよい」
(-●ハ●)「今のままでは協力を得ることはできぬぞ」
(・∀・;)「うっ……はい、心に留めておきます」
(・∀・;)「……恐縮ですが、ご助言を頂けますか?」
(-●ハ●)「ああ、よいぞ。"条約"の破棄は、我々としても悲願だからな」
572 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/22(火)18:00:00.00 ID:1399336
【エルフの都 大通り】
(*ФAФ)「いやぁ、売れた売れた!こんなに繁盛したのはいつぶりやろか!」
(ーωー )「エルフの都は外界とは隔絶されてるとは聞いてたけど、まさかこんなに舶来品に価値をつけてくれるとはね」
(;ФДФ)「東の方じゃそこらで売ってる薬が20倍の値段で売れるなんて……」
(*ФДФ)「商売って楽勝なのでは?」
(ФAФ#)「アホ!そんなに軽く考えてると痛い目見るで!」
ミ ゜ω゜)「センシ!あれはなんだ!?」
( ^ω^)「パントマイム。そこに無いものを有るように見せる芸だよ」
ミ ゜ω゜)「ならアレは!?」
( ^ω^)「手品師だね。そこにあるものを無いように見せる芸だね。今、コインが消えたけど、戻ってきたね。不思議だね」
(゜ω゜彡「アレは!?」
( ^ω^)「カジノで身ぐるみ剥がされた人だよ。"全て"なくなっちゃったね」
(゜ω゜彡「芸人か!?」
( ^ω^)「ただただ哀れな人だよ」
(’A` )「いやぁ、前に来た時は見て回る暇なんてなかったから新鮮だな」
(゜、゜*)「ホントに。さっきの雑貨屋のエルフ製謎置物とか興奮したわね」
ミ ● ●彡「ならなぜ買わんかった」
(゜、゜*)「別に要らないし」
(’A` )「雑貨全否定」
( ゜∀゜)「……おっと。いたいた。お前らこんなトコロに居たのか」
(゜、゜*)「あら、結構早かったわね。話し合いは上手くいった?」
( ゜∀゜)「いや。その前段で追い返された」
(’A`;)「はぁ?いきなり交渉決裂かよ!?」
( ゜∀゜)「いや、西ゼリヤの国王から先に協力を取り付けろだとよ。まぁ言い分は尤もだ、内容は宿に帰ってから連携する」
(゜、゜*)「そう。じゃあ、なんで……」
(;・∀∩)「うぅん……どうする?どうすれば国王を納得させられる?」
(゜、゜*)「……道化師があんなに悩んでるの?」
( ゜∀゜)「ちょっとな。まっこちらの考えが浅かったってことだ」
(゜、゜*)「……へぇ」
573 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/22(火)18:00:00.00 ID:1399336
【少し前 長老の官邸】
(-●ハ●)「勇者殿の提案では新皇帝が即位した後のビジョンが見えぬ。これが問題だ」
(・∀・ )「ビジョン……公約や目標のようなものですか?」
(-●ハ●)「そこまで具体的なものは、国王と話し合って決めればよい。提示すべきは『どのように世界秩序を維持するか』だ」
(・∀・ )「世界秩序の、維持?」
(゜∀゜ )「長老。勘違いしているかもしれねぇが、俺達はなにもマルク帝国を壊そうとしてるワケじゃねぇぞ?これまでの帝国社会を大きく変えるつもりはねぇ」
(;●ハ●)「……なにを言っておる?なれば、さきほど我らに提示した不平等条約の破棄とは、いったいどういう意味だと考えているのだ?」
(・∀・ )「それは、エルフが帝国から自由になり……」
(・∀・;)「あっそうか!それってつまり、エルフの独立か!」
从-●A●从「それ以外に何があるというのだ」
爪-●Д●)「我々は既に独自の政府と経済圏を有している。弟君が皇帝になれば、すぐに独立準備政府を発足したい」
(゜∀゜ )「そう聞くと、『エルフが新しい国を作れるようにする』と伝えて、国王が素直に納得するとは思えねぇな」
(-●ハ●)「うむ。我々エルフの"契約"破棄は、西ゼリヤ王国にとってメリットのない話だ。国土は減り、我々からの税金収入は失う。そしてなにより……近隣に仮想敵国が誕生する」
(゜∀゜ )「やはりエルフにとって人間は敵か?」
(-●ハ●)「ワシはそう思っておらん。むしろ、人間とは協調した方が得策だと考えておる。しかしワシの死後、エルフの社会がどう変化するかは分からん」
(-●ハ●)「……また、かつてのように争いあう未来が訪れるかもしれん」
(ー∀ー )「まぁ、その時が来るまでは分からねぇよな」
(-●ハ●)「しかし、だからこそ勇者殿は『そのような未来は決して訪れぬ。そのような世界秩序を築く用意がある』と西ゼリヤ王に断言しなければならない」
(-●ハ●)「そうして初めて王は安心し、お主の提案に耳を傾けるだろう」
(・∀・;)「……」
(-●ハ●)「たしかに、現在のマルク帝国が築き上げた世界秩序は強権的な部分が多い。ワシらのような亜人と呼ばれる種族だけでない、都から遠く離れた地方も、帝国の持つ圧倒的な力によって上から抑えつけられている」
(-●ハ●)「しかし、そうした抑圧の下で世界は数百年の平和を謳歌してきた。その事実から目を背けることはできん」
(゜∀゜ )「つっても、その平和も魔王がぶっ壊しちまったけどな」
(-●ハ●)「千年以上生きとるワシから言わせれば当然の結果だ。抑圧される中で人々は自由を求め、自由は衝突を生み、衝突は戦争となる。そうして人々は再び平和を求め、平和を保つ為に抑圧が生まれる。歴史は常にこの繰り返しだ」
(-●ハ●)「このタイミングで弟君が『既存の世界秩序は間違っていた。故に魔王が生まれ、争いが起きた。だから、これからは自分の下で、より正しい秩序を作る』と主張するのも筋が通っているし、その点は西ゼリヤ国王としても認めてくれるだろう」
(-●ハ●)「故に、そこで築こうとする秩序は既存のマルク帝国と同一であってはならないし、かといって理想論に傾き過ぎてもダメだ。『人々に自由を与え、世界を平和に保つ』というのは『熱を加えた水を、水のままに保つ』と言っているのと同義だ」
(-●ハ●)「……話が説教臭くなったな。つまりワシの助言は新しい秩序……すなわち『世界をどのように変えたいか』を、よく考えておけということだ」
(・∀・ )「……世界を、どう変えたいか……」
(・∀・ )「……新しい、秩序……」
574 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/22(火)18:00:00.00 ID:1399336
【現在】
(;・∀∩)「……つまり、僕が新世界の神となる!?」
(’A` )「なに言ってんだ?」
(゜ω゜彡「センシ、あれも芸人か!?」
( ^ω^)「道化だよ」




