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勇者達は文献を調査するようです

516 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/09(水)18:00:00.00 ID:1399336



【狸隠れの里】




(;・∀・)「はぁ……なんとか手元の資料はぜんぶ読んだけど、全く手がかりっぽいのはなかった」



 (’A`;)「こっちもだ。軍事機密っぽい資料はあったけど、多分あんま関係ねぇな」



 (;’A`)「そっちはどうだ?」



(゜、゜*)「うーん、興味深いのは幾つかあるけど……」



(゜、゜*)「戦士はどう?」



( ^ω^)「いやーよく分かんねぇのばっかだな」



( ^ω^)「これとか何書いてあるか全然分かんねぇんだけど、読んでみ?」



( ・∀・)「どれどれ?」





517 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/09(水)18:00:00.00 ID:1399336



【高弟ドナドからの私書】



 兄上へ



 第一次魔王侵攻の最終局面にて、我々の平和を護らんと女神様が降臨なされた。しかし女神様は魔王の卑劣な策謀により疲弊し、その奇跡を発揮する前にお眠りになられてしまった。


 これにより我々は名実ともに帝国頭部地域──領土の3割と北部鉱山の権益を失うばかりか、国境線を帝都ドナドから程近いロコラ郡山まで押し込まれてしまった。なんとか退魔結界により、魔王軍の侵攻を留めることには成功したが、これでは堀を埋められたようなものだ。



 女神様が魔王に敗れた原因は、我々の信仰不足ではなく、女神様に残された"奇跡"が些少であったことにある。"奇跡"は漸減するが道理であり、直近の"形代"による降臨祭が執り行われた記録は数百年前に遡る故、時機が悪かったとしか言いようがない。



 このような状況で我々が行うべきは、預言書に従い"形代"を用意し、女神様を復活させることだ。聖アガメマス協会にて既に"形代"は選定済み。ただし"女神の装束"の用意にはしばしの時間を要します故、それまで"伝説の勇者"を"形代"の護衛とする。



 "伝説の勇者"は魔王を倒す力を持つ存在とされているが、その為に使う必要はない。マルク帝国とは無関係の者が魔王を討てば、皇帝家の威厳が損なわれるばかりか、初代勇者であり始祖マルク様の正統性にも傷がつく。"伝説の勇者"は、伝説のままでいてもらった方が都合が良い。



 どちらにせよ女神様が復活すれば、帝国の勝利は揺るがないのだ。



 ドナドより



 追伸:前年より一部貴族から教会への寄進が滞っております。情けないことです。これでは女神様の奇跡の光明が帝国全土に届かないのも無理はありません。いま一度、兄上から怠惰な貴族達へ呼びかけをお願いいたします。





518 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/09(水)18:00:00.00 ID:1399336



( ・∀・)「全てを雄弁に物語ってるじゃねぇか」



 (’A` )「なんでこんな手紙をそのまま残してんだよ」



( ^ω^)「なに?これ、そんなにすごいこと書いてあったの?」



(゜、゜*)「一から十まで書いてる」



( ^ω^)「@道化師 要約」



( ・∀・)「①:皇帝は最初から修道女を"形代の女神"にしようとしてた」



( ・∀・)「②:勇者は皇帝にとって都合が悪い」



( ・∀・)「③:俺達はずっと皇帝の手の平の上」



( ・∀・)「④:真の黒幕は皇帝の弟、聖アガメマス教会の高弟ドナド」



(^ω^ )「宗教は悪ってこと?」



( ・∀・)「俺の労力を返せ」



(゜、゜*)「まぁいいわ。これでマルク帝国が真っ黒だって裏付けが取れたから」



 ( ’A`)「でもよ、そんなコトは最初から殆ど分かってたようなモンだろ?」



 ( ’A`)「結局、修道女を元に戻す方法は見つかってないし……正直、進捗があった感じはないんだが」



(゜、゜*)「いや……ココを見て」



『……直近の"形代"による降臨祭が執り行われた記録は数百年前に遡る故、時機が悪かったとしか言いようがない。

 このような状況で我々が行うべきは、預言書に従い"形代"を用意し……』



(゜、゜*)「この記述を読む限り、修道女を女神にした方法っていうのが"預言書"に載ってるってコトでしょ?そして、それには前例があるってコトも」



(゜、゜*)「だとしたら、その"預言書"ってのを読めば手がかりは掴めるんじゃないかしら」



 (;’A`)「まぁ、なにかしら情報量は増えるが……また文献調査か……」



(・∀・;)「大学時代を思い出すなぁ……」



( ^ω^)「へぇ、大学生ってこんなに本読んでるの?」



(ー∀ー;)「この比ではないけどね。先行研究の論文読んで、その引用元の文献も読んで、大元辿ってくと英語仏語論文しかないから、電子辞書片手に解読したり……どんだけリレーしたか」



 (;’A`)「俺はフィールドワーク系だったから、先行研究とかは道化師ほど読んでないとは思うけど……集めた資料をまとめたり読み漁ったり大変だったなぁ」



(ー∀ー )「……懐かしいねぇ」



 ( -A-)「思い返せば、あの時は充実してたなぁ」



(゜、゜*)「はいはい。思い出に浸ってないで。卒論が出来たらなら"預言書"一冊(・・)読むのなんて余裕でしょ」



( ^ω^)「おぉ……根性」



 ( ’A`)「いや、でもさ。調べる対象の"預言書"がないじゃん。どうやって手に入れんだ?タヌキが持ってるとは思えねぇぞ?」



(゜、゜*)「……あ」



( ・∀・)「考えてなかった」



( ^ω^)「姐さんたまにそういうトコあるからな」



(゜、゜*)「まぁ盗みだせばいいでしょ」



 (;’A`)「いや、まぁ姐さんなら楽勝だろうけど」



( ・∀・)「窃盗って一回手を出すと癖になるからね」





519 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/09(水)18:00:00.00 ID:1399336



【狸隠れの里】



ミ ● ●彡「おっと貴様ら、まだ資料を漁っとるのか」



(^ω^ )「あ、ジジイおかえり」



(*ФAФ)「はい、ただいま」



(^ω^;)「あれ、行商のおばちゃん?なんで?」



ミ ● ●彡「なに、商談と言ったところだ。魔王が負けて経済的にも混乱が大きいからな、お茶でも飲みながらゆっくり話そうということになった」



ミ ● ●彡「というワケでここは我らが使うから、貴様らはその散らかした資料を片付けろ」



(^ω^;)「えぇ~?じゃあ続きはどこでやればいいんだよ」



ミ ● ●彡「縁側なら明るいぞ」



 (’A` )「小学生の宿題じゃねぇんだからよ」



(・∀・ )「まぁ続きやるつっても手詰り……」



(^ω^ )「あっそうだ。おばちゃん、"預言書"って在庫ある?」



 ( ’A`)「なに言ってんだ、そんなモンいちいち持ってるワケ……」



(*ФAФ)「あるよ」



 (’A`;)「あるのっ?」



(*ФAФ)「どこに商機があるか分からんからね。それに信心深い旅人さんとか、お屋敷の主人さんとか、意外と買う人もおるんですわ」



(*ФAФ)「それにまぁ、アタシも読んだりしますからね」



(゜、゜*)「結構カジュアルに持ってるモノなのね」



(^ω^ )「数珠みたいなもんか?」



(・∀・;)「あっ……でも、その預言書って……」



(*ФAФ)「ん?あぁ、問題あらへんよ。アタシも聖アガメマス教会です」



(・∀・ )「そうなんですか?よかったです」



(*ФAФ)「元々は西の方に住んでたからねぇ……えーと、預言書は……」



 ( ’A`)「いやしかし、まさかこんなところで次の文献が見つかるとはな」



 (;’A`)「大学時代に文献探しに隣の県の中央図書館まで出向いたコトを思い出したぜ」



(ー∀ー;)「無い時は無いしね……貸出中とか普通にあるし」



( ^ω^)「また大学時代に思いを馳せてるな」



(゜、゜*)「ほっときましょ」



(*ФAФ)「っとと。あったあった」



(゜、゜*)「ホント!?いくらですか?」



(*ФAФ)「……え?」



(゜、゜;)「え?」



(*ФAФ)「いやぁ、いくらって言ったって……」



(*ФAФ)「"ロックによる預言書"、"マルクによる預言書"、"コカによる預言書"、"グランによる預言書"……」



(*ФAФ)「"賢者言行録"、"フィオレ書簡"、"聖教会書簡"、"アガム人への手紙"、"マル人への手紙"、"エルフ人への手紙"、"マルクの啓示"」



(*ФAФ)「"天地創世記"、"契約記"、"律法記"、"民草記"、"讃歌篇"、"歴史の記述"」



(*ФAФ)「どれ買いますか?」



(゜、゜;)「まさかのバラ売り!?」



(・∀・;)「聖典ってそういうモノではあるけども……!」




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