勇者のもとに行商人が来たようです
513 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/08(火)18:00:00.00 ID:1399336
【狸隠れの里】
(゜、゜*)「さて、それじゃあ宮廷から盗み出した資料を読み解いてくわよ」
(;・∀・)「こうも数が多いと、内容を理解するだけでも大変だな……」
(;^ω^)「俺、3行以上の文章って目が滑って読めないんだけど」
(’A`;)「この決算報告書とか読む必要ないんじゃねぇか?」
(゜、゜*)「ダメよ他の資料と照らし合わせれば、なにか見えてくるかもしれないじゃない」
隠神の屋敷で開かれた宴会の翌日、勇者達はさっそく資料を漁り始めた。
その時……
「ごめんくださーい」
( ^ω^)「誰か来た」
( ・∀・)「隠神さんなら畑に出てるよ」
(^ω^ )「ん、ちょっと断ってくるわ」
514 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/08(火)18:00:00.00 ID:1399336
( ^ω^)「はいはい。どちら様ですか?」
(ФAФ*)「こんにちはぁ行商で……あら!」
(ФAФ*)「あらあら珍し!タヌキの里にお客さんなんて、どちら様でしょ」
( ^ω^)「あぁ、隠神の爺さんの知り合いで……」
(ФAФ*)「へー、隠神はんタヌキ以外の友達おったんですか?あんな偏屈なのに」
( ^ω^)「いや友達じゃないかな」
( ^ω^)「それよりおばさん、ごめんだけど隠神の爺さんはいま外に出てて居ないんですよ」
(ФAФ*)「あらそう?じゃあ、ちょっとここで待たしてもらっていい?いつ帰って来るか分かります?」
( ^ω^)「えっ?」
(ФAФ*)「えっ?」
( ^ω^)「待つんですか?」
(ФAФ*)「そらぁこの里、喫茶店なんかないし。わざわざここまで行商に来て、商売せずに帰るワケにもいかんでしょう?」
(ФAФ*)「それに隠神さんには、居ない時は屋敷で待ってくれていいと言われとりますの」
( ^ω^)「あっそうなんですね。まぁいつ帰るかは分からないけど」
(ФAФ*)「それじゃあ、ここで待たしてもらいます」
行商のおばさんは玄関に腰を下ろすと、やおら戦士に話しかけてきた
(ФAФ*)「いやぁアタシはこの狸の里で作ったお米やら野菜やらを頂いて、外で売っとりましてね。今日は今年の収穫量がどれくらいになるか伺いに来たんです」
(ФAФ*)「わざわざ馬車を借りて山越えて、米俵一俵しか売ってもらえなかったら嫌でしょ?」
( ^ω^)「はぁ」
(ФAФ*)「それにね、なんでも魔王様が戦争に負けて、年明けにはこの辺りもマルク帝国になるらしいしょ?そうなると食糧の値段も上がるって言われてるから、できるだけ在庫を持っときたいのよ」
( ^ω^)「へぇ」
(;^ω^)(あ、これ長くなるヤツだ)
(ФAФ*)「それにしても戦争が終わってホント良かったですねぇ、この辺りはあんまり影響はありませんでしたけど、それでもいつ戦場になるかなんて分かりませんでしたから。アタシね、昔はマルク帝国に住んでたんだけど、戦乱のなかで娘達と離れ離れに……」
(;^ω^)「あの、すみません……」
(ФAФ*)「あっあらあら、ごめんなさいねぇ。おばさんの身の上話なんか興味ないわよねぇ?」
(;^ω^)「そこまで言ってませんけど」
(ФAФ*)「ならアンタにも興味ある話をしてあげましょ」
( ^ω^)「えっ?」
おばさんは手慣れた手つきで風呂敷を広げた。
(ФAФ*)「なにか買いません?」
515 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/08(火)18:00:00.00 ID:1399336
( ^ω^)「ほぇ?」
(ФAФ*)「いやな、アタシも行商。買付もするけど、街から色んなモンを狸の里に持ってきて売っとるんです」
(ФAФ*)「なかなか狸さん達にも評判ええんですよ」
( ^ω^)「ふぅん」
(^ω^ )「……」
( ^ω^)「どんなもの売ってるんですか?」
(ФAФ*)「まずはこれですね」
(ФAФ*)「"賢さの種"です」
( ^ω^)「あー……あれ?食べると賢さが上がる的なヤツ?」
(ФAФ*)「いや、食べたらダメよ。種だもん」
( ^ω^)「そういやそうだわ」
(ФAФ*)「これを庭に植えて丁寧に育てると、一年で大きな木に成長して、"知恵の実"という実をつけるのよ」
( ^ω^)「それを食べると賢くなるの?」
(ФAФ*)「DHAが豊富」
( ^ω^)「ただのナッツ!」
( ^ω^)「……」
(;^ω^)「ナッツなら種のままでいいじゃねぇか!?」
(ФAФ*)「んー、あんまりみたいですね」
(ФAФ*)「これならどうです?」
(ФAФ*)「"聖水"」
( ^ω^)「認可受けてる?」
(ФAФ*)「……」
(*ФAФ)「次の商品はぁ……」
( ^ω^)「非認可の聖水ってこの世で一番怖いからね?」
(ФAФ*)「はい、じゃあこれ」
(ФAФ*)「"魔素そのもの"」
(;^ω^)「"魔素そのもの"!?」
(ФAФ*)「185mlで300ゴールドです」
(;^ω^)「あの全てのファンタジーの素がこの価格!?」
(ФAФ*)「いや、そんな大層なモンでもなくて普通に疲労回復用です」
(ФAФ*)「魔素を取り入れると、疲労回復、集中力増加、眠気覚ましに脂肪燃焼の効果があると言われとります」
( ^ω^)「コーヒーじゃねぇか」
(;^ω^)「コーヒーと同じ効果で同じ内容量!」
(;^ω^)「値段だけ高い!」
( ^ω^)「………………」
( ^ω^)「4缶ちょうだい」
(ФAФ*)「まいどあり!」
(ФAФ*)「あ、これオマケに付けとくわね」
(ФAФ*)「"イベントCG解放用爆弾"」
( ^ω^)「自爆用って言え」
515 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/07/08(火)18:00:00.00 ID:1399336
( ^ω^)「うーす。ただいま」
(゜、゜*)「遅かったじゃない。なにしてたのよ」
(・∀・ )「誰が来てたの?」
( ^ω^)「行商人のおばさん。セールスに捕まっちゃった」
(’A`;)「そりゃ災難だったな……ちゃんと追い返せたのか?」
( ^ω^)「いや隠神ジジイの知り合いみたいで、ちょうど帰ってきたジジイとどっか行っちゃった」
(゜、゜*)「あらそう。それじゃ、アンタも資料調査に戻りなさい」
( ’A`)「なぁ一回休憩しねぇか?ずっと文字追ってると目が疲れちゃってさ」
(ー`∀・)「うん、同感」
( ^ω^)「俺も賛成」
(゜、゜*)「アンタなにもしてないでしょ」
(゜、゜*)「……まぁ、たしかにずっと根を詰めても仕方ないし、ちょっと一息つきましょうか」
( ^ω^)「それなら俺、行商人から良いもの買ったぞ」
(’A` )「セールスに捕まった者の末路」
( ^ω^)「はい。"魔素そのもの"」
(・∀・;)「"魔素そのもの"!?」
(’A`;)「ファンタジー界のミノフスキー粒子がここに!?」
(゜、゜*)「なにこれ?缶に入ってるけど飲み物?」
( ^ω^)「振ってみた感じ液体」
(゜、゜*)「謎の液体飲みたくないんだけど」
(;^ω^)「えぇ……185mlで300ゴールドもしたのに」
(・∀・ )「魔素の単位ってミリリットルでいいの?」
( ^ω^)「じゃあ俺が飲んでみるから、それで死ななかったら姐さんも飲んでよ」
(゜、゜*)「別にそこまで覚悟決めなくてもいいけど。味だけ教えて?」
( ^ω^)「よっしゃ」カシュッ
( ^ω^)ゴクゴクゴク
( ^ω^)「苦みの中に酸味があって、香ばしい風味が鼻に残る感じ」
(’A` )「コーヒーじゃねぇか」




