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第9話 土俵。

開拓及び上下水道の整備、治水、道路などのインフラ整備が順調に進む中、新たに加わったテイム民の中でもスリートップを張る者たちを、開拓の後回しにされている頑強な岩山の前に集合させた。


「・・ろう助、ろう十郎。キジトラ。お主らには"氣"を習得してもらう。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前: キジトラ

称号:薩摩民。示現流・二段。.....

スキル:剣術Lv.9. 弓術Lv.9. 狂化Lv.8. 直感Lv.7. 危機察知Lv.7. 初級魔法Lv.3......

加護:????


体力:32,000

魔力: 3,000

筋力: 25,000

耐久力: 20,000

敏捷性: 25,000

知性 : 5,500

運: 2,000

?:???

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はて、魔術の類ですか?」


「魔術では速攻に欠ける。即時、縮地で一刀したり...」


ろう十郎の言うように、飛び道具がそこまで強力ではないこの世界において、インファイトで速攻叩き切った方が早いのは事実であった。


しかし、これから見せるそれは魔法、ユニークスキル、加護などの全てを凌駕する代物であった。


「まぁ、みちょれ....スゥ...」


説明するよりも見せた方が早いと思い、彼は目を閉じ、深く息を吸って氣を練った。


「「っ!?」」


彼がいる空間ごと歪むような、立っているだけでもその気迫に意識が持っていかれそうなエネルギーの渦が彼に集約し、途端に静寂が訪れた。


「......。」


そして、目をゆっくりと開けた彼には赤黒いオーラが纏っており、黒目のふちには赤黒い円が宿っていた。


「「っ?!」」


存在ごと別の何かに昇華したような彼は岩山の方へゆっくりと向かった。


「.....スゥ....」


東元は脱力し、幾千の戦で共に戦った刀に手を添えた。


そして、左足を引き、腰を落とし、構え、抜いた。・・ーーーーー



ーーー・・東元は生まれてこの方、"ある日"を境に己の肉体や、武勇への限界を感じた。


かの家の名を冠した初陣で感じた、一瞬の油断で命を刈り取られるあの緊張感は今に久しかった。


そして、いつしか.....心臓や、喉元を伝っていた死は薄れ、汗一つかく事なく、返り血さえも浴びる事なく、牛車一杯の敵首を引っ提げて、涼しい顔で戦から帰ってくるのが常となってしまっていた。


しかし、それでも彼は慢心する事なく、何千、何万と鍛錬を重ね、民を守護する武への研鑽を怠らなかった。


そうして、本来であれば、天下分け目の戦いにて、見事に死ぬはずであった彼の刀剣は




ーーーー今、異なる世界にて、花開いた。


ーーーーーーー・・ビリビィリリィッ!!!


時空ごと斬り滅されたかのように、視界を覆っていた岩山は音も無く消え、一拍して、宇宙の因果律が歪まされた音が鳴り響いた。


そして、彼は刀を納刀しろう助たちの方を向くと、岩山があった一本道のようなクレーターの先から、河川の水が滞りなく流れてきた。


「...よし、やってみろ。」


ーーー・・????が発現しました。


そして、ここにイレギュラーが誕生した。



時は少し遡り、トゥランとの邂逅にて魔王にあらゆる呪いを受けた彼女が、なぜ正気の戻れたのかを話している際であった。


「ーー・・成程、正気でなかったという事か、しかし何故正気に戻れた?そこまで時は経ってないように考えられるが」


状況を整理するに、魔王との一戦から大して時間を要さずにここに転移してきたと思え、東元との戦闘時間を加味しても正気に戻るのは早すぎたと思えた。


「あれー?わかってなかったのね。私は東元さんの気に触れて、戻れたんだよ。」


「氣?」


「うん、こっちでは聖気って呼ばれてるんだけど、東元さんのは....少し違う感じだね。」


確かに、この世界に来て膂力が底上げされた感覚は分かりやすくあり、ラッキー!くらいにしか思っていなかったが、それは氣というものが関係しているようだった。


「氣か....思い当たる節は..あるにはあるのぉ...」


死力を尽くし、敵を薙ぎ倒す際に感じた、生きる氣に満ちたあの感覚は、先のトゥランとの死闘のみならず、今までの戦において、度々経験していた。


その時は、まさに深い集中の海に、意識がより深く沈み、自らの想像を越えた剣舞と直勘が神がかっていたのを鮮明に覚えていた。


「東元さんの聖気はすっーごくっ...良かったよ。」


それについて考察している最中、彼女は息を切らし、唇を色っぽくなめずりながらとろけた表情を醸していた。


「ん、そうか?....で、その氣ってのは火事場の馬鹿力みたいなもんか?」


題意と関係ないことは鈍感な彼は、続けて話を進めた。


「あー、結構近いかもね。聖気は人の枠を取っ払えるからね。」


彼女自身その言葉自体は知らなそうであったが、文体からなんとなく意味は察していた。


「...して、この世界で言う聖気?ってのはどんなものだ?」


「うーん、まず身体能力が最大限発揮されてー、それこそ私が魔王から受けた特異な魔法や、ユニークスキルとか...とにかく、理不尽系の事象を破壊できるよ。」


前の世界では煩わしい目に見えぬ法則に囚われていたが、この世界の法則は随分と自由だった。


「ほぅ....したら・・ーーー」


それはつまり、聖気だろうと、氣であろうと、ある一定レベルの資質を持った者同士の死闘は、ただ純粋な力と力のぶつかり合いに収束すると言う事出会った。




「ーー・・よし、やってみろ。」


数十キロ先の河川まで続くクレーターを背後に、未だ赤黒い神妙なオーラを潤沢に纏っている彼は、彼らに同じことをするように求めた。


「....ぁ.....」


「ぇ....」


「......」


東元の化物具合は、結構な密度で毎日開催していた組み手でわからされていたつもりであったが、トゥランとの死闘を境にその化物具合は天井をゆうに突き抜けていた。


「....いや...それは主のユニークスキルなのでは...」


「うむ、その節が固いか。」


ろう助の最もな意見に他の二人も納得していた。


「否。ワシと契約した者はすべからずワシの特性が反映される。事実、お主らは薩摩の文化と知識経験体系を有しているであろう。」


『ーー・・まぁ、テイムされた魔物は主の特性を色濃く受けるからね...』


トゥランがポロッと話していたことから、彼は何も当てなしに彼らに習得するように、求めたわけではなかった。


「そうですが...」


「うむ...」


「.....」


東元の理屈は確かに一理あったが、それでも基本的に人間にしか扱えない聖気に準ずる氣を、モンスターである彼らにも使えるというのは些か腹に落ちなかった。


「なれば、まずは"氣"について説明しよう。・・ーー」


生物、人間の基本は、活力、気迫、生命力であり、その総称が"氣"である。そして、"氣"は精神と、魂の成長で飛躍的に革新し、より頑強になる。


ここまでが、聖気と前の世界で読み漁っていた知識と体験を照らし合わせ得た、"氣"の体系であった。


「ーー・・つまり、誰しもが持っているものということでしょうか?」


「然り。植物にも、大地にも、水にも"氣"は介在する。」


「ん、それでは、自活由来だけでなく、そこら中に在るものと?」


「うむ、それ故、未だ完全ではないがワシはトゥラントの死闘から、長時間の睡眠と、定期的な栄養補給が不要になった。」


「なんと...」


実際、"氣"のコントロールをマスターすれば、数ヶ月、より最適化されてばそれ以上の期間、補給無しで活動可能であった。


そして、最低限の知識を教えた上で、もう一つ。彼らにマスターしてもらわないといけないものを見せた。


「それと、も一つ。弓を使う。」


「弓?」


「まぁ、ゆっくりやるから見とれ。」


「は、はぁ...」


「氣は、弓に纏うことができる。して、強化した弓に、氣で練った矢を実体化させ...射るとっ...」


東元はおもむろに背負っていた弓を手に取り、赤黒いオーラを弓に纏わせ、更に何もないところから矢の形をした氣を弓に引き、丁度良いところに空を飛んでいた竜に標準を合わせ射った。


ーーー・・ヒュッ..パァーンっ!!


高速で風を切る音が聞こえたと、ほぼ同時に無実の竜は空中で霧散した。


「あちゃ、配分間違えたかのぉ」


「なっ....」


「...ファ?」


「まぁ、今のように氣を込めすぎると、対象ごと滅される。」


「・・グガぁぁぁぁ!!」


何が起きたか理解するのに収集がついていない彼らに、東元は淡々と説明していると、先の竜の仲間らしき竜が咆哮を上げ、雲の中に居た竜の群れが集まってきた。


「・・ギャオォォォォォンッ!!」


そして、その群れがこちらに気づいたのか、リーダーらしき竜が号令してこちらに近づいてきていた。


「主、まずいですぞ。」


「そうそう、こういう時に使える手が、先の応用だ。」


キジトラが平静に戦闘態勢を万全にするが、東元は説明を続けていた。


「先の順で矢を氣で練り上げ、重ね、練り重ねる。そして、一本の矢にして....」


「主っ!すぐそこまでっ」


「....射る。」


ろう助たちが焦る中、東元は魂に染み込まれた作法で、数多に織り込まれた矢を射った。


ーーー・・ヒュッ....パっパパァーンっ!!


すると、一本だった矢は対象の竜の群を目前にして、枝分かれ、余す事なく竜の群れを撃墜した。


「「「......」」」


「うむ、霧散せんかったな。よし、やってみよ。」


「「「......はい。」」」


一匹も余すことなく竜の群れは塵にならずに、胴を矢で貫かれ、地に落下しているのを確認した東元は彼らの方をまっすぐに向いて、有無を言わさず氣の習得を急がせた。

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