温泉旅艦ゆぐどらしる
青いその星の重力に捕まり、立て直そうとしてそれも叶わず、
「こなくそぉっ!」
大気摩擦に燃える船からグライダーで離脱。
爆音、衝撃。
グライダーは竹林に滑落。巨大な岩に激突して、立ち上る水飛沫。
そして、
「~~~~!」
目の前で揺れるたおやかな美女の裸体。
最期の光景がこれなら、それはそれで悔いは無かった。
その星は全体が天然温泉郷となったレジャー惑星だった。
星全土を取り仕切る温泉旅館・ゆぐどらしる本館。
そこで俺は、破壊した施設の弁償のため、
「いらっしゃいませお客様~」
てっち奉公させられていた。
とは言え、
「ハルくん、お客様をお迎えに行ってもらえますか?」
「了解です、女将さん」
若女将・ユノハさん。
厳しくも優しい人柄と、温泉で拝見したダイナマイトな光景に俺はもうメロメロ。
「でへへ~」
「どうかしましたか?」
「ハッ! い、いえ、なにも!」
と、
閃光が山を貫き、大爆発を引き起こした。
「きゃあぁっ!?」
「な、なんだっ!?」
降下する無数の船団。
「あれはっ!」
『ふははははっ! こんな所に隠れていたか、ハルっ!』
ホロディスプレイに浮かぶ厳つい顔。
「ここは中立惑星ですよ!」
「あいつらは宇宙海賊です! そんな理屈は通じませんよ!」
『それは貴様もだろう、ハル!』
「うるせぇクソ親父! 俺は海賊なんてゴメンなんだよ!」
と、ユノハさんはびっくりしたように頬に手を当て、
「まあ、ハルくんのお父様? ハルくんにはいつも助けていただいております」
『これはこれは、どうもご丁寧に』
「いや、なんの社交辞令だよ!?」
そして親父は野蛮に笑い、
『そういう訳だ。息子と、ついでに金目の物はいただいていくっ!』
「そうはいきません」
びっ、と居住まいを正し、
「わたくし共は、いかなる侵略行為も受け付けません。そしてーー」
きゅっ、と腕を抱かれる。
「うちの大事な従業員を、渡す訳には参りません」
『ならばどうするっ!?』
「こうしますっ!」
着物の袖を大きく捲り、
「ゆぐどらしる、全館発艦っ!」
惑星全土に点在する別館。それらが大地を割り、空に飛翔する。
そうして海賊船団を包囲する、温泉旅館型戦艦。その数、凡そ三千艦!
本館・ゆぐどらしるは、主砲を海賊船に向け、
「それではお客様、またのお越しをお待ちしています」
『お、おのれぇぇぇぇぇぇっ!』
放たれる源泉掛け流し砲が、海賊船団を空の彼方へ吹き飛ばした。
ユノハさんは再び俺の腕を抱いてVサイン。
「女将さん、一生付いていきますっ!」
最近、某ロボットが大戦するゲームをプレイしたんですが、そこに参戦していたヤ○トとナ○シコの影響があるっぽいです。