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23. ねこパラダイス

 ティアをバスケットの中に閉じ込めておくのも可哀そうな気がして、馬車の中で解き放つ。

 彼は眩しそうに目を細めたが、外に出るのを興味をなくしたようにして狭いバスケットの中で眠り始めた。

 そうだ。彼らの活動の時間は、昼間ではなく、夜の方が長い。

 跳ね回った時間よりも多くの時間を眠る時間に割く。

 私が出かけた後は、こうやって眠るのがティアの日課のようだった。

 頭の上をマッサージをするようにして、何回か撫でると目をつぶったまま、首を真っすぐに伸ばしてゴロゴロ言い出す。その姿が可愛らしくて、顎を撫でると眠いのか少しずつ下がってきてバスケットとティアの顎で手をサンドウィッチされてしまった。手をそっと引いて自由にしようとすると、気配で察してすぐに猫足で器用にひっかけて、元の位置に戻されてしまう。


「ティアちゃん、かわいいですね~。私も猫欲しいです」


 メイベルの瞳が潤みまくっている。


「メイベル、あなたには飼えないわ」

「あら? どうして?」

「意外とずぼらなのよね」

「アリシア様の前でバラすことないじゃない!」


 メイベルは、リリーを軽く叩いているが本気ではなく、いつものじゃれ合いなのがわかる。

 二人のやり取りを見ているといつもの日常が戻ったようで、少し安心する。


「アリシア様、私も猫欲しいです」

「そうね。今から行くミクロフィアには、たくさんの猫がいるからチャンスはあるかもしれないわね」

「猫ちゃん、パラダイスですか!」


 メイベルの鼻息が荒くなる。

 二つに分けてツインテールが似合う子は、メイベル以外にいないだろう。きっちりと髪を結いあげてしまう子が多い中で目立つ存在だった。どこに行っても跳ね回っている姿がティアと重なってしまい、ついに側仕えになった。


「パラダイスよ。とにかくあちこちで散歩している子たちがたくさんいるのは間違いないわ」

「メイベル、今度は逃げられないようにね」

「もう、リリーと口きいてあげないから」


 メイベルがプイッと横を向くと、リリーの顔とお見合いをする形になった。

 反対側を向くつもりがどういう訳かお互いの顔を見ている。

 笑い出したのはメイベルの方で、リリーもそれにつられて笑顔になっている。


「リリーの髪って珍しい髪色ね?」

「母親似なんです。紫の髪色と瞳を持つ者ということで、王妃候補にも挙がったみたいですが、辞退したと聞いています」


 今の王妃様の時代にリリーの母親は、王妃候補だった。

 普段はじっくりと聞くことのできない身の上話を馬車の移動で聞くことになろうとは思わなかった。


「なぜ辞退したの?」

「わかりません。小さい頃に母は病に倒れてしまいました。今ではもう聞く術がありません」

「ごめんなさい」

「いいえ、アリシア様が気になさる必要はありません」


 メイベルが継母の話をしていたのに迂闊だった。


 


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