プロローグ
初投稿です。何か感想等あれば書き込んでくださると幸いです。暇なときに更新していこうと思います。一応ハイファンタジーとしていますがローファンタジーも今後含まれて来るかもしれないです。異世界と現実世界が両方出てくるような感じですね。自己満足で書いてはいるので多めに見ていただけると助かります...。
20xx年 夏
S総合病院にて。
面会時間はとっくに過ぎており、夜勤の看護師たちが病棟を巡回している。
静かな病棟に看護師の足音と機械音だけが響いていた。
突如、なんの変哲もない病室に風が吹いた。同室の患者はみな眠りについており、看護師もいない。
開くはずのないその窓は外の空気を大きく吸い込み、カーテンをなびかせていた。
「オガワ ミチ」
眠っているはずの病室に誰かの声がこだまする。この声で誰かが起きることはない。常人には聞こえない声。そして、開け放たれた窓の縁には声と同じく、常人には見ることのかなわない少女がいた。
全身を真っ黒なローブで包み、フードを深くかぶって顔も隠している。
「こいつか」
少女は目線を下に向け、ちょうどそこで眠っている一人の老婆を見た。そしてどこから取り出したのか、大きな鏡をそのまま老婆にかざした。
キュィィィィ――と光を放ち、老婆の体を包み込んでいく。
その時。
「どうしたんだい、こんな遅くに...」
「!!!」
少女は作業の手を止め、警戒の姿勢をとった。
声の主は目の前の老婆だった。目を半分開き、少女を見据えている。
「危ないじゃないかい、そんなとこにいちゃあ...」
「お前、私が見えているな」
老婆の声にかぶせるように少女が冷たく声を放った。
そして目元までかぶっていたフードを下ろす。声と同様に冷たく色白の肌、凍えるような目つきをした真っ黒な瞳が露わになる。冷酷な見た目や言動とは裏腹にフードにしまわれていた長髪は真紅であり、情熱に宿しているように見えた。
真っ赤な情熱は顔の半分を覆い隠しており、少女は左目だけで老婆を観察する。
「あんた、人じゃないのかい」
「そうだな」
再び静寂が訪れる。
しばらくお互いを見たまま時間だけが過ぎていく。
「あたしにも、ついにお迎えが来たのかねえ...」
先に口を開いたのは老婆だった。
「昨日孫が絵本を見せてくれてねえ。あんたみたいにきれいな天使が出てきたんだよ」
老婆は孫の成長をかみしめるようにゆっくりと話し始める。最近読み書きができるようになっただとか、かけっこで1番だったと嬉しそうに話してくれただとかを嬉しそうに話す。
あらかた話し終わったところで、少女はようやく口を開く。
「簡潔に言おう、私は今からお前に死を与える。だが決して天使などではない」
一呼吸おいて、少女はまた言葉を発する。
「私は、死神だ」
静かに息をしていた病室が、いつの間にか凪いでいた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。次回もお楽しみに。