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妖精は片翼で飛ぶ  作者: Nica Ido
31/31

31話(未完・完結)

ピッコマノベルズ大賞に応募していた20話と、すでに書き溜めていた21話から30話を上げていますが、ここからは最終話までのあらすじ(ネタバレ)と、考えていた結末をざっくりと載せて完結させて、これで筆を折ろうと思います。もし続きに興味を持ってくださったかたがいれば、稚拙な文章ですが読んでみてください。本当にあらすじレベル、プロットっぽい感じで簡単に書いたので読みにくくてすみません。


最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。救われます!

30話以降の話を何となくは思い描いていて、最終話はこの話を思いついた時から決まっていました。なので、あらすじ(ネタバレ)を簡単に書いて、完結させることにしました。


30話まで読んでくださったかた、最後が気になるかたは、稚拙ですがざっくり書きますので読んでみてください。


ーー30話以降から最終話までのあらすじーー


勲章授与に選ばれたシモンは、国王にフェルナンドの一件を話す。監禁の事実があり、毒物事件の証拠は医者のモリス・ハモンドが持っているが、ローゼン伯爵はキャトリー子爵の後ろ盾の存在なだけで、事件に関わっていることの証明は難しい。


今回はラスロの潔白とキャトリー子爵の罪を裁くことが目的だ。国王の指名で騎士のフェルナンドが登場し、貴族であるキャトリー子爵の言い分と、フェルナンドの言い分と、どちらが正しいのか決闘して勝てば文句はないはずだ。


しかし、フェルナンドはまだ完全に回復しておらず、まともに戦えばキャトリー子爵に負けてしまう。そこで「フェルナンドは車椅子の状態」ということを考慮してもらい、サイコロを振って、勝敗は公平に、と言うよりも、神に勝敗を預けるという方法を国王に願った。


国王も面白がって了承し、貴族会議にキャトリー子爵とフェルナンドが登場する。お互いに自分が正しいことを譲りはしない。当然、決闘となり、国王は自分が所持するサイコロを用意してくれた。


国王のサイコロなら不正はありえない。運を天に任せるとキャトリー子爵はサイコロを振る。しかし、実際はリーリーがサイコロの出目を操ってフェルナンドに勝利をもたらした。リーリーは自分から人間に触れることによって、自分の声が聞こえるようにすることができる。そのため、シモンがいなくてもフェルナンドと意思疎通ができた。


抵抗するキャトリー子爵だったが、証拠としてキャトリー子爵の銀の懐中時計を見せた。もう言い訳はできない。国王や他の貴族からも見苦しい印象を与えてしまい、フェルナンドに詰め寄られたキャトリー子爵は、モンタニエ子爵領の毒の散布のことまで罪を認め、領地没収となった。その領地はモンタニエ子爵の領地となり、キャトリー子爵は没落貴族となってしまう。


会議に参加していたモンタニエ子爵家の跡取りのアランは、一部始終を知って怒りに震えていたが、会議場の外にいたシモンに会って落ち着きを取り戻す。


家に帰り、両親と話し合って、「アルフレッドが少しの間でも世話になった家族だ」ということで、没落して財産を没収され、行く宛のないキャトリー子爵夫婦を迎え入れることにした。モンタニエ子爵領の端の住居と数人のメイド、そして食べていけるだけの田畑を与えた。そこでやっとキャトリー子爵は昔のまともな人間に戻り、モンタニエ子爵の家族たちに心からの謝罪をする。


シモンはローゼン伯爵との信頼を深めるために、輸入業を共同経営することになる。そこで店舗経営しているジュリアとも度々顔を合わせる。


シモンの「困った時や考え事をするときに首筋の後ろ髪をさわる癖」を見て、ジュリアは「アルフレッドと同じだ」と気づきハッとする。


だんだんとお互いに惹かれ合う気持ちが加速していくが、絶対に一線は越えず、思いも伝えられないもどかしい関係のままだった。


一方で、シモンの輸入雑貨店の手伝いをしているセシルは銀髪に戻っていた。シモンの店にも行き来しているジュリアとも仲良くなり、ジュリアはシモンを裏切って結婚するような人間ではないと考え始め、シモンにも助言しつつ、仲を取り持っていく。


ジュリアを迎えにやってくるルディは、セシルに惹かれ、寄り添っていく。セシルの銀髪を見て、彼女の生活には深い理由があって今までウィッグを付けていたのだろうか、と考える。


充分にローゼン伯爵の信頼を得たところで、シモンは自分の財産の源となったのは、とある土地から産出された宝石の原石だったことを明かす。興味津々なローゼン伯爵は、これで大きく儲ければ、また麦が暴落しても安心だと、その在処を聞きだそうとシモンのご機嫌を取ってくる。


「誰にも教えられない場所なんですが、信頼しているローゼン伯爵が自らその場所へ行って1人で採掘するというなら連れて行きましょう」と話す。


大きなバッグ1つをいっぱいにして、自分1人でも何度も通えば良かろうと考えたローゼン伯爵は快諾する。


ローゼン伯爵との約束の日の前夜、屋敷に帰ったシモンは、ラスロとセシル、そしてフェルナンドに「ついにローゼン伯爵に復讐する時が来た。ローゼン伯爵を妖精の国に連れていく。俺も一緒に行くが、すぐ俺だけ戻ったとしてもこちらの世界では1年か2年が過ぎるだろう。俺が戻るまでの間、よろしく頼む」と伝える。


そしてローゼン伯爵とシモンと、ポケットのリーリーは、首都の端の神殿近くにある入り口へ行き、妖精の国へと入っていく。宝石の原石のある場所まで案内すると、ローゼン伯爵に「好きなだけ採掘してください。数時間も掘れば充分だと思いますよ。食事も置いておきます。ごゆっくりどうぞ」とシモンは微笑んだ。


「君は一緒にいないのかね?」と聞かれて「今日は私用がありますので。また今度ご一緒しましょう」と言い、シモンは手を振ってその場を離れた。信頼を得ているので、ローゼン伯爵1人を置いていっても疑われることはない。宝石も本物で、すぐに夢中で掘り始めた。どこからか妖精たちがやってきて、ニヤニヤとローゼン伯爵を陰から見ている。


シモンとリーリーだけが人間の世界に戻ってきた。身体が軋んだが、ダメージはそうでもない。体感で20分ほどだった。街の市場へ行って、現在の状況を聞くと2年ほど経っているようだった。


屋敷に戻り、シモンはゆっくりと眠りについた。目を覚ますとみんながベッドの周りに集まっていた。


「大丈夫?」セシルが聞く。


「ああ、大丈夫だ。すべて終わったよ。ローゼン伯爵の年齢で何時間も妖精の国に滞在すれば、もう戻っては来れないだろう」


フェルナンドがシモンの肩に手を置き、「これは決して喜ぶことではない。この罪はシモンだけでなく、俺たち全員で抱えて生きて行かねばならない。しかし、シモン……もうこれで終わりにしていいんじゃないか?」


「そうだな。最後にみんなに来て欲しいところがある」とシモンは答える。


シモンがみんなと向かった先は、モンタニエ子爵領の村人「シモン・イザード」の母の墓だった。「ここにシモンの墓も立ててほしい。そしてシモンは死んだとモンタニエ子爵家に伝えて欲しい。俺はシモンにこの名を返すよ」と手を合わせた。


ラスロは「友人のために、ありがとうございます」と深々と頭を下げ、セシルは涙を流し、フェルナンドも手を合わせ、墓の中のシモンに感謝した。


「またいつか……会えるわよね、アルフレッド」とセシルは微笑む。


一方で、ジョフリーはだんだん体調を崩していた。そしてついに倒れてしまう。ジョフリーに『ファルファデ』で最初に出会った時からシモンはわかっていた。ジョフリーには目に黄疸があり、酒の飲み過ぎで肝臓をやられているのだろうと思っていたからだ。彼には復讐しなくても、近いうちに寿命が尽きるだろう、と。


医者に見せるが、すでに手遅れの状態のジョフリーは、日々弱っていった。天に召される日が近づいてきたある日、ジュリアと2人きりになり、今までのことを詫びる。


「本当に愛していた。一目惚れだった。でも君は俺を愛していないことも知っていた。それでも俺だけを愛して欲しかった。いつも、このどうしようもない気持ちが暴走していた。他の女とも本気になったことはない。嫉妬して欲しかったんだ。わがままを突き通してすまなかった。これからは自由になってくれ」と話す。


ジュリアは「私のほうこそごめんなさい。本当はあなたを利用していたの。両親の借金もそうだったけれど、あなたとの結婚はルディの将来を考えてのことでもあったわ。ルディの本当の父親はアルフ……」


涙ながらに告白しているジュリアの手を握って言葉をさえぎるジョフリー。「そんなことは口にしなくていい。これからもずっと言わなくていい。彼は未来のローゼン伯爵なんだから」


ジョフリーが最期を迎える数日間、ジュリアの介抱を受けながら、夫婦らしい会話をして、穏やかな時間を過ごし、安らかに眠るようにジョフリーは旅立っていった。


妖精の国から戻ったシモンは、身辺整理をし始める。ラスロとセシルにパン屋と輸入雑貨店を譲り、フェルナンドに屋敷を譲り、『ファルファデ』は閉店した。


ロベルト商会のジスラン・ピエトリにも別れを告げる。ジスランから「あなたの目的は達成されたのですか?最近では貴族の1人が没落、1人が行方不明のようですが……」と含み笑いされるが、シモンは明確に答えずに言葉を濁す。今後もパン屋と輸入雑貨店も必要があれば手助けしてやって欲しいと頼み、『ファルファデ』の店舗や土地の権利はジスランに譲渡した。


「充分な報酬を頂いておりますので、お困りごとがあればいつでもお越しください」とジスランはシモンを笑顔で送り出す。


ブティック アデレードへ行き、ジェルベルガ・ベッソンにも別れを告げる。「どこか遠くへ行かれるの?」と聞かれ「そうだ」と答えた。最後の買い物として、普段着のシャツやズボン、靴など一式買い揃える。ジェルベルガは「あら? あなたが着るにはサイズが小さいけれど……」と聞くが、シモンは微笑んで「これでいいんだ」とはぐらかした。


父の他界と祖父の行方不明もあり、ルディがローゼン伯爵の跡を継いだ。屋敷で祖母に引き継ぎを受けている。義母と折り合いが悪いジュリアは、静かに喪に服すため離れた場所にある別邸で1人静かに暮らしている。だがルディの手助けをするため、屋敷と別邸を行き来している。


ルディは時々「共同経営者」としてセシルを訪ねてはいろんな話をしたり、フェルナンドとも騎士についての話したりして、前向きな生活を送っていた。


ーー最終話ーー


復讐を果たし、自分の事業はセシルとラスロに譲った。ルディも伯爵の爵位を継承した。


ラスロはシモンの墓を立てる許可を得るため、シモンの死をモンタニエ子爵家に伝えた。


モンタニエ子爵家の水車はうまく稼働して、上質な小麦が収穫されている。白パンの材料となる小麦は貴族や王族専用に仕入され、収入は数倍になった。借金もほとんど完済済みだった。


「そうか……」と残念そうにいうアランだったが、「シモンの代理人だった『アル』にまた会えると嬉しいけどな……」と遠くを見つめながら微笑んだ。


ジュリアはジョフリーの葬儀後に、ルディに家を出ることを許してもらう。離れた場所にある別宅で暮らしながら喪に服していた。


身辺整理が終わったシモンは、ジュリアの住む別宅のそばに来ていた。近くの木陰に座り、リーリーに最後の「3つ目の願い」を伝える。


「アルフレッドとしての姿に戻してほしい」


しかし1つ目の願いのときに今の姿になるため寿命の半分を使っている。さらに半分の寿命では対価が足りない。


「ジュリアの声が聞ければいい、視力も声も渡す」とリーリーに伝える。それでも足りなかったが、リーリーは「わかったよ。じゃあその願いを叶えるね」と言ってアルフレッドの頬にキスをした。


アルフレッドの目と口からは血が流れていた。アルフレッドの願いは叶ったがリーリーが叫び声をあげる。


「どうしたんだ、リーリー」そう言いたくても、もう声が出ない。


対価が足りなかった分はリーリーが補わなくてはならなかった。足りない対価を何で補うかはリーリー自身では選べない。リーリーの背中に激痛が走り、羽の片側がしわしわになり黒く枯れたようになって壊死していた。もう羽は片翼しか残っていない。


「羽の他にも僕の寿命も少し持っていかれたみたいだな。それでも、アルフレッドよりは長く生きられる。これからも僕と一緒にパンやケーキを食べようよ、アルフレッド……」


「わがまま言ってすまない、リーリー、本当にごめんよ……」アルフレッドはリーリーに伝えようと心の底から声に出してみたが、息が漏れるだけだった。


「わかるよ、伝わるよアルフレッド。大丈夫さ、君の願いが叶ったんだから、僕は満足さ。さあ、ジュリアに会いに行こうよ。僕も挨拶しなきゃ!」


血を拭い、ぶかぶかになった服を脱ぎ、ジェルベルガから買った服に着替えた。目も見えず耳も聞こえないアルフレッドは何とか這うように別宅へやってきて、ジュリアと再会を果たす。


ジュリアは一瞬でアルフレッドだとすぐにわかった。死んだと聞かされてから15年という月日が流れていても。


「おかえりなさい、アルフレッド」とジュリアは涙ながらに喜んで手を握る。


思い出や感情は失ったままのアルフレッドだったが、彼の目には涙が溢れていた。


ジュリアはアルフレッドの手をゆっくりと引きながら屋敷の奥に進み、日が明るく差し込むテラスのソファに2人で座った。手を握り合い、見ることができない目でもジュリアとアルフレッドは見つめ合い、話すことができなくても、時が止まったように身動きせず、2人は今この瞬間の喜びを噛み締めていた。


リーリーはアルフレッドのポケットから降りてきて、よろよろと移動してジュリアの膝に乗った。「こんにちは。僕の名前はリーリー。君たちの世界では妖精って呼ばれてる。アルフレッドとは友達なんだ。僕の声は聞こえるかい?」


「妖精さん? 子供のころによくアルフレッドと一緒に物語を聞いて知っているわ」そう言うと、ジュリアはキョロキョロと見回して、膝下で微かに光っている何かに気づき、手を近づけた。


その手に乗って、ジュリアの親指にリーリーが両手で握手すると、その感覚はジュリアにも伝わった。


「僕とアルフレッドの物語を話してあげようか?」とジュリアに話しかける。


「長くなりそうね。じゃあ、お茶とお菓子を用意するわ」とジュリアが微笑む。


「ミルクもちょうだい。僕専用の木の器はアルフレッドが作ってくれるよ」


その会話を聞いていたアルフレッドの表情は自然なやさしい笑顔になっていた。



ーー The end ーー

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。感謝しかありません。


そしてこれからも書き続ける小説家の皆様、尊敬し、応援しています。

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