11. 運命に囚われて
エドモンドの肩越しに見えたものは、侍女たちが両手で顔を塞ぎながらも手の隙間からばっちり見ている様子だった。メイベルは目が合うと、なかなか離れたがらないリリーの背を押すようにして連れ去ってしまった。きっと部屋へ戻ってしまったのだろう。
助けてと手旗信号を送りたくても誰も受け取ってくれない。
それにその誰かに見られてしまっては、今までの苦労が水の泡になってしまう。
「王子様……」
「エドモンドだ」
「……エドモンド、そのことについては後日話し合いましょう」
「婚約破棄を見直すという方向ということでいいか?」
かなり不本意だが、いいと言うしかない。
「……いいです」
「よかった!」
さらに強く抱きしめられてしまった。
「あの……強く抱きしめられては苦しい……ギブ……」
その後の記憶が定かではなく、気がつくとベッドに横になっていた。
エドモンドに抱きしめられたことはなかったが、体力お化けだということがわかった。
今後のためにももう二度と会わない。
「アリシア様、起きていらっしゃいますか?」
「……起きています」
「王子様がいらしています」
天蓋付きのベッドの四隅に垂れ下がっている白いレースのカーテンをタッセルで縛りながら、リリーが話している。
「リリー、起きていないと言って」
「アリシア様、もう遅いです」
隣の部屋で待っていることを匂わせるような話し方ということは、待っているで間違いないということか。
体のあちこちに抱きしめられたときの感覚がまだ残っているような気がしている。
「よかったですね」
「よくないの……」
「どうしてですか?」
「婚約破棄をするべきなのよ。一度ダメになったものは、もう元に戻らない。これは鉄則よ!」
「でも隣の部屋でお待ちになっている方は、紛れもなく、エドモンド王子様です。心配されていますよ。気がついて元気になったお姿をお見せになってはいかがでしょうか」
『婚約破棄をするべき』『鉄則』まただ自分の言葉に違和感がある。
どうしてこうしなければいけないと思っていたのだろう。
何か運命に囚われてしまっている。囚われてしまった場所から動けないような違和感がある。




