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第十話 おっぱい星人、主といちゃつく

 魔族化したシルフ討伐から帰った翌日。

 

 プニルは魔族討伐を為したげたということで現領主である姉たちに報告を求められ招集されていた。もちろんメイドさんたちも同行している。

 プニルの姉でもあるエルブレストの領主は双子の姉妹という異色の存在だ。名前をローレリア・マンチェスターとスリザリア・マンチェスターという。この二人は二人揃うことで領主に値する強力な魔法を使えると言うことで、文字通り実力でこの街の頂点に君臨しているらしい。あれだけ強力な電撃魔法を使いこなすプニルよりはるかに高みにある魔法など、どのようなものか想像もできない。


 というわけで、久しぶりにミルヒアと二人きりなのだった。ギルドの大ホールにいれば魔族討伐のことをあちこちから根掘り葉掘り聞かれて、どこかで俺の能力に繋がるボロを出してしまうかもしれない。念のために俺たちは二人で使うにはやや広すぎるギルドルームに避難することにした。


 机の向こうに座っているミルヒアは魔法の指南書を読んで〈詠衝〉の練習をしていた。先のシルフ戦で遠距離の手札の少なさを痛感したらしい。

 

 もにゅ もにゅ もにゅ


 ゆっくりとミルヒアの手の中で形を変えていく重量級の〈房珠〉は実に絶景である。すでにおっぱい星人奥義(バスティアン・アーツ)〈追陽炎〉(おいかげろう)を発動してその風景は脳裏に完全に焼き付いていた。すごい全然飽きない。ずっと見ていられる。


「……なんですか」

「いや別に、頑張ってるなと思って」

 こちらのあまりにも慈しみに満ちた視線に気づいたらしい。ミルヒアが手を止めてこちらに怪訝そうに声をかけてきた。どうぞ鍛錬をお続けくださいと手で促すが、どうやらミルヒアの集中力を途切れさせてしまったようだ。


 ミルヒアは大きく伸びをするとこちらに向き直った。顔つきが真剣である。茶化す空気ではないのでこちらも椅子に座り直す。

 聞く機会を伺っていたのだろう。ミルヒアが慎重に切り出した。

「あの〈代理詠衝〉っていうのは、もともとできたんですか?」

「いや、とっさにやってみたらうまく行っただけだ」

「やれることを隠していたわけじゃない?」

「俺だってやれることは知らなかったよ」

 そうですか、と心持ち雰囲気を和らげるミルヒア。そして今度は食い気味に身を乗り出してきた。未だ〈納頭〉されてない〈房珠〉が大きく弾む。

「じゃあ私の〈房珠〉でも同じことができますよね!?」

「できない理由はないな」

「やってみてください」



 ……



「は?」

「私の〈房珠〉でも〈代理詠衝〉をしてみてください」

「アノ、ナンノタメニ」

「プニルの〈詠衝〉よりバスティアの〈代理詠衝〉のほうがなめらかで早かったです。私も一度やってもらえたら上手な〈詠衝〉のお手本にできるかと思って」


 真面目だった。


 しかしどんな理由であろうと、おっぱい星人(バスティアン)が乳を揉んで良いと言われたなら断る理由などない。

 謹んでお受けいたしましょうとも!

 幸いミルヒアの練習していた〈詠衝〉は完全に把握している。最適化してその動きを再現することも簡単だ。


 いそいそとミルヒアの背後に回り込む。意図を理解したミルヒアが〈房珠〉を突きだす。暴発防止のために〈鞘〉を着用し、その上からの〈詠唱〉という形を取る。

 目の前にずっと晒されていたおっぱいである。

 何度も頭を埋めたことのあるおっぱいである。


 そして、自分から触りに行くのは、初めてのミルヒアのおっぱいである。


 ……?


 なぜか口がカラカラになっていた。

 この世界に来てからなし崩し的に〈房珠〉に触る機会はあった。おおいに揉みしだいてきた。

 だが、触っていいよと言われて、自分の意志で触りに行くのは初めてだった。

 ミルヒアの髪の香りがふわんと鼻をくすぐる。自分の顔が赤くなっているのがわかる。

「バスティア?」

 こてんと頭を預けてこちらを見上げてくるミルヒア。不安そうに揺れる碧色の瞳と目が合う。

 妙に熱くなってるミルヒアの耳が当たってくる。

 もしかして、ミルヒアも俺に触られることに緊張している? 

 そう思った途端何がが弾け


 バツン


 布の残骸がパサリと床に落ちた。

 一拍遅れてばるんと跳ねるミルヒアの〈房珠〉。

 弾け飛んだのはミルヒアの〈鞘〉だった。


 次の瞬間二人ともばっと身を離していた。さっきまで場を支配していた妙な空気が消し飛んでいる。

「さ、最近〈房珠〉が成長したみたいで」

「そ、そうか。うん、魔法たくさん使ってたもんな。そういうこともあるよな」 

 二人してあはははとぎこちなく笑う。


 一呼吸してミルヒアが言った。

「今日はこれから〈鞘〉を買いに行きましょう」

 なんとも言えないに雰囲気になってしまった状況を打破する魅力的な提案に思われた。


    *    *    *

 

 〈鞘〉を扱う店は多岐にわたる。町中で使う用途の専門店もあれば、魔力が少ない者用の専門店もある。装飾を重視した高級店もある。ミルヒアが連れてきたのは、もちろん冒険者用の実用的なものを扱う店だ。

 ギルドにほど近い立地にあるその店は、まるで鍛冶屋に近い工房を備えた店だった。断じてブラを商ってる店の気配ではない。


「いらっしゃい」

 驚いたことに店主は初老の男性であった。ミルヒアのむき出しの〈房珠〉を見て、ほう、と感心したような声を上げた。

「ミルヒア嬢、また〈房珠〉に磨きがかかりましたな」

「ええ。なので今までの〈鞘〉が壊れてしまって」

 ホッホッホッと店主が笑う。

「〈鞘〉を壊すほどの業物とは。いやはや末恐ろしいとはこのこと。武勇は聞き及んでおりますぞ」

「仲間あってのことです。あまり持ち上げられてもお財布の中身は変わりませんよ。おすすめはありますか?」

 これはこれは、とカウンターの奥に戻る店主を見送りながら、ミルヒアがこちらに向き直る。

「すみません。男の人をこんなところに連れてきてしまって」

「いや、極めて興味深いから全く問題はない。ところであの男は?」

「バンドル爺です。ギルドと契約してここに冒険者用の〈鞘〉の店を出しているんですよ」

 腕は確かです。と自分のことのように胸を張るミルヒア。

「男が〈鞘〉の店をやっているのが珍しいか、小僧」

 店主が奥から様々な布片を抱えて戻ってくる。

「正直言ってそのとおりだ。こういう店は男は立ち入ることすらないものかと思っていた」

 店主が呵呵と笑う。

「浅いなあ小僧。持っていないからこそ見えてくるものがあるのだ」


 店主の言葉を反芻する。つまりおっぱいを持っていないからこそ深くおっぱいを理解し愛でることができるということだな。


「なるほど理解できた。非礼を侘びたいバンドル店主」

「いまので理解できたか。小僧なかなか見どころがあるな」

「二人の世界に入らないでくださーい」

 ミルヒアがバンバンカウンターを叩いた。



〈乳揺れ〉(自動詠衝)だけでなく〈乳揉み〉(手動詠唱)も使うと?」

「新しい戦闘スタイルを模索してみようかと」

「ならばやはり〈フロントホック〉(オープンドロー)タイプですな。〈チュートップ〉(タウンドロー)タイプも〈タンクトップ〉(アップドロー)タイプも両立は難しい」

〈スリングショット〉(スライドドロー)は?」

「〈抜頭〉はしやすいですが即応が必要となる前衛が着用すると暴発が怖いですな」


 交渉は着々と進んでいるようだった。店主の話も興味深かったが、すでに調整の段階に入っているようなので俺はカウンターを離れて店内の物色を開始した。

 なかなかに刺激的なものが並んでいるのだが、刺激的すぎて〈鞘〉だけではもう紐なんだか布切れ何だかわからない。なかなか哲学を感じさせてくれる空間でもあった。


 紐に固定される前の〈鞘〉をひとつ手にとってみた。裏地につややかな黒い生地が使われている。

 話が一段落ついたらしい店主に聞いてみる。

「この生地は?」

「魔障布だ。質によって値段が変わる」

「魔力に干渉できるものなのか?」

「程度はあるがな。望まない暴発を防ぐ程度の効果はある」

 なかなかに興味深い素材だ。いろいろ試したくなる。

「この魔障布を少し売ってもらうことはできるか?」



 結局ミルヒアの〈鞘〉は以前と同じマイクロビキニ状のものになった。〈抜刀〉しやすいように前面部に結び目がついている。

 帰宅したミルヒアは俺の前で何度も〈抜頭〉の具合を確かめていた。そしてドヤ顔でこちらに聞いてくる。

「どうですか!」

 どうもこうもない。

「完璧だ」

 完璧だった。

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