勇者達は帝都で武王と戦うようです その②
400名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/06/14(土)18:00:00.00 ID:1399336
(;>ωФ)「くぅ!」
(゜∀゜ )「動くなよッ!?」
修道女の腕を切りつけた武王。彼にとって、いかなる状況であっても敵の急所を狙って攻撃するなど造作もないことである。
だからこそ、彼は修道女の二の腕を狙った。
回復魔法を使う者にとって腕は重要な基幹である。なぜなら患部に手を触れたままでなければ回復魔法は効果を発揮しない。術者の片腕に怪我を負わせるだけで、回復量は大幅ダウン。回復役として機能不全に陥る、まさに急所である。
(゜∀゜ )(それに……)
(゜∀゜ )(こうすりゃ殺さずに済むからな)
武王は眉間に飛んだ返り血をさっと拭う。その時だった。彼の目が"釘"を捉えた。
(゜∀゜ )「ッ!」
(゜∀゜;)「お前ッ!それはまさか……ッ!」
その"釘"は。切り裂いた服からお守りが地面にこぼれ、飛び出した中身は──
(゜∀ー;)「う……っ!」
──彼の脳裏に、かつて自らが犯した罪を呼び覚ました。
401名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/06/14(土)18:00:00.00 ID:1399336
──それは命令であった。
(゜∀゜ )「……」
彼は将であり、主君に仇なす"敵"を討つのは当然の責務だ。そして無論、都市の破壊や略奪なども、戦争においては当然の行動である。
しかし、いくら"敵"であっても戦場の兵ではなく"民"を──土を耕し、神に祈り、日常を生きる民をを狙うというのは、彼にとって憎むべき愚行、許されぬ罪でしかなかった。それは将としてまだ若く、武人じみた潔癖に起因する。
(゜∀゜ )「……」
彼は、音を立てて燃え崩れる教会と民家を呆然と見ていた。自分の命令で燃えているのだ。
彼は、増え続ける"戦果"の報告を漫然と聞いていた。自分の命令で地獄が広がっているのだ。
(゜∀゜ )「……」
すべてが終わり、彼は何もかもが瓦礫となった町へと入った。生きている者はいない。そういう命令だったからだ。
彼がその地獄で見た民はみな、首からさげたお守りの"釘"を握りしめていた。彼らが救いを求めた"それ"こそが、彼らを地獄に落としたきっかけであることも知らずに。
(゜∀゜ )「……」
"武人"としての才覚には溢れていても、"将軍"としての才覚がなかったのだろう。彼は自己矛盾に陥った。
己が武は、"民"を守る為に鍛えたのではないのか?彼らが守るべき"民"でないなどと誰が決めたのだ?
なぜ、己の信条と反する命令に従わねばならないのか?
主君の命だからというのが、なんの理由になるというのだ?ほんの些細な信仰の差異が、なんの理由になるというのだ!
矛を向ける先は、己にとっての"敵"は、そちらではないのか!?
彼は一大決心をした。天を揺るがす大決心だ。これを以て彼は、先代の魔王四天王・"竜王"の首を取り、自らを"武王"と名乗ったのである──
402名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/06/14(土)18:00:00.00 ID:1399336
【???】
(;゜∀゜)「はっ!」
目を覚ました武王は自分が勇者に負けたことと、全身に走る鋭い痛みに気がついた。
(;ー∀゜)「痛っ……ばっさり袈裟斬りかよ。まぁ、戦いの最中にあんな大きな隙を見せたんだから当たり前か」
かすかに残っている記憶を辿る。修道女の"釘"に気を取られた彼は、戦士に叩き斬られ、魔法使いに業火で焼かれ、そのまま気を失ったのだ。
( ゜∀゜)「って、なんでそれで生きてんだ?俺」
( ゜∀゜)「……考えりゃ理由は一つしかないか。あの子がやってくれたんだな」
( ゜∀゜)「そのまま殺してくれたら……いや、俺にどうこう言う権利はねぇな」
窓の外から差し込んだ日の光が顔にかかり、不意に彼は目をつむった。
( ゜∀゜)「っていうか、ここどこだ?なんで俺ベッドで寝てんの?人の家?」
(;゜∀゜)「俺……どれくらい眠ってたんだ?」
見覚えのない部屋の見回していると、扉が開いた──のは、もう少し先の出来事。
403名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/06/14(土)18:00:00.00 ID:1399336
【帝都ドナド】
──時は遡り、現在。武王に勝利した勇者達は、バラバラになった仲間を探していた。
( ^ω^)「いやぁ、なんかよく分からんけど勝ったぜ!」
(’A` )「なんかよく分からんけど、いきなり隙ができたな!」
(*ФωФ)「きっと女神様の加護があったんですよ!"お守り"のおかげです!」
(’A` )「おっそうだな」
( ^ω^)「それよりさ、修道女はなんでアイツを回復したの?敵なんだから放っておけばよくない?」
( ФωФ)「放っといたら死んじゃいますし」
( ^ω^)「魔王はあんなに殺したがっているのに」
(’A` )「まぁ、そこら辺の線引は人それぞれだろ。俺達だって魔王を倒せば後は女神がなんとかしてくれるんだから、わざわざ命を奪う必要もないしな」
( ’A`)「それにアイツには強力な睡眠魔法かけて無力化しておいた。1か月は起きないだろ。復讐される心配もない」
( ^ω^)「1か月間眠らせるのは殺しにかかってんだろ」
(ФωФ;)「いつ覚えたんですかそんな魔法」
( ’A`)「この世界に来たばかりの頃はあんまり眠れなくてな……自分に魔法をかけて眠ってたんだ」
( ’A`)「それを繰り返している内に睡眠魔法の威力がどんどん強化され、天使に力を貰ったことで覚醒した」
( ^ω^)「戦闘に使えや」
( ’A`)「いや、戦闘には使えない。既に眠ってるか、眠ろうとしている奴にしか効果ないからな」
( ’A`)「もっぱらサウナ後の外気浴で、最大限のととのいを手に入れる為に使ってる」
( ^ω^)「兵器の平和利用?」
404名前:以下、名無しにかわりまして日曜日夕がお送りします[sage]:2025/06/14(土)18:00:00.00 ID:1399336
( ФωФ)「あっ!あそこにいるのは……神主さんじゃないですか!?」
( ^ω^)「ん……ホントだ。まだ戦ってんのか?」
( ’A`)「いや、でもそんな感じはしないけど」
なるべく気配を消しながら、勇者達は神主の元に近づいた。
从*・⊿・从「おう、お前ら!なんじゃ戻ってきたんか!」
( ^ω^)「いや、あの後すぐに馬車が破壊されてさ」
从;・⊿・从「どういうことじゃ!?」
( ’A`)「まぁ後で話すよ。それより婆さん。ガッデムと戦うつってたけど。それどうなったの?」
从*・⊿・从「ああ、それはな……」
彼女が顎で指した先には、正座をするガッデムと以下親衛隊。そして、彼女たちの前で仁王立ち、竹刀を振るう"赤毛の戦士"がいた。
(#十AФ)「ほらそこっ!膝を崩すな!」
从TワT*从「いや~~痺れるぅ~~」
ミ◎Д◎;彡「貴様!ガッデム様が泣いているのだぞ!」
ミ゜A゜;彡「慈悲はないのか!」
ミーДー;彡「鬼!」
ミ゜ω゜;彡「悪魔!」
(#十AФ)「邪ッッッ!」
ミ◎Д◎;彡「あっす……すみませんした」
从TワT*从「助けてクソババア~~」
从#・⊿・从「ダメじゃ!反省せいっバカ者!」
( ^ω^)「……………」(’A` )
( ^ω^)「どゆこと?」(’A` )




