一方その頃、勇者は喫茶店を訪れていたようです
【登場人物紹介】
( ^ω^)【戦士】:レスラー体型の勇者。喫茶店に行く時間があればパチスロに行く。打ってる時に缶コーヒー(加糖)を飲むのが彼の喫茶である。
( ’A`)【魔法使い】:ヒョロガリ勇者。コーヒーにさほど興味がないので、味の違いもそんなに分からない。資格勉強で集中できない時、仕事場近くのチェーンの喫茶店に通っていた。とりあえずブレンドコーヒー。
(゜、゜*)【盗賊】:スタイルグンバツ勇者。コーヒーそのものより、喫茶店の雰囲気を含めたコーヒータイムの充実度を重視する。日本にいた頃は行きつけの喫茶店があり、よく仕事の打ち合わせをしていた。豆はよく分からない。朝にエスプレッソを飲むのが好き。
( ・∀・)【道化師】:イケメンハイスペ勇者。一時期コーヒーに凝っていて、豆から挽いてコーヒーを淹れていたこともある。ブラジルブルボンのシティローストを、その日の気分に合わせて。近所の喫茶店で飲むコーヒーの方が10倍美味しかったので止めた。
( ФωФ)【修道女】:勇者を導く僕っ娘。コーヒーは苦いので苦手。同じ量の砂糖を入れてタール状になったものなら飲める。
(´、`*川【司書】:ブービリオ図書館で働いている。その日コーヒーしか口にしてなかったと寝る前に気づく日が、たまにある。
──さて、時は少しばかり遡り( ^ω^)( ’A`)( ・∀・)( ФωФ)がクエストでホラーナ洞窟を冒険していた頃、(゜、゜*)はアロスティ城下町で"コボルト集団失踪事件"を追っていた。
46 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/10(月) 07:30:00.00 ID:1399336
【アロスティ城下町 ブービリオ図書館 サービスカウンター】
(´、`*川「こちらが申請されていましたパラッハ草原の地図です。なるべく公共の場での閲覧はご遠慮ください」
(゜、゜*)「ありがとう。分かったわ」
(´、`*川「しかしコボルトの集団失踪なんて、奇妙な事件が起こりましたねぇ」
(゜、゜*)「そうね。アナタの周りでもモンスター絡みの噂が立っていたりしないかしら?」
(´、`*川「うぅん……特に、ないですねぇ」
(゜、゜*)「あら、何かあったような言い方ね」
(´、`*川「あぁいえ。半年くらい前だったかしら……カッカ山って知ってますか?」
(゜、゜*)「ごめんなさい、知らないわ」
(´、`*川「パラッハ草原の東にある火山なんですけど、そこでモンスターがにわかに大発生したとかで、この街の冒険者ギルドが随分と賑やかだったんですよ」
(゜、゜*)「なるほど、そんな事があったのねぇ……」
(゜、゜*)「ありがとう。また、何かあったらお願いするわ」
(´、`*川「はい。お待ちしています」
47 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/10(月) 07:30:00.00 ID:1399336
~~その頃の他勇者達~~
(;・∀・)「くそっ!返せ、賢者の石!」
(・ω・`)「取引材料もないのに、そんな願いを聞くわけないだろ?」
(・ω・`)「それより、大丈夫かい?君の仲間が死にそうだ」
(;・∀・)「くっ!」
~~その頃の他勇者達 おわり~~
【アロスティ城下町 ブービリオ図書館 閲覧コーナー】
(゜、゜*)「あ~あ。ギルドと図書館での資料漁り、どっちも進捗なしかぁ」
(゜、゜;)「日本にいた頃から机上調査って苦手なのよねぇ」
(゜、゜;)「かといって現地調査は他に実力のある冒険者がやってるし」
(゜、゜*)「司書さんが言ってた、半年前の火山のモンスター大発生……今回の事件と関係があるかしら?」
(゜、゜*)「いやでも、受付嬢さんがモンスターの大量発生自体は不定期に起こるって言ってたわね。やっぱり関係ないかな」
(゜、゜*)「う~ん……」
(゜、゜*)「……」
(゜、゜;)「ていうか、なんで私こんなコトやってるのかしら?」
(゜、゜*)「異世界が何なのかは知らないけど、私って勇者で、魔王を倒すんでしょ?さっさと倒しに行かなくてもいいの?」
(゜、゜*)「……」
(゜、゜;)「っていうか魔王って何よ!?勇者って何!?」
(゜、゜;)「なんか男連中が知ってる風だったから私もスルーしちゃったけど!」
(゜、゜*)「はぁ。今頃アイツら何やってんのかしら。楽しい楽しいクエストにでも興じてんのかしら」
48 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/10(月) 07:30:00.00 ID:1399336
~~その頃の男連中~~
(;^ω^)「うおぉぉぉッ!!痛ぇえええ!!」
(;ФωФ)「我慢してください!今、お腹の穴を塞いでますから!」
(’A`;)「いいか、落ち着け!ひっひっふーのリズムだ!」
(;^ω^)「ひひっひふぅぅッッッ!!」
(;・∀・)「それ出す方のヤツッ!」
(゜W゜;)「どわーっ!ちょ、腸が出てきとるっ!!」
~~その頃の他勇者達 おわり~~
15 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/10(月) 07:30:00.00 ID:1399336
【アロスティ城下町 大通り】
(゜、゜*)「あら、いい香り、カフェ?」
(゜、゜*)「……調査で小腹も空いたし丁度いいわね。気分転換、気分転換」
【アロスティ城下町 路地裏の喫茶・プチノーカ】
シーフは路地裏に看板を立てた喫茶店へ入り、カウンターに座り日替わりセットを注文した。バリスタと思わしき老紳士が穏やかな笑顔で注文を受けて幾ばくか、出てきたのはアメリカーノとチョコクロワッサン。クロワッサンは横に半分に切られ、ホイップクリームを薄くサンドしてあるタイプだ。
(゜、゜*)「あ~いい香り、やっぱりコーヒーは良いわねぇ」
(゜、゜*)「香り豊かだし、リラックスできるし、仕事に集中したいときにもいい」
(゜、゜*)「そんな至福のコーヒータイムに重要なのが、コーヒーのお供!やっぱり定番は甘いものよね」
(゜、゜*)「私的には和菓子……シベリアが一番合うと確信してるんだけど、そんなのは当然ないから、お店の人気のチョコクロワッサンにしたわ」
(゜、゜*)「ん?シベリアって和菓子か?」
(゜、゜*)「カステラは洋菓子よね?いや、アレ和菓子?」
(゜、゜*)「……」
(゜、゜*)「まぁ、異世界にコーヒーとチョコクロワッサンが存在するという極大の疑問を前には、些細なことよ」
(゜~゜*)「しかし、そんな疑問すら……クロワッサンのサクリとした食感、溶けたチョコのビターな甘味、ホイップクリームのふんわりとした甘味に、それらを引き立たせるバターの塩気……」
(゜~゜*)「そして、それらを包み込むコーヒーの爽やかな苦み。これらの前には、やはり些細なことなのよね」
(゜、゜*)「……」
(゜、゜*)「もう食べちゃった」
(゜、゜*)「もういっこ食べちゃおうかしら……いやでもカロリー的に……いやでも今日は頑張ったし……」
彼女が逡巡していると、カウンターの向こうから1杯のグラスが差し出された。
(゜、゜*)「え?」
(´・ω・)「当店からのサービスです。お客様」
彼の手元には、ノスタルジックなクリーム色の飲み物──ミルクセーキ。
(´・ω・)「差し出がましいようですが、その……物足りなさそうだったので」
(゜、゜*)「あら……」
(゜、゜*)「……」
(゜、゜*)「いいえ?気を利かせて貰って、ありがたいわ」
(´・ω・)「それはよかった」
(゜、゜*)「ミルクセーキなんて何時ぶりかしら」
とろりとしたクリームを口に含むと、タマゴとミルクの優しい甘さが舌に染みいる。
(゜、゜*)「……あぁ美味し。こんな美味しかったなら、もっと飲んでおけばよかったかも」
(´・ω・)「女性のお客様に結構ご高評頂いてまして」
(゜、゜*)「アナタ、さっきまでいなかったわよね?先程のバリスタは?」
(´・ω・)「マスターは入れ替わりで休憩に行きました。遅刻したんで怒られてしまいましたよ」
(゜、゜*)「それは頂けないわね」
(;´・ω・)「すみません、寝坊グセがありましてね」
(゜、゜*)「ふふ。まぁ、このミルクセーキの美味しさに免じて許してあげるわ」
(´・ω・)「ありがとうございます……ところで、お客様は冒険者で?」
(゜、゜*)「あら、よく分かったわね」
(´・ω・)「この街には大きなギルドもありますし、こうやって接客業をしていると、冒険者特有の雰囲気というか、"匂い"というか、そういうのが分かるんですよ」
(゜、゜*)「へぇ。腕と気だけじゃなくて、目と鼻も利くのね」
(*´・ω・)「嬉しいこと言ってくれますね」
(゜、゜*)「……じゃあ、私もアナタの本当の仕事を当てていい?」
(;´・ω・)「えっ?どういうことですか?」
(゜、゜*)「そのままの意味よ、バリスタは仮の姿!」
(-、゜*)「アナタの本当の仕事は……」
(;´・ω・)「……」
(゜、゜*)「"バーテンダー"よ!」
(´・ω・)「っ!」
(´・ω・)「……スゴイですね。大当たりです」
(´・ω・)「もしかして占い師だったり?」
(゜、゜*)「あはは、違う違う。ただのお遊び、単純な推理よ」
(゜、゜*)「理由は4つ。1つ目はアナタが"昼も過ぎてるのに、寝坊したこと"。2つ目はアナタが作った"ミルクセーキ"。そして3つ目は、ここが"カフェ"だということ」
(゜、゜*)「ここって夜はバーとして営業しているんでしょう?そして、アナタはそこのバーテンダー。だから今くらいの時間に出勤している。昨日は明け方くらいまで店を開けてたのかしら?だから寝坊してしまった」
(;´・ω・)「お見事、全部正解です」
(゜、゜*)「ありがと。それにしても……バーテンダーが腕を奮ったカクテルは流石の美味しさだわ」
(´・ω・)「光栄です。お客様がお綺麗でしたので、力を入れて作りました」
(´・ω・)「気に入って頂けたら、是非夜のバーにもご来店頂ければ」
バーテンダーは懐から名刺を取り出すと、ミルクセーキグラスの横に置いた。
(゜、゜*)「あら、私ったらまんまとセールスにノせられちゃったワケね」
(゜、゜*)「それじゃ、気が向いたら一度顔を覗かせて貰おうかしら」
彼女は名刺を財布にしまって訊ねた。
(゜、゜*)「そうだ。このお店ってテイクアウトはできるかしら?クロワッサンが美味しかったから、パーティにも食べてもらおうと思って」
(´・ω・)「ええ。ただ、在庫限りですが……いくつでしょうか」
(゜、゜*)「そうね……」
(゜、゜*) ×1コ
( ФωФ) ×1コ
( ・∀・) ×1コ
( ’A`) ×1コ
( ^ω^) ×2コ 計6コ
(゜、゜*)「私の分も含めて、6コね!」
(´・ω・)「6コですか……はい。大丈夫ですよ」
(´・ω・)「それにしても、少し多いパーティですね」
(゜、゜*)「そうなのかしら?他の冒険者と交流したことがないから分からないわね」
(´・ω・)「3人か4人がオーソドックスと聞きます。多くても行動が鈍くなると」
(゜、゜*)「船頭多くして船山に登るとも言うしね」
(´・ω・)「その通りで……はい。クロワッサン6つ、お包みいたしました」
(゜、゜*)「ありがとう。それじゃあお会計を」
会計を済ませ、席を立とうとする彼女をバーテンダーが止める
(´・ω・)「そうだ。僕がバーテンダーだと気付いた理由の4つ目は?」
(゜、゜*)「ん?」
(゜、゜*)「そうね……"匂い"、かしら」
(´・ω・)「……ふふ、そうですか」
(・ω・`)「是非、またお越しください」
(゜、゜*)「そうね。昼か夜か分からないけど」
(゜、゜*)「……あ、そうだ」
(・ω・`)「?」
(゜、゜*)「火傷、お大事にね」
(・ω・`)「!」
(゜、゜*)(……)(・ω・`)
(゜、゜*)(彼、一体何者かしら)
(彼女は一体、何者だろう)(・ω・`)
(゜、゜*)(唯一、明らかなのは……)
(ただ一つ、分かるのは……)(・ω・`)
(゜、゜*)(自分と同じ"匂い"がするということ……!)(・ω・`)
──こうしてシーフと謎の男は、互いに気が付かぬまま邂逅を終えた。
49 名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/03/10(月) 07:30:00.00 ID:1399336
~~その頃の男連中~~
(;^ω^)「腹減ったぁ~~出口まだぁ?」
(^ω^;)「ねぇ、なんか携帯食料ない?」
(;ФωФ)「全部使い切っちゃいました!」
(;’A`)「つーか、お前が治療終わった後にバクバク食い尽くしたんじゃねぇか」
(^ω^;)「仕方ねぇだろ。我、怪我人ぞ?」
(;’A`)「もう治してもらっただろ」
(;・∀・)「というか腹に穴が空く大怪我した後に大食いできるってどうなってんの?」
(;´W`)「……!おい皆、坑道も終わりだ、あと少しで出口だぞ!」
(*^ω^)「おっ!やったぁ!」
(*^ω^)「……って」
(;^ω^)「クソくっせぇぇぇぇッッ!!」
(;・∀・)「……そういや入口付近の洞窟はコウモリの巣だった」
(;ФωФ)「食欲も失せちゃいますねコレ」
~~その頃の他勇者達 おわり~~