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第6話 女神のような笑顔。

仮・薩摩国の中心地は神奈川の鎌倉のような地形をしており、北方は山で囲われ、南方は海と天然の要塞になっており、新たにテイムした民、奴隷商狩りで増えた民を賄うには十分過ぎる水源と豊かな土壌が備わっていた。


「ーー・・うむ、開拓は順調のようだな。」


現在、東元が見回っているのは山の方であり、山々自体の要塞化を行っていた。

とは言っても、まともに人や物資が通れるような道を敷設し、トゥランの力で、結界を張るための術印を街を囲うように施しているだけであり、 まだまだ十分ではなかった。


そうして開拓作業を見回っていると、地面が破裂するような音が鳴り響いた。


ドゴォぉんっ!!


「...悪い!大丈夫か?」


「あぁ、続けろ!」


音の正体は、テイム民が道の敷設に邪魔な巨岩を粉砕した音であった。


「うむ、快速だな。」


「はい、主要道は一週間あれば十分かと。」


薄々わかってはいたが、前の世界の人間とは打って変わって、この国の民たちはそもそもの膂力が異なっており、開拓開発の進行スピードは別次元だった。


そして、他にもテイムされた魔物の集落跡に木造りの家を建て、大通りの道や、上下水道の開発などに時折加わり指示を出しながら見回り、鉱山開発の場にも足を運ぶと、わざわざ冒険者がこの島に渡る理由がわかった。


「・・これは、見たことがないな...」


「うわ...これ、全部ミスリルですか....これだけで国買えますよ」


そこには銀に似たような見た目ではあるが、その鉱物自体からは明らかに魔法やその源になるような気配が宿っており、一線の光だけで鉱山内が太陽に照らされているかのように明るく、眩しいまでであった。


「そんなすっごい物か?」


「えぇ!武器に使えばたちまち軽くで丈夫で強力な武器になりますし、魔法耐性にも他を群を抜いてます。それに、持ち主の魔法付与を倍増されます。」


「うーむ....」


シレイの言っている事から、確かにこれらが希少で強力な戦略物資であるのは理解していたが、前の世界から苦楽を共にしている、腰に据わる愛刀に敵うものには思えなかった。


「...主、これが他国に知られれば、是が非でも獲りに来ます。」


名前: モウコ

称号:薩摩民。示現流・初段。.....

スキル:剣術Lv.9. 弓術Lv.9. 対話術Lv.8. 初級魔法Lv.3......

加護:????


体力: 10000

魔力: 1500

筋力: 8000

耐久力: 8000

敏捷性: 9000

知性 : 5000

運: 3000

?:mmol


ここら一帯の集落を制圧した際に薩摩一員となり、臣下に加わった虎の獣人のモウコは東元の隣でそう話し、変に周辺国に目を付かれないためにミスリル鉱山を壊す事も視野に入れようとしていた。


「うむ、それほど迄か....」


彼はミスリルの事を少し見誤っており、ミスリル自体が戦を揺るがすものであると再認識した。


「まぁ、早いとこ、シレトコ島を統一してからじゃが、開発は片っ端から進めたり。」


控えめにみてもこの島、シレトコ島の資源は規模の大きさの割には潤沢であり、水と食糧、魔石、兵、民と国家としての基盤が出来つつあり、この島を統一すればいよいよアメハラスの本土が見えてきていた。


「御意。引き続きミスリル鉱山と金鉱脈、鉄鉱石の開発を行います。」


「あぁ....それに、これはこれは...僥倖であるのぉ...」


トラスケの方針を御意した東元は誰に言うでもなく、この鉱山から向かいに見える噴火口から煙が活発に立っている別の山を見据えていた。


次に、農業地帯を管理している農村地区出身の元奴隷:アイルとついでに、シレイと共に農業地帯を回っているところ、ツーンとした匂いが鼻腔を直行した。


「ーー・・くっせ、あ、そうだ。糞尿の匂いか」


目を向けた先には、そういえばと、突貫工事で作った下水道から引いてきた下水を貯めた貯水地であった。


「はい、下水から引いてきたもので肥料を抽出する予定なのですが、少々問題がありまして...」


「あー、排水か、まぁ漁業へも本腰を入れたいからの」


糞尿の沈殿物を汲み取り肥料にした際の、汚水をそのまま海に放流するわけにはいかなかった。


「一応浄化スキルを持ったものは、テイム民の中にはいますが、コストが....」


テイム民を増やすにつれて、テイム民の中には、戦闘タイプ、情報官タイプ、魔術師タイプなど多様なフォームが多岐に介在しており、その内の魔術師タイプの中に瘴気や病気を払う浄化スキルを持った者もいた。


「うーむ....ん、あれはなんじゃ」


頭の中に貯蔵されている蘭書から、参考になりそうな知識を探していると貯水地にぷかぷかと真ん丸のナメクジのようなものが浮いていた。


「あれはスライムですね。まぁ、一応魔物ですが基本害はないです。その辺の石ころとか、雑草とか基本なんでも食べますね。」


「む...あれ下水に使えるか?」


「んーまぁ、使えますが....スライムって気まぐれなので、テイマーでないと定住させられないんです。」


なんでも食べるという言葉から着想を得たが、彼:アイルとシレイの反応は芳しくなかった。


「てぃまーは冒険者に多いのか?」


「えぇ、まぁ..でも、テイマーって結構手懐けられる魔物が偏っていて、そもそもテイマー自体の気質によりますし、まさか、スライムだけに好かれる....好き物テイマーなんて....」


アイルは農村出身ながらも冒険者の経験もある勉強熱心な若い男で、色々あって奴隷落ちしたものの魔物や職業についてかなり精通しており、彼の見解には変なバイアスはなかった。


「うむ....シレイ!」


「はいっ!」


「すぅらいむてぃまーを探してくるんだっ!」


とりあえず物は試しと、力仕事や書類仕事にもパッとしなかったシレイに任務を割り当てた。


「了解ですぅぅ!!」


東元からの任務を承ったシレイは、一目散に


「....大丈夫ですかね...」


「まぁ、気長に待とう。最悪、冬までに戻ってくれば良い。」


「8ヶ月...足りますかね...」


「まぁ、うん。多分な。」


シレトコ島で活動している冒険者であれば、スライムではなくともかなりのテイマー冒険者が居ると見据え、シレイに頼んだが実際に見つけ、かつリクルートできるかはまた別の話であった。


「・・やほー、結界はり終わったよー褒めて」


「おうっ!ようやったのっ」


そうこうしていると、仮・薩摩国を囲んでいる山脈と海岸沿いすっぽり覆うような結界を張り終えたトゥランが何もないところから現れ、東元になでられついでに報告に来ていた。


「えへへ、もっと」


「ぁ....ぇ...」


神話の中でしかいないような風貌と、その佇まいにアイルは言葉を失い半分気絶していた。






体力と速さ、隠密においてはテイム民にも引けを取らないシレイは、ものの6時間で山脈を越えてシレトコ島西海岸の冒険者ギルドに到着し、屋根の上から指を輪っかにしてそれらしき冒険者を探していた。


「ーー・・うーん、来ては見たものの....やはり居ませんね...」


テイマーはテイムしているモンスターを引き連れている事が多いため、一目見たら直ぐにわかるものであった。


「仕方ありませんね、ギルドに聞きに行きますか...」


一応、ここのギルド職員とは顔馴染みではあるが、いかんせん依頼不達成でやばいところからお金を借りて身売りする羽目になったため、経緯は全て知られてはいないだろうが少々気まずいところがあった。


とはいえど、ここで街行く冒険者を眺めているわけにもいかないため、意を決して門戸を叩いた。


「「「ガハハハっ!」」」


そこにはいつもと変わらず、わいわいした冒険者らしい空気と活気が流れていた。


「....よし。...すみません、フリーのテイマーっています?」」


一応、フードを深く被り依頼書や求人書が無造作に貼られている掲示板に向かい、どの依頼を取るか迷っている女戦士にそれとなく聞いた。


「テイマー?フリーなのは知らないねぇ、なんの依頼に必要なんだい?」


「あー....ちょっと、人手が欲しくて」


「ふーん、そうかい。」


未だ迷っているのか、彼女は興味なさげに話を切った。


「これとかいいんじゃないですか?お強そうですし」


一応、話を聞いてくれたお礼として見づらいところに貼られていた、湖の主討伐依頼の紙を渡した。


「ん...おっ、良さげじゃねぇか....あんがとな!あんた名前は?」


結構刺さったのか、機嫌良くなった彼女はシレイにそう聞いた。


「え、あ....シレイです。」


「そうか、俺はギレン・シュタイナー。よろしくな!」


「はは、どうも...」


「...は...シレイ...ちゃん?」


反射的に本名を名乗ってしまったシレイの後ろに、受付嬢らしき女が持っていた書類を落としていた。


「え、あはは、お久しぶりですね...ミミさん。」


「もうっ!心配したじゃない、奴隷商につれてかれたって...うぅ...」


彼女はシレイがお世話になっていた紫色の長髪の受付嬢で、シレイは彼女に抱き寄せられていた。


「ん?知り合いか?まぁ、俺はこの辺で」


邪魔しちゃ悪いかと思い、女戦士ことギレンはさっさと依頼を受けに行っていた。


その後、しばらくミミをあやした後、これまでの経緯などは適当にはぐらかして、本題へと入った。


「・・でまぁ、色々ありまして助けて頂いた方に仕えてる感じです。」


「本当に大丈夫なの?また、騙されてるんじゃ...」


「いえ、大丈夫です。彼についていくと決めましたから」


付き合いはここ数ヶ月程度であるが、シレイは民を救い、民に尽くそうとする彼に惹かれていた。


「ほほーん...彼、ね。」


「え、あ...いやっ!違いますからねっ!」


「ふふっ、いいのよ誤魔化さなくて、いやーあんなに男っ気のないシレイちゃんがねぇ...」


「いやっ!そのとにかく!フリーのテイマーや召喚士はいますか?!」


彼女は勢いで嫌な会話な流れを切り、見かねたミミは話を切ってあげた。


「はいはい、うーんそうね...フリーはいないわね。」


「そうですよね...そんな都合良くいないですよね。やっぱ、お金積まないとですか....」


このギルドの中にテイマー自体は居そうではあったが、フリーとなると西の大陸を含めても上位の冒険者しか来れない危険なこの島でさえ、見つけるのは困難であった。


「オメェはもう用済みなんだよっ!」


「うわっ?!....ちょ、な、なんで....」


2階からギルドの広間のど真ん中に蹴飛ばされた、20歳も満たなそうな銀髪痩せ型な青年は結構な勢いで吹き飛ばされたにも関わらず、落下音もせずに尻餅をつきながら不服そうにしていた。


「あぁ?そりゃあよ、オメェには感謝してるぜ.....俺がまだまだ駆け出しだった頃、冒険者として手取り足取り聞いてもねぇこと教えてくれてよぉ、このパーティが成熟するまで随分と貢献してくれたが、ここから先はスライムしかテイムできねぇポンコツテイマーじゃあ付いてこれねぇ、だから、テメェはここでクビだ。ご苦労だったなぁ!!」


階段をゆっくりと降りながら、五厘刈り金髪眉なしの男は計らずとも事情を知らない聴衆にも聞こえるようにご丁寧に経緯を説明し、最後に慰労金らしき金の入った大袋を彼の前に投げた。


「「「はははっははは」」」


「そ、そんな...」


耳障りな笑い声が遠くなっていく中、リストラされたてホヤホヤの彼は結構な手切金が入った袋を前に、地面に突っ伏し絶望に沈んでいた。


「.....お話しっ!よろしいですか?!」


七福神に紛れていそうな満面の笑みを浮かべながら、シレイは彼ににじり寄って彼の手を硬く握りそういった。


「うわっ、え、あ...はい。」


女性に慣れていないのか、彼は見てくれは良いシレイの茶色に燻んだ綺麗な瞳に魅せられていた。

ハジー・クラウン。20歳くらい

166cm 52kg

スライムテイマー

白い髪に華奢な体から、女に間違われるのがコンプレックス。

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